電脳の世界にて、悪狼は嗤う 作:コズミック変質者
そこは天高く聳え立つ塔の最上階の一つ下で、今現在、最上階が立ち入り禁止になったことで実質、最上階として扱われている部屋。その広い部屋には32の人一人が余裕で入れる棺が並べられており、その約三分の一が空いており、残りの三分の二は閉ざされている。
その部屋は整合騎士と呼ばれる、アドミニストレータという、つい最近まで君臨していた神のような存在が自らの手駒である整合騎士を調整するための場所。
調整、と言っても肉体的な調整はほとんど行われない。それは整合騎士が自分たちで行うべきものだからだ。ならば何を調整するのか。
それは整合騎士たちに宿された記憶。
アドミニストレータが求めたのは最上級の強さを持つ、都合のいい手駒。そして下々の民衆たちへ威光を示すことの出来る存在。自分に反逆し、秘密をバラしたりする整合騎士など無用。だが一々処分していては、整合騎士の数は確実に足りなくなる。
故に、頭から調整していく。
全ての人間に刻まれた『禁忌目録』をベースに、これまでの思い出、経緯、家族、友人、そして愛する者の記憶を全て封じ込め、整合騎士としての役目を刷り込む。
本来であれば非道な行為としてつるし上げられ、その玉座から引きずり降ろされる行為だが、アドミニストレータは違う。彼女は間違いなく神に等しい存在だった。整合騎士でさえ扱えないレベルの《神聖術》を行使し、意思あるもの全てを屈服させる力を持っていた。
そんなものが齢数百年も続けば、全てが当たり前と化していく。
この部屋には、調整中だった整合騎士たちが眠っている。近々起こる『ダークテリトリー』の悪しき存在達との戦争を控え、整合騎士の団長であるベルクーリ・シンセシス・ワンの指示により、眠っている整合騎士達をできる限り起こし、戦争に参加させようと四苦八苦していた。
数百もあるコマンドの解析は難航し、起こすことが出来たのはたったの数人。それ以外は未だに調整中であり、棺から出すことは出来ない。
最早手当たり次第、と言った感じでコマンドを操作していくも、全てがエラーと表示される。時間もなく、この日の作業は終了し、棺に眠っている整合騎士以外は誰もいなくなり、この部屋は無人となった。
日付がちょうど変わった頃、部屋の壁に埋め込まれている水晶が光を放ちだした。その光は水晶から伸びる幾多もの線を通っていき、やがて部屋中に広がり出す。伸びた幾多もの光が部屋の中央に集まると、光は円型を描く。
すると床がパズルのように移動する。置かれていた棺が一つ一つ
接触しないように動き出し、横にされていた棺は円型で壁に掛けられたようになる。
約三十以上の棺に囲まれると、中心が隆起し、新たな棺がでてきた。その棺は他の棺と違い真っ白で、中央に『WARNING』と刻まれている。その棺は大量の白い煙を吐きながら、ゆっくりと開いていく。
煙が晴れ、棺に眠っていたのは一人の少年だった。少女とも見えるその美しい貌。白い肌に白銀の髪。その右目には不釣り合いな黒い眼帯を右目に付けている。そして他の整合騎士達は鎧で棺に入っているのに対し、少年は鎧ではなく黒衣。黒衣には赤い腕章がついており、腕章には黒で0と書かれ、その0には/が入っている。その姿は整合騎士などには見えず、見えて自警団のに入ったばかりの少年だ。
少年はゆっくりと目を開き、美しい一つの碧眼で天井をみる。上体を起こし、両手を上げて伸びをする、その時に出る声も、また少女のものと間違う位高い声。
「おや、僕が封印から目覚めたということは、あの劣等は死んだのかな?」
少年は軽く棺から飛び下り、辺りを見渡す。気配、というよりも存在が放つ魂に敏感な少年は、自分を封印したアドミニストレータの気配がないことを怪訝に思うも、すぐに死んだと、答えに辿り着く。
「へー、僕の知らない間にこんなに整合騎士は増えたんだ。一、二・・・大体三十人位か。で、まだ眠ってるのは二十人位かな?」
少年は増えている棺に笑顔を綻ばせる。二十人眠っている。だが十人は起きている。つまり十人もの、
「あの劣等が死んでそれほど時間はたってないね。ということは、
少年は嬉しそうに頬を綻ばせ、この部屋を後にする。行く先は上への入口ではなく、下への出口。最上階などに行っても楽しませてくれるものは何ものだ。わざわざ行く必要は無い。
「あ、そうだ!そういえばまだベルクーリ君は生きてたっけ。楽しみだな〜。僕とどれくらい遊べるのかな〜」
その顔は可愛らしく笑っているが、その目は混沌を宿したようにドロドロとしている。その体からは周囲が捻じ曲がるほどの邪悪な空気が漏れている。
今ここに、この《アンダーワールド》の神であるアドミニストレータさえもが恐れた怪物にして、最悪の戦争狂が解き放たれた。
彼は人ではなく、騎士でもない。魔人にして狂狼。血に濡れた最速の悪悦たる悪狼。
整合騎士が持つシンセシスの名を貰えなかった代わりに、『
かつて『