IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第68話 イレギュラーの学園へ来た意味と本題
「そこで一夏。俺がIS学園に送り込まれたわけだ。護衛として」
「?俺と同じようにISを動かしたからじゃないのか?」
「それも当然理由としてある。都合が良かったからだ。…最初はお前がISを動かして、IS学園にひとまずは送り込まれるだろうということになり、(当然だが)組織の女子を1人送り込もうとした。…が、そこでアクシデント。俺もISを動かしてしまい、このままでは色々マズイということになって2ヶ月期間をもらって、IS訓練。で、シャルロット達と同じ時期になって学園へと着たわけだ。でもって一夏には自衛できるぐらいの実力をつけてもらうという狙いだ。俺はお前とは知り合いだし、男同士なら色々接触しやすいだろう…とな」
「そのことだけど仭君…」
「何だ楯無?」
「…あなた本当に一夏君と同じ時期にISを動かしたのかしら?動かして半年にしては実力が高すぎる気がするし、それにISに関しても色々あるし…」
「………」
再び仭はラナに話していいかと視線を向ける。やれやれという顔をしながらも背定を示した。
「はぁ…ここだけの話にしといてくれよ」
「あら、意外に素直に話すのね」
「別に聞かれても国が騒いで面倒なことになるが、大して聞かれても問題ない。それにはぐらかしたらはぐらかしたで、どうせお前は動く気だろうからな」
「そう」
「…正確には動かしたのはちょうど1年ぐらい前だな」
「!俺より早く動かしていたのか」
「なら師匠、何故このことを隠したのです?」
「何故?面倒事を避けて何が悪い。その場でいたのは組織の一部だけだったから隠蔽しただけだ。それに男がISを動かすなんて前例がない。そのまま隠蔽しとけば各国が騒ぐこともない。火種を隠して、争いを避けるという行為の名にが間違いだ?そのことを機会に人体実験が更に増えることだってあるんだぞ」
「……………」
「まあ、一夏がISを動かしたことが世間に広まったから俺も出ることになったわけだが。俺も動かしたことをバラせば『自然にISを動かせることができる者がいる』と各国に思わせるためにな」
「…すまない仭」
「謝った所で何か変わるわけもなし。それに仕方ないだろうがお前の場合は。…で、俺が動かしたとも知らせたほうがいいとなって、各国に秘密裏でバラした。それで俺も狙われるだろうから、と期間を貰ってIS訓練。で、ラウラが来ると知り、一夏がヤバイんじゃないかということになって転校してきたわけだ。もっともラウラ。お前の行為があまりにも手に負えなかった場合は最悪消すことになってたぞ」
「消すって…」
「大袈裟なんかじゃねぇぞ一夏。学園に来た時のこいつは明らかに目を見張る行為ばかりだ。その点で言えばシャルロットも危なかった」
「…………」
シャルロットは冷や汗をかいている。
「心配するな。手に負えなかった場合だったからな。と、質問に答えてなかったな。2ヶ月の期間は本当だ楯無。稼働時間はふつうじゃないがな」
「…ちなみにどのくらいなのでしょうか?」
「…少なく見積もって300時間は超えてるだろうな」
セシリアの疑問に仭はあっさり答える。
『!?』
「なっ…そんな2ヶ月で300時間なんて…」
「できるわけない、か?約60日の間1日8時間以上やってれば普通に超えるだろうが」
『……………』
普通じゃない、仭のやってきたことを知らない皆は驚くが、仭の強さにどこか納得したような感じもした。
「でもよく1日8時間以上やれたね」
「いや?最初は訓練が厳しすぎて1時間も経たない内にダウンしたことだってあったし、何度も挫折しかけた。後半は10時間とかやってたな。仕事も放ることだってあったから大変で大変で…」
『……………』
「まあ、俺のこんなみっともない話はこれくらいでいいだろ。で…一夏と箒についてだったな。お前達も少しは未来のことを考えておけ。特に一夏、お前このままじゃ最悪実験体、委員会の傀儡になる可能性があるぞ。箒も考えておけ」
「か、考えておく」
「わかった。だがそういう仭はどうなのだ?」
「俺か?」
「?お前も一夏と同じような存在になりうるだろう」
「確かに…」
「そういえばそうですわね」
「いくら組織に入ってても…」
「問題が起こるでしょうからね」
「いや、俺はそんなことには縛られない。組織に入ると(代表候補生は別だが)自由国籍権が貰えるからな。『男でISを動かしたから自由国籍権が剥奪』なんて理論が通るわけがなかろう。だから俺はそういう問題には入らない。『
「…マジで考えとく」
「頼むぞ。お前は女達から良い印象を持たれてないんだからな。…いや俺も…後箒もか」
「私もか?」
「違っちゃいないが、正確にはIS操縦者から良く思われてない。…かくいう組織にも良く思ってない奴がいる」
「それは……」
「わかってるだろう。お前が束さんから紅椿を受け取ったからだ」
「………」
仭の言葉に箒は俯く。
「俺や一夏のモルモットと違い、代表候補生でもないのに、だ。言ってみりゃお前はセシリアや鈴、簪達のように努力をしたわけでもなく、たかが姉妹だからという理由で手に入れた。…手に入れたものは仕方がない。故にお前はもっと専用機を持つという意味を噛み締めろ」
「………」
「仭…それは言い過ぎじゃ「言い過ぎ?ふざけるなよ一夏」―――!!」
一夏はそう言うと仭の気迫に押される。他も見るとダイン以外も怒りを表しているようだ。
「ISっていうのは平たく言えば人を容易く殺す力なんだぞ?専用機持ちってのはそんな力を保留、拳銃を携帯してるようなものなんだぞ?もっとISの危険性を把握しろお前ら」
『……………』
仭に言われた1年専用機持ちは俯く。一夏は怒りを表してる仭を見て改めてISの危険性について理解した。
「…そのくらいにしておいて仭君」
「…ああ、悪かったラナ」
すると仭は楯無と千冬にアイコンタクトを送る。
「…で一夏達、話は終わりだ。俺が何者か理解しただろう。だからここまでだ」
「あ…仭」
「?何だ簪」
仭の言葉を聞いて保健室から出ようとした一夏達だったが、簪が仭に話しかける。
「その…仭のことなんだけど…」
「?話せたら話してやる。言ってみろ」
「ラウラが前にあなたのことを呼んでた『ベルセルク』って、あれはどういう意味なの?」
『!』
「ああ、あれか…。楯無に聞いてたと思ったが、普通に俺のコードネームだよ」
仭は一夏達にそう話す。
「ではお前達はとっとと部屋に戻れ」
「はい…って千冬ね…織斑先生は?」
「私はこの馬鹿に説教をしてやらなければならん」
「!?勘弁してくださいよ…」
「お姉ちゃんは?」
「ああ、私はちょっとラナに話があるから」
「あら?私はないんだけど?」
「「…………」」
「…帰っとけ簪」
「う、うん」
睨み合う2人を他所に、仭に言われて簪は保健室を出る。
「おっと待ってくれお嬢「「黙れ!」」―――グハァッ!?」
ダインがシャルロットに対して話しかけようとすると、レイラが仭にアイコンタクト。そしてラリアットを仭が前方、レイラが後方からくらわせる。
「ぐっ、な、何も言ってなかっただろ…?」
「あなたが女子に話しかけるとろくなことがないわ」
「んな不条理な…」
「ああ、こいつのことは気にしなくていいぞお前ら」
「えっ、う、うん…」
特に話しかけられたシャルロットは動揺していたが、仭に言われて部屋から出て行った。ダインはまだ倒れている。
そして少し沈黙が走り
「…………行きましたね」
「ああ、まったくお前もあんまり言い過ぎるな」
「事実だから仕方ないでしょう。このままにしとくと本当に一夏を殺しかねないですから。一夏が悪いときもありますが、あいつらはやりすぎです」
「…………」
「まあ、この話はここまでにしとくとして…本題に入るとしましょう」
仭のその言葉に仭達以外に残っている楯無と千冬は真剣な表情になる。
「亡国企業の情報は本当にごく僅かなことを了承してください」
「構わん」
「…まず亡国企業のISについてですが、確認しただけですが6機。臨海学校の俺、アリィとレイラをそれぞれ襲ったIS、共に情報はなし。今回襲ってきたアメリカから強奪されたアラクネ、それと名前だけですが
「詳細はわからなくとも他にISがあることはわからなかったのか?」
「はい。国は強奪されたことなんて発表するわけないですし、俺達でも巧妙に隠されていてわからないんですよ。それにどうやら開発もしてるみたいで」
仭の言葉に周りも頷く。
「まあ、一夏の手でアラクネは半壊、阿修羅も4割方破壊してます。暫くは修理に専念するでしょうね。しかしまだ動けるISは少なくとも4機」
「おそらく今後もISを強奪しに来るでしょう。その点ではまた学園を襲撃してくる可能性があるので警戒を」
「わかった。ひとまずそんなものでいい」
「どうも。…ああそれと…」
「?何だ?」
「ちょっと亡国企業に関わっている可能性がある国について話そうと思いまして…アメリカ、ドイツ、フランスにその可能性があります」
「「!」」
「アメリカは福音事件の件でさらに高まりました。フランスは最近ですがね」
「…わかった」
「更識家も使って調べてみるわ」
「頼むぞ楯無。…千冬さん」
「何だ?」
「此方が教員を疑ってると言って、あなたがそんな者はいないと言ってましたが、一応疑う理由もそれなりにあるんですよ」
「…まさか内通していたのか?」
「いいえ、そういうわけではありません。…IS委員会にも内通者がいる可能性があるからです」
「!」
「何?」
仭の言葉に2人は驚愕を示す。
「実は亡国企業の任務に出向く場所の尻尾を掴んでも、逃げられる理由がそれもあるんです。…まるでどんな手で此方が来るのか知ってたかのように…」
「それで事前に報告をしている委員会が怪しいと?でもそれならそっちにも内通者がいる可能性もあるんじゃない?」
「そんなこと想像ついてるに決まってんだろ。盗聴だって警戒してる。此方を調べても何も出て来なかったから消去法でそうなった可能性があるわけだ。実質誤認情報を報告して、此方が任務を行ったときには成功し、人員を引っ捕らえたときもあった。まあ、その人物は他の仲間に撃ち殺されたがな」
「なるほどね」
「他にも捕らえたり、追い詰めたりしても自害したり、何も知らない奴や情報をそこまで知らされてない奴が多いんです」
「…つまり奴らのことを知るなら専用機持ちを引っ捕らえた方がいいと?」
「そういうことですね。が、それが1番難しいことは今日よぅく身にしみてわかったでしょう」
「…………」
「俺やアリィ達にあまり任せ過ぎないでくださいよ。此方を毛嫌いしてる教員や上層部がうるさいでしょうから」
「…ああ」
「本当に頼みますよ?任されたら此方にもそちらにもプライドが高い女達が本当にうるさいんですから」
「わかったわかった」
「ふぅ、では話はここまででよろしいでしょうか?」
「ああ」
「わかりました。ラナ達も…」
「ええ、もう帰るわ」
「ほら、ダインも行くわよ」
「ちょっ、待ってくれ。まだ首辺りが痛む」
ラナの言葉にソフィア、いつの間にか復活していたダインは保健室から出て行った。千冬も出て行く。
「(あの表情。やはり俺が学園に来た理由辺りか?納得してない所あるな)ん…俺はこのまま保健室で休ませてもらうとするか」
「あっ、仭君」
「何だ楯無?」
「まだ聞いてなかったことがあったんだけど…」
「何だ?」
「あなたのIS…第4世代型でしょう?どうやって開発したの?」
「その件か…確かに話しておいた方がいいだろう。まず束さんは関わっていない。そして単一仕様能力については本当にわからん」
「え?」
「何でなのかは本当にわからねぇんだよ。実際初期移行したときに随分とISの状態が変わって、単一仕様能力がついてたんだ」
「…まあ、あなたはこんな嘘はつく人じゃないしね」
「そう言ってもらうと助かる。で、展開装甲についても半分わからん」
「半分?」
「初期移行したときにあの剣斧が武装に加えられてたんだよ。それが展開装甲で、今持ってるブレードはそれを何とか作れないかと模倣した物だ。一応できたにはできたが、完全にエネルギーに転換すると破損するし、ON/OFFもスムーズにいかないというのが現状だ」
「なるほど。つまり結局わからないのね?」
「実質同じような作りでISを製造したが、同じようなことは起こらなかったしな」
「わかったわ。それで話は変わるけどもう1つ」
「まだあるのか?」
「相部屋の件だけど…」
「続いてたのかよそれ」
「一夏君は、1人部屋になったわ」
「はっ?」
「誰にも触れられずに王冠が破壊されたからね」
「……………で、俺は?」
「えい!」
するとアリシアが仭の左腕へ触れる。
「何だ?」
「あっ、じゃあ仭君はアリシアちゃんと同室ね」
「何故?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
「IS待機形態である黒い腕輪に触れれば仭君、あなたと同室になれるのよ」
「…そういやどうやられたら同室にさせられるか聞いてなかったな」
「あっ、ちなみに「もう何も言わんでいい。わかったから」――あらそう。じゃあ部屋の荷物をまとめて引き上げてね」
「ああ、ここで少し休んでから一夏の部屋行ってまとめるとする」
「わかったわ。じゃあよろしくね。一応ルールだからきちんとやらなくちゃ示しがつかないのよ」
「きちんとって言うならこういうのは本人に許可をとってからにしろよ」
「次からはするわよ」
(絶対に嘘だ)
「じゃあねー」
「!って会長!それじゃ私の部屋はどうなるんですか!!」
そう言って楯無部屋から出て行き、レイラは楯無を追いかけていった。
「じゃあ私も部屋に戻ります大尉」
「ああ」
そして仭1人になり、ベッドへと近寄ると倒れこむ。
「ふぅ……何…とか誤魔化せたようだな…」
顔に疲労を仭は浮かばせ、汗もかいていた。
「やっぱりね」
「!ラナ…」
扉の方へ声が聞こえ、仭がそこを見ると帰ったはずのラナがいた。
「剣闘士の第二形態移行した後の能力を使ったんでしょう。それならあの副作用が出ててもおかしくないと思ってね」
「デメリットという方が正しいがな。…お前だけか?」
「ええ、忘れ物をしたとでも行って確認しに来たわ。案の定だったけどね」
「ちっ…まったく勘の鋭い奴だ」
ラナは扉を閉め、ベッドに寝込んでいる仭の近くへと寄る。
「…大丈夫なの?」
「疲労…というレベルだな。限界以上に使っていたからな」
「…その力は楯無やアリィのエネルギーも使うことができる。けど普段使うはずのないエネルギー、それを無理矢理のような形で纏ってるんでしょう?」
「ああ…能力ではあるが、そう何度も使えないのが現状だ。その際に俺にも被害…正確には負荷がかかるからな」
「その力を使って私と戦い続けたときも倒れたからね」
「あの時はその能力を初めて使ってみたからだ。自身へ異常が出てきたのは戦っている内にわかってたんだが、今回また使ってはっきりわかった。自身に影響が出ずに戦い続けられる制限時間は約5分…長くて約10分」
「…最長は?」
「さぁな。だが…10分以上使えば肉体への負荷が強まることだけはわかる」
「…………」
「わかってる。なるべく無茶はしない」
「そう言う人は結局無茶をするような気がするけどね」
「その時は諦めてくれ」
「まったく…」
「…そろそろ本当に帰っとけ。楯無と喧嘩になるなよ」
「はぁ、わかったわ」
「さて…俺も少し眠らせてもらうと…しよう…」
仭はそう言うと同時に瞳を閉じ、少し経って寝息を立て始めた。ラナは襲撃者によるダメージや千冬との戦闘もあって、疲れているのだろうと思いながら掛けられている布団を身体にしっかりと乗せてやり、再び保健室から出て行こうと扉を開けた。
「…無茶はしすぎないでね」
そう言って彼女は完全に出て行った。その言葉はすでに寝入っている仭には当然届いていない。完全に1人になった保健室で、仭の寝入った姿だけが残った。
今回話したことをまとめると
・仭が学園へ来たもう1つの目的
・仭のISを動かした本当の時期
・仭のIS稼働時間
・一夏と箒と仭の状況
・亡国企業のIS情報と内通
・剣闘士について
後は第二形態移行した剣闘士の能力のデメリットですかね。正直誰に来させるか悩みました。