灰と幻想のハチマンガル   作:ぜの

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理由

「小町に話してみ?」

 

「…うるせぇよ」

 

「…おにいちゃんの馬鹿」

 

小町はそういって去っていった。

俺の微妙な変化を見抜いた小町はいつものように手を差し伸べてくれた。しかし、自身の中でキャパを越えた問題故に拒絶してしまう。

修学旅行を終え、葉山達から受けた依頼を解決するために行った偽告白。相反する依頼内容をクリアするためにはこれが最善の策である今でも思っている。だが、最善の策だとは思えなくなってしまった。

 

雪ノ下が。由比ヶ浜が。

 

俺が求めている何かに気づける奉仕部が瓦解してしまう。これは予想していたよりも自身の中で大きな異物を抱えることになってしまった。

 

今日はもう寝よう。

 

燻る苛立ちを無視するため布団に潜った時だった。

 

ユーガッタメール

 

アラーム機能付き携帯ゲーム機は珍しくもメールを受信した。見るのも面倒だと感じたが、それでも寝る気が起きなかったために携帯を開く。

 

差出人は平塚先生。

 

内容は――。

 

 

 

 

 

 

「おにいちゃん、起きて! もう朝だよ!」

 

 

「…もう少し寝させてくれ」

 

「ダメ! 寝させたら昼間で起きないじゃん!」

 

睡眠を求める俺に対して、コマチは容赦なく布団を剥ぎ取りにきた。

 

「朝御飯食べよ」

 

「…おう」

 

昨日雑に酒を飲んだせいか、頭が痛い。それこれも、ユキノが持ち込んだ案件の……。

 

テーブルにつき、コマチが準備してくれた朝食を貪りながら思い出す。

 

「あ」

 

「コマチ、すまん。昨日酒場にいったときにユキノとユイにあってだな。今日一日だけチーム組んで狩りをすることなった。コマチはくるか?」

 

「え」

 

「や、強制とかじゃないからな。むしろ来なくていいまである」

 

「いくよ! そうじゃなくて、おにいちゃんがチーム組むとか予想外すぎて。そーゆーの即断ると思ったから」

 

「お、妹としての素質あるんじゃないか? 断った、非常に気乗りしないが、やんごとなき事情があってだな…」

 

「まさか犯罪おかしちゃったとかじゃ」

 

「なわけあるか。リスクヘッジの見極めは自信がある。メグリさん知ってるだろ。頼まれてしまったら行くしかない」

 

「なる。でもいいと思うよ! これでおにいちゃんの口下手が治るかもしれないしっ」

 

「さいですか…」

 

「ほら、じゃあもういこう。女性待たせるとかコマチ的にポイント低い!」

 

「いやハヤトもいるから」

 

パタパタと準備に取りかかるコマチ。嬉しそうな姿はあのイケメン野郎に会えるからとかじゃないですよねコマチさん。おにいちゃん、あんな奴許しませんよ。

 

軽くため息を吐いて、俺も準備に取りかかる。

 

面倒なことはできるだけ楽に、迅速に片付けるが吉だ。

 

 

 

西之門に行くと既に三人は待っていた。

 

「すみませーん! お待たせしました!」

 

「いや、大丈夫だよ。僕達も今来たところだからね」

 

受け答えがそつないハヤト。これがイケメンなりえる理由なのかもしれない。

 

「あの、ハヤトさんはよかったんすか。ユキノさんとユイさんに誘われましたけど、ハヤトさんがリーダーな訳ですし」

 

「ああ、うん。話してほしかったのは正直あるけど、ハチマン君たちが加わってくれるのは心強いからね。大歓迎さ」

 

「そすか」

 

「あとハヤトでいいよ。僕もハチマンでいいかな?」

 

手を差し出してくるハヤト。

なにこの人アメリカンなの? アメリカンってなんだよ。

 

「お、おう、おーけーだ」

 

差し出された手を軽く弾く。

 

「今日もゴブリン狩りにいくつもりなんだけど、異論はあるかい?」

もとよりそのつもりだ。このメンバーてゴブリンより格上を相手にするなら帰るまであった。

皆文句は無いようで、頷く。

 

「よし。気を引き締めていこう!」

 

 

 

「ユキノさん!」

 

「わかってる。マジックミサイル」

 

「ギョオェ」

 

ハヤトに群がる三匹のゴブリンの内、一体に魔法の魔弾が直撃する。中距離からの攻撃であったため、一撃で仕留めることはできないが、確実大きなダメージをあたえている様だった。

 

動きが止まってくれればそれでいいがな。

 

コマチが何時もの如く、ゴブリンの眼を射撃し、怯ませることに成功したのをみて、俺は地を蹴った。

 

まずは眼を狙撃されたゴブリンの首を斬る。首を切断する必要性はない。目がやれていれば仮に数十秒反撃してきても散漫な動きになるため回避は容易だ。今求められるのは殺しきれるだけのダメージを素早く三匹にあたえること。

 

二匹のゴブリンの首を切った後、攻撃をしかけてきたユキノに襲いかかろうとするゴブリン。

 

「女ばかり相手にするんじゃねーよ。寂しいだろうが」

 

後ろからゴブリンの胴体に足を巻き付け、首に刃を深くいれる。

 

「はやい…」

 

「どーも。誉めてもなにもでないけどな」

 

「事実を言ったまでよ。貴方に何か差し出せる物があるとは思えないもの」

 

「ハチマンの速度には驚かされるよ。いままでこの三匹を仕留めるにはあと十分はかかっていた」

 

「ハチマンって実は強いんだね!」

 

「実はとはなんだ、実はとは」

 

「おにいちゃんこーゆー影の薄い仕事得意ですからね!」

 

絶賛の中に過分の刺をはらんだ称賛をもらう。

影の薄い仕事が得意なのではなく、俺の仕事が影が薄いの。俺が影薄いみたいな風にいうのやめてくれる? いや薄いか。薄いな。

 

ハヤトが注意を引き付けて、ユキノとコマチが狙撃。動きがとまった奴から俺が殺していく。ダメージを負えば、陣形を建て直しつつ、ユイに回復をしてもらう。

 

このプランは予想以上に上手く回り、ゴブリン五匹程度であれば余裕に相手どれるほどだ。

 

最初は不安でしかたがなかったが、どうもゴブリン程度ならばできる奴ららしい。

 

全体を把握しつつ、要所で指示を出し、臨機応変に対応でき、且つ聖騎士の役目であるヘイト集めもこなすリーダー。

 

複数起動はできないものの、単発の威力と精度は高い魔法使い。何よりも頭が回る。

 

回復役をこなしつつも、敵が迫れば杖で殴り殺す神官。戦闘に参加できない者かと思えばそうでもないらしい。

 

個々の能力は決して低くないこのチームに欠けているのは火力だ。リーサルウェポンがなかった。故に戦闘時間が長引き、経過するにつれて戦線が崩壊してしまう。

なるほど。ユキノはそれを気づいてるからこそ、火力担当として俺を誘ったのだろう。コマチの狙撃技術が加われば、安定性を増す。

 

入っても、いいかもしれないな。

 

 

 

ふと、そう心が傾いた時だった。

 

 

 

眼前に馬鹿デカい狼が表れた。

 

 

 

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