IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第57話 学園祭の始まり
仭と楯無さんのIS戦が終わって日が経ち、いよいよやってきた学園祭当日。一般解放はされていないので開始の花火等は上がらないが、生徒達(俺と仭の2人以外)のテンションは高い。
「うそ!?1組であの織斑君と黒崎君の接客が受けられるの!?」
「しかも執事の燕尾服!」
「それだけじゃなくてゲームもあるらしいわよ?」
「しかも勝ったら写真を撮ってくれるんだって!ツーショットよ、ツーショット これは行かない手はないわね!!」
そして1年1組の『ご奉仕喫茶』は盛況であり、俺と仭は引っ張りだこになっている。
「いらっしゃいませ♪こちらへどうぞお嬢様」
それでとりわけ楽しそうなのがメイド服姿のシャルである。
(似合ってるて褒めたからか?)
シャルにそう言ってからなぜか朝から機嫌がいい。他の面子も褒めたがあそこまでではなかった。ちなみに接客班は俺に仭にシャル、セシリア。そして箒とラウラである。残りのクラスメイトは大きく分けて、片方が調理班、もう片方が雑務である。
「――ンケンポン!「バシッ!!」――はい、残念でした」
「うー、負けたぁ」
「次は私だよ!!」
今のは仭と客の女子である。ゲームの1つであるヘルメットとハリセン?を使う『叩いて被ってジャンケンポン!』のあれである。そして未だに仭はあらゆるゲームで負けていない。このゲームとてジャンケンの勝敗の後の動作が速いのである。かくいう俺は何回も負けて写真を撮らされているが。
「ちょっとそこの執事、テーブルに案内しなさいよ」
ん?この声は。そう思って声のした方を向くとチャイナドレス姿の鈴がいた。1枚布のスカートタイプで、大胆にスリットが入っている。真っ赤な生地に龍のあしらい、金色のライン等入っていてかなり凝っている。
「鈴か。てか何してんのお前?」
「う、う、うるさい!!うちは中華喫茶やってんのよ!!」
「ああ、飲茶ってやつだな」
「でもあんたのクラスのおかげでこっちに全然お客来ないのよ」
「それは悪かった。それといつもと髪形が違うな。何だっけその頭のそれ」
「シニョンよ」
「似合っているな」
「う…ま、まあ中国人としてのたしなみというか……」
何を照れてるんだ?
「おいそこの執事、そこで止まってないで案内させんか!」
おっと!そうだった。ラウラに言われ俺は正気に戻る。
「ではお嬢様、こちらへどうぞ」
「!?お、おじょ……!?」
「そういうしきたりですので」
「そ、それじゃあ仕方ないわね。……仕方ないわね…」
「…お嬢様、お言葉ですが口より足を動かしていただけると…」
「わ、わかってるわよ馬鹿!!」
何故怒られるのだろうか。そしてテーブルに案内をし、鈴を座らせる。
「ご注文は何になされますか、お嬢様」
「そ、そうね…」
俺はメニューを持って鈴に見せる。
「この『執事にご褒美セット』って何よ?」
……………………。
「当店おすすめのケーキはいかがでしょう?」
「おいこら、あんた今誤魔化そうとしたでしょ」
「とんでもございません。お嬢様の言うことを聞くのが執事の役目です」
「じゃあ『執事にご褒美セット』を1つ」
………………。
「お嬢様、こちらの『メイドにご褒美セット』などはいかがでしょう?」
スパァン!!
「あだ!?」
「お嬢様、『執事にご褒美セット』とはお嬢様が執事にお菓子を食べさせてあげるセットでございます」
俺の頭に何かが決められたので後ろを振り向くと、手から煙を出しながら鈴に説明をする仭がいた。
「そ、そうなの。じゃあ……それを1つ」
「かしこまりました。執事は一夏でよろしいですね?」
「え、ええ」
「少々お待ち下さい」
そう言って仭はキッチンテーブルに戻っていく。ちなみにオーダーは復唱の際にブローチ形マイクから音声で通じているので、オーダーを伝える時間の短縮になるためキッチンに通す必要はない。
「お待たせしましたお嬢様」
「!う、うん」
「では私はこれで。ごゆっくりどうぞ」
「黒崎君。4番テーブルお願い!」
「かしこまりました」
そう言って仭は去って行った。
「…仭、執事の仕事が様になってない?」
「執事の経験はないみたいだぞ?でもこの前知り合いにコツとか聞いたって言ってた。…で本当に俺に食べさせるのか?」
「す、するわよ!!お金がもったいないでしょ!!」
「わかったから、怒るなよ」
「じゃ、じゃあ……あーん……」
「あーん」
そしてポッキーを俺は食べさせられる。
「た、食べさせてあげたんだからあたしも「お嬢様、当店ではそういうサービスは行っておりません」
そう鈴が言おうとしたとき、割って入ってきたメイド服姿の箒。表情が怖いぞ!?
「そ、そうなんだ。わかったわ。じゃあお店に戻ろうかな」
「何だ、もう行くのか?ああ、後でそっちに行くかもしれないぞ」
「まあ、客ならもてなすわよ」
「おう」
そんなやりとりをして鈴は2組に戻っていった。
「…………」
「あの、箒?もういいぞ?てか3番テーブルで注文な」
「わかっている!!」
何怒ってるんだ?
「一夏君も罪な子だね~」
「ん?楯無さん!?」
何故メイド服を?
「私も何か頼もうかしら」
「…接客しないんですか?」
「うん」
「客でございましたら私が席に案内をしますが?」
俺の後ろから声が聞こえたので、後ろを振り向くと仭が再び現れた。
「あら?仭君似合ってるわよ」
「どうも」
「…何か変な感じがするわね」
「というと何でございましょう?」
「それよ!!」
「はい?」
「その言葉遣い、どうも変な感じがするのよね」
「仕事でございますのでお嬢様」
「命令よ、タメ口で話しなさい」
「…わかりました。あなたには普通に話すとしよう。これでよろしいか楯無?」
「まだ変よ!?」
「ごっちゃだぞ仭」
「あれ?…ああ、悪い悪い。こうか楯無?」
「まあ、戻ったんじゃないかしら?」
「そうか」
「ところで1つ聞いていいかな?」
「何だ?」
「やけに執事の仕事が上手だけど、経験があるの?」
「いや、でも色々と…ある人にしごかれてな…口調も大分しごかれたし…執事姿で。…だからこれ着るたびにトラウマが蘇るんだ…」
「どんな人よ……そのせいで口調も完全に変わるとか」
1度精神科に行くことを勧めるぞ仭。いやマジで。
「お前も知ってる人物だ一夏。ほら、水着の件のときレゾナンスで、俺と一緒にいた彼女だ」
ああ、あの人なんだ。て、意外だなおい。と、そこへ
「はいはーい。新聞部の黛薫子でーす。と織斑執事と黒崎執事を取材に来ました!」
「…また彼女か」
「また?」
「いや、実は彼女がことあるごとに写真撮ってくるから」
仭もか。それは俺もだ。
「あ、薫子ちゃん!やっほー」
「わお!たっちゃんじゃん!メイド服も似合うね!あっ、どうせなら織斑君達とのスリーショットちょうだい!」
「仕事あるんだけどな…」
「すぐ済むから」
そう言いながらすでにシャッターを切り始めている。楯無さんに至ってはピースまでしている。
「…んー、やっぱり女の子も写らないと駄目ねー」
「私写ってるわよ?」
「たっちゃんはオーラありすぎだからね~。あ、どうせなら他の子たちにも来てもらおうかな」
「それいいわね。その間は私が店のお手伝いするわ」
「…さて、私も接客に戻るとしますか」
「あら?戻っちゃった?」
「心配するな。お前と話す場合は切り替える」
「じゃあ、写真撮るからメイドさん来てー」
(俺の意見は?いや、求めるだけ無駄か……)
こうして写真撮影が始まった。
1人目 セシリア
「一夏さん、スマイルを」
「こうか?」
「ぎこちないですわね。接客が成り立たないですわよ。仭さんを見てください」
そういうので見ると
「チョコケーキとクリームケーキを1つずつとハーブティーを2つお願いします」
「チョコケーキとクリームケーキを1つずつ、ハーブティーを2つでございますね。少々お待ち下さい」
そう言うと仭はキッチンテーブルに。トレイに載せて戻っていった。
「お待たせ致しましたお嬢様方」
そう言ってテーブルに注文された物を次々と置いていく。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「「は、はい」」
「ではごゆっくりどうぞ」
最後に笑顔も忘れずに、とばかりにスマイルを見せる。仭が別のテーブルに向かった後に女子がキャーキャー騒いでいた。
「…こんな感じか?」
「良くなったと思いますわ」
「セシリアは何か楽しそうだな」
「あらそうですか?うふふふ」
「こ、こら、腕を絡ませるなって」
「いいではありませんか。このくらい」
(周囲の目が痛いんだが…)
2人目 ラウラ
「しかし何だな。私とお前ではそれなりに身長差があるな」
「ん?まあ、そうだな」
「……てもいいぞ」
「は?」
「だ、抱っこをしてもいいぞ……」
「え?あ、ああわかった」
そう言われたので俺はラウラをお姫様抱っこする。
「な!?ば、馬鹿者!!」
「いや、お前が抱っこしていいって言ったんだろ!?」
「いきなりやる奴があるか!!」
「ちょっ、落ち着けって!暴れるなよ!」
「お、落ち着いている!!」
(落ち着いてねぇだろ。てかこれ俺のせいか?)
3人目 シャル
「ね、ねぇ一夏。この服変じゃないかな?」
「大丈夫だ。ばっちり似合ってるぞ」
「ほ、本当!?燕尾服より似合ってるかな?」
「メイド服の方が似合うだろ」
「そ、そっかぁ。えへへ♪」
(何か、さらに機嫌が良くなったような…)
4人目 箒
「………………」
「どうした?さっさと写真撮っちゃおうぜ」
「…こ、このような格好の写真が残るのは避けたいのだが……」
「諦めろ。黛先輩、絶対聞かないから」
俺がそう言うと当然とばかりに親指を立てる。
そんなこんなで、やっと全員分のツーショットが終わり、黛先輩は満足顔だった。ちなみに仭の写真は仭が接客をしている時に勝手に撮っていた。
「や~、1組の子は写真映えしてていいわ。撮る方としても楽しいわね」
「薫子ちゃん、あとで生徒会の方もよろしくね」
「もっちろん!この黛薫子にお任せあれ!」
ノリが体育会系だな。
「そうそう、一夏君に仭君。私、もうしばらくお手伝いするから、校内を色々見てきたら?」
「いいんですか?」
「うん、おねーさんの優しさサービス」
「いや、でも俺がいなくなるとクラスメイトからお叱りが……」
「それも大丈夫。私が適当にごまかしておくから。仭君は?」
「せっかくだが、遠慮しておこう。いくらお前が人気でもさすがにごまかしきれんだろうからな。次の休憩までがんばるとする。気にせず行ってきたらどうだ一夏?」
「じゃあ…ちょっとお願いします」
「うん。行ってらっしゃーい」
執事服の上着を脱いで、俺は廊下に出る。
「あ、織斑君だー」
「ねー、どこ行くのー?休憩?」
「まあ、そんなとこ」
声をかけてくる女子に返事をしながら、正面玄関へ向かう。
「ちょっといいですか?」
「はい?」
階段の踊り場でふと声をかけられた。
「失礼しました。私、こういうものです」
差し出された名刺を見ると、IS装備開発企業『みつるぎ』歩外担当・巻紙礼子と書かれていた。
その人はふわりとしたロングヘアーがよく似合う女性で、ずっと笑みを浮かべている。
「実は、織斑さんに是非とも我が社の開発した装備を使っていただけたらと思いまして」
(…またこの話か……)
白式に装備提供を名乗り出てくる企業は後を絶たない。世界で唯一、ISが使える男子の専用機に装備を使ってもらうというのは、相当な広告宣伝効果があるらしいと仭が言っていた。仭はそういうのは全て断っているらしく、俺に対しても
『どうせ白式が零落白夜持ってる限り無理なんだから断れ。申し訳ないとか考えなくていい』
と言ってきた。
「えーと、すみません。今の装備の状態がいいので…」
「そう言わずに!」
俺はさらに交渉をしようと、腕を掴もうとする巻紙さんを避け、脱兎のごとく去った。
「…………」
そしてそのやり取りを見ていた者がいるのに俺は気が付かなかった。
新年になっても実感がわかない。とりあえず体調には気を付けよう。