仮面ライダー龍騎 15RIDERS   作:ロンギヌス

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元々は『リリカル龍騎StrikerS 運命を変えた戦士』に投稿していましたが、諸事情であちらとは別々の作品として分けました。

こちらはTVSP版を題材とした『13RIDERS』のストーリーを舞台に、仮面ライダーディケイドが初出となる『仮面ライダーアビス』、そしてとある読者の方が考案して下さったオリジナルライダー『仮面ライダーエクシス』を投入したストーリーになっています。

あらすじにも書いてある通り、上述の作品と内容が一部リンクしている為、先に上述の作品を読んでおかないとわからない部分が多々あります。ご了承下さいませ。



第1話

合わせ鏡が無限の世界を形作るように……

 

 

 

 

現実における運命も1つではない……

 

 

 

 

同じなのは欲望だけ……

 

 

 

 

全ての人間が欲望を背負い……その為に、戦っている……

 

 

 

 

その欲望が背負い切れないほど大きくなった時……人は、ライダーとなる……

 

 

 

 

ライダーの戦いが……始まるのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラーワールド。

 

それは鏡の中に存在する虚像の世界。

 

生物がおらず、風も吹かず、環境音以外に何も聞こえて来ない。

 

そんな不気味な世界で……ある戦いが繰り広げられていた。

 

『―――グルァッ!!』

 

「くっ!?」

 

看板の文字など、全てが左右に反転した商店街エリア。その中をガゼル型の怪物―――ギガゼールが跳躍し、何者かに向かって襲い掛かっていた。そんなギガゼールの突進を屈んでかわしたのは、頭部にドラゴンの紋章が象られた赤い仮面の戦士―――“仮面ライダー龍騎”だ。

 

「このモンスター、またアイツの……!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

『グルゥ!?』

 

ドラゴンの頭部を模した左腕の召喚機―――“龍召機甲(りゅうしょうきこう)ドラグバイザー”にカードを装填した龍騎は、どこからか飛来した柳葉刀のような武器―――“ドラグセイバー”を右手でキャッチ。再び跳びかかって来たギガゼールの突進を屈んでかわし、その腹部をドラグセイバーで斬りつけてギガゼールを地面に落下させる。地面に落ちたギガゼールはすぐに立ち上がり、龍騎を睨みつけながらジリジリと間合いを保つ。

 

『グルルルル……!!』

 

「いや、お前1体だけじゃない……他にもまだたくさんいるはずだ……!!」

 

「正解、よくわかったなぁ!!」

 

『『『『『グルアァッ!!』』』』』

 

「!?」

 

そんな台詞と共に、店舗の物陰などから複数のガゼル型の怪物達が一斉に姿を現し、驚いている龍騎の周囲を取り囲み始めた。龍騎が声の聞こえて来た方向に振り返ると、その先からギガゼールと同じガゼル型の怪物―――メガゼールとネガゼールの2体を押し退けるように別の戦士が姿を現した。

 

「またお前か、インペラー……!!」

 

「よぉ、また会ったな。今回は1人だけ(・・・・・・・)か? まぁ良い……行けぇ!!」

 

『『グガァ!!』』

 

襲って来たガゼルの戦士―――仮面ライダーインペラーの指示に従い、今度はオメガゼールとマガゼールの2体が龍騎に攻撃を仕掛ける。それを前転でかわした龍騎は次々と襲い掛かって来るギガゼール達をドラグセイバーで斬り伏せながら、この場を切り抜けようと店の屋根まで跳躍しようとした。

 

「逃がすかゴラァ!!」

 

「ぐぁっ!?」

 

しかし、そうは問屋が卸さない。同じように跳躍したインペラーが横から飛び蹴りを繰り出し、宙に跳んでいた龍騎の腹部を蹴りつけて地面に叩き落とす。地面に落ちた龍騎は仰向けに倒れたままドラグセイバーを構え、上から落ちて来たインペラーが振り下ろして来たガゼルスタッブを受け止める。

 

「やめろ!? 俺は、お前達(・・・)と戦うつもりはない……!!」

 

「はん、馬鹿が。テメェにはなくても、こっちにはあるんだよ……オラァ!!」

 

「ぐは!?」

 

インペラーは龍騎を蹴り転がし、ガゼルスタッブの先端を龍騎の首元に突きつける。

 

「高見沢さんからの命令でなぁ。テメェはこの戦いに邪魔なんだとよぉ、榊原……わかったらとっとと死んで貰おうかぁ!!」

 

「ッ……でやぁ!!」

 

「な、うぉっと!?」

 

龍騎の蹴りがインペラーの腹部に当たり、インペラーが後ずさった隙に立ち上がった龍騎がドラグセイバーでインペラーの胸部装甲を斬りつける。インペラーも負けじとガゼルスタッブを突き立てて龍騎に襲い掛かるが、龍騎はドラグセイバーの刀身でガゼルスタッブを受け流し、受け流された先に立っていたメガゼールを攻撃させる。

 

『グガゥ!?』

 

「!? テメェ……!!」

 

「悪く思うな……この世界に、ライダーは存在してはいけないんだ……!!」

 

「あぁ?」

 

ドラグセイバーの剣先を向けながら、龍騎は言い放つ。集団で囲まれているにも関わらず、堂々と構えている龍騎の姿に気圧されたのか、インペラーの足が少しだけ後ろに下がる。

 

「俺は成し遂げる……このミラーワールドは、俺がこの手で閉じてみせる!!」

 

「チッ……何をゴチャゴチャ言ってやがる!!」

 

インペラーの振るうガゼルスタッブを足蹴にした龍騎が跳躍し、宙返りしてから地面に着地する。そして龍騎はドラグセイバーを放り捨てた後、ドラグバイザーの装填口を開いて1枚のカードを装填する。

 

≪ADVENT≫

 

『グオォォォォォォォォォン!!』

 

「!? 何……どわぁ!?」

 

『ガッ……グルァ!?』

 

『ギャウ!?』

 

『グガァァァァァッ!?』

 

咆哮と共に上空から飛来したのは、赤いドラゴン型の怪物―――“無双龍(むそうりゅう)ドラグレッダー”だ。ドラグレッダーが口から放射する複数の火炎弾が、地上のネガゼールやオメガゼール達を次々と爆殺し、インペラーも足元に飛んで来た火炎弾の爆発で転倒してしまう。

 

≪FINAL VENT≫

 

「はっ!!」

 

『グオォォォォォォォン!!』

 

その隙に、ファイナルベントのカードを装填した龍騎は大きく跳躍し、ドラグレッダーもそれに続くように上空へと舞い上がる。ドラグレッダーが周囲を回転する中、空中で体を大きく捻らせた龍騎は右足でキックの構えを取り、地上でまだ生き残っていた最後の1体であるギガゼールに狙いを定める。

 

『グオォンッ!!!』

 

「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

『グルァァァァァァッ!?』

 

そしてドラグレッダーの噴き出す炎と共に、龍騎の必殺技―――“ドラゴンライダーキック”が加速。圧倒的なスピードで繰り出されたその一撃は、逃げようとしたギガゼールの背中を貫き爆散させてみせた。その光景を目の前で見せつけられ、インペラーは自分の従えていたギガゼール達を全滅させられた事に動揺を隠せない。

 

「ば、馬鹿な、俺のモンスター達が……!?」

 

「……どうする。まだ続けるか?」

 

「ッ……舐めてんじゃねぇぞぉ!!」

 

戦いを続けるかどうか問いかけて来る龍騎。そんな彼の態度が、自分を見下しているようにも見えたのか。インペラーは仮面の下で歯軋りし、苛立ちに身を任せてガゼルスタッブを振り下ろした。

 

≪GUARD VENT≫

 

「だぁ!!」

 

「何……ごはぁっ!?」

 

ドラグレッダーの腹部を模した盾―――“ドラグシールド”がガゼルスタッブを防ぎ、カウンターで突き出されたドラグセイバーの一撃がインペラーを薙ぎ払う。地面を転がされたインペラーはガゼルスタッブを手放し、こちらを見下ろしている龍騎を睨みつける。

 

「ク、クソッタレがぁ……!!」

 

「諦めろ。お前じゃ俺には勝てない」

 

そう言って、龍騎はインペラーに背を向け、その場から立ち去ろうとする。

 

しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、俺の事も倒してみるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪STRIKE VENT≫

 

「!? ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

そんな龍騎の背中に、1発の水流弾が襲い掛かった。吹き飛ばされた龍騎は地面に倒れた後、水流弾が飛んで来た後方へと振り返る。

 

「お前は……アビス……ッ!!」

 

「油断したな、榊原」

 

地面から立ち上がろうとしているインペラーの横に、アビスクローを構えた鮫の戦士―――仮面ライダーアビスが姿を現した。アビスはアビスクローを龍騎に向けた状態で面倒臭そうに言い放つ。

 

「1人か? なら都合が良い。悪いが、さっさと沈んで貰うぞ……ふん!!」

 

「ぐ……うわあぁっ!?」

 

アビスクローから再び水流弾が放たれ、龍騎はドラグシールドでそれを防ごうとする。しかし最初に受けた水流弾のダメージが響いたのか、足の踏ん張りが利かなかった龍騎は水流弾の衝撃に耐え切れず、更に吹き飛ばされて建物の壁に叩きつけられてしまった。

 

「ぐ、ぅあ……ッ!!」

 

「おい、何をしてる湯村。さっさと立て」

 

「二宮……わかってるよ、くそ」

 

アビスに言われてインペラーが立ち上がる一方、龍騎はフラフラながらも壁伝いに歩き、何とかしてこの場を撤退しようとする。しかしそれを見逃す2人ではなく、アビスは迷わず次のカードをアビスバイザーに装填する。

 

≪ADVENT≫

 

『『シャァァァァァッ!!』』

 

「ぐあぁ!?」

 

アビスラッシャー、アビスハンマーの2体が真上から飛び降りるように出現し、逃げようとする龍騎の前に立ち塞がる。2体の鉤爪で攻撃された龍騎が怯んだところに、アビスとインペラーも迫り来る。

 

「仕留めるぞ」

 

「へっへぇ、おうよ!!」

 

「ぐっ……うあぁ!?」

 

アビスバイザーで殴られ、インペラーの膝蹴りを受け、更にはアビスラッシャーとアビスハンマーに突進され、反撃の間もなく連続で攻撃され続ける龍騎。蓄積されたダメージでフラついている龍騎の姿を見て、アビスはそんな彼にトドメを刺すべくファイナルベントのカードを引き抜いた。

 

「安心しろ。一撃で沈めてやる」

 

「ぜぇ……はぁ……俺はまだ、死ぬ訳には……ッ!!」

 

「……往生際の悪い」

 

未だ足掻き続ける龍騎にアビスは呆れたように溜め息をつき、ファイナルベントのカードをアビスバイザーに装填しようとする。万事休すかと思われたその時……

 

『『ギシャアッ!!』』

 

「何……どわぁっ!?」

 

「!? チィ……ッ!!」

 

跳躍しながら現れたアシナガグモ型の怪物―――ソロスパイダーが鋭利な鉤爪を振り下ろし、アビスとインペラーに向かって襲い掛かって来た。突然の野生モンスター襲撃という事態に襲われ、インペラーはすぐに対応できず攻撃を受け、アビスはすかさずアビスバイザーを突き出して攻撃を防御する。

 

「くっそ……おい、何だよコイツ!?」

 

「野良の奴か、タイミングの悪い……!!」

 

『ギシャシャシャシャシャ!!』

 

ソロスパイダーは素早い動きで鉤爪を振り回し、アビスとインペラーを翻弄していく。その間に、命拾いした龍騎はフラフラながらも立ち上がってから大きく跳躍し、建物の屋根を伝ってどこかへ逃げ去っていく。

 

(早く……“コアミラー”を見つけなければ……!!)

 

「!? おい、アイツ逃げる気だぞ!!」

 

「面倒な……湯村、この場は任せる!!」

 

「は? ちょ、おい、二宮!?」

 

龍騎を逃がすまいとアビスも跳躍し、建物から建物へ跳躍しながら逃げた龍騎を追いかけていく。取り残されたインペラーは1人でソロスパイダーを相手取る羽目になってしまった。

 

「あの野郎、俺に押しつけやがったな……クソがぁ!!」

 

『ギシャッ!?』

 

ソロスパイダーの鉤爪を両腕で掴み取り、強烈なハイキックでソロスパイダーを蹴り飛ばすインペラー。彼は溜まりに溜まった苛立ちを発散するべく、ファイナルベントのカードを左足のガゼルバイザーに装填する。

 

「うざってぇ、とっとと潰してやるよ……!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

『『『『『グルァァァァァァァァッ!!』』』』』

 

『!? ギ、シャ、ガァ……ッ!?』

 

電子音と同時に現れたガゼル軍団が、一斉にソロスパイダーに突撃し攻撃し始める。絶えず襲って来るガゼル軍団の攻撃で身動きが取れないソロスパイダー目掛けて、一番最後に突撃したインペラーが左足でローリングソバットを放つ。

 

「どらぁっ!!!」

 

『ギシャアァァァァァァァァッ!?』

 

インペラーの必殺技―――ドライブディバイダーが決まり、蹴り飛ばされたソロスパイダーが宙に吹き飛ぶ。そのまま空中で大きな爆発が起こり、ソロスパイダーを跡形もなく消滅させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……はぁ、はぁ……」

 

場所は変わり、とある橋の下の通路。アビスとインペラーの襲撃から逃れる事ができた龍騎は、今にも倒れそうな体を気力で動かしながら、現実世界に戻るべく鏡を探していた。

 

(傷を負い過ぎた……戻ったらしばらく、身を潜めた方が良さそうか……)

 

人々を襲うモンスター。殺し合いを行う仮面ライダー。鏡という虚像の世界が生み出してしまったそれらは、決してこの世界に存在していてはならない。

 

ライダーの戦いを終わらせる為にも。

 

モンスターの巣食うミラーワールドを閉じる為にも。

 

自分はまだ、こんな所で死ぬ訳にはいかない。

 

この時の彼はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その道中で、ある青年と出会うまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「……!」

 

龍騎が見つけた鏡から、突如飛び出して来た1人の青年。何故こんな所に人間がいるのか。原因を探った龍騎は、青年のすぐ近くに立っている元凶の存在に気付いた。

 

「痛てぇ~……って、何だ、ここ……?」

 

『キシャアァ~……!!』

 

「うぉ!? な、何だコイツ……!?」

 

ジグモ型の怪物―――ミスパイダーが唸り声を上げながら青年に迫ろうとしている。生身の青年がこのミラーワールドに飛び込んで来た原因が、このミスパイダーが糸を吐いて引き摺り込んだからである事を龍騎は理解した。

 

「ッ……!!」

 

龍騎は迷った。今のボロボロな状態で戦えば、自身の生存する確率は更に低まる事だろう。それを避けたいのであれば、目の前で襲われようとしている青年を見捨てる以外の選択肢はない。そこまで考えたところで……龍騎は足を1歩踏み出し、そこから勢い良く駆け出した。

 

「でやぁ!!」

 

『シャアッ!?』

 

「へ……?」

 

襲われかけている人間を見捨てる事は、龍騎にはできなかった。彼は抱き着くように突進してミスパイダーを青年から引き離し、青年は何が何だかわからないといった様子で龍騎の後ろ姿を見つめる。

 

「お、お前……人間かよ?」

 

「……ん」

 

青年の問いかけに龍騎は頷く反応だけ見せ、すぐにミスパイダーの方へと振り返り攻撃を仕掛ける。連続でミスパイダーのボディを殴り、怯んだミスパイダーの顔面に蹴りを炸裂させる。そんな龍騎とミスパイダーの戦いに、青年は困惑の表情を隠せずにいた。

 

「な、何がどうなってんだ……ッ!?」

 

その時、突然どこからか放射された光に青年は手で目元を覆う。青年が見た先では、光と共に出現した大きな鏡の柱が存在していた。

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

鏡の柱には、何枚もの動物の絵が貼りつけられていた。鏡の柱が発光すると共に、その内の1枚の絵が鏡の柱へと吸収されていき、絵の消えた紙が地面に落ちていく。

 

『シャアァァァァァ……!!』

 

「!? 何……!!」

 

そして鏡の柱から、ジョロウグモ型の怪物―――レスパイダーが実体化して地面に降り立つ。レスパイダーはすぐさま駆け出し、ミスパイダーと戦っていた龍騎に襲い掛かって来た。

 

『シャアッ!!』

 

『キシャシャシャ!!』

 

「ぐっ……!?」

 

ミスパイダーとレスパイダーは前後から攻撃を仕掛け、龍騎にダメージを与えていく。龍騎は仮面の下で苦悶の表情を浮かべながらも、レスパイダーに羽交い絞めにされた状態からミスパイダーを蹴り倒し、レスパイダーを力ずくで引き剥がしてから1枚のカードをドラグバイザーに装填する。

 

≪STRIKE VENT≫

 

「ッ……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

『グルルルルル……!!』

 

ドラグレッダーの頭部を模した武器―――“ドラグクロー”が飛来し、龍騎の右手に収まる。彼がドラグクローを構えて姿勢を低くすると、そこへ飛来したドラグレッダーが龍騎の周囲を回り……

 

「……はいぃっ!!!」

 

『グォォォォォォォンッ!!!』

 

『ギシャアァァァァァァァァァッ!?』

 

龍騎がドラグクローを突き出し、それを合図にドラグレッダーが火炎弾―――“ドラグクローファイヤー”を発射。その強力な一撃がミスパイダーに直撃して大爆発を引き起こし、レスパイダーがその衝撃で吹き飛ぶ中、ドラグレッダーがそのエネルギー体を摂取して飛び去って行く。

 

(ッ……そろそろ……限界、か……)

 

龍騎は全身から力が抜け落ち、その場に仰向けになって倒れ込んだ。アビスやインペラー、そして野生モンスターとの戦いでダメージと疲労を蓄積してきたせいで、とうとう限界が来てしまったのだ。

 

「お、おい、しっかりしろよ!! おい!?」

 

青年は慌てて駆け寄り、倒れたまま動かない龍騎を抱き起こして何度も呼びかける……が、青年は気付いた。龍騎を抱き起こしている自身の手が、シュワシュワと小さな音を立てながら粒子となり始めていた事に。

 

「な、何だ……?」

 

「ぐ、ぅ……ッ……」

 

その時、青年に抱き起こされている龍騎の変身が解除され、男性の姿に戻った。先程まで龍騎に変身していた男性―――“榊原耕一(さかきばらこういち)”は荒い呼吸を何とか整えながら、粒子化している自身の手を見て動揺している青年へと告げる。

 

「はぁ、はぁ……ミラーワールドに、引き込まれたら……戻る事はできない……ライダーに、ならない限り……ッ」

 

「ッ……ライダー……?」

 

(……ん? あれは……)

 

そこへ追い付いて来たアビスは、榊原と青年の姿を見てすぐさま物陰に身を隠す。アビスが隠れて様子を窺っている事など知る由もない青年は、榊原から龍騎のカードデッキを手渡される。

 

(せめて、彼だけでも……!!)

 

この時点で、榊原は悟っていた。ボロボロとなった自分が、生きてミラーワールドから出る事はできないと。だから彼は決めたのだ。この青年を生かす為に……自身のカードデッキを、彼に託す事を。

 

「お前が……代わり、に……ッ」

 

「!? 俺が……?」

 

『シャアァァァァ……!!』

 

突然カードデッキを手渡され、戸惑う事しかできない青年。そこへ体勢を立て直したレスパイダーが迫り、青年は渡されたカードデッキを手にその場から立ち上がる。すると何もない空間からベルトが出現し、それが青年の腰に装着される。

 

「デッキを、入れろ……ッ……!!」

 

「お、おぉ……」

 

榊原に言われた通りに、青年はカードデッキをベルトに装填。するといくつもの鏡像が青年の全身に重なり、彼を龍騎の姿へと変身させた。彼は自分で仮面に触れたり、ドラグバイザーに目をやったりと、自分が龍騎に変身しているという現実を認識させられる。

 

「ライダーになって……戦うんだ……!!」

 

お前が生き残る為に。そう言い切りたい榊原だったが、傷の痛みが原因でそこまで口に出す事はできなかった。しかし彼の想いは確かに伝わったのか、龍騎は榊原がやっていたようにカードデッキから1枚のカードを引き、それを装填口の開いたドラグバイザーに差し込んで装填する。

 

≪SWORD VENT≫

 

「!? うぉっと……」

 

飛来したドラグセイバーを、龍騎は慌てて両手でキャッチする。自身が召喚したドラグセイバーを見て凄いと感じる龍騎だったが、今は驚いている場合ではない。何故なら2人に向かって、レスパイダーが接近しようとしているからだ。

 

『シャァァァァ……!!』

 

「ッ……だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『!? ギ、シャア、ァ……ッ!?』

 

何だかよくわからないけど、やるしかない。そう考えた龍騎はヤケクソな感じの雄叫びと共に走り出し、ドラグセイバーの刀身をレスパイダーのボディに思いきり叩きつけた。既に先程のドラグクローファイヤーの衝撃でダメージを受けていた事から、ドラグセイバーの一撃がトドメとなったレスパイダーはその場で爆発し、龍騎の目の前から綺麗に消滅した。

 

(……か、勝った?)

 

目の前にいたはずのレスパイダーの姿が見当たらない事から、自分が倒したのだと認識する龍騎。危機が去った事で少し安堵する彼だったが、振り返った先で倒れている榊原の体が粒子化を始めている事に気付き、すぐに彼の傍まで駆け寄る。

 

「お、おい……おい!?」

 

「ッ……お前、は……」

 

自身の顔を覗き込んでいる龍騎を見て、榊原は彼を生き永らえさせる事ができた事に安堵し……同時に後悔の気持ちも大きかった。彼を死なせない為とはいえ、彼にカードデッキを渡して彼を龍騎にしてしまった。仮面ライダーという名の重い十字架を、この青年に背負わせてしまったのだ。

 

「お前は……ライダーの戦いに、巻き込まれるな……ッ!!」

 

「え……?」

 

服のポケットから取り出した1枚の紙を手渡しながら、榊原はそう助言した。この青年が、あんな醜い戦いに関わらないように。せめて青年が、無事に生き延びる事ができるように。彼はそう願いながらも瞼を閉じていき……龍騎の腕の中で、完全な粒子となって消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ……妙な事になっちまったな」

 

物陰に身を潜め、一部始終を見届けていたアビス。彼が面倒臭そうに舌打ちすると、そこへソロスパイダーを倒したインペラーが追いついて来た。

 

「おい二宮、こんな所で何してんだ。あれ龍騎だろ? 仕留めねぇのかよ」

 

「湯村か……少しばかり面倒な事になった。一旦戻るぞ」

 

「は? おいおい、何言ってやがんだ。さっさと奴を死留めて―――」

 

「もうタイムオーバーだ」

 

アビスが見せた右手も、少しずつ粒子化を始めていた。それを見たインペラーも、自身の両手が粒子となり始めている事に気付き、不完全燃焼な様子で溜め息をつく。

 

「くそ、一体何だってんだよ……!」

 

「……」

 

インペラーが不満そうに戻っていく中、アビスは後ろを振り返る。その先では、自分の入って来た鏡を通じて現実世界へと帰還していく龍騎の姿があった。

 

(カードデッキの継承か……榊原め、面倒な事をしてくれたな)

 

榊原を始末するという目的はある意味で達成されたが、仮面ライダーの数が減った訳ではない。このややこしい状況を築き上げた榊原の行動を忌々しく感じたアビスは、とある建物の窓ガラスを介して現実世界に戻ってから変身を解除。左目に白い眼帯を着けたスーツ姿の青年―――二宮鋭介の姿に戻った。

 

「おい二宮、どういう事か説明しろよ。何で龍騎を倒さなかった?」

 

同じく窓ガラスを介して戻って来たインペラーも変身を解除し、スーツの着崩れた青年―――湯村敏幸が二宮を睨みつけながら問い詰める。高圧的な態度を隠さない湯村の言動にも怯む事なく、二宮は携帯電話を取り出しながら説明する。

 

「榊原耕一は確かに死んだ。その時点で、俺達の当初の目的は果たされた事になる」

 

「あ? 何言ってんだお前、さっき思いっきり龍騎がいただろうがよ」

 

「信じられないかもしれんが……さっきの龍騎は別人だ。榊原の奴、自分が死ぬ直前で龍騎のカードデッキを他の人間に渡してやがったんだ」

 

「……はぁ!? おいおい、どういう事だよそりゃ!! ていうかそんな事できんのかよ!?」

 

「俺に聞かれても困る。実際に目の前で起こった事だからな……さて、高見沢さんになんて説明するべきか」

 

携帯電話に番号を入れ、ある人物に連絡を取る二宮。耳に当てた携帯電話から数秒間ほど発信音が聞こえてきた後、電話が繋がった事で二宮は通話を開始した。

 

「二宮です。龍騎の件で、早急にお伝えしたい事が―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榊原耕一は死んだ。

 

 

 

 

死ぬ直前で、彼は1人の青年に龍騎の力を受け継がせた。

 

 

 

 

龍騎の力を受け継いだ青年―――城戸真司(きどしんじ)は、この時はまだ知らなかった。

 

 

 

 

仮面ライダーとして戦う事が、一体何を意味しているのかという事を。

 

 

 

 

そんな彼を次に待ち構えていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのカードデッキをこっちに渡せ」

 

 

 

 

 

 

「な……だ、誰だよアンタ? 何者だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過酷な宿命を背負った青年―――秋山蓮(あきやまれん)との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから、1つの物語は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




という訳で、初代龍騎こと榊原耕一が初登場、そしてアッサリ退場です。
短い出番で終わった彼ですが、今回は早速ほんの小さな謎をぶっ込んでみました。その謎の解明はまだ先の話。

一方、『リリカル龍騎StrikerS』第1部以来の出番となった湯村敏幸。どのループでも、彼の粗暴な性格は相変わらずの様子。
そんな彼と二宮が付き従っている人物も、次回辺りで登場予定……と言っても、既に名前が出ているのでバレバレですが。

あ、先に言っておきます。
浅倉の脱獄シーンは(作者が個人的に好きなシーンなので)カットせず普通に書きます←

それではまた次回。
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