IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第67話 影の軍隊
「…ってぇ」
「そりゃ当然ですよ。全身に打撲があるんですから!」
現在仭達は保健室にいる。そこで治療をしていた一夏と、一夏の側にいた箒と簪には廊下にひとまず出てもらい、現在治療を行っている。アリシアとレイラは軽傷で数日すれば治るほどであったが、仭は全身打撲。骨には奇跡的に影響はなかった。
「よく戦えたなお前。そんな身体で…それで元世界最強に喧嘩売るとか、はったりにも程があるぞ」
「頑丈さだけが取り柄なんだよ。というか
「いやいやどう考えても意地になってただけでしょ。てか『敵を騙すにはまず味方から』だから」
ダインに返した仭の言葉にソフィアは突っ込みを入れる。
「…さて、こっちの治療は終わったわね。彼女達も入らせましょうか」
「本当なら防音設備のある生徒会室とかがいいのだが…あそこらは多人数が入るところに向かないからな。…ちょうど俺達が指定した専用機持ちも全員揃ったみたいだ」
セシリアとラウラが戻ってきたことを仭は外から聞こえる会話でそう察していた。セシリアとラウラは亡国企業を追跡したようだが、仭の見立て通りに失敗して戻ってきたのである。
「しかしラナ。お前よく俺の意見を聞き入れてきてくれたな」
「実はね。サクヤさんから『仭の判断に任せる』っても言われていたから」
その言葉に仭はきょとんとする。そして僅かに呆れたように苦笑した。
「まあ、あの人らしいと言えばそうだが…それならそう言ってくれないか?」
「いやぁ、忘れてて。あの場で言うこともできなかったし…」
「はぁ……」
そんなんでいいのかと思いながら仭は保健室の扉へと近づき、開ける。
「仭…」
「待たせました。入って大丈夫ですよ」
仭がそう言って奥の方へ行くと中へと千冬や専用機持ちが入ってくる。そしてラナとソフィアはパイプ椅子に座り、アリシアとレイラはベッドに腰掛け、仭とダイン、そして他の面子は立った状態だった。
「人数が多いが、仕方があるまい」
「すいませんね。此方も人数がそこそこいるために」
千冬の言葉に仭は苦笑しながら言う。何せ千冬、一夏達専用機持ちの生徒、仭達を合わせて15人はいるからである。
「ところで私も聞いていいのかしら?というか専用機持ちなら後2年と3年に1人ずついるけど?」
「大尉がいいって言った人ですから」
「お前は信じるとしよう。それにどうせお前に話さなくてもあの手この手で来るだろうからな。あまり面倒事は起こしたくもない」
「?仭。楯無さんに対して何を言ってるんだ?」
話の内容についていけない一夏が問うてくる。
「ああ、そういやお前には楯無のことを話していなかったな。一夏、楯無は対暗部用暗部『更織家』当主、17代目の楯無だ。ようするに裏工作を実行するまず一般人は知ることのない存在の当主」
「そういうこと♪」
「俺のことも一夏のことも調べてたんだよ。…特に俺…いや俺達か」
「…仭。お前は本当に…」
「言いたいことはわかる。それについても説明するから少し待て。で、楯無。それとその2人については…悪いが話すことはできん」
「何でかしら?」
「専用機持ちとはいえ、そう簡単に信用するわけには俺達の職業上…な」
「仭…一応代表候補生でもあるんだよ?」
「ああ?何言ってるんだシャルロット?どこぞの誰か達がISを軽々しく使って代表候補生としての品格を失わせてるような真似をしてるから信用できないんだよ」
『うっ…』
仭の言葉に心当たりのある5人は表情が曇る。
「それはさておき…さて、まずお前達専用機持ちに問わなければならないな。…ここから先の話は甘ったるい認識で聞いてはいかん。覚悟のない奴はいますぐこの部屋から去れ」
人を呼んでおいてそれかと千冬は視線を送ってくるが仭は無視する。
「一々1人ずつに聞くのは面倒だからな。集めておいていきなりこんな事を言うのは謝るが…此方としても生半可な気持ちで聞いてもらいたくないからな」
「仭…その内容は聞いておいた方がいいのか?」
一夏が仭にそう聞いてくる。
「強制はしないが…聞いておいた方がいいだろうな。特に一夏、お前は特にな。今回奴らが狙ったのはお前だ。またお前を…いや、今度はお前達専用機持ちも狙ってくるだろうからな」
「…俺は聞く」
「…他は?」
仭は他のメンバーを見る。その表情は背定であった。
「ふう…わかった。さて、千冬さんが知りたがっていることについて話す前に…俺達の正体を話すとするか」
すると纏う雰囲気が変わっていた仭以外の者達の空気も変わった。
「…楯無が対暗部用暗部なら…俺達は
『!』
その言葉に千冬と楯無、ラウラ以外は驚く。
「で、言ったからわかるだろうがアリィもレイラもそこに所属はしている。彼女らもだ」
「IS技術部ダイン・クラウス。階級は少佐」
「2人に同じく所属しているIS技術部担当ソフィア・クレーネ。階級は少佐」
「…IS実働部隊副隊長ラナ・バークレイズ。階級は少佐」
淡々と自己紹介をラナ達はした。
「…仭がそこに所属していたなんてね」
「意外か鈴?まあ、政府は知ってたんだろうが言わなかっただけだろう」
「?…仭。じゃお前達はえぇと…ISに対して作られた軍…てことでいいのか?」
「平たく言えばそういうことになるな」
「けどISは各国の抑止力として使われていて…戦争とかには使われないんだろ?そういう条約があったはずだ」
「アラスカ条約な。確かにそうだ一夏。…が、お前の知らない裏では表沙汰にはできないことが起こってるんだよ」
「今回の事件や、この前起こった福音事件とかがそうだな」
「そういうのに対処するために私達という存在がいるのよ。…いえ、いてしまうの方が正しいわね」
一夏の問いに仭、ダイン、ラナは答える。
「でまあ今回襲ってきた組織は亡国機業。第二次世界大戦中に生まれ、50年以上前から活動している組織だが俺達はそいつらのように秘密結社なんかではなく、国際IS委員会に認められて裏で活動してる軍だ」
「…ということはお前達は国際IS委員会の下で動いてるわけか?」
「…それは違うぞ箒。…ってお前達もそんな嫌悪感丸出しにするんじゃない。悪気があって言ったわけじゃないんだ」
箒の言葉に不快感を覚えたらしいラナ達がそんな表情してるのを感じて仭は咎める。
「ラナ?あんまり生徒にそんな顔を見せないで欲しいんだけど?」
「あら?別に怖がらせてるわけじゃないんだけど?」
楯無の言葉にラナはそう言う。
「あれ?2人は知り合いなんですか?」
「教えてやるシャルロット。…楯無は…ちょうど今から1年程前、ロシアでの模擬戦で
「!」
「ロシアからの頼み…いや依頼でな」
「ええ…本当に久しぶりよね。ラナ…いえレイズって呼べばいいかしら?」
「楯無、それは前のコードネームだ。俺がアリーナでそう呼んでたろ」
ああ、この前生徒会室で仭が言ってたのはそういうことだったかと一夏は思い出していた。
「そうよ?聞いてなかったのかしら?」
「っ…あら?仭君に助けて貰いっぱなしのあなたに言われたくないわね」
ピシッ、そのような音が聞こえた。
「うふふ。強くなったみたいだけど…仭君と同じ実力だったらまだ私の方が強いわよ?」
「けどあなたと彼はISが違うでしょう?あなただったら勝てるわよ。それにその言葉は仭君を傷つけてるのに気付かないのかしら?」
ピシッ、再びその音が聞こえる。ラナと楯無双方のこめかみに青筋が浮いていた。
「いや…ラナ。大丈夫だから。とりあえずその辺に「こう言ってるのよ?この人たらし。そっちこそ彼に対して色々やってたそうだけど?」――………」
「ああ言えばこう言う。まるで子供ね」
「ふふ、子供のあなたに言われたくはないわね」
お互い怒りのオーラが出始めると
ドゴォン!
「「いったぁ!?」」
千冬は楯無に、仭はラナに拳骨をそれぞれかまして黙らした。
「まあ、このように犬猿の仲でな。この2人は」
(お姉ちゃんのこんな所初めて見た…)
簪はラナに対しての姿を見て驚いていた。
「…さっきのことに答えるぞ箒。俺達はどこにも属してない完全な独立組織…いや軍だ。国際IS委員会や一部の国とは同盟…という感じだな」
「そ、そうか」
「そして基本的に俺達はIS関連だけじゃないが、IS委員会、国などの依頼から動いている」
「ある時は人体実験、ある時は紛争、ある時はISで問題を起こした者の粛清とかね」
「そこまでにしとけソフィア。気安く内容を話すな」
「ごめんなさ~い」
「…何て言うか軽いですね」
「そうだなラウラ。俺もこんな軍なのかと最初は戸惑ったものだが慣れた。それでも任務になると俺達は切り替わる。まあ、お前の
「?何でだ仭」
「それは…」
言っていいかとラナに仭は視線を向ける。アイコンタクトで背定を貰った。
「…それについてはIS学園についてから話さなければな。一夏。ISに使われる技術は開示しなくてはならないのが決まりなのは知ってるな?」
「ああ」
「だが新しい技術を作ってすぐに開示したらすぐに他国に真似される。それだとメリットが少ない。最低でも技術の応用ノウハウや操縦者の練度を高めなくては損をするだけだ」
仭の言うことに一夏は頷く。
「そこでここIS学園だ。その成り立ち上『あらゆる法の適応外』という側面を持っている。…半ば有名無実化していて、全く干渉されない訳ではないというのが実情だがな」
「…返す言葉もない」
「が、それでも重要なのは『IS技術における試行』だ。『新技術に必要とされる試行活動を許可し、またそれらのデータの提出は自主性に委ねるものとして義務は発生しない』。つまり『データの開示をせずに実戦データを集められる』のだ。だからIS学園にイギリス、中国、ドイツなどは第3世代型ISを送り込んできてるわけだ」
「ああ…けどその話と良い印象を持たれてないのと、どう関係があるんだ?」
「もう少し待て。実戦データを集められるのはここだけとお前は思っているだろうが、実は違う。もう1つあって、それが俺達の組織だ。でここから本題に入るが、『
「…どんなだ?」
「1つ目は組織に入ること。これは傭兵みたいなもので、仕事もしてもらう。命のリスクは組織に(自分の意思で)入ってる奴に比べたら低いな。IS学園の代表候補生のようなものだ。そして基本試行活動だけのようなものだから国へも大体帰れる」
「で、2つ目はISのデータをとらせてもらうことだ」
「「!」」
仭に引き継ぐような形で言ったダインの言葉に一夏と箒は驚く。
「データを提出…とまではいかんが、俺達が整備などしてデータをとらせて貰う。まあ、ほとんどは本国から整備士を送ってきてる。が、整備じゃなくてもデータはとれるからな」
「…で一夏。何で他国から良い印象を持ってないかわかっただろう?」
「…その見返り…データを独占できるから」
「そう。その分頼ってきた国には試行活動の訓練は厳しいが、得もするようにしてる。現に第二形態移行したISとかも出しているしな。単一仕様能力出すまでには…一応あったが、それでも結果的に俺達の組織が1番得をするようになってる」
「委員会から何か言われないのか?」
「言われてるさ。いや、言われたらしいな。けどだったら俺達の組織と関わらなければいい話で、IS学園で我慢しろということ。学園は生徒しての時間がとられてるが、こっちはほぼIS操縦だ。指導もしている」
「…そんな条件で頼ってくる国があるのか仭?」
「あるぞ箒。少なくもないし、例を挙げるとしたらアリィとレイラだな。2人はそれぞれアイスランド、オーストラリアからの…代表候補生だな」
「「はい」」
アリシアとレイラは背定する。
「…でも何でそんな条件なのに…言い方は悪いけど頼ってくるんだ?」
「まあ、単純に言ってしまえば軍事力を整えたいからだったり、他国より遅れてるからやむを得ず…とかだな。…ったく自国の意思だってのに『情報を開示しろ』だの『独占して戦争でも起こす気か』と、うるさいったら仕方ない。こちとらIS委員会から許可をとって試行活動できるようにしてるんだ。…だからそう睨むなお前ら」
仭は睨んでくる代表候補生達に突っ込む。
「けど仭…何でそんなことをしてるの?」
「俺にその質問されてもな簪。この組織に入ったのは1年前くらいだし、その時にすでにこのやり方は行われてた。…まあ、データが欲しいのはどこも一緒だが、ISは限られてる。だから…基本使わないとはいえ兵力が欲しいから…だったよなラナ?」
「ええ」
「それにしてもよくそんなふざけた条件なのに委員会許可したわね」
「鈴、相手によってはそういう言葉は怒りを買うから気をつけろ。まあ、委員会を色んな意味で防衛するようなこともしてるからな。というふざけたことなんてのは委員会の爺共の方だと思うがな」
「爺共って…」
「盗聴されてないから大丈夫だ」
「そういう問題?」
鈴は仭の発言に呆れたように言う。そしてアリシアとレイラは苦笑してたが他は満更でもない表情をしている。
「現在委員会では一夏、箒のお前達と白式、紅椿の所属をどうするかで騒ぎまくってる」
「「!!」」
「まったく、一夏と俺の件で大変だったのが、箒があの人から第4世代IS紅椿を貰ってからさらにやかましくなった。なかでも一夏。お前が初めてISを動かした後には裏で色々大変だったぞ。…1番酷かったのはお前を殺そうとする輩や殺し屋が出てきた」
『!?』
「心配するな。お前はそうやって今生きてるだろ。委員会からお前を守るように依頼も受けたしな。…どうせ男でのIS操縦者のサンプルが失われては困るという考えもあってだろうがな」
「…………」
一夏は自分がISを動かした後、裏ではそんなことまで起きていたことを初めて知って複雑な気持ちになった。
「続きを話すぞ」
そして仭はさらに話を続ける。
今回話したことをまとめると
・仭達の組織の名称
・組織の立場
・IS学園とは違うやり方の試行活動
・IS委員会の行われている議題
てところですかね。長くなったので切ります。