拝啓前世の世界よ、神様に艦隊これくしょんの世界に転生させて貰ったんだけど、思ってたのと違う。
俺の産まれた世界は、深海棲艦と戦争をしているのだが圧倒的に負け続けている。艦娘が出現したのも三年前だし、良く普通の人間だけで耐えられたなぁと感心する次元だ。
艦娘登場時はメディアに良く取り上げられたが、世間からすれば感情がある兵器としてあまり受け入れられなかった。いくら見た目美少女でも、駆逐艦ですら大人の男に腕力で勝てる姿を見れば恐ろしくもなる。
現在俺は、就活に失敗して提督適正試験を受けされられているのだ。筆記試験は一般常識に関しては殆ど解けたが、身体能力テストは致命的だった。残す試験は、艦娘とのコミュニケーションだけだ。
コミュニケーション試験は一対一で行うらしく、試験者番号が呼ばれれば部屋に入って艦娘と十分話すと言う簡単なものだ。俺より前に受けた試験者が部屋から出てきたので、俺はその人に話してみることにした。
「お疲れ、艦娘ってどんな奴だった?」
「あ?何だよいきなり。」
「会う前にどんなやつかを聞きたくて。それでどうだった?」
「あー、見た感じは普通の女の子みたいだった。けど、この試験拷問の間違いじゃないのかと思ったぜ。」
「次の方、お願いします。」
俺が話を聞いていると、俺の番がやって来た。俺は話を聞かせて貰った人物に軽く会釈をして、艦娘のいる部屋に入った。
部屋の中は椅子が二つあり、その一つの椅子には女の子が座っていた。俺はもうひとつの椅子に座るが、座ってから無言になってしまう。
「どうかしました?何か話してください。」
一分後、無言の空間に俺と向き合っている女の子が睨み付けるような目でこちらを見てくる。俺は理解した、確かにこれは拷問だ。こんな綺麗な顔の異性と話すのは、前世がオタクの俺には無理だ。そのまま時間は過ぎて、女の子がため息をついて俺に言った。
「また無言か、あんたこの試験は零点ね。」
そう言われ、俺は部屋を出た。うん、提督に成れたとしてもあんな美人だらけの職場とか胃に穴が開くな。俺は不合格という試験結果を確認し、バイト生活が始まった。
それは、俺がコンビニバイトの帰りの時に起こった。
晩飯を買うついでに立ち読みをしていると、コンビニにボロボロのフード付きのコートを着た女の子が入ってきたのだ。最初は汚い子だなと思い無視して立ち読みを三十分程続けていると、まだあの汚い子がカップ麺を座り込んでみているのが見えた。俺は本を置いて弁当を買い温まるまでの時間を待っていると、あの汚い子がカップ麺をコートの懐にしまうのが見えた。俺の弁当が温め終わり店を出るのに合わせて女の子が店を出ようとしていた。俺は振り返ってその汚い子と向き合う。
「コートの中の物、返してきなさい。そしたら俺は黙っていてやる。」
俺は小声でそう言うと、汚い子はビクッと体を震わせてカップ麺売り場へ戻っていく。汚い子は俺の視線を気にしながらカップ麺を元の場所に戻した。
汚い子がとぼとぼとコンビニを出て行く。俺はその汚い子の腕を掴む。
「ッ!ハナセ!」
声から察するに女の子のようだが、こんな子供が万引きをするとは思わなかった。俺はその汚い子の腕に、俺が持っている弁当を渡す。
「エッ!?」
「腹が空いたんだろ?それやるからもう盗みなんかしようとするなよ。」
俺はそう言って、家に走って帰った。家に帰ると腹が空くので布団を敷いて眠ることにした。眠った俺の夢には、あの汚い子が出てきた。あのフードの奥の瞳が俺を見ている、ただそれだけの夢だ。この出会いが、俺の運命を狂わせるとは、俺はまだ知らない。