仮面ライダー龍騎 15RIDERS   作:ロンギヌス

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次回の仮面ライダージオウ、檀黎斗王だけでなくまさかの映司に比奈ちゃんまで!
出てくれると信じてたよ映司!
比奈ちゃんも久しぶり!

そんな次回のジオウを楽しみに待ちつつ、今回は『15RIDERS』の3話目を更新。

それではどうぞ。



第3話

高見沢(たかみざわ)グループ。

 

それは日本における大企業の1つ。

 

その現総帥である男―――“高見沢逸郎(たかみざわいつろう)”は先代総帥の父から会社を引き継ぎ、己の手腕とカリスマ性を駆使する事で、元は小さな企業だった高見沢グループを現在の大企業にまで躍進させた。

 

そしてこの日もまた、そんな彼の忙しい1日が始まる。

 

「それじゃ、行って来ます」

 

「「「「「行ってらっしゃいませ」」」」」

 

たくさんの使用人に見送られながら、リムジンに乗って会社へ向かおうとする高見沢。彼は部下から受け取った新聞紙を広げて読みながら、リムジンが会社に到着するのを待ち続ける。ここまでは、彼にとって普段と何も変わらない日常だった。

 

しかし、この日はいつもと少し状況が違っていた。

 

「後方に追尾車両、不審な原付二輪車」

 

「?」

 

何かに気付いた部下の言葉を聞いて、新聞を読んでいた高見沢も後ろに振り向く。振り向いた先では、原付二輪車に乗った青年が、何かを訴えている様子で手を振りながらこちらに呼びかけていた。

 

「ちょっと、おーい!! 待てよ……って、へ? ちょ、何だ……!?」

 

後ろにもう1台のリムジンが回り、前後をリムジンに挟まれた原付二輪車の青年―――城戸真司。彼は前後を挟まれた事に慌てながらも、何とかリムジンに止まって貰うべく、ズボンのポケットからカードデッキを取り出して前方のリムジンに見せつける。

 

「お、おい!! これだよこれ!! 見ろ見ろ!!」

 

「! ……すみません、ちょっと止めて下さい」

 

真司が見せつけて来たカードデッキ。それを見た高見沢は表情が変わり、一度リムジンを止めて貰うよう運転手にお願いする。

 

その後、真司は高見沢の部下に捕まり、高見沢グループ本社まで強制連行させられる事となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、待っ……何、離せよ!? 離せ、離せぇー!!」

 

高見沢グループ本社、会議室。高見沢の部下達に無理やり連行された真司は必死に抵抗するも、部下達の力が強いのかとても振りほどく事ができず、会議室の椅子に座らされる。その向かいの席に座った高見沢は、部下達が会議室から出て行くのを確認した後、リモコンを操作して会議室のカーテンを閉じ、机に設置されているマイクを通して真司に呼びかける。

 

「さ、ここなら安心です。何を話しても、外に漏れる事はありません」

 

「いや、あのですね……ッ!?」

 

真司は落ち着かない様子で椅子から立ち上がろうとした……が、その途端に会議室のドアを開けて部下達が鋭い目付きで睨みを利かせる。流石の真司もすぐに察した。これは余計な事はしない方が良いと。

 

「あ、あはははは……」

 

真司がゆっくり後ずさって椅子に座ると、部下達は再びドアを閉める。高見沢はフッと小さく笑ってから、改めて真司との対談を開始する。

 

「城戸真司さんですね。それで、この私に頼みたい事とは?」

 

「あ、はい! あのですね……!」

 

何にせよ、これで話をする時間は作れた。わざわざ2人だけの状況を作り上げてくれた高見沢に感謝しつつ、真司は彼に一通り明かす事にした。

 

自分が龍騎となった経緯。

 

死んだ榊原のやろうとしていた事。

 

自分が榊原の意思を引き継いで、ライダー同士の戦いを終わらせようと思っている事。

 

その為にミラーワールドを閉じようと考えている事。

 

既に何人かのライダーには呼びかけているが、誰からも聞き入れて貰えていない事。

 

必死なのもあって、説明が所々おかしな事になっている真司ではあったが、高見沢はそれを馬鹿にする事なく、真司が話を終えるまで笑顔で真剣に聞いてくれていた。

 

「なるほど……ではあなたは、この私と手を組みたいという訳ですね?」

 

「は、はい! 一緒に戦いましょう! もう終わりにしたいんすよ! 悪夢のようなミラーワールドも、ライダーの戦いも!」

 

真司は必死に訴えかけた。真司から見て、にこやかな笑顔で真剣に話を聞いてくれている高見沢は、かなり好印象な人物だった。これほど真面目に聞いてくれている人なんだ。真剣に頼み込めば、もしかしたら自分のやろうとしている事に手を貸してくれるかもしれない。真司はそんな期待を抱いていた。

 

それに対し、高見沢が返した反応は……真司が期待していた物とは違っていた。

 

「……ま、気取って話す必要もねぇわな」

 

「え……?」

 

突然変わった高見沢の口調。それに真司が困惑の表情を露わにする中、小さく笑った高見沢は机のマイクに近付きながら……先程まで穏やかだったその目付きを、威圧的な鋭い物へと変化させる。

 

 

 

 

「―――おうコラ餓鬼」

 

 

 

 

「ッ!?」

 

たった一言。高見沢がマイクを通して言い放ったその暴言に、真司は一瞬で気圧された。

 

「この世はなぁ、所詮力のある奴が勝つんだ……力を求めて何が悪い!!」

 

「なっ……で、でもアンタ……高見沢グループって、こんな大きな会社持ってんじゃんか!?」

 

「ふん。こんなもんはなぁ、屁みてぇなもんだ。大体なぁ……ライダーの戦いは終わんねぇんだよ!!」

 

「!?」

 

ライダーの戦いは終わらない?

 

一体どういう事なんだ?

 

訳がわからないといった様子の真司に、椅子から立ち上がった高見沢は机に設置されている物とは別のマイクを手に持ち、真司の座っている席へと迫りながら語り始める。

 

「今の社会はなぁ……ライダー同士の戦いと同じなんだよ!!」

 

「生きるって事は、他人を蹴落とす事なんだ!!」

 

「良いかぁ!?」

 

乱暴に放り捨てられたマイクのノイズが鳴り響く中、真司が座っている椅子にドカッと右足をかけながら、高見沢は鋭い目付きで言い放った。ライダーの戦いがどういう物なのか。それに参加しているという事が、一体何を意味しているのか。それを真司にもハッキリ理解させる為に。

 

 

 

 

「人間は皆ライダーなんだよ……!!」

 

 

 

 

人は皆、何かしらの欲望を持っている。

 

人は生きる為に、何かしらの犠牲を出している。

 

誰かが幸せになれば、別の誰かが不幸になる。

 

高見沢は知っていた。綺麗も汚いも関係ない、人間がどれだけ欲深い生き物なのかを。高見沢グループの総帥として長く勤めてきた彼の有無を言わせない発言を前に、真司は何も言えず只々圧倒されるばかりだった。

 

「そ、それは……そうかもしれないけど……ッ!」

 

それでも、真司はまだ納得がいっていなかった。自分の願いの為に他人を犠牲にするなんて、そんなのはあんまり過ぎるじゃないか。頭では理解しても、彼の心はそれを認めようとはしていなかった。

 

「でも、だからってこのままじゃ―――」

 

「うるせぇなぁ!!!」

 

真司の椅子を乱暴に蹴りつけ、言い返そうとする彼の意見を一蹴する高見沢。この時点で、高見沢は既に真司に見切りをつけていた。こいつも所詮、あの榊原と同じ落ちこぼれ(・・・・・)なのだと。

 

「もう良い、消えろ!!」

 

高見沢がそう言うと同時に、会議室のドアが開いて部下達が入って来た。彼等はすぐに真司を取り押さえ、会議室の外まで強制連行しようとする。

 

「な、おい、何だよ、離せよ!! まだ話があるんだよ……ちょ、離せよ、おい!! まだ話が―――」

 

結局、真司は会議室から追い出されてしまった。会議室に1人残った高見沢はフンと鼻で笑う。

 

「ゴミが……おい、もう入って来て良いぞ」

 

部下達に本社から追い出されているであろう真司の姿を嘲笑した後、高見沢は指を鳴らして合図を出す。すると真司が追い出されたのとは別のドアから、スーツを着た湯村が入り込んで来た。実は湯村も、隠れて真司と高見沢の会話を聞いていたのだ。

 

「聞いたか? あのケツの青い餓鬼の戯言を」

 

「えぇ、聞きましたよ……聞けば聞くほど、虫唾が走る馬鹿っすねぇ」

 

「全くだな。所詮、奴も榊原と同じって事だ……だが」

 

榊原が独自に見つけた、ミラーワールドを閉じる為の方法……それを真司は知っている。その事実だけは、高見沢も決して無視する訳にはいかなかった。せっかくライダーになったのに、あんな餓鬼の為に願いを叶える手段を失ってたまるものか。

 

「湯村、いつでも芝浦に繋げられるよう準備しとけ。俺はまず二宮に話を通しておく」

 

「ういっす、わかりやした」

 

万が一の可能性も考慮し、高見沢は先手を打っておく事にした。指示を受けた湯村が会議室を出て行った後、高見沢は自身の携帯電話を取り出して二宮に繋げる。

 

「何が終わりにしたいだ……何も知らない馬鹿な餓鬼が」

 

 

 

 

 

 

 

 

(チッ……高見沢の奴、毎回偉そうに命令しやがって)

 

一方で、会議室を出た湯村もまた、高見沢に聞かれない程度に小さく舌打ちしていた。上司だからといって、毎回偉そうな態度でこちらを駒扱いしてくる高見沢に、少なからず不満を抱いている様子だ。

 

(けどまぁ、今はまだ良いさ。大人しく従っといてやるよ……ちょっとでも隙を見せれば、俺がこの手でアンタを捻り潰してやる)

 

彼等もまた、決して一枚岩ではない。

 

敵同士である以上、彼等はお互いを利用し合っているだけ。

 

ライダーとライダーの間に、絆や友情など築き上げられる訳がないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――つまり、次は俺達に接触して来る可能性があると」

 

それから数十分後。とある学校のグラウンドで野球部の生徒達が練習をしている中、フェンスの近くの木々に隠れていた二宮は高見沢から連絡を受けていた。

 

『そうだ。お前は何も知らないフリをして、上手く奴から情報を抜き取れ。情報はあるのとないのでは全く違うからな』

 

「わかりました。では……」

 

高見沢からの電話が切れ、携帯電話を収めた二宮はめんどくさそうに溜め息をつく。何故ここまで嫌そうな表情をしているのかと言うと……この時、彼は既に他の役割も担っていたからだ。

 

(全く、奴等の監視もしなきゃなんないってのに……)

 

二宮は溜め息をつきながらも木の陰に隠れ、ある人物達の監視を再開する。彼が木の陰から覗き見ている先に立っているのは、先日真司と出会って口論になっていた青年―――秋山蓮と、その青年と向き合いながら会話をしている白いシャツの青年―――手塚海之の2人だった。

 

「ミラーワールドを消す?」

 

「あぁ。変な奴が現れてな、その為に仲間を集めようとしている……まぁ、大丈夫だとは思うが。万一の事も考えてな」

 

2人の会話に出て来たのは、蓮が昨日出会った城戸真司の存在だった。ある願いを叶える為に戦っている蓮からすれば、真司の存在は邪魔でしかない。そこで彼は、自分と同じ目的でライダーになった手塚と手を組み、真司の目的を阻止しようと考えたのだ。

 

「ミラーワールドを守る為に、俺と手を組みたいという訳か……断る」

 

「……!」

 

しかし、手塚の口から返って来た答えはNOだった。

 

「確かに俺とお前は同じ理由からライダーになった。恵里を助ける為に……恵里に“新しい命”を与える為に」

 

小川恵里(おがわえり)。蓮が愛する恋人にして、手塚もかつて愛していた女。モンスターに襲われ、昏睡状態に陥っている彼女の命を救う為に、2人は仮面ライダーとなった。しかし、今の手塚には迷いがあった。

 

「でも、今の俺にはわからないんだ。確かに昔、俺は恵里を愛した。今お前が彼女を愛しているように……だが、だからといって他人を犠牲にしても良いのかどうか」

 

「じゃあどうする! 恵里を見殺しにしろとでも言うのか……!」

 

「それは……」

 

恵里を助ける為に、他の誰かを犠牲にする事が果たして正しい事なのか。誰かを犠牲にしない為に、恵里を見殺しにするのが本当に最善の道なのか。手塚にはわからなかった。ハッキリしない様子の彼に蓮も少し苛立った様子で彼を睨んだ時だった。何かが地面に落ちる音がしたのは。

 

「「!」」

 

「あ……えっと」

 

(! アイツ……)

 

音の正体は、蓮が停めていたバイクに隠れて聞いていた真司が落としてしまったヘルメットだった。真司の存在に気付いた蓮が鋭い視線を彼に向け、近くで同じく隠れて聞いていた二宮も木の陰に身を隠す。

 

「お前……!」

 

「ごめん。聞く気はなかったんだけど……でもアンタ、自分の為にライダーになった訳じゃなかったんだな」

 

「貴様には関係ない。消えろ」

 

蓮が自分の為に戦っている訳ではないと知り、少しだけ安堵する真司だったが、蓮からすれば彼のそんな気持ちは知った事ではない。冷たい返事を返された真司が黙り込む中、木の陰に潜んでいた二宮は小さく溜め息をつく。

 

(なるほど。あの2人は恋人を救う為に戦っていたと……わざわざご苦労な事だな)

 

他人なんぞの為に、何故そこまでして命を懸けられるのか。二宮には理解できなかった。その時……

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

(……!)

 

突如聞こえて来た金切り音。それはモンスターが近くにいる事を知らせる警告だった。蓮と手塚がすぐにその場から駆け出し、真司も慌てて2人の後を追いかける中、その後方から二宮も密かに尾行し始める。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

女性の悲鳴が聞こえて来る。走っていた3人は更に走るスピードを速め、向かった先で飼い犬を連れている女性がミスパイダーの糸に捕まっているのを目撃した。

 

「ふっ!!」

 

『キシャア!?』

 

「大丈夫ですか!? 早く逃げて!!」

 

即座に蓮がタックルを仕掛け、ミスパイダーを近くの噴水からミラーワールドに押し返す。その間に真司が女性の傍に駆け寄り、彼女の首元に巻きついていた糸を取ってから彼女を逃がした後、3人は噴水に並んでカードデッキを噴水に向かって突き出す。

 

「「変身!」」

 

「え、あ、えっと……変身ッ!」

 

2人が取る変身ポーズを見て、真司もそれに続くように慌てて変身ポーズを取り、カードデッキをベルトに装填。蓮は蝙蝠の戦士―――仮面ライダーナイトに、手塚はエイの戦士―――仮面ライダーライアに、そして真司はドラゴンの戦士―――仮面ライダー龍騎に変身し、ナイトとライアが噴水からミラーワールドに突入する。

 

「「はっ!」」

 

「お、おい待てよ!?」

 

その後ろから龍騎も慌てて追いかけ、ミラーワールドに突入していく。その様子を隠れて見ていた二宮は、敢えて自らは変身せず、携帯電話を取り出して高見沢に連絡を入れる。

 

「二宮です。今、城戸真司と手塚海之が一緒に動いています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そうか、わかった」

 

その報告はすぐに、高見沢の耳に伝わった。高見沢は電話を切った後、スーツの上着ポケットから取り出した黄緑色のカードデッキを左手に構える。

 

(よりによって手塚海之と接触するとは……厄介な事になる前に、潰しておくか)

 

手塚は榊原同様、ライダー同士で戦い合う事に消極的なライダーの1人だ。そんな奴が真司の説得を受けて協力し合うような事になれば、自分達にとっても対処が面倒になる。そうなる前に潰さなければならない。

 

「面倒な奴等だな、全く……!」

 

高見沢は会議室の窓ガラスにカードデッキを向け、出現させたベルトを腰に装着。そのまま彼は右腕を大きく振りながら、右手で指をパチンと鳴らす。

 

「変身」

 

そのままカードデッキをベルトに装填し、両腕を広げた状態の高見沢に複数の鏡像が重なっていく。鏡像は彼の姿を変化させ、黄緑色のボディにカメレオンの特徴を持った戦士―――“仮面ライダーベルデ”への変身を完了させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『キシャアッ!!』』

 

「うぉわっと!?」

 

ミラーワールド内の大きな広場。ミスパイダーを追いかけて突入したナイト・ライア・龍騎の3人だったが、そんな彼等を待ち構えていたのか、ミスパイダーだけでなくレスパイダーも出現し、3人に飛びかかって来た。突然の攻撃に驚いた龍騎は地面に転倒するが、ナイトとライアは左右に跳んで2体の攻撃を回避する。

 

「コ、コイツ等、前に倒したはずなのに……!?」

 

「野生の動物と同じだ!! モンスターも1種類につき1体だけという訳ではない……はっ!!」

 

ライアは龍騎にわかりやすく説明しながら、エビルバイザーでミスパイダーの爪を受け止め、ナイトは左腰の鞘から引き抜いた長剣型の召喚機―――“翼召剣(よくしょうけん)ダークバイザー”でレスパイダーと応戦する。立ち上がった龍騎もすぐさまミスパイダーの方に殴りかかり、3人は2体のモンスターを相手に少しずつ圧倒していく。

 

しかし……そこに1人の乱入者が現れた。

 

「フンッ!!」

 

「!? ぐっ……!!」

 

2体のモンスターの攻撃をかわし、ライアが少し距離を離した時だった。真後ろから現れたベルデがライアの首を掴み、そこから彼の頭を掴んで大きく跳躍。龍騎とナイトから引き離してしまう。

 

「!? 何……くっ!!」

 

突然ライアが連れ去られた事に驚くナイトだったが、そこにミスパイダーが殴りかかって来る。ナイトは止むを得ずミスパイダーの方に意識を集中し、ダークバイザーを振るい応戦していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ……貴様……ッ!!」

 

一方、距離を大きく離されたライアは、ベルデに首を掴まれたまま後退させられていた。ベルデは呆れているかのような口調でライアに言い放つ。

 

「モンスター狩りも良いがよ……ライダーの敵はライダーだって事を忘れんな!!」

 

「ぐぁ!?」

 

ライアを掌底で突き飛ばしたベルデは、右手でカードデッキから1枚のカードを引き抜き、左足に装着されている召喚機―――“舌召糸(ぜっしょういと)バイオバイザー”のカードキャッチャーを左手で引き伸ばす。そのカードキャッチャーの先端部分にカードを差し込んだ後、ベルデが左手を離すと共にカードキャッチャーが一瞬で収納され、カードがバイオバイザー本体に装填される。

 

≪CLEAR VENT≫

 

「!? 何……!!」

 

電子音と共にベルデの姿が透明化し、そこへ殴りかかったライアのパンチは空振りに終わった。ベルデを見失ったライアが周囲を見渡すも、そこへベルデが装備したヨーヨー型の武器―――“バイオワインダー”の一撃が飛び、ライアの胸部に命中する。

 

「せりゃ!!」

 

「ぐっ!?」

 

攻撃を受けたライアが振り返るも、それより前に転がって移動したベルデがライアの背後に回り込む。そのままバイオワインダーを放ち、二発目はライアの背中に炸裂させる。

 

「はぁ!!」

 

「ぐあぁっ!?」

 

ベルデの居場所がわからず、一方的に攻撃され続けるライア。彼はとにかくベルデの居場所を把握できないかと周囲を探り続けるが……それは無駄な行動だった。既に物陰に移動していたベルデは透明化を解除し、次の戦法に移行していたからだ。

 

「クククククククク……」

 

ベルデは不敵な笑みを浮かべながら、離れた場所でモンスター達と戦っているナイトと龍騎を見据える。彼が目を付けたのはナイトの方だった。

 

≪COPY VENT≫

 

カードの装填されたバイオバイザーから電子音が鳴り、大型の槍―――“ウイングランサー”でレスパイダーを攻撃していたナイトの姿がコピーされる。その鏡像がベルデに向かっていき、ベルデがナイトと同じような構えを取った瞬間……

 

「フッ!」

 

鏡像と姿の重なったベルデがナイトの姿に変化し、その手にはウイングランサーも握られていた。ベルデのコピーベントはライアと違い、武器だけでなく姿までそっくりそのままコピーできてしまうのだ。彼はナイトの姿をしたままウイングランサーを持って移動し、エビルバイザーにカードを装填しようとしていたライアの前にその姿を見せる。

 

「! 蓮……」

 

「手塚……!」

 

モンスターを倒して来たのか。一瞬そう思い込んでしまうライアだったが、そんな彼の考えを他所にナイト(ベルデ)はウイングランサーを構えたまま、ライアに向かって走り出し……

 

「―――うらぁっ!!」

 

「がっ……!?」

 

ウイングランサーの一撃が、ライアの腹部を貫通した。思わぬ一撃を喰らったライアは仮面の下で僅かに赤い血を噴き出し、ナイト(ベルデ)はウイングランサーを引き抜いてからライアを蹴り倒す。左手に構えていたエビルバイザーを地面に落とし、刺された腹部を右手で押さえるライアを見下ろしながら、ナイトへの擬態を解除したベルデはファイナルベントのカードを引き抜き、それをバイオバイザーのカードキャッチャーに差し込んで装填させた。

 

≪FINAL VENT≫

 

『シュルルルルル……!!』

 

「……ハッ!!」

 

ファイナルベントの電子音を合図に、ベルデと契約しているカメレオン型の怪物―――“バイオグリーザ”が透明化を解除して高台に姿を現し、その口から舌を長く伸ばし始める。ライアがフラフラながらも立ち上がる中、ベルデが右足で地面を軽く踏んでから後ろを向いて宙返りすると、空中で角度を変えたバイオグリーザの舌がベルデの両足に巻きついた。

 

「ハァ!!」

 

「ぐぅっ!?」

 

そのまま振り子のように迫って来たベルデがライアをパイルドライバーの要領で捕縛し、バイオグリーザの舌が離れて2人が空中に高く放り投げられる。そして……

 

「ハァァァァァァァッ!!!」

 

「があぁっ!?」

 

空中で回転する事でライアの頭を下に向けさせたベルデがそのまま急降下し、ライアの頭部を地面に勢い良く叩きつける。これこそがベルデの必殺技―――“デスバニッシュ”である。一度まともに決まってしまえば最後……それを受けたライダーが助かる道はない。

 

「く……あ、ぁ……ッ……」

 

「フン……ハハハハハハハハハハ!!」

 

ベルデが離れた後も、ライアは数秒だけ逆さの状態のまま制止した後、ゆっくり地面に倒れていく。ライアを仕留めたベルデは高笑いしながらその場を去って行き……そこにモンスターを倒し終えたナイトと龍騎が駆けつける。

 

「!? 手塚ッ!!」

 

「ッ……はぁ……はぁ……」

 

急いで駆けつけて来るナイトに、倒れているライアは力を振り絞って左手を伸ばす……が、その左手をナイトが掴み取る事はなく、彼の左手は地面に落ちてしまった。

 

「手塚……!!」

 

「……れ、ん……ッ……」

 

ナイトはダークバイザーを放り捨て、動けないライアを抱き起こして呼びかける。しかしデスバニッシュを受けたライアは既に虫の息であり、蓮の名前を小さく呟いた後……その体からダランと力が抜け落ち、その後は二度とライアが言葉を発する事はなかった。

 

「!? 手塚ァッ!!!」

 

ナイトが叫ぶも、ライアの返事は返って来ない。ナイトは動かなくなったライアを抱きかかえたまま言葉を失い、それを後ろで見ていた龍騎も、ライダーの死を二度も目の当たりにした事で声をかける事もできない。

 

この日、1人の仮面ライダーがその命を落とす事となってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、待てよ!」

 

その数分後。ミラーワールドから帰還し、変身を解除した蓮は無言のまま広場の階段を駆け上がっていく。そんな蓮に後ろから追いついた真司が呼び止めようとするが、途中で立ち止まった蓮は真司の方へと振り返る。

 

「あれがライダーの戦いだ。今の内だぞ、尻尾を巻いて逃げ出すならな」

 

「ッ……お前とアイツ、友達だったんじゃなかったのか?」

 

真司にそう問われても、蓮は何も答えない。友人が目の前で死んだというのに、あまりに冷た過ぎる。真司はそんな蓮の態度が気に入らなかった。

 

「何だよその態度……お前平気なのかよ、友達が死んだんだぞ!?」

 

「何を勘違いしてる」

 

すぐ近くにある噴水の水で右手を濡らしながら、蓮は真司に向けてそう言い返す。

 

「ライダーになった時から、俺と奴は敵同士になった……敵が1人減った。それだけの話だ」

 

「ッ……お前、やっぱり最低だよ……止めてやるよこんな戦い!!」

 

前言撤回だ。少しでも良い奴だと思った俺が馬鹿だった。どこかに立ち去る蓮の後ろ姿を睨みながら、真司は怒りの表情でそう言い放つ。それを聞いても、立ち去って行く蓮がそれに反応を返す事はなかった。

 

「絶対……俺が止めてみせるからな……!!」

 

八つ当たり気味に噴水の水を手で払いながら、真司はそう固く決意する。もうこれ以上、誰も犠牲者を出さない為にも。そんな思いを抱いた真司が、右手拳を強く握り締めた時だった。

 

「随分荒れてるな」

 

そこに、声をかけて来る人物がいた。

 

「! 誰だよ、アンタ……?」

 

「なに、少し会話が聞こえてきたもんでね」

 

真司に話しかけて来た人物―――二宮はスーツのポケットからアビスのカードデッキを取り出す。それを見た真司は目を見開いた。

 

「ア、アンタもライダーなのか……!?」

 

「二宮鋭介だ……少し、俺と話でもしようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、とある広い交差点……

 

 

 

 

 

 

『昨日午後1時頃、関東拘置所から脱獄した浅倉威容疑者、25歳。その行方は現在もわかっておらず―――』

 

とある駅前の建物に設置されている大型ビジョン。そこに映っているニュース番組では、先日拘置所から脱獄した浅倉に関するニュースが取り上げられていた。駅前を通りかかる人達も大型ビジョンの方に意識が向いており、中には凶悪な囚人が脱獄した事に不安を抱いている人もいる。

 

「……ッ」

 

そんな中、険しい表情でそのニュースを見ながら、拳を強く握り締めている人物がいた。赤いシャツの上に茶色の上着を着込み、青いジーンズを履いているその女性は、大型ビジョンの画面に映っている浅倉の顔写真を強く睨みつけていた。

 

「浅倉……お前だけは、アタシの手で……ッ!」

 

その女性はそう呟いてから、その場を足早に立ち去ろうとした……が、先程まで大型ビジョンの方を見上げていたせいか、前方から歩いて来た人物とぶつかってしまい、相手が持っていた紙袋からいくつもの果物が飛び出てしまう。

 

「痛っ……あ、ご、ごめん! 大丈夫?」

 

「い、いえ、こちらこそすみません!」

 

ぶつかった相手は、黒とオレンジのキャップ帽を被った少年だった。少年が持っていた紙袋から落ちた果物を女性は慌てて拾い上げていき、手で汚れを払ってから少年に1つずつ渡していく。

 

「ごめんなさい。アタシが前をよく見てなかったせいで」

 

「い、いえ。僕の方こそ、急いでて前をよく見てなかったので……」

 

「? 何か急ぎの用事?」

 

「はい……っといけない、急がなきゃ」

 

「あ、ちょ……ねぇ! その荷物、1人で本当に大丈夫?」

 

よく見ると、少年は果物が入った紙袋以外にも大きなバッグも持ち運んでおり、かなり重たそうだった。少年は何とか1人でそれらを持ち運ぼうとしているようだが、流石にちょっとキツそうである。そこで女性は少年の隣に並び立ち、彼が持っていたバッグの方をひょいっと強引に取り上げる。

 

「あ……!」

 

「そんな1人で無理しちゃ駄目だって。ぶつかっちゃったお詫びにさ、アタシがちょっと手伝ってやるよ」

 

「え? いや、でも……」

 

「ほら、良いから良いから。急いでるんでしょ? この方が早く着くよ」

 

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

 

最初は遠慮がちだった少年も、最終的には女性の言う通りに従う事にした。女性はにこやかに笑いながら、少年と共にその場から歩き始める。

 

「ん、そういえばさ。これからどこに向かうつもりだったの?」

 

「……病院に向かおうと思ってるんです。そこに待たせている人がいるから」

 

「! もしかして、そのお見舞いの為に……?」

 

「はい。約束の時間までに向かわないと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹が、病室で僕の事を待ってるから……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その女性の名は、霧島美穂(きりしまみほ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少年の名は、鈴木健吾(すずきけんご)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライダーは皆、互いに惹かれ合う運命(さだめ)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




高見沢が告げた「人間は皆ライダーなんだよ」という台詞、良いですよね。龍騎という物語の本質を言い表している名台詞だと思います。
そんな高見沢の核心を突くような言葉に強い影響を受けた人間が、高見沢グループには数多く存在しています。あの二宮もその人物の1人です。

そんな高見沢の襲撃を受け、命を落としてしまった手塚。『リリカル龍騎StrikerS』の方では主人公として大活躍だった手塚が、こっちではこうもあっさり命を落としてしまうとは……すまない手塚、今回は題材からしてお前を活躍させるのは無理だった……!←

一方、お互いにライダーだと知らないまま接触していた美穂と健吾の2人。お互いに正体を知った時、2人はどのような反応を示すのか?
あ、ちなみに今回のファムは原典と同じく詐欺師として活動している為、本名ではなく偽名の『霧島美穂』という名前で動いています。流石の榊原さんも、彼女の本名までは突き止められなかった模様。

次回もまた、他のライダー達がぞくぞく出る予定だよ!
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