戦車道素人集団を優勝へ導く138の方法   作:ススキト

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本当は一つの話を長すぎてぶった切った後半になります。

原作ではアンチョビ入学時点で数名受講者がいたそうですが、本作ではストーリーの展開上面倒だったのでゼロにしときました()。

原作にはなくOVAだったアンツィオ戦に三か月くらいの時間をかけて投稿することになったのは、とあるシーンを書きたかったからでした。

反省点としては、長すぎて分かりづらい構成になってしまったこと。
これに関しては読んで下さる方々に申し訳ないと思っております。


第33話 「アンツィオと戦いましょう⑥ パンナコッタ

アンチョビこと安斎千代美は、中学時代から戦車道を嗜む乙女だった。

キッカケは余りにも普通で、家柄がどうとかいうこともなく、ただ興味があったから始めてみただけ。

一回やってみたら、これが存外面白くて、ずっと続けるようになった。

 

そんな、本当に普通な戦車道人生が、安斎千代美の中学時代だった。

 

そして特に目立った成績を残すわけでもなく、中学三年の最後の大会もそこそこな結果で終え、進路を考える時がやってきた。

 

戦車道を辞めるつもりは、これっぽっもなかった。

だから高校は戦車道があるところが良かったし、幸いにも選択肢は多かった。

 

ただ問題は、どこの学校を選ぶかだった。

それはまさに、安斎千代美の戦車道における分岐点。

 

ただ戦車道を続けるだけなら、自分の学力でも狙えて、自分の気質にあった風土の学校に進む道を選べばいい。

自分の力がどこまで通用するのかを試したいというのであれば、全国屈指の強豪校に入る道を選べばいい。

 

安斎千代美は、後者を()()()()()()

 

全国大会で優勝できるような強い学校は、四つ。

黒森峰女学園、サンダース大付属高校、聖グロリア―ナ女学院、プラウダ高校。

その内のどれかに入れば、高校三年間を戦車道に捧げる代わりに、誰もが憧れる頂点に立てるかもしれない。

 

千代美にも、当然()()()はあった。

戦車道を嗜む者全ての願いである、真紅の旗をこの手に掴むという夢が。

 

けれどふと、思ってしまった。

果たして自分なんかが、そんな強豪校に入って戦車道を続けられるだろうか、と。

 

どの学校も、自分なんかが霞むほどの実力者たちの集まりだ。

入学生にしたって、全国に名の知れた有望株が溢れかえるくらいにいる。

そしてそういう人間が、例え血の滲むような努力を重ねても試合に出れないことが、当たり前のように起きる世界。

 

そんな厳しい世界において、自分が通用するだろうか。

飛びぬけた才能も、実績も、何もなく、どこまでも普通でしかない自分が。

 

――――そんなに、甘くないに決まっている。

 

そして安斎千代美は、アンツィオ高校に進学することになった。

戦車道が、これっぽっちも盛んではない高校だ。

 

なぜそんな学校を選んだのか。

理由は、一つ。

 

『アンツィオ高校の戦車道を、強くしてほしい』。

 

そんな誘いが、突如千代美の元にやってきたからだ。

思えばそれは、救いの手だった。

 

『何もない所から、一から築いて、頂点に立つ』。

 

全国大会で優勝したいと思いつつも、強豪校でやっていく自信はなく、かといって夢を捨てることもできない。

そんな中途半端な自分を慰めてくれるには、その言葉はあまりにも甘美すぎた。

 

だって見栄を張れるじゃないか。

「自分は用意されたレールを歩くのではなく、自ら険しい道を切り拓いて行きたいのだ」と。

 

あぁ、なんてカッコいい()()()だろう。

やるだけやってダメでも、恰好がつく。

あまつさえ誰もが千代美のことを、英雄のように見てくれるだろう。

本当は、ただの臆病な意気地なしだというのに。

 

何が険しい道だ。

誰よりも、何よりも自分に甘いだけの、楽な道だよそれは。

 

けれど千代美は、その道を選んだ。選んでしまった。

それが一番、自分に優しい道だったから。

 

そして高校一年の春。

千代美は、現実を知った。

 

六割の意気と四割の後ろめたさでアンツィオ高校の地を踏んだ彼女。

その視線の先に、戦車はおろか受講者の姿さえもなかった。

そう、アンツィオ高校には戦車道がなかったのだ。

 

そしてその時、千代美はようやく理解した。

楽な道なんて、本当はどこにもないということを。

 

一から、いや零から築き上げていく。

道なき道を、己の力のみで拓いていく。

 

それは言葉にすれば目映いものだ。

けれど実際に行うとなれば、これほど過酷なものもない。

導いてくれる人も、寄り添ってくれる人もなく、ただ独り火を灯して暗き道を行くのだから。

 

「スカウトされて来たのだから、周りは自分よりレベルの低い戦車乗りだけだろう」。

あぁ、なんて甘い考えだったのだろう。

そこでなら()()()じゃなく、()()()()()()()()()になることができると思っていた自分を、殴ってやりたい。

 

けどもう、時間の針は巻き戻せない。

安斎千代美は、この何もない学校で、独りで戦車道をやり続けなければならない。

 

一年目は、誰も戦車道をやってくれなかった。

そりゃそうだ、なんせ戦車が無い。

アンツィオにあったのは、錆とカビと共生するボロボロの、それも旧式で貧弱な戦車が二両。

試合なんて到底できない。

だから、と戦車の購入を頼んでみても、「今は金が無い」と言われてあえなく撃沈。

 

練習をしようにも、一人じゃ戦車は動かせない。

結局、露店を開いて少しでもお金を稼ぎ、合間に戦術の勉強をするだけの毎日を過ごした。

 

辛い日々だった。自分は正しい選択をしたのか、と疑わない日ははなかった。

ちゃんとした学校に行っていれば、もっとマシだったかもしれないと、そう思わずにはいられなかった。

 

それでも心に灯はあった。

全国大会に出場し、真紅の旗を勝ち取る。

すっかり遠き理想になってしまったその夢だけが、ギリギリの所で千代美を支えてくれたから、なんとか歩き続けることができた。

 

そして二年目。

そんな風にボロボロだった千代美を、変えてくれる出逢いがあった。

言わずもがな、今の仲間たちである。

 

死ぬ気で勧誘したお蔭で受講者、ペパロニやカルパッチョ達が入ってきてくれた。

あいにく経験者はいなかったけど、一緒に進んでくれる仲間という存在は、千代美の心を救ってくれた。

灰色の世界が、一気に色づいたんだ。

 

そして向かい風は止み、追い風が吹く。

 

以前から嘆願していた甲斐あってか、学校側が十分な数の戦車を揃えてくれたのだ……まぁ、スペック的にそんなに優秀じゃないイタリア戦車ばかりだったけれど。

それでもようやく試合をすることも、大会に出ることもできるようになった。

 

今までに比べれば、遥かにマシだった。

とにかく幸せを噛み締めるように、毎日練習して、たくさん試合をした。

 

けれど結果は惨敗ばかりで、到底優勝なんてできっこない有様。

経験者はほとんどいないし、戦車のスペックも低いとなれば、それは勝てる方が不思議だ。

 

でもそれは別に、いや良くはないけど、良かった。

ただ千代美の心配は、こんなに負けてばっかりで、皆がやる気を失くして止めちゃわないか、ということだった。

だってそうだろう。誰だって、負けるのは嫌だ。勝たなきゃ、何にも楽しくない。

 

自分の力不足で辛い思いをさせていないか、それだけが気がかりだった。

折角できた仲間を失うことは、千代美にとって何よりも悲しいことだったから。

 

でも皆は、そんな千代美の心配をよそに、笑いながら「次は勝ちましょう」なんて言うから、千代美は心に決めたのだ。

 

 

絶対に、戦車道を選んだことを後悔させない、と。

 

 

そして彼女は、安斎千代美は、アンツィオ高校の戦車道を統べる者、統帥(ドゥーチェ)・アンチョビになった。

 

強気で、不遜で、高い志と実力を持ち、負ける事なんて微塵も考えずチームを引っ張る、そんなカリスマに溢れた指導者の仮面を、千代美は被り続ける。

全ては自分を救ってくれた、仲間たちのために。

 

弱くて、勇気もなくて、ただ辛い思いをしたくなかっただけの自分を、ひた隠しにして。

安斎千代美は、アンチョビとして、チームを率いる。

 

そして一つでも多く勝つ。

勝利の美酒の味を、少しでも多く味わわせてやる。

日本一という栄冠を、与えてやる。

 

それが嘘つきな自分を慕ってくれる彼女たちへの、たった一つの恩返しだから。

 

けど、

 

(ここまで、か……)

 

どうやらそれは、叶いそうにない。

このすぐ後、自分はあえなく撃破され、アンツィオの敗北が決まる。

掲げた夢も、今までの努力も、これで全部お終い。

 

(……ごめんな、お前達)

 

ごめんね、皆。

 

もっと私が強かったら。

戦術一つで弱いチームを勝たせた、神栖渡里(あの人)のように。

仮面なんて被らなくてもいいくらいに強ければ。

きっともっと勝たせてあげられたのに。

 

日本一にさせてあげられたかもしれないのに。

 

(いや、無理か……口では優勝優勝と言いながら……他でもない私が、それを信じていないんだからな)

 

結局、そこがアンチョビ(千代美)の器の限界だった、というわけか。

 

『――――――――!!!』

 

あぁ、応えたかった。

 

『―――――――ェ!!』

 

こんな私を慕ってくれた、あの子達に。

その期待に、応えてあげたかった。

 

『――――――チェ!!!』

 

この声を、裏切りたくなかったなぁ。

 

『ドゥーチェーーーーーーっっっ!!!』

 

瞬間、轟雷の如き声が、アンチョビを呼び起こした。

 

「ペパロニ!?」

「ドゥーチェ、大丈夫っすか!!??」

 

視線の先、そこには大洗女子学園の戦車を、文字通り身体を張って止める、何よりも大切な後輩の姿があった。

 

「お前、なんで……」

「いやー、ドゥーチェがなんか危なそうだったんで、慌てて駆けつけたっす!!」

 

ギリギリと、装甲が削れ合う音がする。

小さなタンケッテがエンジンをフルスロットルで回し、一回りくらい大きな相手の戦車を真正面から止めている。

お蔭で完全に籠の中に閉じ込められるその一歩手前で、包囲の完成を防がれている。

 

「ちなみに皆もいるっすよ!!」

『ドゥーチェ!!』

『間に合ったーー!』

『マジギリギリだった』

 

そして鉄塊が群れを成して、意気揚々と現れる。

そこかしこから湧き出て、そして一目散に相手の戦車へと食らいつく。

技術も作戦もない、ただの体当たりで、それでも自分よりも大きな相手に、真正面から立ち向かっていく。

 

「む、無茶をするな!!怪我でもしたら……」

 

タンケッテの重量は僅か3.2t、セモヴェンテも15tを越えない軽量級戦車。

それに比べて相手の戦車は八九式以外20tを越える中量級。八九式にしたってタンケッテの約四倍はある。

そんな重量差で押し相撲なんて、勝てるわけがない。どころか吹っ飛ばれされて、危険な目に遭うかもしれない。

 

「無茶でもなんでもいいっす!!」

 

だというのに彼女たちは、一向に歩みを止めようとしなかった。

 

「ウチらは姐さんと一緒に優勝するって、約束したんすから!」

「っ!!」

 

真っ直ぐな言葉が、胸を打った

それはかつてアンチョビがペパロニ達に言った、大きな大きな()

ここ最近はめっきり口にしなくなったけれど、一年前までは口癖のように言っていた目標だった。

 

「ペパロニ、お前……」

 

まだ覚えてたのか。

昨日言った作戦の内容は忘れちゃうくせに。

一年も前の約束は忘れてなかったのか。

 

「ここはウチらに任せて行ってくださいっす、ドゥーチェ!」

『ドゥーチェ!』

『ドゥーチェ!』

「お前達……っ」

 

やめてくれ。

私は、そんな大層な人間じゃないんだ。

お前達が身体を張ってまで守る程の器じゃないんだ。

 

歯を食いしばり、拳を握る。

視線の先で懸命に抗う彼女たち。

その献身に応えられない自分の不甲斐なさを、ただただアンチョビは呪った。

なのに、

 

「信じてるっす、ドゥーチェ!!」

 

お前達は、それでも私の背中を押すのか。

私の事を、信じているのか。

 

――――――だったら。

 

仮面を被れ、安斎千代美。

自分を守るためじゃなく、弱さを隠すためじゃなく。

彼女たちの為に、アンチョビ(統帥)に成れ。

 

「てめーらぁ!!戦車ぶっ壊れても構わねぇ!!姐さんの道、意地でも切り拓け―――進め(アーバンティ)―――――!!」

 

 

―――――進め(アーバンティ)!!!

 

咆哮。

闘志に火が付く。

気炎となって立ち昇り、乗員の熱が戦車に伝播する。

 

そして彼女たちは、ただ前進するだけの獣になった。

 

 

そして試合は、最高潮(クライマックス)を迎える。

 

 

 

 

 

『わ、わ…!な、なんでこっちが押されるの!?』

『こっちの方が重いはずなのに!?』

 

無線から伝わる困惑を、西住みほは敏感に感じ取っていた。

なにせみほ自身も、彼女たちと同じ気持ちだったから。

 

「落ち着いてください!闇雲に押し返さず、重心を捉えて!」

 

指示を飛ばすも、一体どれだけの効果があるのか。

大洗女子学園は確実に、アンツィオ高校の気迫に呑まれつつあることを、みほは悟っていた。

 

包囲の完成を間一髪で防がれたところから、また流れが変わってしまった。

あそこでトドメを刺せなかったのは、かなり痛い。

お蔭でアンツィオ高校が、また息を吹き返し、そしてその勢いのまま繰り出される逆襲に、こちらは対応できていない。

 

本来なら充分対処できる範囲のはずだ。

いくらアンツィオが気合を入れたって、実力差や性能差は無くならない。

それでもみほ達が押されているのは、アンツィオの気迫に浮足立ってしまっているからだ。

 

得てしてこういう時、天秤は簡単に揺れ動く。

ここで終わらせなければ、勝負は分からなくなってしまう。

 

「麻子さん!」

「あぁ、ちょっと激しく動くぞ」

 

四号戦車に食らいついているのは、二両。

これを早々にどかさないと、相手のフラッグ車が包囲を脱してしまう。

 

麻子もそれを理解していた。

四号戦車を最大ギアで加速させ、二両がかりの押しを物ともせずにジリジリと前進する。

そして負けじとアンツィオが更に加速してきたところで、

 

「やばっ!」

「うわっ!?」

 

一気に後進し、相手のバランスを崩した。

人間の身体も戦車も、重心の崩し方はそんなに変わらない。

とどのつまり、押すか引くかの駆け引きだ。

相手が力を入れて踏み込んだところで、こっちが退いてやれば、あっけなく均衡は崩れる。

 

「華さん、砲撃を!」

「ふっ!」

 

そして接近されていては取れない俯角も、距離を空けてしまえば問題ない。

短砲身の75㎜砲が火を噴き、CV33の芯を捉え、吹き飛んだ車体から白旗が上がる。

 

そして次の瞬間には、四号戦車は再び前進していた。

バランスを崩していたもう一両を車体で殴るようにしてぶつけ、横転させて走行不能にし、向かうはフラッグ車。

 

包囲は完成していないが、相手の道もほぼ塞いでいる。

今この状況で使える道は、一つだけ。

そこに入られる前に接近戦に持ち込めば、ほとんど詰みだ。

 

相手もそれを分かっているのだろう。

急加速して、残されたたった一つの道へ飛び込もうとする。

 

(ちょっとだけこっちの方が早い)

 

間に合う、とみほが思った、その時だった。

 

ガァン、と横から激しい衝撃が襲った。

あまりの事に身体が吹っ飛びそうになるのを堪えながら、みほは真横へと視線を写した。

するとそこには、

 

「ギリギリ、間に合いました……!」

「――カルパッチョ!」

 

ここにはいないはずの、セモヴェンテがいた。

 

「このセモヴェンテ、カバさんチームと戦っていたはずじゃ!?」

 

優花里が驚きに顔を染める。

みほも、華も、麻子も同じ気持ちだった。

しかしただ一人だけが、違う顔をしていた。

 

「あーー!」

 

沙織が、地図を眺めながら悲鳴を上げた。

 

「私、念のためと思ってカバさんチームから割と近いところに皆を集めちゃった!!」

「おい沙織」

「ご、ごめん!」

「さ、沙織さんのせいじゃないよっ。気にしないで」

 

実際、沙織のミスとは言えない。

だってこのセモヴェンテは、カバさんチームが引き付けているはずの戦車だ。

普通なら、それを振り切って此方に来るとは考えない。

カバさんチームだって、最初からそのつもりで戦っていたはずだし。

 

いや、ちょっと待て。

なら、カバさんチームはどこに行った?

戦っている相手を放置して逃げるようなことは、絶対にない。

 

なら、と最悪の答えがみほの頭を過る。

すなわち、撃破である。

 

「カバさんチーム無事ですか!?」

 

 

 

一方でみほの予想を裏切り、カバさんチームは健在ではあった。

しかし無事ではあるものの、チームは機能停止に陥っていた。

いや、チーム全員がそうだったわけではない。

 

思考と動きを止めていたのは、ただ一人。

チームリーダーを務める、カエサルのみ。

 

「ひな、ちゃん……」

 

なんで、行ってしまったのか。

さっきまであんなに全力で、本気で鎬を削っていたというのに。

あんなに、楽しかったのに。

なんでそれを捨てて、そっちに行ってしまったのか。

 

試合中にも拘わらず、何故、という疑問だけが、カエサルの中にあった。

 

そしてカエサルがそう思っていることを、カルパッチョは知っていた。

 

(ごめんね、たかちゃん)

 

裏切り、だろうな、これは。

自分から吹っ掛けておいて、自分から抜け出すんだから、こんなに酷い話はない。

悲しいだろうか、悲しいだろうな。自分が逆の立場なら、きっとそう思う。

けれどカルパッチョは、謝ることしかできない。

 

本当に申し訳ないけれど、カルパッチョには心の底から愉しかった親友の戦いを捨ててでも、行かなければならないと思ってしまったのだ。

 

「――――行ってください、ドゥーチェ!!」

 

叫びと共に、弾を装填する。

間髪入れず、砲撃。

あえなく避けられるが、それでも構わない。

カルパッチョはただ、時間を稼げればそれでいいのだ。

 

(たかちゃんは、私の一番大事な親友)

 

それは間違いない。

誰に聞かれたって、カルパッチョはそう答える。

 

あぁけれど、本当にそれはウソじゃないけれど。

それと同じくらい大事なものが、カルパッチョにはあるのだ。

 

(ドゥーチェや、アンツィオの皆も、私は大好きだから)

 

だから一人だけ知らぬ顔はできなかった。

みんながドゥーチェの為に身体を張っているその横で、自分一人だけが自分の愉しみに浸ることはできなかった。

 

気づけばカルパッチョは、親友に背を向け、仲間の元へ走っていたのだ。

 

「―――やっぱり私は、自分の為にだけは戦えないね」

 

結局それが、カルパッチョという人間なのだろう。

どこまでいっても、非情になり切れない。

勝ちに拘ることもできない。

そんな甘い人間が、自分。

 

(だから、容赦なく撃ってね、ひなちゃん)

 

そんな人間に、手加減なんていらないから。

だからどうか、貴女は私のようにならないで。

そうしてくれないと私、自分を許せそうにないから。

 

 

『カバさんチーム、セモヴェンテを剥がしてください!』

「ひなちゃん……!」

 

隊長からの指示も、カエサルには届かない。

彼女の眼にはただ、自分を置いていってしまった親友の姿だけが映っている。

 

「カエサルっ!!」

 

しかし突如として、カエサルは現実に引き戻された。

まるで雷のように激しい声が、彼女の鼓膜を打ったからだ。

 

吸い込まれるように視線がそちらを向く。

そこには厳めしい顔で前を見据える、軍帽を被った仲間の姿があった。

 

()()()()()()。全部分かった上で、それでも私はこう言うぞ――――撃て、カエサル」

「――――――っ」

宿敵(ライバル)同士の戦いは、必ずしも劇的な結末を迎えるわけじゃない」

 

上杉と武田のように。

ハンニバルとスピキオのように。

 

戦うことを宿命づけられたような二人が、必ずどちらか手によって討たれるとは限らない。

事故によって逝き、病気によって世を去り、第三者の手によって斃れ、未来永劫に勝ち負けが着かないなんていうのは、決して珍しいことじゃない。

誰もが望まぬ終わりを、あっさり迎えるのは普通のことだ。

 

だから今カエサルに起こったことは、悲劇でもなんでもない。

それよりも悲しいのは、

 

「ここで手を抜くことこそが、相手に対する裏切りだ。向こうとてお前に討たれるのを承知で、それでも仲間のためにと身を投げうったんだ」

 

その覚悟に敬意を表すなら。

カエサルが、本当にカルパッチョの好敵手なら。

 

「全力を尽くせ、カエサル!!自分が成すべき事を成せ!!」

「――――っ左衛門座!!」

「応!!」

 

全てを振り払うように、カエサルは弾を込めた。

 

言われなくても分かっている。ひなちゃんが何を望んでいるか、今自分が何をすべきかなんてことは。

けどそんなに簡単に、割り切れるものじゃなかった。

だって、もし続けることができるなら、と迷ってしまった。

有り得たかもしれない未来に思わず手を伸ばしてしまいそうになるくらいに、本当に楽しいひと時だったから。

 

「――――あぁ」

 

声にならない声が漏れた。

見えないけれど、カエサルにははっきりと見える。

親友の背中へと飛翔し、止まることのない鉄の一撃が。

 

これでカエサルとカルパッチョの戦いはお終い。

魂が燃え尽きる前に火は消え、熱は失せる。

 

こんな終わりじゃなければよかったのにと、カエサルは思った。

だから祈るよ、ひなちゃん。

もし次があるのなら、その時こそ――――

 

(本当の決着をつけようね)

 

音が響く。

弾が装甲を貫く、歪な音。

終幕を彩るにはあまりにも寂しい、別れの音だった。

 

『アンツィオ高校セモヴェンテ、走行不能!!』

「勝ってください……ドゥ―チェ……!」

 

四号戦車を押し留めていた壁が、崩れ去る。

妨げるものがなくなった四号は自由になるが、その視線の先には、

 

「あぁ……!任せろ!」

 

大洗女子学園の包囲を抜け出し、フラッグ車へと迫るP40の姿があった。

 

(抜かれた……!)

 

一歩、ほんの一歩だけ遅かった、とみほは眉を顰めた。

同時、沙織が無線を飛ばす。

 

「カメさんチーム、相手フラッグ車がそっちに向かってます!」

『な、なにぃ!?』

『わー、ほんとだ。なんか凄い勢いで来たねー』

『呑気な事を言わないでください、会長!』

「逃げてください!」

 

P40 のスペック上の最高速度は時速40キロ。

38tのスペック上の最高速度は時速42キロ。

ほんの僅かに上回っているとはいえ、その程度の差はほとんどあってないようなもの。

それにそれはあくまでカタログスペックの話。

操縦手の力量を加味すると、多分ちょっとだけP40の方が早い。

 

即座にみほ達もP40を追いかけ始めるが、四号戦車のスピードはP40 とほぼ同じ。

こちらは操縦手の力量に何の文句もないが、麻子の腕を以てしても、スタートが遅れた分の差はあまりにも大きい。

 

(まずい……)

 

やはりあそこで決めきれなかったのが、相当痛い。

アンツィオの気迫が、間違いなく流れを引き込んでいる。

ちょっとやそっとじゃ、この流れは変えられない。

 

「どうします西住殿!?このままじゃ……!」

 

優花里の声は焦燥に塗れていた。

その言葉の続きを、みほは容易に想像することができた。

このままじゃ、多分負けるだろう。

 

「沙織さん、カメさんチームの進路を左斜め上に変えさせてください」

 

なら一か八か、勝負に出るしかない。

みほはおよそ考え得る手の中で、最もリターンが大きくリスクの大きい手を選択した。

 

「左斜め……?あ、そういうこと!」

「時間を稼ぐんですね!」

 

こくり、とみほは頷いた。

 

このままP40 、ひいては38tの軌跡をなぞるだけじゃ、こっちが近道をするか、相手が遠回りをしなければ絶対に追いつけない。

だからみほは、両方取って極限まで時短する。

 

狙いの地点は、前方1キロ先。

カメさんチームには()の字を描く形で迂回してもらい、みほ達は一直線にそこに向かう。

カメさんが遠回りした分のロスで、ギリギリみほ達が追い付けるはずだ。

 

ただ、おそらくP40はカメさんの後を追うだろう。

問題は目標の地点までにカメさんが追い付かれないかどうか、だ。

 

みほ達が別ルートを行く以上、カメさんを助けられるチームはいない。

彼女たちには自力で、なんとか撃破されずに頑張ってもらうしかない。

 

『なるほどー、そういうこと。わかったよ、西住ちゃん。こっちは何とかするから、合流地点で会おうねー』

「会長……お願いします!」

 

緊張感の欠片もない、普段そのものの角谷の言葉を信じるしか、今のみほ達にできることはない。

 

そして38tはその進路を変えた。

森林地帯を飛び出す形で、見晴らしの良い平野を無防備にひた走る。

 

「ドゥーチェ、相手フラッグ車が進路を変えました!」

「かまうな、追え!」

 

障害物の多い森林地帯を抜ける理由はない、とアンチョビは断じる。

確かに走りづらい場所だが、それ以上に木々が砲撃から身を守る盾になってくれるため、どちらかと言うとまだメリットの方が大きい。

 

そこを敢えて捨てた理由に、アンチョビは既に思い当たっていた。

背後から追ってきている四号戦車、アレの為の仕込みだろう。

 

だから愚直にフラッグ車を追いかけるアンチョビの行動は、大洗女子学園の想定通りと言える。

 

(そう上手く事を運ばせるか!)

 

これは時間との戦い。

アンチョビが仕留めるか、相手フラッグ車が逃げるかの勝負。

あっちは後者の方が勝算アリと見込んで一か八かの勝負を挑んだようだが、この賭けはアンチョビの方が有利だ。

 

「相手フラッグ車の砲手は精度が低い。走りながらの砲撃じゃまず当たりっこない!構わず全速力で追いかけろ!」

 

普通なら追いかけっこと言っても、ある程度攻撃なり防御なりに気を回さないとだから、最高速度を維持することはできない。

けど今は違う。アンチョビ達は確実に撃破できる距離(クロスレンジ)まで攻撃する必要はなく、また相手の攻撃を防御する必要もない。

ただただ走ることだけに集中することができるこの状況なら、分はアンチョビにある。

 

『目標まで残り50メートル!』

 

報告を受け、アンチョビは自論を確信した。

この速度差、距離ならあと数秒で詰められる。

 

そしてP40が自身の牙の間合いに相手を捉えたその時こそ、アンツィオの勝利の瞬間だ。

 

『目標、捉えます!』

「――砲撃用意!」

 

アンチョビは鞭を構えた。

さぁ、後は振り下ろすだけ。

一度は掌から零れ落ちた勝利は、すぐ目の前にある―――――

 

 

「悪いね、チョビ子」

 

 

はずだった。

 

ガァン、と不可解な音がアンチョビの鼓膜を打った。

同時、身体が前後に激しく揺さぶられる。

 

何事か、と思う間すら、なかった。

視線の先、目と鼻の先にいたはずのフラッグ車の姿が、遥か遠くにある。

 

「どうした!?」

『ほ、砲撃です!履帯部分に直撃しました!』

 

バカな、とアンチョビは耳を疑った。

偵察では、確かに38tの砲手の精度は劣悪だった。

普通なら当てられるような距離でも、信じられない軌道で外す程に。

 

それがここに来て、よりにもよって履帯を的確に狙ってくるだと。

偶然にしては、あまりにも不運な話だ。

 

「くっ、走れるか!?」

『行けます!』

 

そして致命的ではないにしろ、痛恨と言える距離が彼我の間に生まれる。

それを作ったのがアンチョビの知る、壊滅的な砲撃センスを持つ片眼鏡をかけた砲手ではないということを、アンチョビは当然知る由もないのであった。

 

 

「カメさんギリギリ逃げれそうだって!」

「これなら……」

「行けるかもしれませんね!」

 

沙織、華、優花里の顔に喜色が浮かんだ。

願ってもない朗報だ、彼女たちが喜ぶのも分かる。

 

けれど、とみほは思った。

そしてみほと同じことを、厳しい表情をしている操縦手は考えていた。

 

「問題はこっちにもあるぞ」

「へ?何が?」

「私たちはこれから、あの中を突っ切らないといけないんだ。それも全速力でな」

 

四号戦車の前方。

そこには行く手を阻むように立ちはだかる木々の群れと、日の光が僅かに差し込むだけの暗闇。

どう考えても走りやすいとは言えない道が、そこにはあった。

 

「あー、そうじゃん!だ、大丈夫、麻子!?」

「さぁな」

 

あまりにも他人事な麻子の言葉だった。

 

しかしここから先は、一秒が勝負を分ける展開だ。

麻子の両腕に、勝ち負けが掛かっていると言っても過言ではない。

彼女の小さな手に、みほ達は賭けるしかない。

 

「やるしかないだろ」

 

そしてふと、その横顔に、みほは()()()の面影を見た。

その瞬間、みほの心を染めたのは不安ではなく、不思議と安堵の気持ちだった。

 

「沙織、これ持ってろ」

「へ、ちょ、麻子!?」

「動かすなよ」

 

目を丸くする沙織をよそに、麻子は言うや否やハッチを開けて身体を外に出した。

沙織が麻子の代わりに操縦桿を握っていなければ、四号戦車はあらぬ方向に取っ散らっていただろう。

しかし麻子はそんなこと気にした様子はなく、ただじーっと前方を見つめている。

 

「………よし」

 

その行動の意味にみほが気づくのと、麻子が操縦席へと戻るのは同時だった。

 

「麻子さん、まさか……」

()()()()()()()。飛ばすぞ、しっかり捕まってろ」

 

そして常軌を逸した速度で、四号戦車は木々の中に突っ込んでいく。

傍から見ればそれは、どこか一つでも拍子が狂えば即ゲームオーバーの、無謀な疾走。

普通なら残しているはずのマージンを完璧に捨て去った、文字通りの全速力だった。

 

「い、いくら冷泉殿でもこの速度は……」

「ちょっと速すぎぃぃぃぃぃ!!???」

「沙織、うるさい」

 

しかし思わず目を覆いたくなるような狂気の走りとは裏腹に、四号戦車は天衣無縫に、まるで木の方から避けているかのように、鮮やかに傷一つなく間を駆けていく。

 

(麻子さん、すごい……!)

 

この綱渡りの走りを麻子が破綻させない理由。

それは麻子が、大地の呼吸を読んでいるからだ。

 

「道を覚えた」と彼女は言ったが、おそらくそれは比喩表現。

あんな先行きの暗い道を、いくら麻子の目がいいからといって、望遠鏡のように見通せるわけがない。

 

だから彼女が頭に刻んだのは、道筋そのものじゃなく、大まかな道のリズム。

一を知って十を識るが如く、麻子は目に見える景色から得た情報で、目に見えない道を予測した。

そうして作られたイメージを、あの狭い窓から投射し、そこを走っているのだ。

 

誰にでもできることじゃない。

卓越した操縦の腕と、集中力、そして鋭敏な感覚(センス)があってはじめて成せる技だ。

それをあっさりと成し遂げてしまう辺り、やはり冷泉麻子は天才なのだろう。

 

「――――見えたぞ」

 

そして汗一つない涼し気な顔のまま、麻子は一度も戦車をぶつけることなく走破した。

みほは改めて、自分がとんでもない幸運を得ていたことを認識した。

 

「カメさんチームは……」

「無事ですけれど―――その後ろに相手フラッグ車がいます!」

「あまり距離がありません!向こうもすごい速度で走っています!」

 

執念か、とみほは心の中で呟いた。

 

視線の先、懸命に走る38tの姿と、それを射程内に収めているP40 の姿がある。

 

一度離されて、それでもなお食らいつこうとする。

その心を支えているのは間違いなく……

 

「麻子さん――――」

「解ってる―――――当てて止めるぞ」

 

理想はカメさんとP40の間に割り込むこと。

けれどどうやら、それは叶いそうにない。

 

なら仕方ないが、多少手荒い手で行くしかない。

モタモタしていると、38tが撃破されてしまう。

 

(割り込めないなら、ぶつけてでも止める――――!)

 

そして四号戦車は、P40の側面めがけて、ノーブレーキで吶喊した。

 

「っ!」

「ぐっ!?」

 

砲撃とは比べ物にならない衝撃が、各員を襲う。

まともに体当たりを食らってしまったP40と、まともに突っ込んだ四号。

垂直だったお互いのベクトルが、衝突の衝撃で歪に曲がる。

 

「左旋回!」

「四号……!」

 

しかし即座に、両者は弧を描くようにして態勢を整えた。

そして間を置かずして、P40が牙を剥く。

 

「邪魔を、するなぁ!」

「―――っ」

 

威圧。

相対して初めて感じる感覚に、みほは僅かにたじろいだ。

 

勝ちたいという欲。

負けたくないという想い。

それらが身体から溢れ出し、みほの肌を鋭く撫でていく。

それはサンダース戦の時に味わったものと同質のものだった。

 

やっぱり、皆そうなんだ、とみほは思った。

誰もが、心の底から勝ちたいと願って戦いに臨んでいる。

そのために、ありとあらゆる努力を惜しまないし、いつだって全力だ。

それが当たり前。

 

(それなのに私は……)

 

その当たり前から外れてしまっている。

勝ちたいという想いが無いわけじゃない。

負けてもいいや、なんて思ってるわけでもない。

 

でもみほは、そういう人に相対した時、常に思ってしまう。

自分は、決定的に何かが違うんだ、と。

 

「――――」

 

ふと、目が合った。

特徴的なツインテールに、吊り上がった目をしたアンツィオの隊長。

その勝気な瞳の奥が、濡れている。

 

あぁ、とみほは悟った。

この人は、仲間がとても大切だったんだろう。

勝ち負けと同じくらい、いやもしかしたらそれ以上に大事に想っていたんだろう。

 

ならきっと、今の状況は辛いはずだ。

彼女が今ここにいるのは、他でもない仲間たちが身を挺して道を作ってくれたから。

悪い言い方をすれば、仲間の犠牲の上に彼女は立っている。

 

それをこの人は、受け入れているんだ。

悲しいのに、辛いのに、それでも受け入れて、前に進もうとしているんだ。

自分の為に犠牲になってくれた、仲間たちの為に。

痛む心を、必死に焚きつけて。

 

なんて強い人なんだろうか。

こういう人こそが、きっと勝ち上がっていくべきなんじゃないのか。

自分みたいな中途半端な人間じゃなく、本当に心の底から勝ちを望み、そのためならどんな痛みも厭わない、そんな強い人が。

 

そんな人の邪魔を、自分なんかが邪魔していいわけがない。

 

――――いいわけが、ないのに。

 

『人は迷いながらでも歩いていける』

『『これが西住みほだ!!』って胸張って言える、そんなみほが見たいと思うよ』

 

あぁ、あぁ。

声が、背中を押す。

心に焼き付いたあの人の言葉が、立ち止まろうとするみほを、許してくれない。

だからみほは、迷いながらでも、今ここにいるんだ。

 

「―――――前進!!」

「来るぞ、備えろ!」

 

一騎討ち。

お互いに作戦も、戦術も、小細工も何もない、真正面からの撃ち合い。

純粋な力比べ。

勝敗の行方は、戦車道の女神に託される。

 

(ごめんなさい、アンチョビさん)

 

全力の加速。

四号戦車は地を駆ける灰色の流星となって、一直線にひた走る。

待ち構えるは深緑のカラーリングをしたP40。さながら山のように、流星を迎え撃つ。

 

(こんなに中途半端なのに――――)

 

 

――――それでも勝とうとする私を、許してください。

 

 

「撃て―――――――!!」

撃て(フォッコ)―――――――!!」

 

 

衝突。轟音。炸裂。

黒煙が二つの戦車を、すっぽりと覆い隠す。

 

その様子を、観客たちは固唾をのんで見守る。

 

やがて風が、黒いベールをすっかりと吹き飛ばしてしまう。

そうして晴れた景色の中、白い旗を挙げる戦車が一つ。

 

 

迷いながらここまでやってきて、最後に振り切った者。

同じく迷いながら、最後まで迷っていた者。

 

色々な意味で似た者同士だった二人の戦いは、

 

 

『――――アンツィオ高校フラッグ車、走行不能!』

 

 

まだまだ先の長い道を、苦悩と共に征かんとする者に、勝利の女神が微笑んだ。

 

 

『大洗女子学園の勝利!!』

 

 




アンチョビって何で時々自信なさげな発言するんだろう。
そんで何ですぐに訂正して強気になるんだろう。
スカウトされるくらいの実力者なのにアンツィオに入った理由ってなんだろう。
普通スカウトされても行かなくね?

個人的にはそんな疑問を全部書ききれたかな、と思います。

やっぱアンツィオは良いチームだよなぁ。

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