IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第76話 撃退と疑問、そして…
「…それで大尉」
「何だ?」
「あの機体はどういう代物です?」
仭の隣に立っているレイラは相手を見据えてそう言う。
「…イタリアの第3世代型IS『スプレマシー・フェニーチェ(
「…面倒ですね」
「はっきり言う。お前のミストゾーン(霧)も炎と相殺されてあまり役に立たんし、素手…武装でやるなら注意しろ」
「了解」
相手が槍を構えたのを見て、2人もそれぞれ構えた。
「くっ…!」
「………」
「セシリア、無茶しないで!」
アリシアがセシリアに叫ぶも、セシリアには届いていない。それぐらいセシリアはサイレント・ゼフィルスとの戦闘に集中していた。
現在セシリアは代わりのインターセプター、相手はナイフで斬り合いをしている。アリシアも相手の攻撃で残ったビット1つなどで援護をするも、かわされたりシールド・ビットで防がれて一向に攻撃が通らない。
「…お前はもう死ね」
「!っ!!」
無慈悲なほどの冷たい声にセシリアは思わず怯む。
「飲まれないでセシリア!」
「っ!――!?」
アリシアの叱咤ですぐに正気に戻ると、前にいたはずの相手は姿を消していた。
「セシリア上!」
「遅い」
「っ!?」
アリシアの声によって、咄嗟にセシリアはインターセプターを上に出すことでぎりぎり防ぐ事ができたが、インターセプターはいつの間にか呼び出していた銃剣『スター・ブレイカー』によって真っ二つにされた。
そして、武器を失ったセシリアの右腕に銃剣が貫かれる。
「あああああっ!!」
「セシリアぁ!」
耐え難い苦痛の叫びが響き、銃剣を引き抜いた相手はセシリアに銃口を向ける。
「終わりだ」
そしてレーザーが放たれ、それはセシリアに直撃しようとした瞬間
「きゃああっ!!」
「!アリィさん!?」
突如アリシアがセシリアを突き飛ばし、相手の射撃を受けた。そして直撃したせいでダメージが大きいせいか、落ちていく。
それをセシリアは支えた。
「アリィさん!」
「ふん、傷の舐め合いか。くだらんな」
「あなた…!」
「セシ…リア…」
「!アリィさん!」
「セシリア…あなたの専用機…『ブルー・ティアーズ』の意味を本来の意味を…よく、考えて…」
「本来の意味…?」
「いつまでじゃれ合っている」
「っ!ま、まだ…まだ終わりじゃありませんわっ!」
装甲のパーツを吹き飛ばして砲口が装甲に塞がれ、推進力に回しているビットの4門同時射撃を行う。
「はっ、こんなもの…笑わせるな」
「なっ!?」
全てのレーザーを高速ロールで避けて見せる。ライフルの銃口が此方に向けられていて、レーザーが発射されかけていた。
(くっ…このままではアリィさんも…さっきの言葉の意味は……)
先程のアリシアの言葉がセシリアの頭をよぎる。
(ブルー・ティアーズ…青い雫。その意味は…?)
――心の中に何かが落ちる音。それは蒼い雫。水面に落ち、静かに波紋を広げる――
(……ああ、そうでしたの。ブルー・ティアーズとは、つまり…)
セシリアは銃剣に貫かれた右腕を空に掲げる。その行動に相手も疑問を覚えた。
「バーン…」
「っ!?」
手をピストルの形にして、発砲音を声でする。当然手からは何も出て来ないが、青い矢光が後ろから背中を撃ち抜いた。
『
相手は撃ち抜かれた一箇所を抑えながら、今度こそセシリアに止めを刺すため、ライフルを発砲するが
「っ!貴様…」
「…遅いですわよ」
「待たせたな、セシリア!アリィ!」
それはセシリアと相手の間に割って入った一夏に防がれた。
*仭サイド
「間に合ったか」
一夏がサイレント・ゼフィルスの発砲をアリィ達から防いだのを見てそう思う。…さて
「レイラ。5分…いや3分ぐらいでいい。あいつを抑えててくれ」
「了解!」
俺は現在相手にしている襲撃者から離れ、ひとまずレイラに任す。まあ、3分しか保たない程実力の差が開いてるからそんなことを言ったわけではない。拉致があかないからひとまずサイレント・ゼフィルスから落とすことを考えたからだ。
「一夏」
『仭!』
「ちょっとあれを落とす。タイミング等を見はらかって止めを刺すからとりあえず好きにやれ」
『おう!』
そう言って一夏はサイレント・ゼフィルスに突っ込んでいく。俺も短剣やら発砲やらして援護をして途中、回復した鈴や簪達も加わって攻撃していく。
…弱ってきたし、そろそろか。
「
背中、両腕から全ての生命の鎖、計10本を出す。そして左腕を除いて9本の鎖を放出(機体から離れ)させる。
「!?」
サイレント・ゼフィルスの動きが少しだが鈍った。そしてそこを一夏に狙われ斬られかける。
別にこけ脅しなわけではない。そして残った左腕からの鎖を操って、機体から離れた鎖に連結していく。
生命の鎖は後端部分が先端の尖った刃物と連結できるような造りになっている。そして俺は全ての鎖を連結し終えた。結構な長さで、それを一旦腕に引っ込める。
「さて…『サーペント・チェーン』!」
そして10本分の長さの鎖をサイレント・ゼフィルスに向けて放つ。
「!」
しかしそれはサイレント・ゼフィルスへと届く手前で止まった。…距離がかなりあるためこれ以上のびない。
「はっ、馬鹿が!何がしたかったのだ!」
何がしたかっただ?
「馬鹿は貴様だ、馬鹿が…トラクタービーム!」
「!」
お前を倒すことだよ。エネルギーの鞭が鎖から出て、相手は予想外だったのか対応が遅れ、縛られる。
「くっ…」
無駄だ。それは完全に縛られればそう簡単に抜け出すことはできない。
「今だ!一斉射撃!」
「!ぐああっ!」
そして近くにいる奴らの遠距離攻撃がサイレント・ゼフィルスに放たれる。シールド・ビットで大半は防がれるも、当たったもののダメージは大きいと見られた。
…さて
「準備オーケー」
俺が空いている右手でしてたことが。
楯無のミストルティンの槍を参考に、エネルギーを集結させて俺はエネルギーで作られた槍を作っていた。当然弱点もミストルティンの槍と同じようなものだが
「エネルギーを溜めは全開ではないし、速さに特化した代物だ。ダメージは初めて使うからどんな感じになるかわからんが…」
その時は周りに手柄を譲ろう。
俺は何か通信を受けたサイレント・ゼフィルスに狙い定め
「どけ、貴様ら!!爆発に巻き込まれたくなけりゃな!!」
合図を出して離れるよう叫ぶ。俺が何しでかすつもりかすぐ理解したようで、離れる動きを見せる。トラクタービームもエネルギーが切れて完全に解除されたので、逃げようとするサイレント・ゼフィルスに向け『ゲイボルグ(命名)』を
「きゃああ!」
「!」
――放った。しかしレイラが突然横から突っ込んできたのが視え、俺はタイミングと狙いを少しずらしてしまった。そして俺はレイラを受け止める。
「………」
俺はサイレント・ゼフィルスの方を見ると、槍と衝突する前に、全てのビットを盾に。槍は爆発。相殺…とまではいかないが爆風の影響を奴は受けた程度で、撤退していく様子が見られた。…爆風のせいで皆も怯んでしまったか。
「っとレイラ。大丈夫か?」
「え、えぇ…」
そうだったと、俺はもう1人の襲撃者の方を見る。見ると奴も撤退する気か…。
「させるか!」
「………」
俺は奴に突っ込む。槍を構えるが、ぶつかる寸前で停止。そして顔面を蹴りあげ、殴り飛ばした。
「………」
音を立てながら奴は吹っ飛び、立ち上がってくる。その仮面には亀裂が入っていた。
そして徐々にそれは破断し、素顔が見られ…………!
「なっ!?」
銀色の髪。ややくすんでいるが、そのセミショートの髪型に俺は見覚えがあった。
前髪の下ではさらに仮面が顔の上半分を隠しており、その仮面の横からは不気味なコードが身体の装甲へと伸びている。だがそれでも…正体がわかってしまった。
何故?何故あのISの
「大尉!」
「――っ!」
「………」
動揺してたせいで、隙を作ってしまった俺に対して突っ込んできた。炎を纏った脚で蹴ってくるが何とか防ぐ。
「っ…何故だ。何故お前が亡国企業に…レザリナ!」
「………」
だが何も応えない。…仕方なし、こいつを倒して聞き出すまで。
脚を振り払って、殴りかかる俺に対し、槍で突き刺してきた。
「?」
そして俺の拳に槍を突き刺したまま離れる。
「!」
俺はその魂胆にすぐに気付いた。槍を見ると熱で色が変色している。これは俺の武装と同じ、短剣が爆発する―――
「ぐおっ!?」
もう片方の手で槍を抜くと同時に爆発。零距離での爆発で、威力も剣闘士のとは桁違いだ。
「!…くそっ……」
見るとサイレント・ゼフィルスと同じように上空へと飛び立っていた。レイラはスラスターがやられたらしく、他の面子も距離と機体の性能差で追いつけない。一夏でもおそらく仕留めることはできない。
「…何故あいつが……」
俺の発言は虚空へと消える。
*第3者サイド
「せーのっ」
『一夏、誕生日おめでとうっ!』
シャルロットの言葉を合図に、一斉にぱぁんぱぁんっとクラッカーが鳴り響く。
「お、おう。サンキュ」
時刻は夕方5時。場所は織斑家。
しかし面子は主役の一夏、箒、鈴音、セシリア、シャルロット、ラウラ、簪、アリシア、レイラ、それに蘭。さらに一夏の友人である五反田弾、御手洗数馬。生徒会メンバーの楯無、布仏姉妹の他そして何故か新聞部エースの黛薫子も集まっていて、リビングがパンク寸前である。
(仭は後から来るって言ってたけど、どうしたんだろうか。何か表情が浮かなかったけど、襲撃者を取り逃がしたことか?)
一夏は仭のことを気にかかっている。事件の後、仭は一夏に上への報告があるからと言って、一夏の誕生日パーティーに遅れることを話した。その時の仭がいつもと違っていたことに一夏は気にしていた。
(…にしてもあんな事件の後でよく騒ごうって気になるなぁ。いや、あんな事件の後だからこそ騒ぎたいのか)
「い、一夏さんっ!」
「ん?」
そんな中一夏は蘭に呼ばれる。
「―――で、亡国企業はイタリアの第3世代型IS『スプレマシー・フェニーチェ』を強奪してたことに…なりますね」
『そう…』
場所は変わり屋上。そこで仭は組織の指令官といつものように連絡を取り合っていた。
『あなたにとっては、関係の深いISね』
「…まあ、そこは別に良かったんですがね。…イタリア代表候補生。そして『スプレマシー・フェニーチェ』の操縦者であるレザリナ・キャバリスでした」
『!…本人が?』
「顔は完全に見たわけではないですが、間違いありませんよ。他の面子は見てないので、俺だけですが…」
『………』
「で、やはりというかもどうして彼女が亡国企業にいるのが解せません。…そこで、頼みがあるんですが……」
『言ってみなさい』
「・・・・・・・・・・・ください」
『…いいわ。あそこに行くつもりでしょう』
「ええ」
『ふぅ…。まあそれはともかく、ISの件に戻るけど、こっちでも盗まれたのはわからなかったからね。おそらく他にも強奪された機体は幾つかあると見て間違いないわ』
「そう考えると、これ以上機体を盗ませるわけにはいかないですね。亡国企業幹部のスコールが学園にも来ていて、楯無と戦闘したようです。これで少なくとも亡国企業のISは8機になります」
『そうね』
「…となるとやはり福音が再び狙われるかもしれません。第二形態移行していますし」
『他にも狙われるとしたら…イギリスやイタリアね』
「そうですね。奴らが今回襲撃してきたのもあなたの考え通りなら、学園も安心はできません。ここはISが豊富ですから」
『そうね』
「かと言ってすぐにまた来るわけではないでしょう。…そろそろ報告を終えます」
『ええ。それとさっきのあなたの提案だけど…』
「?」
『・・・・・・・・・・・・』
「……了解」
仭はそう言ってチャネルを切った。
(さて、そろそろ行くか。…あいつのことは今は考えても仕方ない)
一夏の家へと仭は向かった。
「よかった。売り切れはないな」
家から最寄の自販機に一夏はジュースを買いに来ていた。
あれからプレゼントを一夏が貰ったり、弾と虚が良い感じの雰囲気を出したり(一夏は気付いてない)などあり、騒いでたが、足りなくなったジュースを買い出しするために自動販売機に来たのである。他の者達は今日の主役にそんなことさせるわけにはいかないと言っていたが、一夏の押しに負けた。
一夏は取り出し口からジュースを取ってビニール袋に入れる。一夏が戻ろうとすると、自販機の明かりが届かないギリギリの所に人影が見えた。背格好から少女だと思われるその人影が1歩前に出たとき、自販機の明かりによってその顔が鮮明に見えると
「ち、千冬姉……?」
そう、少女の顔は一夏の姉、織斑千冬の顔だった。だが背格好が違うので本人ではない。
「いや、私はお前だ。織斑一夏」
「な、何…?」
「今日は世話になったな」
「!お前、もしかしてサイレント・ゼフィルスの―――」
「そうだ。そして私の名前は―――」
そして同時に―――
「織斑マドカ、だ」
「なっ!?」
「私が私たるために……織斑一夏。お前の命をもらう」
織斑マドカと名乗った少女はハンドガンを取り出す。
そしてパァンッ!と銃声が鳴り響いた。
原作のように最後なりました。字数的にもちょうど良かったので。
まあ、今回の話での疑問点は7章で少しずつ。
それはそうとアンケートは現在最多(といっても2票)のものがいいから誰も送らないのか、それとも普通に送らないだけなのかわかりませんが、後1話出したら終了します。