IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第79話 タッグマッチに向けて
…一夏が鈴と組んだらしい日から1週間。取材を断り、色々あって数日前に学園に帰ってきた俺、黒崎仭はちょっとした憂鬱な気分だ。誰とも組めなかったことに関してではない。(それもあるが、それについては色々考えがある)
「はぁ、仭。最近皆が俺のこと何か敵対視してくるんだけど…」
「………」
そう、一夏が鈴と組んでから、いつもの一夏に好意持ちの専用機持ち面子が一夏を敵対視してることに、俺はその本人から相談?(というか愚痴)を受けているからだ。ちなみに場所は食堂。
しかしこの前も箒から取材の件で愚痴を聞かされたんだが…。
「確かに申し訳ないとは思うけど…何もあんなに怒らなくてもいいじゃないかよ~」
愚痴りながら伏せる一夏。酒を飲んでたら今にも泣き出しそうだ。
一夏と鈴がペアになり、案の定(というか予想通り)他の面子が怒りだしたようである。しかも話は変わるが、他は全員タッグを組んでしまい、俺は1人余ってしまった。(専用機持ちは全部で13人なため)
まあ、一夏に正直『自業自得』とも言えず、『だったら俺と組めばよかっただろ』とも言えない。純粋に『苦労してるなぁ』と思うのが本心だ。
「んー…まあ…何とも言えんな」
「………」
他の誰かと組んだところで同じだろうし、俺と組んだら『まあ、男同士なら』という理由で納得するだろうが、こいつは(というか他の奴らも)俺を倒そうとも思ってるらしく、その考えを邪魔する訳にはいかない。結果、それが俺が組めなかった理由でもあるんだが。
(上層部どもが…)
例え俺1人だろうと、専用機を持っているのだからタッグマッチに参加しろというのが、学園上層部の決定らしい。そのため見送ろうにも強制参加で見送れないのだ。
「…何が専用機を持ってるからだ」
思わず小声で呟く。俺の意見すら完全に無視した決定だ。…どうせ男性操縦者としてのデータを例え1試合でもいいから取りたいというのが本音だろうが。そっちがその気ならこっちにも考えがある。楯無にはもうその辺は承諾済みだ。
「はぁ………」
おっと、話が大分それてしまった。一夏の件だったな。
…正直奴らのやってることはくだらないと思うのが本音だ。怒りたいと思うのはわかるが、一夏の身体は1つしかないわけだし、決まったのは仕方がないのだから、それで普段無視したりと行動を取るのはさすがにどうかと思う。タッグマッチでその怒りを晴らせばいいだろうに。
「箒は睨んでくるし、セシリアにはそっぽを向かれるし、ラウラに至ってはガン無視。シャルは『何かな、織斑君』と言ってくる始末。…簪はこっちから話しかければ、対応はしてくれるけど、少し不機嫌そうだし…」
「……知ってる」
日中、それらの光景は見たことがある。
で、あまりのも一夏があれなので奴らに話に言ったんだが、『頭じゃわかってるけど、許せないことだってある』と揃って言われた。それが乙女心というものだろうか?わからん……。
「まあ、愚痴愚痴言ったところで仕方があるまい。お前は(悪くないけど)タッグマッチが終わったら謝っとけ。それであっちがまだ無視しようとも、その件はもうそれっきりにしろ。とにかく今はタッグマッチだろ?」
間違ったことは言ってないはずだ。本人に申し訳ないという気持ちはあるし、今回ばかりはこいつの天然デメリットスキルは関係ないんだし。
「……そうだな。鈴と訓練しないとな」
少しだが明るくなった。
ちなみに鈴は普段通りで、一夏を訓練に誘って、連携をしてるが
「最近連携がうまくいかねぇんだよな……」
そう一夏が言ったように連携が上手くいってない。はっきり言って酷かった。
学年別トーナメントで、一夏とシャルロットの訓練を見させてもらった時があったが、あの時は良かった。が、それはシャルロットの器用さ故に合わせてくれたわけで、鈴は考えるよりも行動というタイプ。そんな合わせることなんざ得意なはずがない。
「……はぁ、お前は考えすぎなんじゃないか?」
「考えすぎ…か。…じゃあ1人ずつ相手にするってのは…」
「それこそ馬鹿か?お前1人で楯無相手に勝てるのか?」
「う……」
無理だろうな。逆も言わずもがな。別にこいつを過小評価してるわけでもなく、楯無は純粋に強いからである。それは戦った俺自身だからわかる。
「俺でも次に楯無と戦うときは負けるかもしれないからな。…いや、多分負ける」
「え?この前引き分けだっただろ仭」
確かにな。だが
「それでも隠し玉を幾つも使ってやっと引き分けだぞ?あの時楯無の不意をついたりして引き分けだったんだ。次はおそらくそんなことはない。純粋にお互い手の内を知っての勝負だ。そうなれば負ける可能性も高い」
「…マジ?」
こいつ自身も強くなり、専用機持ち面子にも勝ったりはしてるが、その全てが勝ってるわけではない。事実最近は絢爛舞踏の使い方をわかり、楯無との特訓で強くなってきた箒に負けたばかりだ。ラウラとかシャルロット、簪にも勝率は五分…というところである。
「じゃあどうすりゃいいんだ…」
「そんな考えすぎるなって。次はどう動けばいいとか考えてるから駄目なんだよ」
「つまり?」
「真面目な話、まず自分やパートナーを信じろ。で、連携プレーを動いて叩きこむ。最近お前は戦闘スタイルが完成してきてる。だから他のことまで気が回らないということはないだろう」
「なるほど…」
「お前はクラス対抗戦で、襲撃者に鈴とタッグを組んで戦っただろ。その時の感覚思い出せ」
「そうだな…って何でそのことを「黙れ」――いてっ!」
立ち上がりかけたので頭を引っ叩いて黙らし、座らす。
「機密事項なんだから大きな声出すな」
「す、すまん…」
「疑問については、組織をなめるな」
「あ、そういうこと…」
「そういうことだ。…じゃ、そろそろ戻るぞ。昼休み終わる」
「ああ」
立ち上がり、食べ終えてしまっているトレーを持って片付ける。
「………」
「ん?どうした」
一夏が今度は何か考え込む素振りを見せる。
「いや、な。タッグマッチは今回は普通に開催されるのかと思って…」
「?」
「こういうイベントはいつも何かしら襲撃とかあるからさ」
「ああ…」
確かに。確か俺が来る前のクラス対抗戦でも、例の無人機が襲撃したらしいしな。そのあとはラウラの暴走、福音&ファントム、さらにファントム、ファントムと無事に成功したイベントがない。
「大丈夫だ。……多分」
「そうだなと言えないんだが」
「まあ、亡国企業はともかく、無人機とだったら心配ない。あれには弱点あるから」
「弱点?」
「ああ…っと、もうそれは後でいいだろ」
「そうだな」
話してるうちに教室につき、チャイムが鳴る前には戻れた。
「――さて、訓練を始めるとするか」
放課後。俺は第4アリーナにいる。当然タッグマッチに向けてだが、相方はいないので1人での訓練だが…
「あっ、大尉」
「………」
俺を呼ぶ声が。誰もいないとはいえ、この学園の日常の中で、階級で呼ぶなと言っているのに呼ぶ奴は俺が知ってる中で1人。
「…アリィ、階級で呼ぶなっての」
「すいません仭さん」
まあ、謝っておきながら大尉と呼ばないから許そう。
「本当にどうして階級で呼びたがるんだ?別に呼び捨てでもいいというのに」
「いやぁ、いいじゃないですか」
「…ま、いいが」
年上とかには階級で呼ぶ奴だからな。…例外もいるが。
「お前も訓練か?」
「はい、今日は個人で」
「そうか」
こいつはレイラと組んだ。俺も正直この2人を相手にはしたくない。面倒だから。(実力の意味でも)
「じゃあ久しぶりに模擬戦でもするか?」
「はい、だから声をかけたんですから」
「そうかい」
俺とアリィはISをそれぞれ展開。戦闘態勢になる。
「先行は譲る」
「どうも。…では」
アリィはレイピアを呼び出して構える。そして突っ込む。
「――わけはないよな」
そう、振りをして6基のビットの内、4基から蒼白いレーザーを放ってくる。
「むざむざくらうか」
「わかってますよ」
時間差と、回避するであろう先を予想しながら撃ってきてる。その中での抜け穴があり、俺はそこをかわしながら突っ込む。しかし抜け穴があるということは――
「ありゃ、そこを本当に突っ込んでくるとは思いませんでした」
「そうかい」
当然そこを狙ってもくるということで。まあ、本人は他へ逃げると予想してたみたいだが。で、俺に前から2基のビットによるレーザー、そして遅れて4基のレーザーが俺に向かってくる。
それに対し俺は大剣を呼び出し、楯にしてレーザーの1つを防ぐ。大剣が少々凍ってくるが、低温には強いから問題ない。
「はぁ!」
懐に入って、斬りかかる。レイピアでガードされるが、それでも衝撃で後ろへと下がるアリィ。
「ふふふ、行きますよ」
「ちっ、面倒な!」
アリィは左手に地面をつけると、徐々に凍っていく。
ならばと俺は突っ込む。途中レーザーが襲い掛かってくるが、多少掠る程度に収める。
「残念ですけど、時間切れです」
「何がだ」
「私を止めるのがです!」
そう言ってくるなり、左手を地面につけて氷柱を幾つも出現させ、俺の目の前を阻む。
「だから何だ?」
すぐに俺は急停止。上昇すると
「っ!?」
ビットが突っ込んできて、俺に激突しかけるが、大剣で防ぐ。しかも下から無数の氷の塊が俺に。
「甘い!」
俺はその場で回転。大剣で氷を弾く。
全て弾き終わった後、止まって瞬時加速でアリィに突っ込む。
「速くても私にたどり着くまでは的ですよ?」
再び無数の氷の塊が放たれてるのが見える。
瞬時加速中に方向を変えると、下手すれば骨が折れる。だからやらない。だしかしこのままだと氷の塊(小さい氷槍)をもろにくらう。
「ああ、大剣がだが」
ならばと、俺は大剣を楯にしながら突っ込む。ほぼ弾かれてダメージはほとんどない。
で、今度はレイピアを構える。それに対して短剣を片手に2本呼び出す。そしてエネルギーを送ってコントロールを加えながら投げた。
「くっ!」
それをビットのレーザーで撃ち落とす。俺にも来るがそれらをかわしてアリィに斬りかかる。
「お前はビット使用中に他動作不可能という弱点を持ち合わせていない。だが、それも3基まで。さっきは短剣に2基、俺に2基と撃ってたからな」
「アハハ、そう簡単に改善できませんよ」
斬りあいが続く。その中で3基までビットでレーザーを撃ってくるが、大剣で受ける。
そしてアリィが俺を蹴ってきて、それは腹に決まり、本人は下がる。
「レーザーをバカスカ撃ってるだけじゃ勝てんぞ」
「むぅ、考えなしで撃ってるわけじゃないですよ」
こんなことを言ってる間でもレーザーが俺に襲い掛かる。そのたびにかわすなり、大剣を楯にするなりする。
「それと、その剣もうガチガチですよ?」
アリィの言葉に大剣を見る。もう刀身が完全に凍り付いてしまっていた。
「解凍するから心配いらん」
「えっ?」
「…はぁ!」
大剣に展開装甲を発動させる。展開装甲で変化させたエネルギーの刃により、氷が少しづつ溶けだして、時間が経つと完全に氷が溶けた。
「え~、そんなふうに氷を解凍する人は初めてですよ」
「そうか」
ついでに身体に若干ついている氷を幾つか無理やり払い落とす。
「さて、もうそろそろ全力を出すとしよう。…暴食」
それと同時に全身が発光。…どう仕留めるか。
「ま、それを発動したところで負ける気はさらさらないですけどね」
「そうでなくては面白くない」
そうだ。こんなことで士気が下がるような輩じゃない。
「行くぞ!」
「やらせませんよ!」
俺は突っ込む。それに対してアリィはビットを一斉に放ってくる。それらをかわし、俺はアリィに突っ込んだ。
で、
「あ~~、負けた~」
結果的に20分ほどかけて、俺が勝った。決め手は零距離からのエネルギー兵器による攻撃。
「てか、お前例の武器使わなかったじゃねぇか。組織から送られたっていう」
「あれは隠し玉ですよ」
俺と同じ理由で使わなかったのかよ。
「ま、使うその時を楽しみにしておくか」
「その時は負けませんけどね」
無論此方とて負ける気はさらさらない。
「じゃあ、少し上がる。休んでからまた個人で訓練するとしよう」
「無理はしないでくださいよ」
「わかってる」
そして俺はアリーナを後にした。タッグマッチ当日まで時間は限られてきてるからな。
ヒロイン達の一夏に対しての敵対視は原作での簪とでそうだったんだから、まああり得そうかと。
最後は中途半端だったな。タッグマッチでは今度こそ…。