IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第65話
「はっ、そんなこけ脅しに乗ると思うか!」
そう言い相手は特攻。仭に止めを刺そうと拳を振りかぶる。
「…貴様の減らず口も…そこまでだ!!」
「!?」
仭は左手を相手に向け、蒼白きレーザーを発射。それは振りかぶっていた装甲椀に直撃、すると
「クク」
そして相手が驚愕の表情に染まっているところをついて凍った装甲椀を大剣で斬り落とし、拳で砕いた。
「!!」
「…これで自前の腕を除くと3本だな。その装甲椀」
相手の右の脇腹辺りについている装甲椀を仭は斬り、残りは5本になった。
「…何故氷を操ることができる?そこで寝ている女の機体が操れるものの筈だ!」
「ああ…貴様のその認識は正しい。そしてこれこそが『
『狂暴』。臨海学校では自身に使える『フォース』…強化であった。だが当然それだけではない。第二形態移行して新たに手にした能力の1つは、相手のエネルギー兵器をくらうとそのくらった分だけ単一仕様能力によって作られるエネルギーに変えることができる。つまり攻撃を仭が受け、その際に生じたパワーをエネルギーに転換するために本来の攻撃分だけエネルギーが作られるわけではなかったものを、エネルギー兵器であるならばその攻撃力分をエネルギーに転換するようになったわけである。
が、これは能力の1つである。
「第二形態になった『剣闘士』は俺が受けたエネルギーを単一仕様能力で変えず、それを増幅させることができる」
「?どういう意味だ?」
「さっき俺がアリィに鎖を刺したときにエネルギーを受け取った。本人に意識はなかったが、ISが展開されていれば拒否も何もないからな」
「それがどうした」
「あれは攻撃や防御に使う…奴の場合は氷を作り出すエネルギーだが、それを俺は受け取った。そしてそれをそのまま増幅させたんだ」
「!…まさか…いや、だがそれでも使いこなすことなど…」
「できるからやった。俺はアリィから受け取った攻防に使うエネルギーを増幅、そして氷を使うISへと擬似的に『剣闘士』はなったのだ」
その能力は貰った(くらった)エネルギーを単一仕様能力へと変えずに、増幅。それを扱うことができるのである。つまりこの能力を使えばアリシアのISが操る氷だけでなく、楯無やレイラのISが操る水や霧も操ることができる。
「が、増幅させるには単一仕様能力によって作られたエネルギーはその間増幅が途絶え、全て(くらうか貰った)エネルギーへと転換してしまう。そして機体に馴染ませるのにも時間がかかる」
「!…だから私の攻撃を……」
「急にエネルギーの攻撃をしなくなるのは俺のISの特徴上不自然に思われないが、増幅を早めるべく貴様の攻撃をくらい続けた。暴食は単一仕様能力によって作られたエネルギーにしか使えないからな」
為す術もなかったのは本当であるが、抵抗を一切示さなかったは相手に攻撃を続けさせるべくしなかったのである。
「…ちっ、随分とまた厄介な能力を隠してきたな……」
「楯無のときに使わなかったのも、なるべくこの能力は使いたくなかったからな。…奥の手は隠しておくからこそ奥の手だ」
「ヒヒ、それもそうか。…ならそれを徹底的に打ち砕いてやろう」
「やってみな。氷龍拳!」
仭は大剣をしまい、地面に左拳を叩きつけると、前方に氷柱が次々と発生していく。いつの間にか地面が相手のところまで凍っていた。
「っ!」
不意打ち気味のそれを何とか相手は横へと避ける。
「そらっ!」
「!」
すると仭は氷柱に対して回し蹴り、氷柱は折れて相手へと飛んでいく。
「舐めるな!」
それを簡単に粉砕、が、次々と折れた氷柱が相手の方へと飛んでくる。そのたびに相手も氷柱を拳で破壊していく。
「かかった!」
「ぐお!」
そしてある程度氷柱を壊したあと、仭はその壊された氷柱の後ろから突っ込んで来た。相手はハイパーセンサーで周囲を確認してはいたが、これは考えていなかった。
そして足に氷を纏ってラリアートのように蹴る。
「ぐっ!」
「クク…」
反撃を相手はしようとするが、仭は装甲椀を両手で掴み、凍らしていく。すると相手は思いっきり仭を殴って離れた。が、仭は殴られた部分に氷で防護していたのでダメージをあまり受けてはいない。
「アイス・マシンガン」
仭は粒程度の攻撃を両手いっぱいに作り出し、それを宙へと放り投げる。そして前へと落ちてきた氷を拳にぶつけていき、次々と飛ばした。
「こんな物防げばどうということはない」
相手は装甲椀を両腕でガード。氷の銃弾は1発も相手のシールドバリアーに当たりはしない。
「油断大敵」
「む!」
氷の攻撃が止むと同時に仭がそう言ってきた。すぐに見えなくなっているので、両腕をどかすと
「油断大敵」
仭は何も行動をとってこなかった。いや、正確にはこれから行動をとろうと左手を相手に構えている。そして仭は再びレーザーを発射。
「同じ手をくうか」
だがそれを余裕で相手はかわす。
「そんなことはわかりきってる」
「!」
すると仭はレーザーを停止、今度は右拳を振りかぶってアンガーナックルを放ってきた。相手は避けている途中だったのでそれを装甲椀で防御。が
「……!」
「言ったろ。今の剣闘士に使われてるエネルギーは氷。全てのエネルギーによる攻撃は凍る」
装甲椀は攻撃を受け止めると完全にとはいかないが凍った。
「調子に乗るな!」
それを意にも返さず相手は仭に突っ込んできた。仭は右拳でアッパー、アンガーバーストで衝撃波を数発放つ。
「カッ!」
相手はそれ避けながら突っ込んでいき、仭に殴りかかろうとすると
「来い。グラム…」
大剣を仭は展開、展開装甲を発動して蒼白いエネルギーの刃を形成。だが普通の剣のような形ではなく、ランスのような形であった。そしてランスのようなエネルギーの刃の形をした剣で仭は相手を突く。
「ぐっ!」
「ぐぁ!」
相打ち。相手の拳は仭の脇腹に当たり、剣による突きは相手の肩を掠り、凍る。そして相手が追撃をしようとする前に仭は左手からレーザーを零距離で放ち、相手を吹っ飛ばした。
「…残り2本」
咄嗟に相手は装甲椀で盾にしたので、自身には直撃はしなかった。が、当然装甲椀は完全に凍り、役に立たなくなった。
「!」
すると相手は凍った装甲椀を自身の手で無理矢理取り、そしてそれを仭に向かって投擲。
「バルディッシュ」
仭は大剣を斧に変え、展開装甲を発動。斧の形をエネルギーの刃はしておらず、鎌のような形になる。そしてその鎌で凍った装甲椀を斬り裂いた。
続けざまに仭はエネルギーの斬撃を相手に飛ばした。
「……」
相手はそれをかわした後に仭を見ると、両腕から鎖を出し、エネルギーを放出していた。が
「どこに撃ってる!」
「…………」
仭は両腕を上の方へ向け、エネルギーを放出していた。相手は何をするかはわからないがとにかく攻撃しようと突っ込む。
「上を見たほうがいいぞ?」
「はっ!そんな手に乗ると…!」
そう言った瞬間、上から何かが落ちてくる音がしたのでハイパーセンサーで相手は確認。相手は動きを止めた。何故なら空から無数のつららが落ちてきたからである。
先程仭がエネルギーを放出したのは空気中の水分を凍らし、氷に変えた。そして空気の抵抗により尖った形の氷(つらら)になり、相手へと落ちてきたのである。
「つらら雨だ」
「くっ!」
尖った氷をくらうのは相手もさすがに避けた。相手はつららに当たらないよう避ける。そこを見逃す仭ではなく、短剣を展開。エネルギーを送り込んで、投擲する。相手はそれに対しライフルを2丁展開。2つのレーザーを放つと短剣に命中し、爆発。煙とともに冷気がお互いを襲う。
「ヒァッ!」
が、レーザーを放ったときに相手はすでに行動を開始しており、短剣が爆発すると共に煙の中に突っ込んでいた。そして仭の姿を前方へと確認すると装甲椀を前へと突き出した。それは命中し、大きな音を立てる。
(手応えありだ。装甲椀にも貫いた感覚がある)
そう相手が勝利を確信していると
「ご苦労なこった」
「!」
後ろから聞こえる筈のない声が聞こえた。すぐさま振りかぶって反撃しようとするが
「うおらぁ!!」
「ぐぉっ!」
仭は両手に持つ、氷で造られた巨大なハンマーを脇腹へと叩きつけた。相手はそれによって吹き飛び、壁へと激突した。
「………」
「さて、やっとまともな攻撃を1発くらわせられたな」
「…どうやって背後へ回った」
相手は脇腹を抑えながら立ち上がっていく。
「全ては計算通り。貴様が短剣に
「……何だと?」
「煙にお互いの姿が隠れ、少しは動きが止まるどころか貴様は前方へと突っ込んできただろう?」
「!」
「その時に俺の姿を見ただろうが、それは俺ではない」
仭はいつの間にか片手に持ったハンマーを自身の横にある物へ向けた。
「氷で造った
仭は楯無が影武者を身代わりにしたのを参考に、水ではなく氷で実行。それは見事に成功したのである。
「俺は影武者の後ろにいて、ハンマーを造形していた」
「…私が装甲椀で攻撃したのも計算通りか?」
「その通りだ。いつ凍らせてくるかわかったものではないと認識してる貴様は自前の腕ではなく、装甲椀で攻撃してくるだろうと思っていた。それに攻撃しても義手のような物に感覚は感じない。つまり貫いても氷だとわからず、音がしても俺が氷を纏っていたとでも考えれば自然と貴様は納得する。そして勝利の美酒に酔っている隙をついて攻撃したのだ。…いくら遠距離の攻撃が可能になったとはいえ、近づかねば貴様にはまともに当たらないだろうからな」
「…ヒッヒッヒ!さすがだな!!…それでこそ倒し甲斐がある」
「!………」
相手が構えたのを見て、仭もハンマーを捨てて構えた。
「うおおおおっ!」
「ぐぁ!」
雪片弐型がオータムを斬り裂き、その勢いで壁に激突した。オータムのISは一夏との戦闘によってボロボロになっている。
「くっ…」
「降参しろオータム!」
「そうはさせないよ」
「!ぐぉ!」
一夏がオータムへ近づいた時、突如更衣室の扉が吹っ飛び、ISを展開し、仮面をつけた人物が入ってきた。そして一夏へと掌打をかまし、一夏は壁へ激突した。
「ほらっ、退くよオータム。あんたを庇いながら3人を相手にするのはさすがに無理だ」
「呼び捨てにするなてめぇ!フェイサー!」
フェイサーと呼ばれた彼女はその言葉に返答もせずに周囲を見渡す。目の前には一夏、入り口の方には楯無とレイラが構えている。
「そんなことを気にしてる暇かい?あんたを置いていって先に退くことだってできるけど、あんたは1人じゃもう逃げられないよ?」
「ちっ…」
オータムは苛立ちながら舌打ちをする。それは背定でもあった。
「というわけで退かせてもらうよ」
「逃がすか!」
「待って!一夏君!!」
フェイサーは手榴弾を放ると爆発。煙の中へ一夏は楯無の静止も聞かず、雪片弐型を構えて突っ込んだ。
「ふん」
それに対しフェイサーは鼻を鳴らす。懐へ入って、掌打。動きの止まった一夏を入り口の方へと蹴り飛ばす。
「ぐあっ!」
「きゃあ!」
「くっ!」
入り口の近くには楯無とレイラがいて、一夏に気を取られる。すぐ横を何かが通り過ぎたと感じたときにはもう遅く、2人の姿はなかった。それに対してレイラもすぐに追い、楯無はその場に残り、一夏と2人になった。
「大丈夫かしら一夏君?」
「ええ、何とか…逃がしてしまってすいません」
「別に責めてないわよ。それに謝るのはこっちの方だわ」
それは一夏を援護するのに遅れたことである。
「…………」
一夏は黙ってしまい、暗い空気になってしまったので楯無は話題を変えようとあの件について話し出した。
「そういえば一夏君」
「はい」
「君が持ってた王冠ってどうしたの?」
「あれですか?…ってそういえば何で皆は王冠狙って来たんですか?」
「景品で、織斑君と一緒に部屋で暮らせる権利を貰えたからよ」
「何を考えてるんですか?俺と一緒に部屋と暮らしたいなんて思う奴がいるわけないじゃないですか」
「うーん。やっぱり罪な子だね」
「?」
楯無の呟きを一夏は聞き取れなかった。
「それで王冠でしたっけ?」
「うん」
「…あ」
「?」
「…オータムとの戦闘の途中で粉々になりました」
「…………」
『撤退だ。オータムがしくじった』
「んー?おいおい終わりか」
仭が攻めようとした瞬間、相手にプライベート・チャネルが入る。仭は相手の話すことから、仲間が一夏にやられたらしく、撤退という連絡だと認識した。
「そういうわけで残念だがここまでだぁベルセルク」
「…俺が逃がすとでも?」
「あーやっぱそうなる…よな!」
「む!」
相手は装甲椀を2本自ら取り外し、それを仭に投擲した。
「悪あがきか」
仭は斧を展開、展開装甲を発動して2つとも斬り裂く。するとそれは爆発した。
「ぐっ!」
思いがけぬ攻撃に仭は怯むが、すぐさま後ろへと下がって爆炎から抜け出す。
「……………」
「ヒヒ、次に会う時は確実に仕留めてやる」
相手はすでに穴の開いたバリアーの近くで宙に浮いていた。
「…ちっ、俺の負けか。次は捕まえてやる。
「ああ……っと!そういや名前言ってなかったなぁ。……私の名はデスト。
「!…何だと…」
「ヒヒ、じゃあな!」
そう言ってデストはアリーナから去って行った。
「…………」
仭はしばらく眺めゲートの方を向いた。
「…もう出てきて大丈夫だぞ。ダイン」
「…ああ」
そう言うとダインがピッドに通じる扉から出てくる。
「…………」
「仭?」
「いや、何でもない。…っ……」
「おいおい、大丈夫か?」
「…ああ」
「本当かよ…」
「攻撃を受け続けたからな。それが今になって来ただけだ」
「そうかい」
「…………」
仭はアリシアの方へ向かい、腰を落とした。
「(
「…お前が思うに奴は実力をどのくらい出してたか?」
「そうだな…良くて6割弱」
「……悪けりゃ?」
「4割強…ってところか」
「……」
(まぁ…リミッター解除を使わなきゃこんなものだろう。今回は他の
「大尉…」
「起きたか。大丈夫か?」
「ええ、何とか……」
仭はアリシアに肩を貸しながら立たせた。
「さて…あっちにも連絡をするか」
仭はプライベート・チャネルで、レイラへと連絡を取る。
「此方ベルセルク。今は大丈夫かインビジブル?」
『ええ、大尉』
「襲撃者と今しがたまで戦闘。だが逃げられた。そっちはどうだ?」
『すいません。こっちも同じような感じです。逃げられました』
「!楯無もいてか?」
『…はい』
「(2人がかりでも倒せなかったのか。密閉空間の方がレイラは少なくとも実力を発揮できる筈だが…)そうか。それで今はどうしてる?」
『今は襲撃者を追ってましたが…見失いました』
「…そこまでにしていい。どの道此方が逃した奴とも合流してるだろう。…悔しいが、今回は諦めろ。おそらく学園から追跡を出すだろうが、失敗する」
『…はい』
「それと…俺が言ったことだが…」
『わかってます。シャイニングの元へと向かいます』
「ああ、此方には俺の他に2人いるからすぐに俺も向かう。…おそらくすでに始まってるはずだ」
『了解』
そう言ってレイラはプライベート・チャネルを切った。
「…もう、1人で大丈夫です」
「そうか。…無理はするな」
そう言ってアリシアは仭から離れる。
「さて…お前達は俺の後ろにいろ。さっきのは前菜。これからが
「「了解」」
そう言って2人は仭の少し離れた後ろへと動く。そして仭はピッドからアリーナに通じる扉の方を見据えいた。
少しチートすぎただろうか?しかし当然デメリットもあります。それについては後に。それとまだ終わりません。