ゼロレクイエムが成就した後、意識を取り戻した時にはCの世界にいた。
そこで目にしたのはユフィ、ロロ、シャーリーと言ったもう会えないと思っていた人達であった。
彼等彼女らは俺がした仕打ちを咎めるのでもなければ罵る事もなく、労いの言葉を掛けて貰ってしまった。
償っても償いきれない罪を抱えて死んだ俺に与えられのがこんな優しい世界で良いのかとも思ったが、心がこう、ぽかぽかとするような気持ちを止められ無かった。
その後は感謝を伝えながら一人一人と話して現世での遺恨などを解消しつつCの世界での過ごし方などを教えて貰った。
基本的にやることは無いので日がな一日中現世(下界)を見たり、クロヴィス辺りなどは趣味の絵画やら芸術作品を作り続けたりと各々が勝手気ままに暮らしているようだ。
特に凄いと言うか呆れたのはシャルルのラウンズ連中でKMFのシュミレーターを延々と繰り返しているらしい。なんでも、スザクにワンパンされたのが悔しくて仕方がなかったらしい。
一度シュミレーターをやっている時に見せて貰ったが全員が鬼気迫る物を感じさせられた。
特筆して恐ろしいのはナイトオブトゥエルブのモニカ・クルシェフスキーだった。
『おのれぇスザクゥゥ!』とか『やろぉぶっころしゃぁぁぁ!』とか言いながら機体を操る彼女の操縦はあくまでも俺が見た感じではスザク限定であれば気合いで殺れそうな勢いだった。
そんな感じで体感時間では1ヶ月になろうかと言う日々を健やかに過ごしていた俺に転機が訪れたのはシャーリーとのんびり花畑を散歩していた時だった。
ついうっかり躓いた俺は誤ってシャリーを押し倒してしまったのだが、ついでに胸も思いっきり鷲掴みにしてしまっていた。
す、すまない、シャーリー。と言って離れようとする俺にシャリーは首に腕を回して離そうとしなかった。
それどころかその柔らかい唇を俺のそれに合わせて来たのだ。
驚き過ぎて固まる俺にシャーリーが「ルルなら良いよ」とか顔を赤らめながら言って…
シャーリィィィィィー! 俺は、俺はぁぁぁぁ!!
その日愛し合う二人が一つになったのだった。
シャリーと関係を持った俺はそれこそ熱いパトスを解放して愛し合った。
現世では色々な事があったせいでそう言うコトもしなかったが、Cの世界であればそんな事は関係ない。
ああ、現世でも道が少し違えばこうしてシャーリーと愛に溺れる日もあったのかと思うと少しばかり現世に未練も沸いて来るものだな。フッ、栓なきことか。
ん? なんだって? 三回戦目? ああ、勿論だ。シャーリーさえ良ければ何度だって。
てな感じでシャーリーとの愛に溺れていた俺はとある日、何となく下界を見ていると衝撃的な光景を目にしてしまった。
それは最愛の妹ナナリーと我が親友であるスザクが付き合い始めたのだ。
そんな、馬鹿な…ナナリーが、ナナリーがぁぁぁ!! と一時期は思ったものだが二人が真剣に交際している姿を見たりシャーリーやユフィに説得されて思い直した。
確かにスザクならばその辺の男よりもよほど信頼出来る。
腐っても親友だし、俺が想いを託したスザクならば良いだろ。
それになによりナナリーが選らんだ相手ならば、ナナリーだって立派に恋をする歳になったのだ、もう俺に守られるだけの少女ではないのだ。そう思っていたのが…
スザァァク! 貴様ぁぁぁ! なーにが「僕がルルーシュの分も君を愛すよ」だ! ふざけんなこの野郎!
そうこう言っている間に二人はやがてベットで愛し合うようになり…
そこで俺は見るの止めた。
もう耐えられ無かった。なぜ親友と最愛の妹が愛し合う姿を見なければならないのか。
なぜ親友が妹に覆い被さっている姿など見なければならないのか。どんな罰ゲームだこれは。
そうだ、シャーリーの所へ…シャーリーならば傷付いた俺の心を癒してくれる筈だ。
ああ、ロロか。シャーリーは何処に…え? 第三回Cの世界水泳大会に出場しているって?
鬱だ。死のう。
大丈夫だ何も問題ない。「顔が真っ青だよ兄さん」だって? うん。大丈夫。ほんとほんと。俺はちょっと散歩に行ってくるから。ロロも一緒に行くって? いやいや、たまには一人になりたいんだ。ああ、ありがとう。じゃあちょっと行ってくる。
うぉぉぉぉ! 馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉ!
俺は一陣の風となってCの世界を駆けた。どこまでもどこまでも吹く風になったのだ──
──とは言ったもののCの世界であっても走れば疲れる。体力の無さを嘆きながらシャーリーと初めて結ばれた花畑に座り込んだ。
ナナリー…お兄ちゃんはお兄ちゃんはなぁぁぁぁぁ!!
嬉しいのか悲しいのか分からない気持ちを涙に乗せて俺は泣いた。
なんなのだこの疎外感と言うか虚無感は。娘を嫁に出した父親とはこんな気持ちなのだろうか。
ナナリー、俺はお前が幸せならそれで良いんだ。どうかスザクと末永く暮らしてくれ。
でもな、俺にはどうもスザクが罪を背負いながら生きている感じがしないんだ。
なんかアイツめっちゃ楽しそうじゃん。ナナリーと毎日ハッスルして人生楽しそうじゃん。
いや、別に良いんだよ? アイツが人生に生き甲斐を見出だしたならそれはそれで良いんだよ?
死にたがりだったアイツがナナリーとの生活に生きる目標を見つけたなら別に良いのよ?
スザクの野郎…浮気でもしようものならぶっ殺してやるからな…!
神よ! スザクが浮気したらその時は俺に力を! スザクを去勢するだけの力を!
そしてナナリー、スザクに政治のセンスがこれっぽっちも無くてフォローに回っていてくれるのか。スザクに政治の事を教えなかった愚かな兄を許してくれ…すまない…すまない。
祈りを込める様にして跪き、ナナリーに許しを乞い、未だに止まらぬ涙を流し続ける俺に影が差した。
む? 誰だ? 確かお前はナイトオブトゥエルブ…げぇ!? スザクに復讐を誓った修羅が降臨した!?
何をしているかって? フッ、何でもないさ。所でクルシェフスキー卿こそ何をしに来たのかな?
話がしたいって? 何の? ああ…なんでゼロレクイエムなんて考えたかって? そんなの決まっているだろう。優しい世界を創る為さ。ギアスを使った事へのケジメでもあるがな。
実際の所は七割くらい自棄になっていたと言うのもあるが…だって仕方ないだろう!? ゼロレクイエムの計画を建てた時にはナナリーが死んだと思っていたのだから!
まぁ、口が割けてもそんなこと言わないが。
と言う感じでクルシェフスキー卿改めモニカと話をするようになった切欠はこれだった。
その後、シャーリーが居ない時にちょくちょく会うようになってからは色々な話をした。
時にはシュミレーターを一緒にする事もあったがやはり彼女は修羅であった。女って怖い。
俺とモニカはただ会って話をする位でそれ以上でもそれ以下でも無く過ごし、シャーリーと愛に満ちた生活を送りながらだいだいCの世界で半年くらい過ごした頃だろうか。
ナナリーの妊娠が発覚した。
えっ、ちょ、マジ? 父親はどーすんの? スザクはゼロだから結婚出来ないよ? スザク、記録上死んでるよ?
あっ、未婚の母…子供は他に知られないようにひっそり産む…子供はジェレミアとアーニャのオレンジ農園に預けるって?
そうか…そうだな。ナナリーはブリタニアの女帝だからな。まさかゼロを王配にする訳にもいかないだろうからそれは仕方ないが…未婚の母…ナナリーが未婚の…
フハハ! もー、笑うしかないではないか! 俺はナナリーを未婚の母にしたくてゼロレクイエムを実行した訳では無いのだぞ!
それを…それを! スザァァク! 貴様ぁぁぁ! 責任を取らんかぁぁぁ!!
あの野郎…! ナナリーを! ナナリーを未婚の母にしやがってぇぇぇ! 偽造でも良いから戸籍を作れ! 顔も整形しろぉ! ナナリーの子供に父親を知らせないでいる気か!? 俺はなぁ、お前にシャルルみたいなクソ親父になって欲しくないんだよ!
くそぉ! あっ…モニカか。「どうしたの?」だと?フッ、分からないんだ。悲しいのか嬉しいのか。
ん? どうしたんだモニカ。何か怖い顔をしているぞ…ってほわぁ!!
急に俺を押し倒して地面に押さえ付けるモニカ。くっ、何て力だ! やはりラウンズな事だけはある!
今頃になって恨みを晴らす気か? ハッ、良いだろう。君になら殺されても構わない(自棄)。
ナナリー妊娠&未婚の母という事実に自棄になっている俺にモニカが無言で顔を近付ける。なんだ、頭突きでもかますつもりか?
予想される痛みに思わず目を瞑る俺。しかし、モニカからの返答は頭突きなどの痛みを伴うものでは無く、優しいキスであった。
は?「好き。愛してる」だと? きゅ、急に何なんだ!?
「貴方の事が好きなの。愛しているわ。妹姫のことなんて私が忘れさせてあげる」
ちょ、まっ、待ってくれ! 俺は君とそんな関係になるつもりは…「うるさい!」
ぐっ、なんと言う一方的なキスだ。一体どうしてこんな事に…。
お、おいズボンを脱がすな! ちょ、どこ触って…うぁっ!
俺の息子を柔らかい掌に押し付けて扱くモニカは俺に正常な思考をさせないように酸欠気味になるほどのキスをしてくる。
くっ、やめろモニカ! もっと自分を大切に…「黙って」俺の言葉はキスで遮られる。
やがて酸欠でぐったりとする俺の上に股がり自らの秘所に我が息子を擦り付ける。
パンティ越しとは言え、なんと言う快感。だが、俺にはシャーリーが! ここで屈する訳にはいかない!
見ていろモニカ! 俺は女に屈するような男ではない!
~一時間後~
女騎士には勝てなかったよ…。正にそんな状態で俺は花畑に転がっていた。モニカは俺の腕を枕にして満足した表情で眠っている。
何なのだろうかこれは。行為では経験の無いモニカをほぼ圧倒する事が出来たがラウンズにデフォで備わっている無尽蔵の体力の前に俺は力尽きた。
恐ろしい女だ。因みに最中に何故こんな事をしたのか聞いた所、「愛してしまったから」とかいう答えしか帰って来なかった。
俺も男であるからしてモニカのような美人に迫られて嫌な気持ちはしないし、歳上も悪くないと思ったものだが、好きだから押し倒すっておかしくない?
眠りから覚めたモニカが「結婚してくれるでしょう?」とかとんでもない事を言ってきたが俺には愛する人が居ると言った途端、力は入っていないが俺の首を両手で絞めて来た。
「私を愛してくれないなら貴方を殺して私も死ぬわ」
ひぇっ…分かった。愛してる。モニカよりも愛しい相手なんて存在しないよ(キメ顔)。
「そう。良かったわ」
怖っ! なにこの女、怖っ!
生まれて初めて感じる種類の恐怖に俺はモニカを愛すると言ってしまった。すまないシャーリー。
その後のモニカは俺と会うたびに交わるようになり、俺も段々と乗り気になって回数を重ねた。それこそシャーリーと同じかそれ以上にイタしたかも知れない。
彼女は最初の一回こそ逆レ気味だったがどうにも俺に尻を叩かれたりするのが気持ち良いらしく、行為もなるべく乱暴にしてくれと頼まれる始末。
そうなると俺も童貞卒業に伴うハイテンションもあってどんどんと過激な行為になっていった。
俺が調子に乗った原因としてはモニカが行為の度に従順になっていた事が挙げられるだろう。
シャーリーとはまた違うモニカの魅力に俺は彼女に惹かれていった。
彼女はシャーリーとの関係に薄々勘づいているようなのだが、最初が逆レ気味だった事を多少の罪悪感を感じているのか特に言及して来る事はなかったが、二人でお喋りしている時にシャーリーや他の女の名前を出そうものなら目が急に濁り、「私の前で他の女の話をしないで」とか「私だけを見て」とかとか「そうじゃないと貴方を殺して私も死にたくなっちゃう」とかとかとか。
う~む、モニカがこうなったのは素質もあるが俺がベットでやり過ぎたと言うのもあるか。
ブリタニア皇族に伝わると言う性技を割りと仲良くなったクロヴィスから聞いて調子に乗って使いまくったのが悪かったのか…やはり最初が逆レ気味だったからこっちも仕返しとか言ってヤリまくったのが悪かったか…。
ともかく俺のCの世界での生活は充実…うん、充実したものであったが、ふと下界を見れば紅蓮の起動キーを握り締めて空を見上げるカレンを見たり、空に向かって話し掛けるC.C.を見付けたり、お兄様と時折呟くナナリーだったり、思い出したように泣くミレイだったりと…あれ、俺って実はモテるのか?
思えばCの世界で暮らして暫く経つが今更ながらに後悔が幾つか湧いて来ていた。
女を知った後に下界を見れば色々違って見えてくるものだ。
はぁ、潔く死にすぎた気もしないでも無いな…せめて現世で童貞を卒業して死ねば良かった。
C.Cが「童貞坊や」とか「童帝」とか呼んでいたが今考えてみると俺ってよく童貞のまま世界征服なんて出来たものだな。
フッ、栓無き事か。もうどうする事も出来ない上に最初からやり直し、とか言われたらストレスで死ぬ自信がある。
まぁ、願うだけなら自由だろう。眠る前に神にでも祈っておこう。
◆◆
と言う訳で神に祈って次に目が覚めるとそこはKMFのコックピット。スクリーンにはゲフィオンディスターバーにより都市機能を喪失したトウキョウ祖界。
まさか本当に過去に戻ったのか…しかし何でよりによってこの時なのだ!
ここからどうやって黒の騎士団裏切りルートを回避すれば良いと言うのだ! と言うかシャーリーがとっくに死んでしまっている時間軸ではないか!
そもそもこの戦場でフレイヤが…ってそう言えばまだフレイヤは発射されていないのか。
フハハ! ならば、ならばまだ勝機はある!
既に斑鳩艦隊は攻撃を始めているからまさかここで撤退する訳にもいかない。
であれば取り敢えずスザクのランスロットをスザクが死を感じない程度に達磨にするか、若しくはジェレミアにギアスキャンセラーでスザクのギアスを解除させると言う手もあるか。
一番楽なのはスザクにも記憶がある事なのだが…世の中そう上手く事が運ばないんだこれが。
ぬぉ!? スザクが此方に突っ込んで来るだと!?
ちっ! 絶対守護領域で…『ルルーシュ!』なに、接触回線か!
『ルルーシュ、君は、あのルルーシュなのか!』
………え? お前まさか…
『答えろ!』
記憶があるのか? いや、待てよ。コイツの事だから富野口調ばりの思わせなセリフかも知れない。
『そうだとも、ナイトオブセブン。いやナイトオブゼロ』
『っ! やはり君も!』
驚愕に目を見開くスザクに携帯端末をモニター越しに見せる。俺の意図を理解したのか一旦距離を取って接触回線を切った。
『もしもし? ルルーシュ?』
端末から聞こえるスザクの声。やはりお前も記憶があるのか…。
ああ、そうだとも。俺だよ。お前の義兄になるルルーシュだよ!
『る、ルルーシュ! それは…その』
うるさい、この野郎! よくもナナリーを!
『ち、違うんだルルーシュ! 避妊には気を使っていたんだけどナナリーが生でって言うものだから』
黙れ黙れ! この変態騎士め! ナナリーにしたプレイの数々、忘れたとは言わせんぞぉ!
『何で君が知っているんだ!?』
Cの世界で見ていたんだよぉ!
因みにこの会話の最中、俺が割りと本気で撃っている拡散構造相転移砲やハドロンショットをあの馬鹿は避け続けている。
ジェレミアのサザーランドジークとギルフォードが駆るヴィンセントからの攻撃も全て避けたり防いだりとやはりこいつはキチ◯イ染みた強さだ。
『そ、そうだ! 君は過去に戻った原因に心当たりはあるのかい?』
露骨に話題をすり替えるスザク。まぁ、その何だ。あると言えば有る…かな?
『あるの!?』
あ、ああ。まぁ…ある。多分だけどな。
まさか女とイチャイチャしたいと神に願ったとも言えない。適当に誤魔化しておくか。
ほら、あれだよ。あの、もう少し犠牲を少なく出来たら良かったなみたいな事をCの世界で思っていたんだが、気が付いたらここに居た的な。
『…そうか。やっぱりルルーシュは優しいね』
納得したか?だからお前も死んでもフレイヤをこっちに撃つなよ。
『Yes, Your Majesty!』
馬鹿言っていないでお前も適当に動き回れ! 俺が指示したらランスロットを限界高度まで上昇させて更にフレイヤを遠くに撃て。そのタイミングで此方も退かせよう。
後でクソ親父を殺りに行くぞ! 分かったな? 一旦切るぞ。
良し。取り敢えずこれでトウキョウ祖界壊滅は回避されたか。
フハハ! スザクにも記憶があるのであれば余裕も余裕! 強くてニューゲーム状態ではないか!
ジェレミアも記憶は…通信とかを送って来ないと言う事は記憶が無いのか。
後は適当なタイミングでスザクにフレイヤを撃たせるだけだが…そのタイミングが難しいな。最低でもカレンが脱出してからでないと。
ジェレミア、訳は後で話す! 今は絶対にスザクを落とすな!
『しかし、ルルーシュ様。それでは!』
大丈夫だ。話は着いている。スザクが此方を落とす事は絶対に無い。
だからお前はスザクを落とさない程度で相手にして張り付けにしろ!
もしスザクが落とされかけたら然り気無く庇ってやってくれ。それから私が指示したらランスロットを上空に逃がせ。
『はっ! かしこまりました!』
これでスザクが落とされる事は無い。後は何か忘れている事は…うぉ! ロロだ! ロロの事をすっかり忘れていた!
ロロ! 電話に出ろ!
『兄さん? 今フロアを制圧した所だよ』
そうか。よし、ナナリーを助けたら三人で旅行にでも行こう。きっと楽しいぞ。
『あっ、う、うん。そうだね兄さん』
それからな、良い機会だから言って置こう。ナナリーが帰って来てもお前は俺の弟だよ。それは変わらない事実だ。
『っ! そう、だよね。そうだよね、兄さん! 僕は兄さんの弟だよね!』
ああ、勿論だとも。ナナリーが帰って来たらお前にお姉さんが出来るぞ。だから頑張ってくれ。
ふぅ、危ない危ない。後でロロがこの時にナナリーを殺すつもりだったと聞いたからな。どうにかこれで回避できるだろう。
そう言えばロロも記憶が無いのか。記憶が有る人間と無い人間の違いが分からないな。
ま、兎にも角にもこれで一安心か。
むっ、警告音! これは…ナイトオブシックス、アーニャか!
ぬぉぉぉ!! 突っ込んで来たか! 絶対守護領域展開!
舐めるな、これでもCの世界でシュミレーターならば! シュタルクハドロンを撃たれる前に後ろに回り込んでやるわ!
フッ、モルドレットは重量級KMFとしては俊敏な方だがそれはあくまでも重量級としての俊敏性。
蜃気楼の敵では…ぬぅっ! 流石はナイトオブシックス、簡単に後ろを取らせてはくれないか!
誰でも良いから援護しろ! 何? 玉城しかいないだと? 構わん! アイツは何だかんだ運が良い方だからまぐれ当たり位はあり得るだろう!
『ゼロ! 今助けるぜ!』
おお! 始めてお前を頼もしく思ったぞ! 頑張ってくれ!
『邪魔』
ミサイルどーん。
『すまねぇ、ゼロ。やられちまった!』
玉城ぃぃぃぃぃ! いや、しかしお前の尊い犠牲は無駄では無かったぞ!
ほんの一瞬、アーニャが玉城に気を取られた隙に今の今まで使った事の無かった蜃気楼の膝部分に着いているスラッシュハーケンでモルドレットのフロートシステムを傷付けることが出来た。これで空中戦からモルドレットは脱落だ。
高度を落としていくモルドレットを見送りつつ戦場に目を向ける。
ゲフィオンディスターバーが何基か破壊されてしまったようだが未だにトウキョウ祖界の機能は戻っていない。
ここはカレンが脱出するまでゲフィオンディスターバーを守りながら攻めあぐめているように見せかけるか。
そう考えてゲフィオンディスターバー防衛に部隊を裂いたのだが、それを好機と思ったかブリタニア軍が俺目掛けて多数押し寄せる。
フハハ! 馬鹿め! 各隊は私を囮にして突撃してくるKMFを撃破せよ!
藤堂、朝比奈、千葉。お前達はナイトオブラウンズの相手をしろ! 撃破出来なくても良い、動きを止めるのだ!
『しかし、それではゼロの守りが薄くなるぞ!』
構わん。ナイトオブラウンズを抑えられ、私の首級目当てに状況も見えていないブリタニア軍に私は落とされんよ。
『承知した。命に代えてもラウンズは抑えよう』
ふむ、これで取り敢えずカレンが脱出して来るまでの時間は稼げる上にロロがナナリーを保護してくれれば万々歳なのだが、何か忘れているような…カレンが来る前に割りと俺の命に関わるピンチがあった気がするが、なんだっけ?
アーニャは違うし…ジノは藤堂が抑えているから違う。
グランドナイツも千葉と朝比奈が相手しているからこれも違うな。
う~む…なんかあったとおもうんだがなぁ…?
それが隙となったのか蜃気楼に衝撃が走り、何事かと確認すると四肢をワイヤーで引っ張られており、目の前には量産型とは違う型のKMF。
ヴぇ! 思い出したぞ、ルキアーノ・ブラッドリーか!
『ゼロォ、ブラックリベリオンは失敗に終わる定めだったようだなぁ』
くっ、おのれぇ! ヴァルキリエ隊とか言う美少女・美女のみで構成される部隊を率いる変態め! なんて羨ましい!
『教えよう。大切な物、それは命だぁ!』
ルミナスコーンと呼ばれるドリル状の武器を絶対守護領域で防ぎつつどうにか逆転の手段が無いか探るものの…そうだ、コイツにやられそうになって大ピンチって時にカレンが来てくれたんだった。
フハハ! ならばどっしり構えて待てば良い。なんならヴァルキリエ隊を鹵獲するのも悪くないな!
さぁ、カレン! 何時でも来てくれたまえ!
………
…………
……………。
ん? あの、カレンは?
ちょちょちょちょ、ちょっと待てルキアーノ! カレンが、カレンが来るからちょっと待て!
モルドレットの攻撃を防ぎ続けた訳ではないからエナジーにはまだまだ余裕があるがこのままドリルでゴリゴリされ続ければ不味いぞ!
『硬いだけのKMFではなぁ!』
カレン来い! こちらの援軍はどうなっている!? あ? ブリタニア皇帝旗艦が? 分かった。それは分かったからこっちに援軍を寄越せ!
うぉぉ! 絶対守護領域出力全開! カレンが来るまで持てよ!
むっ! ヴァルキリエ隊の機体が爆散!? カレンか!
『先日はどうも、ブリタニアの吸血鬼さん』
カレェェェン! ありがたいが出来ればヴァルキリエ隊は鹵獲したk…なんでもない! 頑張ってくれ。
フッ、分かっていた事だがカレン強すぎだろ。あっと言う間にルキアーノをチンしてしまった。
カレン、ありがとう。よく戻って来てくれたな。君はこのまま敵本陣に突撃してシュナイゼルを…『ゼロ! 私はスザクを!』は? おいおい待て待て!
俺の制止を振り切り光跡を残しながら戦場を駆けるカレン。その姿は正にゼロの親衛隊隊長として恥じないものなのだが…
人の命令は聞け! 君はそう言う所が散見されるぞ!
仕方ない。おい、スザク。フレイヤの発射準備だ! カレンがそっちに行ったぞ!
『ええっ!? 流石に今のランスロットじゃキツイよ!』
だから早く上昇しろ。限界高度で無くても良い。フレイヤの爆発圏内に祖界が入らなければOKだ。
『分かった。君は黒の騎士団を退かせてくれ』
ああ、任せておけ。じゃ、頼むぞ。
全軍に告げる!ランスロットが新兵器を使用すると警告をして来ている。ここは万が一を考えて敵本陣近くにいる部隊以外は後退せよ! 敵本陣にはシュナイゼルがいる。流石にシュナイゼルを巻き込んでの使用は無い筈だ!
俺の命令に戸惑いながらも後退を始める黒の騎士団。
そしてグングン高度を上げて行くランスロットとそれを追い掛ける一筋の光…ってカレンか!?
ってしまったぁぁ! 紅蓮はロイドに改造かれているから周波数が分からん! ちっ、嫌だが全周波数で言うしかないか…カレン! 後退しろ!
──その時、俺は知らなかった。この通信が俺の命を脅かすものになるとは。
『でも! 今ならスザクを!』
間抜け! ここでスザクを落とされる訳にはいかないんだよ! とは言えないし、何と伝えた物か。
ええい! 兎に角、カレン! 君を失う訳にはいかないんだ! 頼むから後退してくれ!
『ゼロ…そこまで私の事を…了解、後退します!』
そうだ、それで良い。全くひやひやさせてくれる。
ランスロットがフレイヤを発射すると知ってブリタニア軍も後退しているし、この辺りが潮時か。
本来であればフレイヤは発射させたく無かったが他に黒の騎士団を退かせる理由も無い上に自然休戦状態を作るにはこれしか無かったが、果たしてトウキョウ祖界がフレイヤによる被害を受けていない状態で休戦になるかどうかが微妙な所か。
ブリタニア軍もそれほど余力が有る訳でも無い。本陣も大分削れたようだ。
そして嘗てのように祖界のど真中に発射されるのではなく遥か上空で炸裂したフレイヤ弾頭の威力に黒の騎士団並びにブリタニア軍は自然休戦状態となったのであった。