正義の味方になりたかったんだ 作:百合に挟まる男を切るエルフの剣士
とある少年がまだ10歳だった頃、祖父からある物を貰った。
それは、1枚のカード。
女の人が弓を構えている絵の書かれたカードだ。その時祖父が言った言葉が少年の心に残っていた。
「〇〇。このカードは〇〇が『正義の味方』のなりたいと思ったとき力を貸してくれるカードだ。」
「正義の味方?」
「そう。僕は正義の味方になりたかったんだ。でも、正義の味方は期間限定なんだ。年を取ると正義の味方を名乗るのが難しくなる」
その言葉に少年は笑って言う。
「俺が代わりになってやるよ。任せろって。爺さんの夢は俺が叶えてやるよ」
祖父は優しく笑い〇〇を撫でた。それから2年後祖父は亡くなった。
そのあと、この世界にはありふれた小さな事だが、少年に大きな出来事があり、少年は
『正義の味方』になることに取り付かれた。
それから4年後。それは、帰宅する学生やサラリーマンで賑やかな夕暮れのことだった。
この世界は魔物がいる以外は概ね平和な日常が続く世界。そんな世界では魔物以外にもその日常を壊す物があった。
「がぁぁぁぁ!」
一人の帰宅途中の男子高校生が突然苦しみ出して倒れた。少年は胸を押さえ、膝を付き、猛烈な眠気に襲われた。それを見た周りの人が叫ぶ。
―覚醒だ!
そう。
―男子生徒が魔法使いに覚醒したぞ!
魔法使いへの覚醒である。
少年は苦しみからのがれるために手を伸ばす。
その手を誰かが取った気がした。そのことに助けが来たのだと思い、気絶した。
駆けつけた救急隊員達によると少年が倒れた理由は魔法使いに覚醒した人が起こしやすい無意識による魔力放出であることがわかった。
最も、その漏れた魔力がどこに行ったかはわからなかったが。
その後、少年はその4日後入院中にもう一度無意識の魔力放出をすることになる。
その時もまた右手を伸ばしていた。漏れた魔力がどこに行ったかわからなかったが。
ただ、その時少年の右手には誰かの手があった。
大人ではない、少年よりも小さく弱々しい手。
その儚い感触を逃すまいと少年は右手を握りしめる。
その手がこんな自分に助けを求めているように感じたからだ。
誰かは知らない、わからない。
だけど、こんなにも弱々しい手を離すわけにはいかない。
離してはならないんだと少年は自分に言い聞かせた。
少年は『正義の味方』だった。
これは、『正義の味方』を目指す少年『衛宮士郎』の物語である。
―入学当日―
士郎はすっかり元にもどった体を確認しながら、正門へと向かっていた。正門につくと、何かが浮いているのが見えた。
「おーお前が転校生か?」
「はい。衛宮士郎です」
「そうか、衛宮。俺は卯之助。この学園のいわゆるマスコットキャラクターだ」
「ようやくお願いします。卯之助さん」
「こちらこそよろしくだ。衛宮。今、案内役の生徒が来るはず…」
そこに一人の女子生徒がやってきた。
「すいません!遅れました」
「おっ!来た来た。衛宮。この子が…」
「南智花です。よろしくお願いします!転校生さん」
「衛宮士郎です。よろしくお願いします。南さん」
「智花でいいですよ。衛宮さん」
「そうですか。では、そうします」
「智花。衛宮の案内は…」
「すいません。今、ちょうどクエストが発令されちゃって、行かなきゃいけないんです」
「マジか!うーん。そうすると、衛宮の案内をどうするべきか…そうだ!衛宮も一緒にクエストに行けばいいんじゃね」
「それはいいですが…」
「でも、危険ですよ。それにデバイスも…」
「デバイスならあるわ」
唐突に横からスマホの様な物を差し出される。士郎がそちらを見ると、白衣を纏った少女がいた。
「六戸さん!」
「あー衛宮。こいつは六戸結希。この学園のいわゆる研究者だ」
「衛宮士郎です」
「無限の魔力…興味深いわ。お願いだから、最初のクエストで死なないでね」
「ちょ!六戸!」
その言葉に士郎は笑って
「死にませんよ。誰も」
その言葉と笑顔に智花と卯之助は悪寒を覚えた。一言、言っただけなのに、ただそれだけなのに。それに気づいているのかいないのかはわからないが、六戸は続ける。
「そう。ならいいわ。それにより、デバイスは高価な物だから無くさないように」
「わかりました」
そう言って、六戸は去っていく。士郎は振り向き
「さて、行きましょうか。俺の最初のクエストに」
そう宣言した
投影魔術はだいたい第7次侵攻からです。