しばらくは『リリカル龍騎StrikerS』よりも、こっちの更新が優先される事になると思いますので、ご了承下さいませ。
それではどうぞ。
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「OREジャーナルの記者、城戸真司……ねぇ」
初めて二宮と正面から対面する事となった真司はあの後、彼に連れられてとあるレストランにやって来ていた。注文したハンバーグステーキを食べ終えた二宮は、食後のコーヒーを飲んで一息つき、同じくハンバーグステーキを食べ終えた真司も恐る恐る二宮に問いかける。
「その榊原という男の意志を継いで、ライダー同士の戦いを終わらせようとしているって訳か……わざわざご苦労な事だな」
「ア、アンタも、自分の願いの為にライダーになったのか……?」
「願い……興味ないな。俺はそんな事の為にライダーになったんじゃない。そもそも俺はライダーになんかなるつもりは毛頭なかった」
「え? じゃあ、何でライダーに……」
「無理やりライダーにされたのさ。戦わなければモンスターに喰われて死ぬ……だから俺はライダーになった」
「へ、へぇ……」
二宮の言葉に相槌を打ちながら、真司は向かいの席に座っている二宮の事をジッと観察する。
白い眼帯を着けている二宮は、右目から覗く鋭い目付きが少し怖そうではある。しかし真司が事情を話す中、彼はそれを馬鹿にするような発言も一切していない。それにわざわざレストランにまで連れて来てくれて、おまけに真司の分まで二宮が奢ってくれるとまで来た。それにより、真司は二宮に対して「ちょっと怖そうだけど意外と良い人なんじゃないか?」と思い始めていた。
(この人なら、もしかして……)
他のライダーと違い、二宮は自分の意志でライダーになろうとした訳じゃない。その事を知った真司は、僅かにだが二宮に対して一つの希望を見出しかけていた。
もしかしたら、彼なら協力してくれるんじゃないかと。
そんな彼の想いは……すぐに崩れ去る事になる。
「アンタは、ライダー同士の戦いはやりたくないんだよな?」
「あぁ」
「それじゃあ、アンタも俺と一緒に戦いを止めて―――」
「それ以上に、俺は死にたくないとも思っている」
真司の言葉を遮り、二宮は真司を鋭い目付きで見据える。その目付きを真司は知っていた。
何故ならそれは、あの高見沢が見せていた目付きと全く同じだったから。
「お前の言う、そのコアミラーとやらを破壊すれば、ミラーワールドが閉じてライダーの戦いも終わる……だがそれは常に場所を移動していると言ったな。それを見つけるまでの間に、他のライダーに妨害されたらどうするつもりだ」
「そ、それは……そうなる前にコアミラーを見つければ―――」
「考えが甘いな」
二宮はテーブルに置いてある1枚の紙切れを手に取る。それは真司が榊原から受け取った、仮面ライダーの居場所が書かれたリストだった。
「お前が最低だと言っていたあの男も、他のライダーも、自分の願いの為にライダーとして戦っている。奴等は願いを叶える為なら、それを邪魔しようとする人間を排除しようとするだろう」
「な……そ、そんな事あり得るのかよ?」
「あり得るさ。人間ってのはそういう生き物だ」
飲んでいたコーヒーカップを置き、二宮は眺めていたリストを真司の手元に放りながら言い放つ。
「自分が得をする為なら、自分が生き延びる為なら、他人を犠牲にしてでも生き延びようとする……人間は自分を一番可愛がる生き物なんだよ」
「ッ……アンタもそうだって言うのか……!」
「あぁそうさ。俺は自分が生き延びる為なら、誰だろうと犠牲にしてやる」
「そんな事、許されると思ってんのかよ!!」
真司がテーブルに拳を叩きつける。その音が大きく響いたのか、他の席の客達や通りかかったウェイターが思わずビクッと驚き、それに気付いた真司は慌てて頭を下げて謝罪してから二宮を睨みつける。
「結局、アンタも他のライダーと同じって事かよ……何でだ、何でそんな事ができるんだよ……!!」
「死にたくないからだ」
真司に睨まれながらも、二宮が真顔で言ってのけた一言。その一言が、真司の心に深く突き刺さった。
「死にたくないと思うのは、人間なら誰だって思う事だろう? それともお前は、お前のやる事に付き合って俺に死にかける思いをしてくれってのか?」
「!? 違う、そんなつもりは―――」
「お前にそんなつもりはなくても、お前はそう言ってしまってるんだよ」
二宮は真司の髪の毛を掴み、自身の顔の近くまで引き寄せる。無理やり引き寄せられた真司は、目の前に映る二宮の鋭い目に言葉を失いかけた。
「お前のやろうとしている事は、全てのライダーを敵に回す事と同じだ。そんな事になれば、お前のやる事に付き合っている奴まで、お前と一緒に殺されかける羽目になる……お前はそれをわかった上で言ってんのか?」
「ッ……それは……!」
全てのライダーを敵に回してしまえば、自分達が生き残れる確率が格段に下がってしまう。他のライダーに狙われる前にコアミラーを破壊しようにも、コアミラーはいつどこに現れるかわからない。成功するという確信ができない計画に、二宮は賛同するつもりは毛頭なかった。
「俺はそんなの御免だな。そんな事をして他のライダーに殺されかけるくらいなら、初めからお前の協力を蹴った方が遥かにマシってもんだ」
二宮は真司の髪の毛を離した後、取り出した財布から1万円札を引き抜き、それを真司の前に置いて席から立ち上がる。
「他のライダーに頼んだところで、どうせ結果は同じだろう。諦めて他のライダーみたいに、自分の為に戦った方が身の為だと思うがな」
そう言って、二宮は席を離れて会計を済ませにレジまで向かう。途中で振り返った彼が見たのは、二宮の言葉を強く受け止めた事で、テーブルに顔を伏せたまま動けずにいる真司の姿だった。
(馬鹿な奴だ……俺が何の為にあんな長話をしたのか、何も気付いちゃいない)
言ってしまうと、先程まで二宮が話していた内容は大して重要ではない。わざわざそんな事をしてまで、彼が真司との対話時間を引き伸ばした理由は別にあった。
「助かるよ。他のライダーの情報を教えてくれて」
それは真司が持っていた、他のライダー達の居場所が書かれたリスト。二宮が真司と長話をしていたのは、そのリストに書かれている情報を全て暗記する為の時間稼ぎだったのだ。
(おかげで、欲しかった情報も簡単に手に入った。霧島美穂、仮面ライダーファム……鈴木健吾、仮面ライダーエクシス……そして)
(椎名修治、仮面ライダータイガの居場所もな)
その後、席に1人残された真司は悩んでいた。
『死にたくないと思うのは、人間なら誰だって思う事だろう? それともお前は、お前のやる事に付き合って俺に死にかける思いをしてくれってのか?』
「ッ……俺は……そんなつもりじゃ……!」
そんなつもりで言ったんじゃない。そうは思っていても、二宮から言われた言葉が真司の頭から離れない。それくらい、二宮の言葉には真司の意志が揺らぎかけるほどの重さがあった。
(願いの為じゃなくて、ただ死にたくないから戦ってるライダーもいたんだ……それなのに俺は……)
「俺の方が、間違ってるのか……?」
しかし、やはり誰かを犠牲にするこの戦いをどうしても容認できない。どれだけ悩んでも、その事実だけは真司の頭から消える事はない。
「……いや、まだだ……!」
自身の頬をパンパン叩き、気合いを入れ直す真司。彼はまだ、可能性を捨て切る事はできなかった。
(諦めちゃ駄目だ……きっとまだ、この状況を何とかする為の切っ掛けはあるはず……!)
自分のやる事に付き合わせて、そのライダーを死なせてしまうかもしれない。
そんな不安と、それでも戦いを止めたいという目的に板挟みになりつつも、真司は次に出会ったライダーにも協力を持ちかけてみる事にした。
しかし、次に出会ったライダーはもっと最悪だった。
「城戸真司……あぁ、アンタか」
某ゲームセンター。大型筐体で格闘ゲームを遊ぶ青年―――“
「聞いてるよ、高見沢さんから。ケツの青い餓鬼がライダーになったって」
「が、餓鬼って……お前の方が年下だろ!」
「そういうレベルでカッカすんなよ、ウザいからさぁ~」
この芝浦という青年、高見沢や二宮よりもっと酷い態度だった。自分より年上の真司をガキ呼ばわりし、注意されても謝るどころか更に煽って来る。あまりに生意気過ぎる芝浦の言動に、真司はいよいよ頭が痛くなってきた。
「ライダーの戦いなんて、所詮ゲームなんだからさぁ。楽しくやろうよ」
「ゲームって……お前本気で言ってんのか!?」
「そう。そして最後には俺が勝つ……っと」
筐体の画面では、芝浦の操作していたキャラが相手側のキャラにトドメを刺し、見事勝利を収めていた。芝浦の取り巻き達の歓声が上がる中、反対側の席で芝浦と対戦していた男性は悔しそうに立ち去っていく。
「どう、やる? 俺に勝ったら、言う事聞いてやっても良いけど」
「え……お、おう」
突然の提案に困惑を隠せない真司だったが、芝浦が提案してきたのは彼がやっている格闘ゲームであり、別にライダーに変身してでの戦いではない。それなら良いかと真司が提案に乗ろうとした時、100円玉を出そうとした芝浦の財布から数枚の小銭がチャリンチャリンと落ちる。
「拾ってよ。気が利かないなぁ」
「ッ……たく、どっちが餓鬼だよ」
周りの取り巻き達からも「そうだそうだ」という声が聞こえて来る。自分の足元に落ちたんだから、それくらい自分で拾えば良いだろと思う真司だったが、それでも律儀に落ちている小銭を拾おうとする……が。
「痛って!?」
そんな真司を後ろから芝浦が蹴りつけ、床に倒れた真司を取り巻き達がクスクスと嘲笑う。ゲームで対戦しないかと提案したのも、最初からこうして真司を馬鹿にする為だった。
「人が良いんだ。アンタ向いてないよ、ライダーには」
そう言って、芝浦は取り巻き達を連れてその場から立ち去って行く。真司は蹴られた尻を押さえながらも、立ち去る芝浦達を見て苛立ちを隠せなかった。
「ライダーって……何であんなのばっかなんだよ……!!」
浅倉には脱獄され、北岡にも一蹴され、高見沢からは餓鬼呼ばわりされ、二宮からも冷たく突き放され、挙句の果てには年下の芝浦からも「ケツの青い餓鬼」と馬鹿にされる始末。ライダーはこんな奴ばっかりなのかと、真司はこれまで出会って来たライダー達の態度を振り返りながら、そんな愚痴を小さく零すのだった。
「―――ほぉ? 他のライダーの情報を掴んだと」
「はい」
一方。高見沢グループ社内の会議室では、高見沢と二宮が会合していた。椅子に座ったまま机に頬を突いている高見沢に対し、二宮は椅子に座る事なく立った状態で報告している。
「私達がまだ知らないライダーの情報……城戸真司が持っていたリストに、確かに書かれていました」
「そいつは上出来だ……で、その内容は?」
「まだ出会った事のないライダーが2名……そして、あの椎名修治に関しての情報です」
「ほぉ、奴か……場所はわかっているのか」
「問題ありません。情報は全て、ここに入っていますから」
「!」
自身の頭を指で突っつきながら、二宮は表情1つ変えずに淡々と言い放つ。そんな彼の眼を見て、高見沢は容易に察する事ができた。
情報が知りたいのなら、まだ自分を殺すな。
二宮は目だけで高見沢にそう伝えたのだ。
「……ふん、なるほどな」
反逆と思われてもおかしくない二宮の言葉に、高見沢も敢えて深くは問わなかった。彼は知っているからだ。既に自分が他のライダー達と組んでいる以上、それをわかっている二宮が裏切るような真似はしないと。
「良いだろう。そいつ等の件はお前に任せてやる……やってくれるよな?」
「……元々そのつもりです」
立ち上がった高見沢は二宮の隣に並び立ち、彼の右肩に手を置く。その置かれた手が僅かに力を込めて肩を握って来るのも、裏切りは許さないという高見沢の無言のメッセージ。それが伝わってもなお、二宮は全く表情を変えようとはせず、それに高見沢も満足そうな様子で彼の肩をポンポン叩いてから手を離す。
「それはそうと城戸真司……あの餓鬼、厄介な事やろうとしてやがる」
「ある意味、手塚よりもよほど厄介な奴です。放っておけば、いずれ本当に……」
「まぁ、早めに潰した方が良いわな……二宮、お前ちょっと芝浦を呼んで来い。俺は他の連中に連絡を取る」
「わかりました」
二宮が一礼してから退室した後、高見沢は机に設置されている受話器を取り、ある人物に連絡を取り始める。
「……あぁ俺だ。お前さんに少し、頼みたい依頼があってな」
「―――つまり、この私の手も借りたいと?」
北岡法律事務所。ガラスの先の月夜を背にしながら椅子に座っている男―――北岡秀一は、受話器を通じて高見沢と連絡を取り合っていた。
『もちろんタダでとは言わん。報酬ならうちからたんまり出してやる』
「それはそれは……えぇ、わかりました。この私もぜひ協力させて頂きます」
高見沢から伝えられた命令にも近い依頼を、北岡は爽やかな口調で受諾。しかし電話が切れて受話器からツーツーという音が鳴ってからは、爽やかな表情もすぐに面倒臭そうな表情に切り替わる。
「あ~あ全く。うちは便利屋じゃないんだけどなぁ……」
「仕事ですか? 先生」
そんな彼の下に、秘書兼ボディガードを務めている男性―――“
「お得意先からの依頼でね。ほら、前に話したでしょ? 城戸真司っていう奴の事」
「……ライダーの戦い、ですか」
「そうなのよ。奴さん、そいつを潰す為に俺と手を組みたいんだと……嫌になっちゃうよねぇ。俺の事も手下か何かみたいな扱いしてくれちゃってさ」
「やれやれ」といった表情で首を振り、北岡は椅子から立ち上がってソファの方に移動。ソファに座り込んだ北岡の前に、吾郎お手製のスパゲティが置かれる。
「お、今日も美味そうだ」
「……大丈夫なんですか? 脱獄した浅倉の件だって、まだ……」
「心配ないって。俺はそう簡単にやられはしないよ……あぁそうだ。吾郎ちゃん、明日は午前中ちょっと出かけて来るからさ。帰って来るまでに、また美味い昼飯作っといてよ」
「……わかりました」
了承する吾郎を見て北岡はにこやかに笑い、早速スパゲティを食べようとフォークを手に取ろうとする……しかし。
「コホ……ゲホ、ゴホンッ」
「! 先生……!」
フォークを手に取ろうとした直後、北岡が咳き込み出した。それを見た吾郎は血相を変えて駆け寄るが、その前に北岡が手で制する。
「ッ……大丈夫だよ吾郎ちゃん。ちょっと咳が出ただけだからさ」
「先生、ですが……」
「安心してよ吾郎ちゃん。まだ時間はある……俺は死なないよ、絶対」
心配そうな表情を浮かべる吾郎だが、北岡からそう言われた以上は何も言えなかった。北岡は咳き込んだ際に口元を覆った左掌を吾郎ちゃんに見えないように隠す。
(まぁでも……ちょっとだけ、急いだ方が良さそうかな……?)
その左掌には……ほんの僅かに、赤い血が付着していたのだった。
この男にもまた、タイムリミットが近付いていた。
To be continued……
二宮に冷たく突き放され、芝浦からも舐められて馬鹿にされ、散々な真司君。ちなみにTVSP版だと芝浦のシーンの後、イライラのあまり精神的に壊れた真司がサッカー選手の姿でサッカーをやり始める(※しかもOREジャーナルの社内で)という奇行に走る模様←
一方、この段階で既に(少量とはいえ)吐血するくらい症状が悪化していた北岡さん。
先に言っておきますと、この時間軸では北岡さんは病気の悪化がTV本編に比べて若干早くなっており、その事でちょっとだけ焦っています。
高見沢達と手を組む事を決めたのも、病気を治す手段を消そうとしている真司に邪魔される訳には行かなかったから……なのかもしれません。
次回は真司が蟹刑事と出会う予定。
蟹刑事の運命や如何に(もう察してるって?それは言わない約束だ←)