IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第73話 生徒会の貸し出しと高速起動
月曜日の放課後。俺はテニスコートの脇に憂鬱な気分でいた。今日からついにはじまった『生徒会執行部・織斑一夏貸し出しキャンペーン』がとうとう始まったからである。
やり方はビンゴ形式で、1位を獲得したのはテニス部だった。で、今テニス部では『織斑一夏のマッサージ権獲得トーナメント』が開催されている。…それが俺の憂鬱な気持ちである原因だ。
「はあああっ!」
「負けるもんか~!」
「セシリアが自慢していたマッサージを絶対に受けてやる!」
セシリアの仕業かよ…。
…元凶のセシリアも何か燃えてるが…何と言うか楯無さんにコーチを受けて貰う前の…そして絢爛舞踏が使えずに悩んでた箒のような感じがする。
(そういや最近、アリーナの使用時間ギリギリまで1人で使ってたみたいだからな)
仭とかも個人特訓をやる日はあるらしいが、セシリアは何かに苦悩してるような節がある。
それからセシリアは順調に決勝戦へと駒を進めて見事にストレート勝ちを決めた。
*第3者サイド
「で、終わりか……」
そのころの仭。一夏と違って仭は生徒会に普通に所属している。そんなわけで、一夏のように『生徒会執行部・織斑一夏貸し出しキャンペーン』という本人の意思とは関係なく行かされるものとは無縁な筈だが、生徒達から一夏だけなのかとうるさかったこともあり、『仕事や都合がなく、その時に行ける場合であるならば』という条件で、仭も部活に派遣されることになった。
そして今日たまたま仕事や都合がなく、行ける状態でもあったため仭は一夏と同じように派遣されている。…ビンゴで2位を獲得した柔道部だ。
「ちょ…黒崎君強すぎるよ~~」
「俺はやってる内に体力奪われていたんだがな」
1人ずつと仭は乱取り…練習をしていた。仭に相手をして欲しいという生徒がいて、そして我も我もと来たため『背中をつかせたら、その者にマッサージを後でやる。ただし捨て身技は除く』という条件になってやることにした。
それに部員が全員やる気を出してしまい、顧問が見るなかで相手をしていくも全員負けた。仭が力でねじ伏せたわけでもなく、単純に返し技や、動いて重心を崩したところを狙って相手を倒している。倒されかけたことも当然あったが、後ろに倒されそうになったときは巴投げに切り替えたり、背負投で倒されかけた時は足から着地、足を刈られて倒されかけた場合は前受身で受け身をとるなどして逃れた。
命がけの戦いも経験してる仭は、そう簡単に敗れたりはしない。力の差が違うと卑怯と言う声もあったが、やると言ったのは女子達の方であり、基本力ずくで投げるなどはしていないということで一蹴した。
ちなみに道着は本来マネージャーとして派遣するべきであったので、当然用意されていない。そのため道場にあったのを使わせようと部員はしたが、仭は自分の道着を持っていた。一夏との(生身での護身術のための)練習用に着ていたものである。
「はぁ、これで終わったようだな」
「じゃあ次は寝技を」
「……………」
熱心なのか、それともただ単に自分とやりたいのか、自分より強いと思い知らしたいのか複雑な思いの仭だった。
部活終了後、テニス部の方で一夏のマッサージを受ける権利を得たセシリアは一夏の部屋でマッサージを受けたが、途中で眠ってしまった。で、このまま寝かせようと思った一夏だったが千冬に怒られることを理解し、起こして共に説教沙汰になるのを避けられたのは別の話。
「はい、それでは皆さーん。今日は高速起動についての授業をしますよー」
授業、第6アリーナに1組副担任の真耶の声が響き渡っている。
「この第6アリーナでは中央タワーと繋がっていて、高速機動実習が可能であることは先週いいましたね? それじゃあ、まずは専用機持ちの皆さんに実演してもらいましょう!」
真耶がそう言って手を向けた先には一夏、仭、セシリアがいた。
「まずは、高速機動パッケージ、ストライクガンナーを装備したオルコットさん!それと通常装備ですが、スラスターに全出力を調整して仮想高速機動装備にした織斑君と黒崎君!この3人に1周してきてもらいましょう!」
1組の生徒達から応援の声が聞こえ、一夏とセシリアは軽く手を上げ応えるが、仭は控えめだった。
「えっと仭」
「何だ一夏?」
「このバイザー、モードを切り替えなきゃいけないんだよな?どれだ?」
高速機動補助用バイザーのことである。これを付けていなければ、速度に視界が追いつかず、何かに激突したり、酔ったりするなど危険である。当然3人共付けていた。
「ああ、それか。それは『一夏さん、それでしたらモードをハイスピードモードにするのですわ。それと各スラスターを連動監視モードにしますの』―――……」
「わかった。こうだな」
仭の言葉を遮り、チャネルで言ってきたセシリアの指示で、一夏はバイザーのモードをハイスピードモードに切り替えて、スラスターを連動監視モードにすると、準備を整えた。
「酔わないよう気をつけな」
「ああ…にしても、仭でもやっぱバイザー付けるんだな」
「俺を何でもできる奴と思っちゃいねぇか!?組織で学んだのはIS戦闘と、知識ぐらいだ。こういういのは専門外なんだよ」
「専門外って…」
「まあ、バイザーしないで高速機動できる奴も組織にいる。目が高速移動に慣れてるから」
「……………」
『お2人共、そろそろ始まりますわよ』
「ああ、悪い」
「失敬」
そうこうしてる内に3人は空に上がっていた。そしてスタートの合図を3人は待つ。
「では、……3、2、1、ゴー!」
真耶のフラッグで3人は一気に飛翔、そして加速をして音速を突破する。
『お先に失礼しますわ』
『ちっ、速い!』
セシリアは速度を上げていき、一夏と仭に距離を開ける。そして仭は普通のISより速い方であるのだが、高機動型に引けを取らない機動力を持つ白式と、パッケージを装備したブルー・ティアーズに追いつけていない。
剣闘士は単一仕様能力のエネルギーを使うことが前提とされてしまっている。そのため戦闘ではエネルギーが溜まらない限り、不利ではあるのだが仭はそれを中国拳法など、武術で補っている。
が、現在の高機動では攻撃も受けてないのでエネルギーは溜まっておらず、妨害なしの実演なため、武術もほぼ役に立っていない。スラスターにエネルギーを全振りした剣闘士を装備した仭も、カーブの手前で速度を落とさずに曲がるなどしたが、地上へはセシリアと一夏が同着、その数秒後に仭が戻ってきた。
「はいっ、おつかれさまでした!3人ともすっごく優秀でしたよ~」
真耶は嬉しそうな顔で3人を褒める。
「はぁ、やっぱ追いつけんな」
「いや、仭もがんばった方だろ」
「…何か腹立つな」
「!?」
当然一夏に悪気はない。2人がそんなことをしていると、千冬がパンパンと手を叩いて全員を注目させる。
「いいか。今年は異例の1年生参加だが、やる以上は各自結果を残すように。キャノンボール・ファストでの経験は必ず生きてくるだろう。それでは訓練機組の選出を行うので、各自割り振られた機体に乗り込め。ぼやぼやするな。開始!」
毎年の恒例行事であるキャノンボール・ファストは本来、整備課が登場する2年生からの参加のイベントだが、今年は予期せぬ出来事に加えて専用機持ちが多いことから、1年の時点で参加することになった。訓練機部門はクラス対抗戦となるため、景品が出る。
「よーし、勝つぞ~」
「お姉様にいいとこ見せなきゃ!」
「勝ったらデザート無料券!これは本気にならざるを得ないわね!」
「…今までは本気じゃなかったのか?」
女子のそんな呟きを聞いて、仭がついボソッと言うが、火のついた女子達には当然の如く聞こえていない。はぁ、とため息をついて仭も行動を開始することにした。動いた仭に一夏もその後を追う。
「一夏、やることがないなら、箒とエネルギー調整の分配でも相談したらどうだ?」
仭は空中投影ディスプレイを出して、エネルギー調整をしていると一夏にそう提案した。
「…そうするか。じゃあ箒のとこに行ってくる」
「一々言わんでいい」
そしてISを展開してる一夏は箒の元へと移動する。エネルギー分配が難しいのか、箒はディスプレイと睨めっこをしていた。
「おーい、箒」
「!?な、何だ一夏!?」
「いや、仭にエネルギー分配の意見交換してきたらどうだって言われてな」
「そ、そうか!では一夏、早速だが紅椿のエネルギー分配を見てくれ!」
「ああ、わかった。…仭も呼んだ方がいいか?」
『呼んだか?』
オープン・チャネルから仭の声が一夏と箒に聞こえてきた。
「…ああ、呼んだ。けどそれで箒の意見聞くのか?」
『お前らの話から口出しする。問題なく進めろ』
そう言われたので、箒は一夏の横に並んでディスプレイを見せる。
「紅椿の万能性はすごいな。展開装甲を背部と胸部解放するだけで高速起動仕様になるんだから」
「しかしエネルギーが足りないのなら意味はないだろう。まったく、これだからあの人の作るものは…」
『…規格外の強さを持ってんだから感謝しろ。てかそんな
「う……」
まあ、確かに。姉妹だから仲良くしろよと一夏は思う。
「絢爛舞踏は?」
「あ、あれはまだ使えない」
「そうか。素人見だけど、紅椿って絢爛舞踏でエネルギー供給するのが前提にされて作ってる気がするんだよなぁ」
『おそらくそう思って間違いないだろう。紅椿の単一仕様能力である絢爛舞踏はエネルギーを増大・倍加させる能力を持っている。剣闘士以上のな。白式や剣闘士のように単一仕様能力を最初から持ってるISは、単一仕様能力を使うことが前提とされている』
「そうなのか?」
『…ならお前は零落白夜を使わずに勝てるか?ブレード1本で?』
「…無理だな」
『剣闘士も基本高い攻撃力を持つ武装は、疵獣咆哮で作られるエネルギーを使わないといけない。…まあ、それでも単一仕様能力を使わなくても戦えるよう一夏は剣術、俺は武術で補ってるわけだが…紅椿は全てが展開装甲だからな…』
「…何が言いたい仭?」
『別に。で、話を戻すが…紅椿は単一仕様能力に、エネルギーを多く使う展開装甲と組み合わせて戦うというのが基本スタイルだろう。…けど今は使えないからそれを考えても仕方があるまい。展開装甲の使い方だな』
「そうだな。で、箒。脚部展開装甲を閉じて、背部だけ展開したらどうだ?」
『それだと弱すぎるだろう』
「ああ、となると展開装甲を全て閉じることを考えたが……」
「『勝負に勝てないな』」
「そうなのだ…」
「うーん…仭は何か手はないか?」
『塩を送り過ぎるのもどうかと思うが…あるぞ』
「教えてくれ!」
『…レースは捨てて、戦闘状態にしておく。それで火力が落ちてる専用機持ち全てを倒せば―――』
「「いや待て待て待て!!」」
仭の言い分に一夏と箒は叫んだ。
『何だ?妨害はありだぞ?足が遅いなら敵を全て潰せばいいだろう』
「いや、何平然と言ってんだお前!?」
『駄目か?じゃあスラスターやらパッケージやらを狙って破壊すれば―――』
「「いや、だから待て!!」」
再び反論。
『うっさいな、お前ら。他の奴のISの出力を落とせば有利になるだろ?妨害はありなんだから反則にはならん』
「いや、だからよ…」
何でそういうことが考えられるんだと、一夏は呟く。
『そもそもお前達が案を寄こせって言ったんだろうが』
「…まさかお前それやる気じゃないだろうな?てか当日どうするつもりなんだよ」
『最初の方はさあな、とだけ言っておく。後の方は…実際は妨害ありだからな。その時こそ剣闘士の効力を完全に発揮させる。だからやっとくのは高機動に慣れとくのとスラスターの割り振りだな」
「…普通妨害なしの方が、いい結果出せると思うんだがな」
一夏のその認識は間違っていない。
『練習で100回やって1位になろうが、それは練習だろ』
「まあ確かにな」
「一夏、お前はどのようにするのだ?」
「俺か?俺は…雪片弐型を封印して、スラスターに全振りだな」
「全振り?攻撃を受けた時はどうするのだ?」
「かわす」
「お前から仕掛けるときは?」
「体術」
『俺から教わったやつか。けどあれ護身用だし、お前は零落白夜を使いこなしてきてるから、デメリットはあまり気にしなくてもいいと思うがな』
「高速起動に集中するためにそうした方がいいと思ってな」
『何だ、一応考えてはいたのか』
「一応って何だ」
『悪かった悪かった。じゃ、俺はもう少し調整するから』
そう言って仭はチャネルを切った。
「…私ももう少し考え詰めてみよう。助かったぞ一夏」
「おう。じゃあな」
「ああ」
そして一夏は調整の他に、専用機持ちの面子(シャルロットとラウラ)の元で、調整(実際にコースを走る)を見せてもらい、実際に真耶とキャノンボール・ファスト想定の高速機動戦闘を行うなどして時間を使った。
キャノンボール・ファスト当日に次話はもう進めます。(楯無と簪の和解や、楯無とオリ主の模擬戦等で)5章が異常に長かったので6章はさっさと終わらせてしまいたいと思います。
で、いきなりですがアンケートです。
第7章…つまり6章が終わった後に原作7巻へと入るわけですが、ここで少々問題。
簪が本来そこで出てきて、色々なるわけですが、この小説では簪はとっくに出ています。
そこで一夏とタッグを組むパートナーをアンケートしたいと思います。
候補は箒、鈴、セシリア、シャル、ラウラ、簪です。(オリ主や楯無は都合と色んな意味で没)ちなみに原作と違い、トーナメントはしたいと思います。いや、します。
原作通り簪でいいって言うならそれでもいいですし、またシャルと組ませろって言うならそれでもいいですのでお願いします。
悩んでるので頼みます。
期限は…終わった時に報告しますので。
では感想アンケート誤字等指摘宜しくお願いします。