IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第81話 タッグマッチ1回戦! 一夏&鈴 VS 楯無&簪
「あっ、織斑くーん」
そう言いながら走ってきたのは黛薫子先輩だった。
「どうしたんですか?俺、これから着替えに行かなくちゃいけないんですけど」
「これこれ、オッズなんだけど」
そう言われて見せられた紙には、(例の賭けによる)ペアの順位が記されていた。
「えっと俺と鈴は…5位……」
「黒崎君に僅差で負けちゃったわね」
1位は学園で唯一の国家代表である楯無さんと、簪のペアだった。やはり人気が違う。
で、2位は2年と3年のペア、3位がアリィとレイラ。…妥当なところだな。
そして4位が仭と全てが不明の相方とのペアだった。おそらく仭の実力と、相方の選び方から期待が出たのだろう。まあ、わかるのは性別ぐらいだ。(ほぼ当然だが)
ちなみに6位がラウラとシャルのペアで、此方も僅差で俺と鈴が勝っていた。最下位は残った方箒とセシリアのペア。4位~7位は僅差の勝負だな。
「それにしても異常よね。1年で専用機持ちが10人なんて…」
「すごいですね」
「何呑気なこと言ってるの。君達のせいでしょ!」
指を刺される。…そういやそうだ。
「さっき黒崎君に取材しに行ったら、『知りませんよ。そんなこと』って言われたけど…」
言いそうだ。知ったこっちゃないって。
「って、そんなことはともかく!試合前にコメント頂戴!今から全員分行かないといけないから、私忙しいのよ!はい、ポーズ!」
そう言うなり写真を撮ってきた。
「よし、オーケー!じゃあコメント!」
「え?…全力でぶつかって行きます!」
「うーん、もうちょっと良いコメントない?」
そう言われても、初戦の相手が相手ですし。
「ちなみに黒崎君は『誰が相手だろうが、全て叩き潰して沈黙させる』よ」
「うわぁ…」
何かやりそうで怖い。
「本当は不明の相方にも取材したかったんだけど、彼にNGされちゃってね。ただ『誰が相手でも負けない』という彼からのコメントは受け取ったわ」
うーん、どういう人物だろうか。ただやはり強いんだろうな。
「あっ、時間が!じゃあ、そういうことで!コメントは捏造しとくから!!」
「ちょっと!?」
俺は呼び止めようとするが、ああ…行ってしまった。
…とにかく諦めて着替えに行こうと、俺はアリーナへ向かった。
*仭サイド
「…まさか一夏のペアと楯無のペアが当たるとはな……」
「………」
俺と組織の者…もう俺も呼んでしまうか。ミステリアスパートナーはピットで待機していた。
モニターもあり、そこにはこれから第1回戦を行うアリーナが映し出されてる。
「お前はどっちが勝つと思う?」
「そんなわかりきったことを言わないでよ」
「うん、まあ楯無のペアだろうな」
「そういうあなたは?」
「ま、俺も十中八九、楯無達が勝つと思ってる」
「………」
なら聞くなと目で訴えてきている。
「楯無・簪ペアはまず間違いなく優勝候補だ。それぞれ単独でも強い。楯無のことだ。当然連携もしてくるはずだ。…まず俺も1人だったら9割方勝てないだろう。何より楯無と次やるときは負ける可能性が高いのだから」
「…さすがロシア代表と、1年専用機持ちの中では上位の実力を持つ日本代表候補生ね」
「そうだな。かくいう一夏・鈴ペアは、スピード&パワーの近接戦組で、楯無・簪ペアのようにそれぞれ合いそうにないというわけでもなく、どちらも中距離タイプ。連携さえできれば動きとかも面白くなるだろう」
「………」
「…が、それでも相手はあの楯無だ。まず2対1という状況でもそう動じないだろうし、先に簪を倒そうとしても、あいつは足枷なほど弱くはない。何より楯無はそれを許さん。…まあ、弱点もないことにはないが」
「じゃ、やっぱり彼らは?」
「ああ、さっきも言ったように勝てないだろうな。…だがあいつ…一夏が何しでかすかわからん。成長途中だからな」
「へぇ……」
「『男子三日会わざれば刮目して見よ』。特に奴の成長速度は異常でもあるのだから、少し見ない間でも案外成長してるかもしれないぞ」
俺は最近一夏の訓練をしてるところを見ていない。あの時以来、自分自身の訓練で忙しかったからな。
「って、そろそろ始まるんじゃない?」
「ん?…そうだな」
そう言われてモニターを見ると、楯無と簪はすでにアリーナ上空にいて、一夏と鈴がピットから飛び出て来た姿が見えた。
*一夏サイド
「来たわね」
「ええ、来ましたよ」
俺は鈴と全力を出し切るしかないと、誓い合い?ピットから出て、アリーナへと飛び出た。そして俺と鈴、それぞれアリーナ上空で楯無さんと簪に向かい合っている。
「全力でいらっしゃい。 お姉さんが全力を持って相手してあげるから」
「嫌味ですか?」
もうそうとしか聞こえない。
「一夏、気にしない方がいいわよ」
「あら、嫉妬かしら?一夏君と話してて」
「なっ!?」
「お姉ちゃん…」
「はいはい、ごめんなさい」
簪が楯無を制す。どうやら仲は今日も良いようだ。
「…一夏」
「ん?」
「…負けないから」
簪はそう言ってくる。…だが、少し怖い。
「ふふん。それは私も同じよ。負ける気なんてさらさらないわ」
そして何故か上機嫌になってる鈴。本当になんでだろうか。――と、そうこうしてるうちに試合開始の合図がそろそろきそうだ。
『試合を開始します』
試合開始の合図と共に、甲龍の右肩についている拡散衝撃砲が火を噴き、簪へと見えない砲弾が飛んでいく。
「っ!」
「一夏ぁっ!」
「わかってる!」
即座に回避行動に移ったので、直撃は受けなかったようだが、それは想定内。俺は簪へと突っ込み、雪片弐型で斬りかかろうとした瞬間――
「おっと!可愛い妹の危機に傍観してるなんてことはないわよ!」
楯無さんが横から大型ランスを構えて攻撃してきたため、簪への攻撃を中断。そしてすぐに後ろへと下がる。
「鈴!」
「わかってるわよ!」
「!――くっ!」
ランスが空振り、すぐに俺へ近づこうとする楯無さんに、投擲された双天牙月が間を阻む。それを見た俺は上昇。その後すぐに楯無さんへと衝撃砲が当たった。
「やるわね、一夏君、鈴ちゃん」
「そりゃどうも!」
楯無さんは連射されていく衝撃砲をかわしながら言ってくる。その際に俺にランスに搭載されているガトリングガンによる弾丸を放ちながら。
近づけないのならばと俺は簪へと近づこうとする。
「近づかせない…」
簪は春雷による2門の連射型荷電粒子砲を俺へと撃ってくるが、それをかわし、突っ込もうとしたら、幾つもの弾丸が俺の目の前を通る。
「もう、やらせないって言ってるでしょ?」
「楯無さん…!」
楯無さんの発砲だった。やはり一筋縄じゃいかない……。
*再び仭サイド
「クク、やはり簪を狙うか」
「やはり?」
またこいつかと思う者。本当にすまない。いろいろ都合があるのだ。
「ああ、やはりだ。予想してた通り、一夏は簪に狙いを絞っている。で、鈴は一夏の邪魔をさせないようサポート…というところか」
モニターには一夏から離れようとする簪に、それを手助けしようとしている楯無。そしてそれを邪魔している鈴の姿があった。しだいに押され始めてる中、簪を懸命に攻撃しようとしてるところが映っている。
「つまり、弱い方から狙ってるってこと?」
「そういうことだな。もっとも、楯無と比べたらだが…」
簪から倒して、楯無を2対1で相手する。それは奴らにはもっとも良い戦法であると言えよう。
「だが、一夏の攻撃もそんなに当たらない…。いや、近づくことすらままならない」
それはそうだ。ほぼ近接しか使えないのだから、近づかせなければいいことなのだから。あれが箒だったら、卑怯とか言いそうだな。
「でも、学園最強も何気に苦戦…とまではいかないけど押されてるんじゃない?」
「それはそうだろう。完全にとまではいかないが、簪を守りながら戦ってるのだから。…いや、2人を相手にしてるの方が正しいか」
簪も楯無に守られなくともがんばっている。
「…ふふ、それにしても結構やるわね。例のブリュンヒルデの弟も含めて」
「ん?……お前の悪い癖まで出始めたか」
「何?悪い癖って」
若干睨まれながら視線を送られる。
「獲物を狙うような目をしてたからな」
こいつがそういう目をするということは楽しめそうとか、思ってる時だ。
「…そんな目してた?」
「スナイパーが標的を見る時のようにな」
獣ではない。こっち系の方だ。
「まあ、誰が相手だろうと狩るけど」
「インタビューに出す言葉かい。それとそれは捏造しといたから」
「別にいい」
狩るってのはな。
「…ま、いつかあなたも狩るけど」
「聞く奴によっては誤解が生まれるぞ」
俺を殺すではない。倒すだ。
「それはそうと」
「?」
「試合進んでるよ」
「!――そうだった。って、簪の奴、あれを発動させる気だな…」
見ると距離はそこそこ離れているというのに、簪は荷電粒子砲を一夏に放ち、離れようとしていた。
*第3者サイド
強い。さすが学園最強もといロシア代表。仭とは違う、別の強さを持っている。…楯無を相手にしてる中で、鈴はそう思っていた。
「ほらほら!余所見なんかしない方が言いわよ!」
「くっ…」
完全に相手をしてるわけではないが、しだいに鈴も押され始める。一夏の方も距離を離されてきてるのが見え、鈴は少し苛立った。
(こっちも余裕がないんだから、早く決着をつけなさいよ…!)
その理由は鈴が楯無に押されているのと、一夏と鈴で立てた作戦によるものであった。
それは仭が予想した通り、簪を先に倒してから、楯無を2人で叩く。そのため、鈴は楯無はできる限り足止めして、一夏は簪を倒す。単純な作戦であった。
当然それは一夏に狙われている本人である簪も、楯無も許さない。単一仕様能力である零落白夜をあらゆる手で簪は避け、守られ、くらわないようにしている。
そして
――警告!ロックオンを確認――
「!」
鈴の前に空間投影モニターが警告音と共に、表示される。それは一夏も同様であった。
「この山嵐から、逃れられない…!」
一夏から十分に距離を取った簪の打鉄弐式の肩部ウィング・スラスターに取り付けられた6枚の板がスライドして、ミサイルポッドが姿を現している。そして6機×8門のミサイルポッドから計48発が、一夏と鈴へそれぞれ24発ずつ発射された。
「一夏っ!」
鈴はすぐさま衝撃砲や連結した双天牙月でミサイルを迎撃する。視えない衝撃砲は当たるが、マルチ・ロックオン・システムにより投擲された双天牙月をミサイルは自動で回避する。おまけに楯無のガトリングガンによる発砲も含まれて、鈴は自分の身を守ることに精一杯だった。
それに対し、一夏は鈴より事態が深刻で、出力を落としてある荷電粒子砲を放つも、せいぜい数発しか破壊できず、軌道を変えながらも一夏を追い詰めるミサイルの数々に次第に距離を詰められ、そこで多少の被弾ダメージを覚悟に、雪片弐型で1発のミサイルを斬る。
「ぐぅぅ!」
当然爆発し、近距離なため一夏は爆発による衝撃をくらう。しかし、少し近くにあったミサイルもその爆発は巻き込み、連鎖的に爆発。数は減ってもまだ襲い掛かってきていて、一夏は雪羅による零落白夜のエネルギー爪で斬りかかったり、零落白夜のシールドでミサイルを防ぐ。
そして目の前のミサイルをエネルギー爪で斬り終え、一夏は雪羅を解く。まだ、上からミサイルが数発残っているのにである。それを一夏はまともにくらった。
「一夏ぁぁぁっ!」
一夏よりわずかに早く、被弾等しながらもミサイルを片付け終えた鈴が叫ぶ。零落白夜を使ったためにエネルギーはそれほど多くないはず。そのためやられてしまったのではないかと思ったのだ。
だが
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
「「「!!」」」
ミサイルによる爆風の中から一夏は飛び出し、声を上げながら瞬時加速で簪へと突っ込む。突然のことに楯無も含め、驚いた。
一夏は実は最後のミサイルには気が付いており、あえてくらったのである。それは鈴を含め、この場にいる者達に自身がやられたのではないかと思わせるため。そして、その隙をついて、作戦通りに簪を倒すため。
「やらせないわよっ!」
そしてわずかに早く正気に戻った楯無はすぐさまそれをやらせまいと、ランスを手に一夏へ横槍を入れようとするが、
「邪魔はさせないわっ!」
そして楯無のすぐ後に正気に戻った鈴は衝撃砲を目の前の楯無に放つ。楯無はそれを回避するも、その数秒の間にも一夏は簪へと距離を詰めようとしており、簪は背中に搭載された2門の連射型荷電粒子砲春雷を放つも、それは零落白夜のシールドに阻まれた。
「決めさせてもらうぜ!!」
「っ!」
そして簪に近づいた一夏は既に上段で雪片弐型を構えてあり、そして零落白夜が発動されている。
仭に教わった刃が当たる瞬間に、零落白夜を発動させる技術は、エネルギーの節約になっているが、完全に100%発動されている(模擬戦レベルでの)わけではないのである。よって一夏は完全に決着をつけるために、斬りかかる瞬間に零落白夜を発動させ、斬りかかろうとしているのである。
「うおおおお!!」
上段からの斬り下ろしを渾身の力を込め、振り下ろす。即座に夢現を呼び出そうとするも、間に合わずに、簪は一閃される。
「きゃああああ!」
「簪ちゃぁぁぁん!!」
それは直撃し、エネルギーは大きく削られて簪の機体は強制解除される。それを一夏は受け止め、地面へと下ろした。
「…負けた。けど、お姉ちゃんは負けないから」
「こっちも負ける気はないさ。たとえ相手が楯無さんでもな」
そう言い、一夏は上空へ飛び、鈴と合流する。
「後は楯無さんだけだ鈴」
「遅いのよ。馬鹿。それよりエネルギーは大丈夫なの?」
「…まあ、結構削ったな」
一夏は簪との戦闘と零落白夜の多数発動が主により、鈴は簪のミサイルと楯無との戦闘が主により、エネルギーは大分減っていた。
だが、それでも2対1。作戦通りだと2人は僅かだが笑みを浮かべる。
しかし一夏と鈴の2人は1つだけこの作戦の欠点を見落としていた。簪から先に倒す。それは…
「うふふふふ」
「「!?」」
「よくも簪ちゃんをやってくれたわね?一夏君」
「た、楯無さん?」
それは、簪の姉もといシスコンであり
「もう容赦しないわよ」
そして学園最強である更識楯無の怒りを買うことである。
笑っているが、笑ってない表情を見て、一夏と鈴は悪寒を感じた。明らかにさっきとは違う、楯無を見て。
楯無の怒りを買いました。まあ、あり得ると思うんですよね。といっても豹変するぐらいではないですよ。
それと今週の金曜から日曜まで私用で投稿できません。