転生者は歌姫を守るためにがんばるようです   作:葉っぱの妖怪

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 ど う し て こ う な っ た し

今回から過去改変&キャラ改変入ります。


転生者は血で汚れても向き合い続けるようです

【ケトス・ミュケーナイ】

 

 アジトを二課の襲撃により失った俺たちは速やかに次の手を打つことにした。俺が予めある程度の聖遺物を機内に確保していたとはいえやはりどこかで補給しなければいけないということには変わりなかった。そこできりしらコンビの発案で二人は今日学園祭のため一般公開されてるリディアンに潜入し、可能ならなにかしらの聖遺物を確保するということになった。念のためセレナにブレーキ役として引率を頼んだので下手に無茶なことはしない・・・はず。

 とりあえず待機組は都市近郊の倉庫内にヘリを隠し、三人が帰ってくるのを待つことにした。いやしたかった。

 

「シュッ!!!」

 

「うぐぅ!」

 

 俺の右手に持ったククリナイフが米国兵士の首にずぶりと刺さり、彼の命を終わらせる。一人仕留めた隙をついて数人、既に事切れたとはいえ味方ごと小銃で銃撃する。俺はそれを最低限の回避だけしつつ左手で先ほど殺した兵士から奪った小銃で迎撃する。大方は防弾チョッキに阻まれ体には届かなかったが、それでも関節部などの部位に当たり体制を崩したところを小銃を捨てて肉薄し、一人、また一人と物言わぬ肉へと変えていく。

 俺とは少し離れたところではウェルがノイズを操って圧倒的な無双を繰り広げている。人を殺しておいてあれだけどウェルはやりすぎだろとは思う。たった二人の人間に部隊を壊滅状態にさせられたからか残りは倉庫の外へ逃げていく。俺は別に逃がしても構わんと思うがウェルは逃がさない。

 セレナたち三人を偵察に向かわせて数時間後、今ではお馴染み米国本国からの追っ手が襲撃してきた。マムはマリアにシンフォギアでの迎撃を命じたがいくら量産できる人間がいるからってこんなところでリンカーを消費させて溜まるかという理由で俺とウェルで迎撃に出た。まずヘリを破壊できる携帯ロケットランチャーを持った奴を一気に奇襲して仕留める。そこからウェルが正面からノイズ展開し、さっきにつながるというわけだ。

 俺の周り、辺り一面には命だったものが散らばっていた。ノイズに炭化させられた者、俺に切られた者、奪われた小銃で蜂の巣にされた者・・・。それらを見渡してるとふと割れたガラス片が目に入った。ガラス片は鏡のように俺の血塗られた姿を映していた。

 

「せっかくのシャツがな・・・」

 

 マリアのマネージャー時代から愛用していたスーツは上着は名前も知らぬ誰かの首に回したまま、シャツは返り血やらで汚れところどころ銃弾でボロボロだった。今更誰を殺そうが気には留めないが、悲しむ奴はいた。そう思ったその時、外から叫び声が聞こえた。

 

「うわぁあああああああ」

 

 それを聞いた瞬間、俺の体は咄嗟に走り出し米兵たちが出た扉から出ると彼らを追撃していたとされるノイズが偶然通りかかった野球少年たちに襲い掛かろうとしていた。

 

Epitaphs(加速)Sok Aporrófisi(衝撃吸収)!」

 

 間に合わないと判断した俺は魔術を詠唱する。体の隅々が何かで繋がり流れてくるような錯覚を覚えたと同時に俺の体はさっきよりも倍近い速さで今にも襲い掛かるノイズを追い越し、三人の少年を抱きかかえ横に飛んだ。その直後、ノイズは少年たちがいた場所にとびかかった。直後、騒ぎを聞きつけたウェルがノイズをソロモンの杖で消した。

 

「大丈夫か?」

 

「あ・・・うん・・・」

 

「よし、ならさっさと逃げな」

 

 そう言って少年たちを逃がした後、立ち上がると多少申し訳なさそうにこっちを見ているウェルに視線を合わせる。

 

「すみませんね・・・追撃指示が思わぬ方向に飛び火したようで・・・」

 

「いや、犠牲は出てないなら問題はない。戻るぞ」

 

 ウェルがソロモンの杖を懐にしまいながら倉庫内へ戻っていく。

 

「マム・・・セレナたちに帰るように言った?」

 

『ええ、現在帰還中だそうです』

 

「じゃ、こっちもちゃっちゃとヘリ動かして合流しよっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後 ヘリ機内

 

 

「ふふぃ~やっと匂いが落ちた・・・」

 

 廃病院のアジトはシャワーがあったが今じゃそんなことできやしない。ほんの一昨日までちゃんと使えていたのにな・・・と思うと無くしてからわかるありがたみと言うのを実感できる。さてウェルと少し計画の詰めでも考えるか・・・。

 

「ケトス」

 

 ふとマリアに呼び止められた。どうかした?と聞いても無言で俺の手を取り個室へと入っていき、鍵をかける。座席に俺を座らせると靴を脱いで俺の膝に乗り首に手を回し顔を肩にうずめる。ぎゅっと若干苦しくなるぐらい抱きしめるマリア。それを俺は片手で背中に手を回し、もう片方の手を優しく頭に乗せることで答える。

 俺たちがF.I.Sにいたころ、幼い少年少女には過酷である実験に耐えかねる子たちが大勢いた。そんな子たちの精神的支柱になったのが集められたレセプターチルドレンの中で一番歳が上だったマリアだった。彼女は、ほかの子たちの姉として甘やかし、少しでもなんとかしようとしていた。だがそんな彼女は誰に甘えればいいのだろうか。その答えがこれだ。一番親しくなお年の近い俺に甘えることだった。歌姫マリアの時もF.I.Sを抜けた今でも時折、精神が不安定になったり甘えたくなるとこんな感じで俺を抱きしめて抱え込んでいることを吐き出す。当事者から見ても彼女の行動は少々度が過ぎてるようにも感じる。確かに今の状態を維持するにはこれがいいのだろうが俺がいつまでもマリアのそばにいられるわけじゃないし、いずれは終わりにしなくちゃいけないと思っている。それでも今はまだこのままで・・・。

 

 しばらく撫で続けてるとマリアが顔を俺の首元に近づけ、すんすんと匂いを嗅いでくる。

 

「しっかり汗流せてないから臭いぞ」

 

「うん・・・臭い・・・」

 

「だから顔を近づけ・・・」

 

「血の匂いと石鹸の匂いと・・・ケトスの匂い・・・」

 

 そう言ってぎゅっとさらに抱きしめる。足もいつの間にか俺の腰に回っており、セレナとかが見たら顔真っ赤にして破廉恥なああああって叫びそうだなと思いつつ、マリアが行動するのを待つ。するとマリアは俺の手を手に取ると手のひらをじっと見つめる。

 

「いつもそう・・・いつもケトスは血の匂いがする・・・今も昔も初めて会った時もあの時も・・・」

 

「・・・そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

【マリア・カデンツァヴナ・イヴ】

 

「誰か!私の妹が!!」

 

 忘れもしない6年前のあの日。ネフィリムの起動実験。歌を介さず完全聖遺物を強制的に起動する実験はほぼ失敗したような状況だった。実験室で暴れまわるネフィリムを私の妹セレナは絶唱で止めた。だが絶唱の強大なエネルギーは実験室とその隣接していたモニタールームを滅茶苦茶にした。瓦礫の山と化した実験室にセレナは立っていた。ただただ立っていた。目から口から血を流した妹の姿。私は助けを求めたマムと一緒に観測していた研究者にそれを見ていた出資者に・・・。でも帰ってきたのは実験失敗に対する罵詈雑言だった。

 

私の妹はなんのために・・・

 

誰か・・・

 

誰でもいい・・・

 

だれか・・・私の妹を・・・・

 

 

 

 

「助けてよ・・・」

 

 

「任せろ・・・!!」

 

 

 私の想いに答えたケトスは勢いを増す瓦礫の山に突っ込んでいき、やがてセレナと共に瓦礫に消えた。

 

「セレナアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!ケトスゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウ!!!!」

 

 崩壊が完全に止まった実験室の中、空しく私の叫び声が響く。私をかばってケガしたマムや今になってようやく慌ただしくなった研究者や出資者の声も私には気にならない。ただ私の中には親しい人間を一気にみんな無くしたという二つの喪失感。そして私の願い(呪い)のせいでケトスを殺したということ、そんな私が生きてていいわけがないという諦め。私はすぐそばに落ちているガラス片を両手でしっかり握りしめて先端を自分に向ける。

 

自分の手が切れ、血が流れだす。痛い。けどこれでいい。

 

 

マムの声がする。何を言っテるのかワカらない。

 

 

 

 

研究者が何カ叫んデル。あナたたちが何をシテるのカワカらナイ。

 

 

 

 

 

出資者が叫んでる。あナタたちガこコニイる理由がワカラナイ。

 

 

 

 

 

私ハガラス片ヲ自分ノ首ニ刺ス。私ハナンデ生キテルノ?

 

 

 

 

 

ガラス片ヲジブンノ首ニサス。痛クナイ。私ハナンデイキテルノ?

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラスヘンヲジブンノクビニサス。イタミハナイ。ワタシハナンデイキテルノ?

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラス片ヲ「何してんだお前は。そろそろ俺の手がボロボロになるんだが?」

 

 

 

・・・・え?

 

 私がハッとして顔を見上げると体中が傷だらけなケトスのちょっと困った笑顔とその背に背負われてる目や口に血の流れた痕のあるセレナの弱々しくもしっかりとした笑顔があった。

 

「あ・・・ああ・・・・セレナ・・・ケトスうううううううううううう!!!!!」

 

 ガラス片を力なく落とし、私は思いっきりケトスに抱き着いた。少しふらついたもののセレナを落とさずに私を受け止め抱きしめ返したケトスからはケトスとセレナの血の匂いがした。後に知ったのだけどもケトスは絶唱の衝撃で部屋が滅茶苦茶になったときその影響で入れるようになった保管室にあった完全聖遺物を盗んでその力でセレナを助けて、自殺しようとする私を止めようと喉に突き刺さるはずだったガラス片をその手で庇ったということ。そして今も手の平には深々と刺さった跡が残ってる。そんなことも知らない当時の私はそのあとずるいとわがまま言ったセレナも一緒に3人で抱きしめあいながら生きててくれたことに泣きながら笑って感謝してた。

 

 それからというもの、私はケトスにべったりしていた。時折ケトスを感じたいと思うようになりそういうときには彼の体をぎゅっと抱きしめた。ちゃんとここにいるんだと、いなくならないと実感するために。ケトスに対する実験が日に日に激しくなるたびにそれは何日かに一回あるかないか、数日に1回、2日に一回、1日一回と、どんどん彼がいなくなるんじゃないかという恐怖が増えていき、彼を求めるようになった。

 

 そして私たちが決起する1年半前、施設から彼の姿は消えた。彼に対する実験の結果、聖遺物を完全にコントロールできる彼を兵器運用すべきだという声が増えてきたことを危惧したマムが手引きし、施設から逃がしたのだ。その事実はマムとケトス、そして前日の晩にケトスから知らされた私だけだ。その日は酷く錯乱し、マムとケトス、セレナに迷惑をかけた。その時は私が眠りにつくまでずっとケトスが私を抱きしめてくれていた。そのおかげで脱走した後もなんとか不安定にならずにすんでいた。

 

 そして私たちが脱走し計画を始動させようとしていたころにどこからともかくケトスが物凄く強くなって合流した。それこそ米軍兵士相手なら余裕なほどに。

 

 彼はもういなくならないハズ。それなのに前よりもケトスがいなくなりそうな嫌な予感が日に日に大きくなっている。今はケトスに心配をかけないように我慢しているが、最近になってようやくケトスが何かを隠していてそれを知られることに怯えていることと同時に自分のことを生かすことに執着していないことに気が付いた。似たような予感を感じていたセレナも同じ結論に至った。彼はいつか私たちのために命を投げ出すかもしれない。そんなことになったら私は・・・。

 

 想像するだけで体の震えが大きくなりケトスを抱きしめる力が強くなる。それのことを決してケトスは聞かない。ケトスは決して私たちの隠したいことに踏み込もうとはしない。けども私たちは知りたい。ケトスが何に怯えているのか。いつか・・・言ってくれるといい。そう思ってる。

 

『マリア、ケトス。起きていますね。そろそろランデブーポイントです。迎える準備を』

 

 マムから連絡が入る。そろそろね。私はケトスの傷だらけの手にキスして立ち上がる。ここからは弱虫なマリアではなく、皆を守れるフィーネのマリア。さあ、3人を迎えに行きましょうか。

 

「ケトス・・・」

 

「んー・・・」

 

「絶対に世界を救いましょう?」

 

「ああ、みんなで世界を救うんだ」

 

 ええ、皆が生きている世界で平和を祈ってケトスとセレナとこうやって抱きしめられる世界を・・・




・・・・当初の予定ではマリアさんにとってオリ主であるケトスが唯一甘えられる存在であり、時々こそこそっと幼児退行とまでは行きませんがかなり甘えるという話だったはずなんですが・・・なんでこうなったんだいやっほう!!!!!
深夜テンションって怖い
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