「あの、助けてくれてありがとう。謝礼はしっかりさせてもらうよ。僕はハヤト。聖騎士で、役不足ながらもリーダーをさせてもらっている」
絶体絶命の処をリスクをおって助けたのだ。謝礼は言われるもがな、きっちり頂く。だが、先に話をふってもらえると助かる。言いにくいからな。
「いーえいえ! こんな世の中ですからね、お互い助け合っていかないと!」
コマチは流暢にイケメンと対話する。この女の子。コミュ障かと思えば違う。普通に対話できるし、グループにも溶け込める。それでいて一人でもいい。どちらともこなせるハイブリッドボッチだと気づいたのは、ペアを組んで一週間後だった。
ボッチ通し意気投合したとこ思っていたのに解せぬ。
「ゆきのん、大丈夫?」
「え、ええ…。魔法を使いすぎただけよ。大丈夫」
「おにいちゃん、はやくはやく、見せ場だよっ」
「はぁ? 知らねぇよ。大丈夫っていってるから大丈夫だろ。こんな無様晒しといて今さらいじはる奴なんていないだろ」
俺の声が聞こえたのか、黒髪の魔法使いは顔を歪めて、此方を睨んでくる。
こわっ、今時の女性、こわっ!
「す、すまない。彼女は少しプライドが高いところがあるんだ。もし、回復アイテムか何かあれば買わせてもらえないだろうか? 謝礼とは別に払わせてもらう」
「え、あ、いや、別に。ものとかじゃないんで」
「アイテムではない?」
「おにいちゃんはですね、ちょーと特別なスキルがあるんですよ。ほら! はやくはやく!」
ちっ!コマチのやつめ。助けた恩義を忘れて馬車馬の如く働かせやがって。
此方を睨む女性と不安そうな顔をする女性。
「あの……手、貸してもらっていいすか」
「嫌よ」
「ゆきのん!」
神官から咎められ、魔法使い――ユキノン
は手を差しだした。
白くて細い、綺麗な手が此方に差し出されるとむしろ握っていいのだろうか。後で賠償金とかいわないよね?
「はやく」
「わかったっつーの。焦らせるな」
「おにいちゃんコマチ以外の手握れないもんね、がんばって!」
「おー。できればそれは2人の時だけにいってほしかったな」
ちっぽけな勇気をもって差し出された手を握る。後は唱えるだけだ。
「ルミアリスの加護を。ヒール」
俺の願いも叶えてくれるルミアリス様まじ天使。詠唱により、ユキノンは驚きつつも、疲弊した顔はなりをひそめた。
「え、盗賊、なんだよね? なんでヒールを…」
「さぁな。教える義理はない」
「ひどっ!? 教えてくれてもいいじゃん! ケチ!」
「黙れ頭までピンク色かよ、このビッチ」
「ビッチじゃないし! 最低! マジキモい!」
「キモいって言うやつがキモいんだよ
。てか俺のかーちゃんに謝れ」
「あーはいはい。その辺にしてとりあえず街まで戻りましょう。ここでまたバッティングしたら次はちょーときついと思ういますし」
コマチがいう様にこの森林で仲良く話し合いなどしていたらいつかはまたゴブリンと合間見えることになる。此方は手負いが三人。体力面において何があるのが二人。戦闘が継続できないことは誰がみてもわかる。
「そうだね。とりあえず街まで戻ろう。その後に謝礼をさせてくれ」
皆それが先決であることを確認し、ゴブリンの死骸から得られるものを剥ぎ取っていく。剥ぎ取りが終われば、イケメンの言うとおり、俺達は陣形を組んで街まで戻った。道中またあーだこーだと騒ぐかと思えば、その辺は常識があるのか、単純に疲弊していただけなのか。ビッチに関しては後者だと思うが、結果的に黙って歩いてくれればそれでいい。
要塞都市 オルタナ。アラバキア王国の辺境にある唯一の防衛地点にして、始まりの街。衣食住はランクはあれど最底辺でも暮らしていけるのが、ひょっ子にも優しい。
俺達は剥ぎ取った穴あき銀貨や、ゴブリンが使っていたヘルメット、刀剣、狼の牙等々を物品店に売りにいった。疲れていても、時間がたてば物は衰退していく。ほんの数時間、一日では変わらないだろう。だな、それが1ヶ月、一年たてばどうだろうか。何事も早めるやる事が大切なのだ。
店長との壮絶な駆け引きも終え俺達はカフェに腰を落とした。
「改めて助けてくれてありがとう。あのまままだと本当に危なかった。僕はハヤト。右側の女性がユイで、その右がユキノさん。」
「ユイです、 助けてくれてありがとう! 宜しくね!」
「ユキノです。助太刀、ありがとうございました。」
「私はコマチです。で、横の目が死んでるのがおに…ハチマンですっ。これも何かの縁ですし仲良くしてくださいっ」
「ハチマンです。ども。」
「こちらこそよろしく。それでだけど、今回の謝礼として、五シルバーでどうだろうか。少ないと思うが、すまない。僕達ではこれが限界なんだ」
俺とコマチは目を点にした。金額が少ないからではない。むしろ予想より多いのだ。
「そんなにいりませんよ! 失礼ですけど、私達と同じでまだ駆け出しですよね? 」
五シルバー。俺とコマチで狩りにいって一日で手にはいるのは平均80カパー程度。約五倍の金額を提示された。上に行けばそのくらいでと笑われるかもしれないが、今の俺にとっては大金といっても過言ではない。此方としては貰えるもんはもらっておきたいが、コマチは引け目を感じで貰わないだろう。
「はは…お恥ずかしながら、ビギナーといえる一ヶ月は過ぎて三ヶ月目だよ」
「あ、すみません…」
「ううん。大丈夫。それよりもできれば受け取ってほしい。此方としては命を助けて貰ったんだ。せめてこのくらいは払わないと義勇兵としてのプライドが無くなる」
「ですけど…」
「あの」
「なんだい?」
にこやかに微笑んでくるイケメン。何笑顔がデフォなの。
「別にこっちは貰えるなら貰いますけど…生活できるんですか」
俺の問いにたいしてイケメンは無言になる。
さっきの戦闘を状況と三ヶ月めの義勇兵。
なんらかのアクシデントで先ほどの様な事態に陥ったのだろうが、それでも三ヶ月目にしてゴブリン狩りをまともに行えないのはチームとして機能が上手くいっていないからだ。俺とコマチですら、次からは鉱山の方に狩りの拠点を移す算段をしているのにも関わらず、この三人は三ヶ月間足踏みをしている。そんなやつらが五シルバーも払えば破産もいいところ。どっから金を出すつもりなのだろうか。
「ちょっと、厳しくなるかもしれないけど、暮らせない訳じゃないよ」
「貴方はそれでいいかもしれませんけど、他の二人はそれでいいんすか」
「え、えっと。その、うん」
「……ええ」
ほらみろ。いい淀むってことはそういうことだ。
「俺は別にあんたらを助けた訳じゃないんですよ。この馬鹿が勝手に突っ込んでったんで、コマチに助太刀したら形的にはあんた達を助けるようになった。それだけなんで、2シルバーと50カパーでいいです」
「しかし…」
「まぁまぁ!おにいちゃんもこういってますし! 2シルバーと50カパー。これでいきましょう!」
コマチに押されるようにして、ハヤトは頷き、提示金額を渡した。
これで取引は終わりだ。もう帰って寝たい。
「それじゃ」
「あ、まってよおにいちゃん!」
あのイケメン、もといハヤトは腹が立つが頭の回転は速い。美女二人を侍らせてるのも気にくわないし、なんとなく意識的にも気にくわない。
帰って、寝よう。