IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第63話 死線突破
「ヒヒ、なかなかやるなぁ!シヴァクが褒めていただけはある!!」
「そりゃどうも!」
すぐさま体勢を取り戻して攻撃してきた襲撃者に仭は体術で交戦をしていた。
(ちっ…マジで厄介だな6本の腕。普通に使いこなせていやがる)
普通に使いこなす。当たり前のように聞こえるが仭は自前の2本の腕以外に4本の腕を操るなら多少のタイムラグはある(普通、人は2本しか腕を持っていないため)と思っていた。が、相手は6本の腕全てを普通に動かして攻撃、防御をこなしている。
(セシリアのビットやラウラがAICを使うのと同じように集中力があると思っていたが違う。こいつ自然に使いこなしてやがるし…)
人が物を取るときに少し意識を向け、手を使って取るように6本ある腕も何の不備もなく、それを完全に身体の一部として自然に扱ってることがわかり、仭は予想が外れ、相手が厄介なISを装備していることに失念をしていた。
「らあ!」
「っと!」
仭は多少強く反撃、それは装甲椀に当たって2人は後ろに下がる。
(…にしても亡国企業もそこまでの技術を持っていたとはな。普通に
さらに仭が驚いたことは装甲椀自体であった。耐久性に優れ、腕の動き、指の動きなども生身の腕のように動かせているからである。
(おそらくISスーツが操縦者の動きをダイレクトに伝達するのと同じように、電気信号とかであの腕を動かしているんだろうが…どの道奴はもう6本の腕を持った者と認識しても過言ではないな。実力云々より手数の差で純粋にこっちがどうしても不利だ。どうする…)
仭は襲撃者をかなりの実力者と理解した。それもシヴァクに近い実力だと。
(しかしアリィが奴に通じなかった理由がわかった気がするな。おそらくあの装甲椀で氷を粉砕したんだろう。力はある。…それに6本の腕でがっちり極められたりしたらほぼ逃げられんし、投技とかの威力も単純に3倍だ)
仭は相手を改めて見る。不気味に笑っているが、殺気を放ち、まるで自分を殺すことのみに集中してるようだった。
(集中…か。俺もやはり不抜けてしまったか。絶対防御があるからと心のどこかで甘えがあるのかもしれない。…ならば)
「…俺も命をかければいいわけだ」
「んー?」
仭はハイパーセンサーの下にあるファイル(リミッター解除)の横にあるファイルを開く。すると警告音がなるが仭は無視する。
「それがリミッター解除ってやつか?」
「いいや違う。これは…命をかけたときのみ使う剣闘士の奥の手…それも実戦用のもう1つの奥の手だ」
『ロック解除…
「!!」
「大尉!」
「悪いなアリィ。が、こうでもしなきゃこの先勝てん」
「…絶対防御はカットできねぇんじゃ…いや、できたとしてもそれをカットするとか何を考えている」
「狂ってるからこそ俺はベルセルクだ。まあ、そういう意味で持っているわけではないが…」
「………!」
相手は仭の気迫に少し押される。
「さぁ、ここからが…本当の戦いだ」
「…ヒヒヒ、面白ぇ」
相手は6本の腕をそれぞれ独特に構え、仭はブレードを両手に構えた。
「ぐっ…」
一夏は剥離剤をくらってしばらく経つと激痛は止んでいた。が、白式が消えているのに気付き、オータムの言葉が一夏の頭に蘇る。
『さっきの装置は剥離剤って言ってな。ISを強制解除できる秘密兵器だ。良かったなぁ、死ぬ前に見れてよぉ!』
そして一夏は臨海学校で仭に言った言葉を思い返す。
『俺はお前や箒達なんかより強くなってやる』
何のために?それは
「皆を…仲間を守るため…」
オータムに頭を踏まれ続けながら一夏はそう呟く。
「ああ?」
「だから俺は…こんなところで終わるわけにはいかねぇんだ!戻ってこい!!白式!!」
そう叫んだ瞬間、一夏の全身が光に包まれる。
「な、何だ!?」
オータムは異変を察知して、一夏から離れる。そして光が収まると、一夏には白式が展開され、装着されていた。
「て、てめぇ、一体どうやって!?」
「知るかっ!くらえ!!」
一夏は叫ぶとともに、零落白夜で斬りかかった。
「ぐあぁ!…このガキィ…」
「行くぜ白式!」
絶対防御。全てのISに備わっている操縦者の死亡を防ぐ能力である。シールドバリアーが破壊され、操縦者本人に攻撃が通ることになってもこの能力があらゆる攻撃を受け止めてくれるが、攻撃が通っても操縦者の生命に別状ない時にはこの能力は使用されない。
つまり、ISから絶対防御をカットするということは、シールドバリアーが破壊され、ダメージの大小も関係なく、致命傷による攻撃だったとしても操縦者に通る。死を痛感することもあるというわけだ。
絶地防御は普通カットすることはできない。たとえできたとしてもまず絶対防御をカットするような者はいない。いたとしたら馬鹿か狂った者である。
しかし"彼"は絶対防御をカットできるようにし、絶対防御を
何故か。
"彼"は馬鹿か、狂った者、どちらかだと問えば後者の方だろう。
だが"彼"は死の恐怖を感じるためにその行動をしたわけではない。
では何故か。
それは単純な答え。ただ
"彼"は臨海学校で死の恐怖を実感した後、絶対防御のことで考えるようになった。
もし絶対防御でも突破することができて、この先絶対防御があまり役に立たないことになったら?
そうなってしまってはいよいよISに乗っている間も死を覚悟しなければならない。
絶対防御は操縦者の死亡を防ぐ能力。…裏を返せば死なない程度なら絶対防御は発動しない。そして大怪我でも操縦者の生命に影響がなければ絶対防御は発動しない。
操縦者の生命に影響がなくとも、戦闘には大怪我は動きに支障がでる。
つまり怪我を負わないようにでもするならば全ての攻撃に対しても絶対防御が発動するようにでもしなければならない。
が、絶対防御は発動するとシールドエネルギーが極端に消耗される。そのためそんなことをしたらあっという間にISは解除されてしまい、実戦ならば無防備になるので、殺されるだろう。
ならば怪我を負わないようにする。それはまず攻撃をくらわないということなため、不可能である。
ではどうするか。
そこで"彼"は全ての攻撃に対し、ISの周囲に張り巡らされているシールドバリアーに、攻撃を受けた時にエネルギーを放出してシールドを厚くするシステムを作り出した。そしてこれに単一仕様能力で作られるエネルギーもシールドにまわすことで半自動の簡易絶対防御のシステムを自身のISに追加した。
が、絶対防御とはいってもこれは受ける攻撃全てにエネルギーを放出して攻撃を防ぐものである。
つまりこれは破られたらそのまま攻撃を受けることになる。
ならばこれを絶対防御と重ねれればいいのだろうが、"彼"はこのシステムを使うならばと2つの理由からしなかった。
1つ目は先も言ったように絶対防御があまり役に立たないことになりうるからである。
このシステムは単純にエネルギーを放出してある程度厚くするならばシールドピアースだろうと防ぎぐことができる。
なので、これが破られるなら絶対防御も破られる可能性が高いと考えた。
2つ目は単純にエネルギーの使用量。
このシステムは半自動なので量を調節することも可能だが、剣闘士の単一仕様能力によるエネルギーと供用しているとはいえ、シールドエネルギーも多く使う。
なのでエネルギーのため…正確にはISのエネルギーを少しでも節約し、戦闘を続行できるようにするため、以上の理由から"彼"は絶対防御をカットすることで、このシステムが使えるようにした。
これは夏休みのときに軍で"彼"が開発したが、世間には発表していない。
技術の独占などではなく、デメリットのことによるためである。
メリットは先の通りに半自動の防御システムである。
その反面デメリットの方が大きい。
まずこれによるシールドが破られた場合、守るものがないこと。
ISによる攻撃はほぼ致命傷になりうるので極めて危険である。
そしてバリアーで防いでも操縦者がダメージを受けることがあること。
最初からISの周囲に張り巡らされているシールドバリアーも耐久力は普通のに比べ高くなる。
が、衝撃を減らしてバリアーを破られにくくしただけなので、操縦者もダメージを受けるのである。(エネルギーを放出してバリアを厚くしなかった場合)
さらにシールドエネルギーを多く使うこと。
絶対防御を何故使わないかのところで述べたが、剣闘士の単一仕様能力によるエネルギーと供用しなければ多く使う。
つまり、危険なだけではなくこれはシールドエネルギーを多く持つ、または別のエネルギーを作り出して代用するISでなければ使えないのである。
楯無のミステリアス・レイディ(水のエネルギー)、アリシアのフロスト・ソーサレス(氷のエネルギー)も使うことは一応できるが、攻撃や防御にまわすエネルギーが減る。
そのことを考えるとエネルギーを増幅させる能力を持つ箒の紅椿も使えるには使えるが現在単一仕様能力が使えない。
よって現状剣闘士にしかこのシステムは使えないのである。
このシステムのデメリット、死の実感により、"彼"も気安く使うことはできない。奥の手というより覚悟を決めたときにしか使うことはないだろう。
そして"彼"の相手がこのシステムを使っての初めての戦闘になった。
相手の攻撃によるダメージは負傷を負う可能性が高い。そして絶対防御が発動されてエネルギーが減っていけば自身は負ける。そう考え"彼"は死ぬかもしれないことを承知で絶対防御をカット。より勝ち目のある方法で挑むことにした。
狂った獣のように、余計なことは考えず、苦痛にも怯まず、死を覚悟し、ただ…目の前の敵を倒す…自身のコードネームのベルセルクの如く――――――
「うらぁ!!」
「………」
ブレードと拳が触れ合うたびに火花が散る。仭は先程より動きが速くなっていて、完全に6つの拳の乱舞を捌き切っていた。
「はっ!」
「!」
相手が横から斬ってきたのを伏せてかわし、続いて頭上から斬りかかってきたのを紙一重で避けてブレードをしまい、腹に双掌打。そしてサマーソルトキックで顎を蹴り上げる。浅かったが、そのままハンドスプリングの要領で後退した。再びブレードを展開する。
「あー、しゃらくせぇ!」
「!」
相手は6本の腕を3本ずつ横に広げ、仭に抱きつこうとするように突っ込み、それぞれ3つの拳同士をスクラッパーのように勢いよく合わせ、挟み潰した(拳同士をぶつけた)。
「っと!」
が、仭は後ろに瞬間的に下がり何とか避けた。しかし持っていた2つのブレードは挟み潰され、刀身は粉々に粉砕されていた。
「なるほど…この威力、アリィの氷が破られるわけだ。洒落にもならんな。あの拳同士に挟み潰されたら、ISの装備にもなっている自前の腕にやられようと肉体が軽く潰されかねん」
「ヒヒ、今度は当てるぜ。フィストスクラッパー!」
再びそれぞれの腕を広げ、相手は仭を挟み潰そうとする。
「それは確かに脅威な攻撃だ。…が、それに怯むようじゃあ一夏になんざ俺は勝てん!」
「!?大尉!」
仭は自ら挟み込もうとする6本の腕のスクラッパー内へと飛び込んだ。
ズガァン!
『…………』
その音が響いた後、静寂。アリシアは相手の後ろにいたため仭がどうなったかは確認できなかった。
「ぐっ…」
「基本防げないのならかわすか、攻撃される前に防御するしかなかろうが」
仭は相手の腹に拳を放っていて、スクラッパーは途中で停止している。
「そらぁ!!」
「おっと!」
相手は拳同士を合わせ、叩きつけるが仭は素早く抜け出す。そして仭は短剣を1本展開、それを光らせ少しずつ開いてくるスクラッパーの隙間へと投擲する。腕に触れた瞬間爆発した。完全に腕が広げられ、無防備になったそこへ仭は蹴りをかます。
「―――調子に乗るな!」
すると相手は6つの手にそれぞれショートブレード『
1撃目、2撃目と攻撃してくるだけではなく、同時に攻撃してきたりなどしてくるが仭は大剣と拳で何とか捌く。が、相手のブレードによる3つの攻撃が仭の腹の1点に斬りかかった。
「はっ!」
「何を勝ち誇ってる」
「!…ぐぉ!」
絶対防御を仭はカットしているので、相手はこれで決まったと勘違いし、仭の反撃をくらった。相手が勘違いしたのはこの攻撃は普通だったらシールドバリアーを破壊し、絶対防御が発動するはずの攻撃だったからである。が、相手は現在仭が発動しているシステムを当然知らないので、シールドを厚くされて防がれてしまった。
「なるほど…さすがにシールドバリアーはそう簡単に破られないようにしてあるか。だったら…」
そう言って相手は再び6本のブレードで仭に斬りかかり、大剣で防いでるそこを狙って相手は片手に持っている大剣を蹴りあげた。すると仭の得物は宙へと舞い上がる。
「ヒヒヒ!」
そこを狙って斬りかかろうとするが、仭は突如笑みを浮かべ始めた。
(何だ?)
疑問に思いながらもブレードを振り下ろそうとすると
「!?っう!」
突如後ろから突かれたような衝撃をくらった。動きが止まると2人は横に立つ。そしてレイピアを持ち、相手を後ろから攻撃した人物は氷の壁を前に作り出した。
その壁に仭は勢いよく拳を叩き付け、氷を砕いて相手に炸裂、破片と共に相手は吹き飛んだ。壁にぶつかりそして破片をくらう。
「休憩は終わったか?」
「危なっかしくて休むことなんてできませんよ…」
「被害はでないようにしたつもりだが」
「大尉のことを言ってるんですよ!!」
レイピアを手にアリシアは叫ぶ。
「そうは言ってもな。…と話してる時間はなさそうだ」
「エネルギーは少しは回復しました」
「そうか。…ビットもないが、戦えるんだな?」
「はい。身体中が少し痛みますが、エネルギーの方はまだ残っているので」
相手は壁に激突して起こった煙の中から立ち上がってくる。
「お前とIS戦で組むのは久しぶりだったかな?」
「そういえばそうですね」
仭は大剣、アリシアはレイピアをそれぞれ片手に構える。
「…行くぞ」
「はい!」
相手は瞬時加速を使って、2人に斬りかかってきた。
絶対防御を解除しました。が、次話は連携になる。(汗)