IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~    作:狂戦士

83 / 108
『IS-refrain-』の作者ソンさんとのコラボ短編です。


短編 白と黒の狂騒 復讐者が憧れた者

“俺は、いつかお前を越えて見せる”

 

 昔そのようなことを親友に言われたことがあった。

 越える――その言葉を言った彼はもういない。

 何かが変わり戻ってきたと思っていた。

 何かが抜けて帰ってきたと諦めていた。

 その言葉を言った者が――今も縛られて続けているのを知らずに。

 

 

 

 

 そこはアメリカのとあるところにある地図に無い基地(イレイズド)という場所。

 そこで軍属している少年、研究員姿の黒崎仭は同じ軍属している女性と話をしていた。

 

「…ではこれで」

「ええ、ありがとう」

「………」

 

 そう言って女性は行く。

 やはり礼を言われるのは気分がいいと仭は思う。

 ISという女性しか使えない兵器が出現したことにより女尊男卑の世になった。

 それは男である仭も例外ではない。

 IS整備の仕事の手伝い等を行っているが扱いは当然ながらよくない。

 純粋に礼を言ってくる者は少なく、ましてや少年である仭に言う者などほぼいない。

 

「…しかし、それに奴は負けずにがんばっているだろうか」

 

 そう仭は昔の旧友を思い出す。

 しかし彼はそれを思い出すたびに、何とも言えない感情に包まれる。

 その旧友は第2回モンド・グロッソ決勝戦当日、謎の組織に誘拐された。

 そして無傷で救出されたが、後日会って彼は違和感を覚えた。

 外見に違和感があったわけではなかった。

 少し変わったように見えるのは誘拐でのトラウマなどによるショックなどだろう。

 彼は旧友の姉にそう言われ、周りにいた人物も納得した。

 彼もそうだと思った。

 

(だが…やはりあの頃のあいつはもういない。そう考えてしまうな…)

 

 しかし彼は納得はしていたが、違和感だけは拭えされなかった。

 そしてそれ以来旧友は姉に、世界最強の姉に憧れ始めた。

 何もおかしな話ではない。

 いつかはこうなるであろうと彼も思っていた。

 しかしそれでも何故かあの頃の旧友はもういないと考えてしまう。

 

(何を思っているんだろうな…嫉妬してるわけでもないというのに…)

 

 言いようもない自分でもわからない感情を胸にしまう。

 彼は仕事を続けようと呼ばれていたところに行こうとしたとき

 

「!?何だ?」

 

 突如爆発音が響いた。

 銃弾の音や悲鳴などが聞こえ、すぐに襲撃だと理解した。

 

(しかし仮にもここは軍だぞ?そうやすやすと……内通者か。となると―――)

 

 仭はこのような非常時のさいに、当然対処する訓練されている。

 もっとも覚えても逃げ出したり、冷静に対応できない輩もいるが仭は冷静だった。

 

(襲撃者はもう任せるしかないとして内通者の方だな…目的はおそらく今研究されているあのISが目的だろう。だとすると担当している……!!よりによって!!)

 

 仭は研究服の白衣を脱ぎ、ナイフや銃が一応仕込まれている服を露わにしながらIS整備室に向かう。

 そこにあるISは仭の両親が担当しており、武器は持っていなかった。

 当然奪いに来るであろう者がISを装備していない確証はないどころかかなり低い。

 仭は万に一つの可能性にかけてそこに向かった。

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 仭はIS整備室についた。

 様々な機材が厳重に置かれていて、それに注意し、気配も消しながら奥に向かう。

 そして置かれてあった機材の四角からISの一部分を見つけ、一瞬安堵した。

 しかしこれからISを奪おうとする可能性もあり、再び奥に向かうと彼は絶句した。

 炎が辺りを蹂躙する中、両親はいたが…瓦礫に潰されていた。

 仭が急いだ理由は両親が非武装なだけではなく、機材のことと床や天井が脆くなっていたことだ。

 故に襲撃によって、この場所が崩れる事故を想定してしまったためである。

 

「っ……」

 

 すぐに近づいて両親の首元に触れるが…手遅れだった。

 その時に何者かが近づいてくる音に仭は気付かなかった。

 近くまで来るとようやく気付き、近づいてきた人物を見る。

 白いロングコートと白の長髪、そして血まみれの少年であった。

 

(まさか…だがISを装備した者達は…)

 

 ISを装備した者と1人も遭遇していないことは考えられない。

 ましてや逃げられることも考えられない。

 すると消去法でもっともありえない、だがそれしかない考え、生身でISを倒すという考えに達する。

 

(…まあ、そうなると生き残りは俺だけと考えるべきか……)

 

 軍の者達も弱くはないが、それは同じ生身通しの話である。

 ISに匹敵する者であり、武器も装備してる者に敵うはずがない。

 そう仭は納得し、ゆっくりと立ち上がった。

 仭が冷静さを取り戻したのは早かった。

 それは吹っ切れたわけではなく、床にある血文字を見たからである。

 ただ自分の名前と生き残れと、だけ書かれていた。

 どちらが書いたのかはわからなかったがその字を見て冷静さを少し取り戻していた。

 だが血まみれの少年と会ってもう生存を考えてはいなかった。

 そしておそらく狙いであろうISに近づく。

 その近くにあったドラム缶、それもオイルが入った物が仭の本当の目的だった。

 仭は視線を相手がISに動かしたその隙をついて懐にある拳銃で発砲、爆破しようと考えていた。

 そして仭はISに触れた。

 

「このISが目的か?」

 

 そう言った瞬間、予期せぬことが起こった。

 男に展開できないISが――仭が触れたとたんに起動した。

 そのことに当然ながら仭は驚くが、すぐに相手を見る。

 殺気が向けられていて、左手に持った短機関銃を向けていたからである。

 

(!?…理由は知らないがISを起動させたのだから、普通は俺を気絶させようとしてくるだろ?素人なのだから…)

 

 だがそんな事はもうどうでもいいと仭は思った。

 ともかくこれで戦える、両親の願いのためにあがくことを考え、戦闘態勢になる。

 そして短機関銃が火を吹き、仭を襲おうとするがそれを避ける。

 しかしそれを読んでいたのか相手の右手には既に銃が構えてあった。

 仭はコンマとも言える時間の間に考えて、あることを試すことにした。

 武器の展開、実際にしたことは当然ながらない。

 だがISを整備してることで出し方については知識として知っていた。

 銃の照準を合わせようと相手はしており、どの道隙をついて攻撃するのは今しかなかった。

 

(一か八か…)

 

 結果……ナイフに近い短剣を出すことに成功した。

 とにかく仭は発砲されるのを防ぐためにそれを相手に投げた。

 それが顔面を刺す直前に相手が避け、これには仭もはんば驚いた。

 が、驚きに浸ってる間はなく、仭はその隙をついて突っ込む。

 その間に再び武器を展開、今度はブレードを展開した。

 

(っ、対応が速い!)

 

 相手は背後に下がりながら、左手の短機関銃で撃ってくる。

 かわしきれないと踏んで、とにかくできるだけブレードを盾にして防いだ。

 そして仭は大きく下がる。

 仭は相手が次が何でくるかを考えていた。

 ここも火が燃え盛っている。

 そのためこれ以上の遠距離攻撃はしないと考えた。

 

(くっ…まずいな。ISは空気までは防いでくれん…)

 

 火が周りに燃え盛っているため当然煙も出ている。

 マスクをしてないため、煙を吸ってしまっているため酸素が足りず仭は動きが鈍くなってきている。

 よって生身で煙を吸っているにも関わらずに平然としてる相手を見て仭は内心驚いていた。

 すると相手が白兵戦で決着をつけるとしたのか、両手にナイフを展開する。

 武器はISと同じように展開していたのかと思いながら仭も短剣を両手に展開する。

 

(やはりな。これ以上周りに引火させるより白兵戦で仕留める方がいいと考えたか)

 

 そして相手が踏み出すと同時に、仭も踏み出す。

 刃が交錯した。

 四つの刀身が鎬を削りあい火花を散らす。

 現在の優勢は相手へと傾いている。

 やはり相手はこの煙が充満してきている中で平気なようであった。

 このまま続けてはやられる。

 そう考え仭は再び賭けに出ることにした。

 交戦をしている中で仭は何故か相手の動き、というより狙いどころが直感でわかったからである。

 刀身が触れ合う。

 その瞬間を狙い仭は短剣を離す。

 どうやら相手はその意図が読めなかったようで、一瞬隙ができる。

 その瞬間を当然逃すこともなく、懐に入って相手の胸に手を添える。

 すると相手は吹き飛ぶ。

 

(どうやらまだ技術は衰えていないようだ)

 

 中国拳法の中に剄と呼ばれる技術がある。

 今しがた仭が使ったのは浸透勁という技術。

 その名の通り相手の体内に衝撃を与えるため、IS装甲などはあまり意味をなさない。

 相手は油断していたこともあり、大きく吹き飛んで壁へ激突。

 すると仭にとっても良い意味での想定外のことが起こった。

 激突した弾みにドラム缶が倒れ、オイルが漏れる。

 そして漏れ出たオイルは火に引火し、その火はオイルを辿って行く。

 火がとうとうドラム缶へと着火し爆発、さらにその衝撃で天井が崩落し、相手に降り注いだ。

 

(……やったか?)

 

 生身でISを倒す者、それでもやはり生身で、全身から至る所が出血している。

 さすがにと仭は一瞬気を抜いてしまった。

 それを待ってたとばかりに満身創痍の相手が右腕でナイフを展開し、投擲してくる。

 

(何!?)

 

 仭は当然反応が遅れ、それでも何とか頬を切り裂かれる程度にさせる。

 その後相手は瓦礫を吹き飛ばす。

 満身創痍の筈である相手を見て、仭はここで仕留めなければ、自分は殺されると完全に確信した。

 

(…その目、昔見たことがあったな)

 

 相手の目を見て仭はそう思う。

 こういう者は非常に厄介だと。

 

(…こっちももう勝ったとしても生き抜くことさえ難しそうだ)

 

 これ以上近づいて中国拳法の剄を使うことは不可能、そう判断してブレードを展開。

 一撃に賭ける。

 相手はすでに右手に銃を展開している。

 しかし左腕は大きく負傷をしており、まず武器も持てないと同時に判断した。

 勝算は五分、コイントスでいう表か裏。

 先に一太刀を浴びせるか。

 それとも先に銃弾を浴びされられるか。 

 ぎりぎりだった。

 

(さっきのような相打ちはおそらくもうない。どっちが速いかの勝負…)

 

 仭はすでにブレードを手に、相手に突っ込んでいた。

 ISブレードを振りかぶる。

 炎の閃きによる紫電が、刀身を艶めかせる。

 相手も右腕で照準を合わせていて後は放つだけ。

 

 だが、二人は気づいていなかった。

 先ほどの衝撃と戦闘の余波で整備室全体が崩れかかっている事など知るはずも無い。

 仭がブレードを振り下ろすその刹那――

 

 整備室全体が崩落して、二人を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

「……!…ここは…?」

 

 仭は気が付くとストレッチャー(動けない怪我人や病人を搬送するための器具)に寝かされていた。

 見ると身体のあちこちに包帯が巻かれており、手当てを施されていた。

 激痛が響く中、自分は生きている。

 誰だかは知らないがとりあえず自分に話を聞くため手当てを施したのだろうとそう判断した。

 すると誰かが自分を見ているとやっと気付き、そちらを向いた。

 

「気が付いた?」

「……あなたは?いや、それより助けてくださり…ありがとうございます」

「いいえ。それで私はラナ・バークレイズ。軍人よ」

 

 腰辺りまで伸ばしている赤髪をなびかせながら言う。

 

「そうですか。…で俺をどこに連れて行くんですか?」

「察しがいいわね」

「それはまあ」

「…その前に聞くわね。あそこで何があったの?」

 

 それを聞かれ仭は起こったことを話した。

 自分がISを動かせることも含めて。

 おそらく自分はISを展開しながら倒れていただろうし、話した方がいいと考えたからである。

 ISを男が動かせるというのは前代未聞。

 となるとモルモットで扱われるだろうと理解してなお、話した。

 頼る者さえもう誰もいなかったからである。

 

「ISを生身で倒す者?そんなのが……それよりどうしてISを動かせるの?」

「………」

「…言い方が悪かったわね。あなたは人体実験でもされた?」

「…いえ、何故ISを動かせたかはわかりません」

「そう。偶然なのね…」

「…俺をこれからどうしますか?」

「……私達の軍に来ない?当然働いてもらうとしてよ」

「はい?」

 

 その言葉にさすがに仭は唖然となった。

 

「信じてもらえないだろうけど、あなたを実験してどうこうしないと思うわ」

「…何で言い切れるんです?」

「んー、何でかしらね?」

 

 そう笑顔で返されてしまったため、どうすればいいか困る仭。

 

「…まあ、その言葉を信じてみましょう」

 

 どうせここで断ったら、この先どうなるかわからない。

 だったら信じてみようとそう決めた。

 

「わかったわ。とりあえずISを動かしたことは…世間には知らせないよう上に頼むから」

「そうしてくれるとありがたいです」

「あっ、でもISを使っての任務を回されちゃうかもしれないけど…」

「その時は諦めます。実験をされたり世間に騒がれるのさえ防げればそれでいいです…」

「わかったわ」

 

 本当に大丈夫だろうかと、今更ヘリに乗せられていることに気付きながらそう思う。

 

「…………」

 

 整備室で激闘を繰り広げたあの白いロングコートを着た者の姿。

 何故か懐かしいとも考え、一部の動きに見覚えがあった気がする。

 何故だろうか。

 もし自分が隣にいる少女の言う軍に普通に生きられるのならば。

 また会うこともあるかもしれないと考える。

 生きていればの話であるが。

 

「――でその子はね―――」

 

 先程からまだ軍に入れるとも決まったわけでもないのに軍にいる人物を延々と話す少女。

 話してくる内容を聞き流しながらとにかく両親の最後の頼みをなしとげよう。

 そう考えながら仭は眠りに落ちた。

 

 とにかく今は眠ろうと。

 

 

 

 

 

 

 仭が居た軍を襲った白い長髪で白いロングコートを着た人物、アインはアリーナを見渡す。

 篠ノ之箒、撃墜。凰鈴音、撃墜。セシリア・オルコット撃墜。シャルロット・デュノア、撃墜。ラウラ・ ボーデヴィッヒ、撃墜。

 残っているのは織斑一夏と黒崎仭の二名。

 

「……ようやく、思い出した。何でオレはお前を忘れていたのか」

「何だ?何を言っている?」

 

 するとアインが仭に言葉を告げる。

 

「オレはただお前を越えたいと願っていた。憧れるばかりで、力を求めなかった。……まさかこんな末路で再会するとは思わなかったけどな」

 

 そう言うとアインを黒い泥が、その総身を包み込んだ。

 そして仭お前を越えたい、その言葉に昔誰かに言われたことを思い出し、

 

「まさか―――そんな―――」

 

 アインの正体が■■だと確信した。

 正体を見破る手掛かりはいくつもあった。

 地図に無い基地(イレイズド)でのアインの動き。

 これまで会ったときの言動。

 そして一夏への異常なまでの復讐心。

 だが察しがついたとしても仭は頑なに認めなかったであろう。

 否、手掛かりがあったからこそどこかで認めようとしなかったのかもしれない。

 仭が今衝撃を受けているのは、隣にいるのが偽物だと知らされたことではない。

 そして敵が親友だったことでもない。

 アインの正体が■■だったということである。

 すると黒い鎧を纏ったアインが泥から姿を現した。

 

「お前が――――本物の織斑一夏だったのか!?」

 

 長かったはずの白髪が少年らしい髪型になり、織斑一夏と同じ顔になった顔を見て吠える。

 今、隣にいるのが偽物だろうということは、仭が軍に入って調べられた。

 確証はなかったが、隣にいる一夏は本物ではない可能性が高いと思っていた。

 だが一夏でなかったにしろ友には変わりないし、彼は彼とそう思っていた。

 そしてその考えを持ってから、本物の一夏は死んでしまっただろうと考えていた。

 故にアインの正体が本物の一夏だったことの衝撃は大きかった。

 それは生きていてくれたことでなく…変わり果てた姿だったから。

 

(…これがお前の目的、いや答えか?一夏……)

 

 右手に鮮血の刃が握られている。

 左手の篭手には、溢れ出すエネルギーが渦巻き始めていた。

 この全てが運命によって手繰られた答えであるのなら。

 この戦いの結末ですらも、また必然なのだろう。

 ならば――止めなければならない。

 友として、その答えの結末に意味はないことをわからせるため。

 

「――」

 

 血のような色をした瞳で見据えてくる。

 ブレードを構えた。

 かつて彼と何度も試合を交えていたかのような時の構えで。

 彼が自分を超え、隣にいる者から己を取り戻すために。

 ならば――命をかけて止める。

 今刃を交える相手のためだけに。

 

「あの時のお前に――オレは追いつけたのか」

 

 同時に足が地を弾く。

 黒き弾丸となって、彼は刃を振り上げる。

 

「お前……これしかなかったのか……」

 

 ISブレードが刃を交える。

 刃が激突し、血のような火花が辺りに散った。

 




『IS-refrain-』の本編にオリ主(仭)を加えた短編です。ソンさんの方にもアインサイドで出ていますので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。