IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第56話 学園最強の座をかけた戦い、終幕
楯無の脳天が叩きつけられた瞬間地面が砕け、
「…………」
すると上から銃弾の音が聞こえ、仭は驚くこともなく大剣で銃弾を薙ぎ払った。
「さて、こういうふうな死刑宣告をしたわけだが…」
「いやいや仭君。とてもじゃないけど偽物に騙されて思いっきりとどめをさしてた君に言われても説得力がないよ?」
仭が上を見ると平然としている楯無がいた。
「騙されたのは本当だが、脳天を偽物に対して叩きつけたのは気づいていてだ。というか水でできてたんだから掴んだら気付くに決まってるだろ」
楯無は清き熱情の爆発で仭がこちらの姿が見えていない間、水で作った偽物を囮にして本人はその上にいた。仭は偽物を作れるとたとえ知っていたとしても妨害霧で消し去ったと思うであろうため、偽物を攻撃してくれると楯無は予測し、それは見事に当たった。妨害霧は爆発で起こった煙のみしか消し去る効力を出さなかったわけである。
「ふふ、まあそれの有無は置いておいて、さっきの言動であなたに余裕もないことはわかったわ」
「…………」
仭は内心やってしまったと思う。
「けど、予想外だったのは偽物に対して最後まで攻撃したことよ」
「さっきも言ったようにお前もこのように叩き潰すという意味と、後ろからの奇襲に逃れるためだな。気を緩めたところを狙ってくるだろうと思っていた。幸い水の偽物は崩れなかったし」
「…あの一瞬でそこまで理解するとはね」
「余裕がないと言ったが、それはお前もだろう?水を使いすぎたんじゃないか?」
「…さあ、どうかしら?」
「まあいい。…そろそろ決着もつけたいからな。勝たせてもらう」
「そうはいかないわ。簡単に学園最強の座は渡せないしね」
「
仭は自分にフォースを使い強化、大剣を斧に変形させ、片方の手にもう1丁の短機関銃を展開して突っ込んだ。楯無はランスで迎え撃つ。仭は斧で楯無に攻撃しようとするとランスで迎え撃つ。互いの武器が火花を散らすと、ランスから嫌な音が聞こえた。
「!?」
「切断力重視の大剣に比べて、破壊力重視の斧の方が効くようだな。…そらっ!」
「くっ……」
仭の斧と短機関銃の2つの攻撃に、楯無は追い込まれ始める。ランスで斧を防ぎ、銃弾を水のヴェールで防ぐが楯無は反撃をすることがあまりできない。
(あんまり時間をかけるとまたあっちが有利になっちゃうわ。…賭けに出るしかないわね)
「はあ!」
斧の勢いのある一撃を楯無はわざと受け、思いっきり吹き飛んだ。
「!まさか俺から離れるために…」
「奥の手を使わせてもらうわよ!」
すると楯無は機体全てに纏っていた水を右手に集めていく。
(!…ミストルティンの槍か…)
ミストルティンの槍。通常時は防御用に装甲表面を覆っているアクア・ナノマシンを1点に集中、攻性成形エネルギーに転じる強力な攻撃力を持つ一撃必殺の大技。そのエネルギー総量は小型気化爆弾4個分に相当する。が
(
仭は地面に降り、斧を地面に刺して試合の前半あたりに捨てた実弾切れの短期間銃を手に持つ。そして2丁楯無に構える。
「俺も待ってやるほど甘くはない。何せそれは冗談抜きでやばいからな!!」
仭は片手に拾った短機関銃に生命の鎖を刺し、エネルギーの弾丸を。前から持っていた短機関銃からは実弾を楯無に浴びせていく。
「ぐっ……ふふ…」
(マジか。絶えずダメージが襲ってるはずだが…)
楯無はまともに実弾とエネルギー弾をくらっているにもかかわらず、スピードが少し遅いにせよ水を集結させていく。そして楯無の右手に水で造られた槍ができた。
「くらいなさい、これが霧纏の淑女の切り札よ!!」
「ちっ…ならば――」
仭は短機関銃2丁を捨て、斧を右手に持って左手を楯無に構えると
【ミストルティンの槍 発動】
同時に1箇所に集められたナノマシンの水が膨大な攻性エネルギーとなって仭に発射され、大きな爆発を起こした。
「…………」
楯無は上空から爆炎を眺める。何故ならまともに受けたとはいえ、完全に倒したとまだ確証しきれていないからである。そして
「おらああああああああ!!」
叫び声とともに爆炎の中から1つの斬撃が楯無に飛んでいく。少し驚いたが楯無はそれを避けると同時にランスを前に構え、仭が突っ込んで来て斧で攻撃してきたのを防いだ。そして楯無は後ろへ下がる。
「はぁ…はぁ…さすがに危なかった……」
そう言う仭の機体はボロボロになっていた。満身創痍とまではいかないが、かなりのダメージが見られる。
「次からこの攻撃は絶対に避けるか阻止せねばな…見るのと聞くのではやはり大違いだ」
「…直撃を受けたのに倒れないとはね」
楯無は驚愕していた。
「正確には槍自体と爆発は直撃ではないな。…俺が左手を貴様に向けた直後、何か異変を感じなかったか?右腕辺りに…」
「!…確かに何か触れられた感じがしたわね…」
「ふ…」
すると仭の左手からエネルギーの鞭のような物が出てくる。仭が軽く楯無に振るうとそれはネバァと腕にくっつく。
「これはトラクタービーム!?」
「劣化してる物だがな。1本の鞭状だがほぼ自在に操れる。で、その劣化した物でも武器などは持ち上げたりすることはできるがISを持ち上げたりすることはできない。…せいぜい腕を引っ張ることが精一杯だ」
「!!」
「理解したか?あの時ミストラテインの槍で攻撃する直前俺はトラクタービームでお前の右腕に引っ付け、引っ張って軌道を少し変えさせた。それと同時にトラクタービームを解除して妨害霧を周りに撒き、爆発によるダメージを少しだが弱められたわけだが…」
仭はトラクタービームで楯無の腕を引っ張り始める。
「いくらあなたの力でも引き寄せることは無理よ?」
「知っている。だから――」
すると仭は突然引っ張るのを止め、トラクタービームを左手に戻していく。仭がトラクタービームを引っ張るのではなく、トラクタービームが仭を引っ張って。
「!?」
「引いて駄目なら押してみろってな」
仭は楯無と至近距離になると完全にトラクタービームをしまい、楯無の腹に殴りかかる。が楯無はそれをかわして後ろに回り込み、仭をスラスターごと抱きしめる。
「!?…貴様!!」
「うふふ」
仭は一瞬何故抱きつくのか一瞬わからなかったが、楯無の表情が笑っているのと周囲に霧が立ち込めているのに気付き、楯無が何をするつもりなのかすぐに理解した。
「ちっ…(こいつ道連れを…シールドエネルギーの残量は俺の方が少ないからか)」
仭は振り払おうとするが振り払えない。そこで斧を大剣に変える。
「逃さないわよ?」
妨害霧を発動させる前にと爆発させた。が
「っ……」
「…忘れたか?俺が1回目に
爆風の中、仭は大剣を空中で地面に刺すような形にし、守護方陣で楯無ごと自分を防御した。
「あいにくと空中でも発動できるし、武器を通して発動できる…ぜ」
「!?」
すると仭は左腕を後ろに向け、生命の鎖を出す。そこから黒いエネルギーが放出され、4角形のエネルギーの壁が作られる。それと同時に仭は後ろへ後退しながら突っ込み、楯無をその壁にぶつけた。壁は硬化してあり、楯無にぶつかった衝撃が全身に走った。
「さて」
その衝撃で楯無の抱きしめる力が弱まり、仭は離れる。そして両腕から今度は2本生命の鎖を出し、黒いエネルギーを前方に放出、そして新たに壁を作るが、その2つの仭達との距離は違った。
「楯無、宣言通りに…」
仭は大剣をしまい、楯無の腹を殴る。気が緩んだところで首辺りを仭は掴み
「決着をつけてやる」
勢いよく黒い壁へと振る。楯無の方は自分達と近い方の、仭は
「はああああああ!!」
楯無は壁に激突すると、それはマットのような物であったので、反対方向へと跳ね返る。仭は楯無が壁にぶつかる前に追い越しており、機体から鎖をあるだけ出して周りに黒いエネルギーを放出すると黒い壁がマット状で出現する。そして楯無が跳ね返るときには仭も壁にぶつかって跳ね返り、途中で作ったエネルギーマットにぶつかってまた跳ね返り、その進行方向に再びエネルギーマットがあり、ぶつかって跳ね返るのを繰り返す。
「らあ!!」
そしてそれを幾度も繰り返し、スピードを増して楯無の後ろ辺りまで来ると勢いに任せて楯無の後頭部に掌打をくらわせようとすると
「っ!!」
「む!」
楯無は後ろを向いて仭の掌が来ようとする直前に腕を掴んだ。がマットに跳ね返ってスピードをどんどん増していった仭はそれごときで止まるはずもなく、そのままの勢い…地面へと楯無ごと落下していく。
「終わらせてやる」
仭は掴まれた腕を無理矢理振りほどき、楯無の顔面にアイアンクローをくらわす。
「
そして追い打ちをかけるかのように瞬時加速を仭は行ってさらにスピードを増し、楯無の脳天をブルドッギング・ヘッドロックのように地面に容赦なく叩きつけた。地面は大きく陥没、破片が飛ぶ。楯無は仭が手を放すと音を立てて倒れこんだ。声も上げない。
「ふぅ…がまだ完全に安心できん」
仭は少し脱力して片膝をつくが、再び立ち上がる。
「まだ…ISが展開、されている。…シールドエネルギーを0にせねば……ぐっ」
楯無が倒れていてもISが展開されているため、まだ油断はできないのでシールドエネルギーを0にしてISを解除させようと仭は楯無に近づこうとするが、ダメージにより少しふらつく。
「こいつを相手に油断大敵だからな…」
「蟻の穴から堤も崩れるって言うしね」
「!!」
仭が油断ならないと呟くと楯無が目を開け、動いて仭の足を掴んでいた。
「貴様!脳に打撃を与えたのが地面に叩きつけただけだとはいえ、確実に脳震盪を起こしてもおかしくない威力だぞ?!やはりあの時の掌打による攻撃を当て、頭を掴んでそのまま地面に叩きつけていれば…が、それでもやはりダメージは脳に確実に受けたようだな。ふらついている」
「うふふ…おねーさんは不死身なのよ」
そう言うと立ち上がって仭を再び抱きしめる。今度は仭の前から両腕ごとがっちりと決められている。
「ぐっ…また…」
仭は霧がいつの間にか周囲に立ち昇っているのに気付き、楯無が再び道連れを図ろうとしていることがわかった。が、防御しようにも両腕が動かせずに完全に手がつけられなくなっている。瞬時加速も間に合わない。そこで
「両腕が使えないからといって攻撃できないと思ったら大間違いだ」
「ぐう、つう!!…い、一緒に受けてもらうわよ」
頭突きをかまし、その後鳩尾に膝蹴りをかました。しかし離れられず、霧が熱へと変化していくと清き熱情が発動した。霧の量、密度も残った全てを使ったため爆発する威力は半端ではない。
「…っう……この、野郎……」
煙が少し晴れると仭は口から出ている血を拭いながら自身の胸に身体を預けている楯無を睨む。仭は全身に痛みなどを感じながらも踏み留まっていた。後ろに下がると楯無は支えを失って倒れる。すると呻き声が聞こえたため意識はあると仭は認識した。とりあえず様子を仭は見ていると
「…あなた、レディに対して…手を貸すとか考えないのかしら?」
「やかましい。そこまで喋れるんなら充分元気だろうが」
楯無は身体を起こすとおぼつかないがゆっくりと立ち上がる。
「…そういうあなたの方が…元気な気がするけど?」
「現在進行形で全身に限りなく激痛が走る」
「…嘘くさいわね……」
「頑丈さだけが取り柄なんだ。…って危ねぇな」
楯無が再び倒れかけると仭はすぐに腕を取る。
「ったく無茶しやがる。お前は本来脳震盪起こしてもおかしくないほどの衝撃を脳に受けてんだ。しばらく安静にしてろ」
「…あら?心配してくれるの?」
「死にたいんだったら無視していい。それでも動くんなら自己責任だ」
「わかったわよ!」
仭が手を放すと楯無はその場で膝をついた。
「さて、勝敗だが…」
仭はハイパーセンサーを使って互いのシールド残量を見る。2人のISはともにシールドエネルギーが0であった。
『両者、シールドエネルギー0。よって引き分け』
「…引き分けね」
「ああ、この場合のことはさすがに想定してなかったな。だから俺は生徒会長にもならないし、お前は学園最強の称号はまだ持ってていい」
「あら?私と同等の実力を持ってるってことだから称号は2人ともってことじゃないかしら?」
「引き分けは勝ちでも負けでもない。だからお前が持ってろ。異論はなしだ」
「むう…まあ君がそう言うならいいわ」
「にしてもまったく、無茶をしすぎだ」
「絶対防御があるから大丈夫よ。死にはしないわ」
それを聞くと仭は
「…訓練とはいえ、そういう考えを持ってんならまだまだだな」
「?何か言ったかしら?」
「いいや」
限りなく小さく言ったので楯無は仭の言ったことを聞き取れなかった。
「…にしてもここのアリーナしばらく使えないな…お前のミストルティンの槍のせいで俺が地面に穴開けたのとか悪化させてるからほぼお前のせいになっちまうぞ」
「ええ…そう…ね…」
「ん?…やっぱり無茶しすぎだろ」
仭が楯無に背を向けてアリーナを見渡していると、倒れた音がしたので振り向くと楯無が倒れこんでいた。
(これが実戦だったら俺の勝ちか?…いや、おそらく気が抜けたからだろう)
その後仭が保健室まで楯無を運ぶ羽目になった。そして楯無が休養になって、その間生徒会の書類等を虚と2人で処理することになったのはまた別の話である。
はい。仭VS楯無では引き分けました。次話は…番外に入るかもしれません。