―――それこそが偽善!
あの日から3日、姿をくらましたフィーネはまだ見つかってない。師匠は今のうちに体を休めておけとは言っていたけども今の私はあの子から言われた言葉でいっぱいいっぱいだった。
―――痛みを知らないあなたに、誰かの為になんて言って欲しくない!!
胸が、きゅっと苦しくなる。痛みなんか文字通り痛いほどわかっている。わかっているけれど、私のやっていたことは間違いなのかな・・・?
ドン
「うおっ」
「あっ」
考え事ばかりしていたからだろうか、人にぶつかってしまった。ぶつかった拍子に尻もち付いた。何やってるんだろう私・・・。
「大丈夫・・・か?」
そっと手をさし伸ばされる。
「はい・・・大丈夫です。すいません」
その手を握り、立ち上がる。その人は緒川さんのようなスーツを着ている男の人でフィーネを名乗ったマリアさんと同じぐらいの年齢だろうか。とあの子に関係している人を思い浮かべたからかまたあの言葉が頭をよぎる。すると、それが表情に出ていたのだろうか、男の人が口を開いた。
「・・・初対面でアレだが君は悩みでもあるのかい?」
こちらの考えを見通しているかのような表情でこちらを見ている男の人。一瞬、ナンパ?とも思ったけども今の私には誰かに話しを聞いてほしい気分だったし、知らないからこそわかることがあるかもしれないと思って私は答えた。
「・・・相談、乗ってもらってもいいですか?」
それになんだかこの人なら大丈夫な気がする。どこか腰でも下ろそうかと言われてついて行ったのは近くの公園のベンチ。そこに座ると男の人から俺のおごりだと言われていつの間にか買っていたのか缶ジュースを手渡される。お金を渡そうとしてもいーからいーからと言われてとりあえずプルタブを空けてぐびっと一杯飲む。果物のすっきりとした甘さが喉を通り、少しだけど私を落ち着かせてくれた。
「・・・実はですね・・・」
ぽつりぽつりと機密に関わるところを誤魔化しながら話した。途中、誤魔化しが危ういところもあったけど別に追及せずに聞いてくれた。
私が人助けをやっていること。
それを手を伸ばした女の子に偽善と言われたこと。
それから自分でどうしたらいいのだろうと悩んでいる事を。
「・・・・・」
話終え、辺りが静かになる。男の人は悩んでいるようだった。やっぱり難しかっただろうか。だが男の人がキリッとしたと思うと口を開いた。
「まず俺の結論から言わせてもらうけどな。無視しな」
「え?」
こういうのをあっけに取られたというんだろうね。思わず口が開くほどシンプルが私が予想してなかった言葉が彼の口から出てきた。
「・・・君はその人助けが正しいと思って今までやってきたのだろう?それならそれが君にとっての正義だ。正義というのは立場や生まれなどで大きく変わる。君とその彼女の正義は全くの別だったんだろう。だから君はそれを理解しようとしたし、彼女は拒絶した」
私の、正義・・・。
「正義の反対は悪ではない。全く相容れられない別の正義だ。悪とはそれをわかりやすく分別しただけで本質は全くの一緒だ。だから気にするな。何と言われようと君は自分の信じた正義を貫き通せばいい。俺はそう思う」
彼の言葉は不思議と説得力があり、私の中にストンと入りこんだように思えた。
「とまあ、偉そうなことを言ったがご要望にお応えできたかな?」
「はい!ありがとうございました!私めげずに頑張ってみます」
と、立ち上がった私はお辞儀をするとその人は笑顔で立ち上がりそれじゃあ頑張れよ響ちゃんと言って歩き出した。私はその背に大きく手を振ってから寮へと歩き出そうとしてふと思い出した。
「あれ?私自己紹介したっけ?」
振り返るともう男の人はどこにもいなかった。
「ああ、すまんなセレナ。ちょっとトラブルというかトラブルサポートしててな・・・。え”マリア激おこ?・・・・プリンつけるから弁護してくれない?」