仮面ライダー龍騎 15RIDERS   作:ロンギヌス

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はい、5話目の更新です。

今回は一気に話が進んでいきます。じゃないと尺が足りないもので←

それではどうぞ。



第5話

高見沢が北岡に連絡を入れてから翌日……

 

「へぇ。アンタが来たって事は、また呼び出しかな?」

 

「あぁ。高見沢さんからの通達だ」

 

芝浦は真司と出会ったのとは別のゲームセンターで、いつも通りゲームをして楽しんでいた。その後ろではスーツのネクタイを解いた格好の二宮が腕を組んで立っている。

 

「わざわざこんな所まで、お仕事ご苦労さん」

 

「そういうお前も、相変わらずゲームで楽しんでいるようだな」

 

「まぁね。俺、ここらじゃ結構有名だし。俺に挑戦して来る奴が後を絶たないんだよねぇ」

 

「それは大変だな……で、来るんだろう?」

 

「オッケー、これ終わったらね」

 

現在、芝浦は音ゲーをプレイしており、高度なテクニックで点数を順調に稼いでいる。その巧みな手つきは近くを通りかかろうとした野次馬達の視線が集中するほどだったが、ゲームに興味がない二宮からすれば待っているだけでも退屈過ぎる時間だった。

 

「どう? せっかくだし、1回だけ俺と勝負してみない?」

 

「遠慮しておく。これ以上待たせると、高見沢さんに何を言われるかわからんからな」

 

「あっそ。お宅、つまんない奴って言われない?」

 

「つまんなくて結構。素人に一体何を期待してんだ」

 

「弄り甲斐がないねぇ……ほいっと」

 

プレイしていた曲が終わり、芝浦が獲得した得点が新記録として画面に表示される。それを見た野次馬達から賞賛の声が挙がる中、それをスルーした二宮は芝浦を連れてゲームセンターを後にしていく。

 

「それで、今回は何をやる訳?」

 

「どうせお前の所にも来たんだろう? 城戸真司とかいう奴が」

 

「あぁ、あのケツの青い城戸真司ねぇ。そいつがどうかしたの?」

 

「馬鹿は馬鹿だが、放っておけば俺達にとって厄介な存在にもなりうる。早い内に潰しておいた方が良いってのが高見沢さんの考えだ」

 

「ふぅん……ま、俺は別に良いけどさ。アンタもそれに賛成なんだ」

 

「高見沢さんが決めた事だ。俺が意見するような事でもあるまい」

 

「忠実なんだ……じゃあ、もし死ねって命令されたらどうすんの?」

 

歩いていた二宮の足が止まる。そして振り返った二宮の目付きは、鮫のように鋭かった。

 

「……その時は、俺がこの手で奴を沈めるだけだ」

 

「へぇ、そこはハッキリ言っちゃうんだ。高見沢さんに聞かれちゃっても良いのかなぁ~?」

 

「お前こそ、このまま奴の子分に成り下がったままで終わるつもりか?」

 

間髪を入れずに告げられた二宮の言葉。それを聞いた芝浦は表情こそ笑っているままだが、その目は全くと言って良いほど笑っていなかった。

 

「高見沢さんと手を組んでいる……という割には、お前も奴の子分みたいに付き従っているだけだろう。俺と大して違いはあるまい」

 

「……何が言いたい訳?」

 

「さぁな。俺の言葉をどう捉えるか、それはお前の自由だ」

 

立ち止まったまま、二宮と芝浦が互いに睨み合う。気付けば2人は右手でカードデッキを取り出している。一触即発の空気が数秒間ほど続いたのだが……

 

「……いや、やめておこう。これ以上は本当に怒られかねない」

 

「……じゃ、また今度にしよっか」

 

先に二宮の方からカードデッキをしまい、芝浦も口元をニヤつかせる。それと共に、張りつめていた空気が一瞬で元に戻る。

 

「どの道、いずれ俺達も戦い合う事になるのは変わらん。今は俺達が潰し合うよりも……」

 

「先に潰さなきゃいけない奴がいるってね。それはあのケツの青い城戸真司……と、もう1人」

 

 

 

 

 

 

「「高見沢逸郎も」」

 

 

 

 

 

 

二宮も、芝浦も、ただ黙って従い続けているほど素直な人間ではない。

 

潰すべき敵はいずれ潰す。

 

それは自分達を付き従えている人物とて、決して例外ではないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、とある喫茶店……

 

 

 

 

 

 

「―――で、刑事さんが俺に何の用なんですかねぇ」

 

そこで真司は、彼に用があるといって電話をして来た刑事の男性―――須藤雅史と対面していた。真司がコップ内のオレンジジュースをストローで掻き混ぜる中、須藤は落ち着いた雰囲気で真司に話を切り出す。

 

「あなたの事は聞いています。ライダーの戦いを止めようとしている、とか」

 

須藤の口から「ライダー」という単語が出た瞬間、真司はすぐに「うへぇ」と嫌そうな表情を見せる。

 

「はぁ……へぇへぇ、わかってますよ。どうせまた俺の事を馬鹿にしに来たんでしょう?」

 

これまで協力を持ちかけようとしたライダー達に断られた挙句、その大半から「ケツの青い餓鬼」とまで馬鹿にされ続けてきた真司は今、若干の人間不信に陥りかけていた。人間を信じられなくなったあまり、子供時代の思考に戻ればまた人間を信じられるようになるのではないかと、自身が勤務しているOREジャーナルの社内で子供みたいにサッカーを遊び始めるという奇行に走るくらいである(そのおかげで、会社の上司や同僚達からも「疲れているのではないか」と心配されてしまったのはここだけの話だ)。

 

どうせこの須藤という男も、高見沢や二宮、芝浦みたいに自分を馬鹿にしようと思っているに違いない。既に真司は半分ヤケクソだった。

 

「どうぞどうぞ、皆でせせら笑えば良いじゃないですか。ケツが青いだの何だの―――」

 

「いや」

 

しかし、次に須藤が返した言葉は意外な物だった。

 

「あなたに力をお貸ししたい。私で良ければ」

 

「良ければって……え!?」

 

なんと、須藤の返事はまさかのYES。真司のやろうとしている事に、力を貸すと言って来たのだ。

 

「本当ですかそれ!?」

 

「えぇ。これでも、刑事の端くれですから」

 

先程まで人間不信に陥りかけていたにも関わらず、須藤の言葉を聞いた途端に表情が一気に明るくなる真司。そんな彼に対し、須藤も決して嘲笑う事なく、にこやかな笑顔で頷いてみせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真司と須藤がいるのとは別の喫茶店―――“花鶏(あとり)”では……

 

(……昼の時間はこれで乗り切ったか)

 

そこに寝泊まりさせて貰っている蓮は、店の業務を手伝っているところだった。客が帰った後、水に濡らした布巾でテーブルを拭いて回っていた彼の脳裏には、真司に言われた言葉が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

『お前平気なのかよ、友達が死んだんだぞ!?』

 

 

 

 

『お前、やっぱり最低だよ……止めてやるよこんな戦い!!』

 

 

 

 

「……」

 

下らない、ただの戯言だ。

 

あんな奴に、俺の気持ちがわかるはずもない。

 

そう自分に言い聞かせようとする蓮だったが……

 

 

 

 

『手塚ァッ!!!』

 

 

 

 

『……れ、ん……ッ……』

 

 

 

 

そう言い聞かせるたびに、彼の脳裏には死んでいった親友の姿が目に浮かぶ。

 

あの時、自分が手に取れなかった親友の力なき手。

 

それが今も、彼の頭から離れない。

 

「ッ……」

 

そんな苛立ちを少しでも紛らわせようと、彼はテーブルを拭く作業を続けて行く。そんな時、店のドアが開く音が鳴り、振り返った蓮は入って来た人物を見て表情が変わった。

 

「よっ」

 

「お前……!」

 

入って来た人物―――北岡秀一がライダーである事は、蓮も知っていた。敵であるはずの彼が何故ここに。そんな疑問に駆られる蓮の横を通り、北岡が近くの椅子に座る。

 

「ダージリンをセカンドフラッシュで。その方が味に品があるからな」

 

「……何を考えている。まさか本気で紅茶を飲みに来た訳ではあるまい」

 

少なくとも何か裏はあるはずだ。でなければ、このような男がわざわざこんな場所に来るはずがない。そんな蓮の予想は的中していた。

 

「ほら、城戸真司って奴の事だよ」

 

「何……?」

 

北岡の口から出て来た真司の名前。それを聞いた途端、蓮の眉が一瞬だけピクリと反応する。

 

「細かい動きしてるみたいだし、俺達も手を組んだ方が良いと思ってねぇ」

 

「まぁ、奴が危険分子という事には間違いない」

 

そこに続けて入って来たのは、あの高見沢逸郎だ。その後ろには芝浦と二宮も連れている。

 

「早いところ潰しておいて損はないわな。どうだ、お前も俺達と組まねぇか?」

 

「ッ……お前の手は借りない!」

 

蓮の脳裏に浮かぶ、ライアを倒したベルデの姿。そのベルデの笑い声と、高見沢の声は一致していた。苛立ちを隠さない蓮は布巾を乱暴に放り捨て、高見沢の胸倉に掴みかかりながら彼を睨みつける。

 

「出ていけ……!」

 

「……ふん」

 

蓮に睨まれても、高見沢は動じるどころか逆に蓮の手を引き剥がし、馬鹿にしたような表情で蓮を睨み返す。

 

「お前もしかして、手塚って奴をやられて頭に来てるって訳か」

 

「……ッ」

 

高見沢の言葉は、蓮にとっては図星だった。それを見抜いた高見沢は更に続けて言い放つ。

 

「へっ……馬鹿だねぇ~。たとえ昔の友人でもなぁ、ライダーになった瞬間から敵同士になるんだよ。お前矛盾してんだ!」

 

高見沢が見抜いた矛盾……それはライダーでありながら、同じライダーになった手塚に情を抱いている事。ライダー同士の戦いに参加している以上、そんな物はただの足枷にしかならない。

 

「ぷはは……!」

 

「……ふん」

 

芝浦も面白そうな表情で笑っており、二宮は笑ってこそいないものの呆れた様子で小さく鼻を鳴らしている。彼等もまた、高見沢と同じように蓮の事を内心では馬鹿にしている様子だった。

 

「お前も同じじゃねぇか? ケツの青い城戸真司とよぉ」

 

「ッ……違う……俺は!!」

 

「俺はどうすんの。ん?」

 

椅子に座って聞いていた北岡が立ち上がり、蓮の横を通り過ぎる。

 

「手を組むの? 組まないの?」

 

始めから、彼等が蓮に聞きたい事はそれだけだ。手を組むのか、それとも組まないのか。蓮の返答次第で、彼等が取る行動も変わって来る。

 

「……俺は」

 

未だ眠り続けている恋人(えり)の姿。

 

その姿が思い浮かんだ瞬間、蓮の答えは決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、例の喫茶店では……

 

 

 

 

 

「いやぁ~俺ねぇ、信じてたんすよ! ライダーの中にもきっとまともな人はいるって!」

 

蓮がそんな状況になっているとは露知らず、真司は上機嫌だった。ようやく、自分がやろうとしている事に協力してくれるライダーが現れたのだから。

 

「で、でも良いんすか本当に? もしかしたら、他のライダーに狙われる可能性も……」

 

「心配いりません。人を襲うモンスターを放って置く訳にはいきませんから。その為なら、私も刑事として命を懸けましょう」

 

「くぅ~!! ありがとうございます、須藤さんに出会えて良かったです!! 俺、感動しました!!」

 

真司は歓喜の表情で須藤の手を握り締める。先程までは人間が信じられなくなったと言っていた割に、どうも調子の良い彼である。

 

「とにかくですね……あ、すいませんお代わり! ミラーワールドのコアミラーを壊したいんですけどね? モンスターに守られていて、1人じゃ難しそうで……あ、何か食べません? 俺奢りますから! あぁすみません、大盛りプリンを2つ……」

 

協力者ができた喜びからか、とにかく落ち着きのない様子で話を続ける真司。そんな彼に須藤が苦笑しながらも話を聞いていたその時……

 

 

 

 

 

 

キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「「―――ッ!?」」

 

モンスターの接近を知らせる金切り音。真司と須藤は即座に気付き、2人は急いで立ち上がり喫茶店を飛び出して行く……なお、レシートを忘れている事に気付いた須藤が、慌ててテーブルに取りに戻ったのはここだけの話。

 

「「変身!!」」

 

その後、2人は装着したベルトにカードデッキを装填し、真司は龍騎に、須藤はシザースの姿に変身。飛び込んだ先のミラーワールドでは、工場施設付近に出現したソロスパイダーが2人を睨みつけていた。

 

『シャァァァァ……!!』

 

「やっぱりモンスターか……!!」

 

「よし、一緒に戦おう!!」

 

「須藤さん……はい、行きましょう!!」

 

龍騎とシザースは駆け出し、同時にソロスパイダーに殴りかかる。ソロスパイダーも両腕の鉤爪で応戦し、鉤爪を振り回して2人を翻弄しようとする。

 

「この、大人しくしろっての……!!」

 

『キシシシ……キシャア!!』

 

「ぐっ!?」

 

「うぉわっ!?」

 

当然、ソロスパイダーが大人しくしてくれる訳などない。後ろから龍騎が羽交い絞めにして取り押さえ、その間にシザースが攻撃を仕掛けようとしたが、シザースを蹴りつけたソロスパイダーは力ずくで龍騎を引き剥がす。

 

「ッ……こいつ……!!」

 

ここで龍騎は、1枚の手札を使う事にした。カードデッキから引き抜いたカードを裏返すと……そこには、赤い炎の中で煌く金色の翼が描かれていた。

 

「はっ!」

 

龍騎が正面に突き出した左腕を、赤い炎が包み込む。すると左腕に装備していたドラグバイザーの形状が変化し、ドラゴンの顔を象ったハンドガン型の召喚機―――“ドラグバイザーツバイ”となり、龍騎の周囲を灼熱の炎が激しく燃え上がる。

 

「ぐぁ!?」

 

『キシシシシ……シャ?』

 

シザースを退けたソロスパイダーが赤い炎に気付く中、龍騎はドラグバイザーツバイの開いた口の部分に、赤い背景に金色の翼が描かれたカード―――“サバイブ・烈火”を差し込み、下顎部分を閉じていく。

 

≪SURVIVE≫

 

電子音と共に、龍騎の全身が炎に包まれ、一瞬でその姿が変化する。

 

金色のラインが追加された赤い装甲。

 

仮面の額部分から伸びている触角のような意匠。

 

赤から黒に変化したアンダースーツ。

 

黒から赤に変化したカードデッキ。

 

サバイブ・烈火の力を使った龍騎は、烈火を司る紅蓮の戦士―――“仮面ライダー龍騎サバイブ”への変身が完了。ドラグバイザーツバイを構え、ソロスパイダーと対峙する。

 

「! アレは……」

 

シザースも龍騎サバイブの姿に驚く中、龍騎サバイブはドラグバイザーツバイのグリップを引き、開いた装填口に1枚のカードを装填してグリップを押し込んだ。

 

≪SHOOT VENT≫

 

『グオォォォォォォォォォンッ!!!』

 

エコーのかかった電子音と共に、上空から飛来したドラグレッダーの姿が一瞬で変化。頭部に仮面を装備し、よりがっしりした体格を持った大型の東洋龍―――“烈火龍(れっかりゅう)ドラグランザー”となり、龍騎サバイブの背後に回り込む。

 

『キシャシャシャ……!!』

 

それを見て「ヤバい」と本能で感じたのか、ソロスパイダーはその場から逃げ去ろうとするが、龍騎サバイブは決して慌てない。彼はドラグバイザーツバイの銃口をソロスパイダーの背中に向け、ドラグランザーも口元に赤い炎を収束させ始める。そして……

 

「はぁっ!!」

 

『グオォンッ!!!』

 

『ギッ……ギシャアァァァァァァァァァァッ!!?』

 

ドラグバイザーツバイから放たれたレーザーがソロスパイダーの背中を捉え、そこにドラグランザーが放出した強力な火炎弾―――“メテオバレット”が炸裂。強力な攻撃を受けたソロスパイダーが爆散し、出現したエネルギーをドラグランザーが咀嚼してどこかに飛び去って行く。

 

「よっしゃあ!!」

 

龍騎サバイブはガッツポーズを取り、サバイブを解除して通常形態に戻る。そこにシザースも駆け寄り、龍騎の肩を叩いて健闘を称える。

 

「やったな!」

 

「お? いやぁ、へへ……!」

 

その時……

 

 

 

 

 

 

チュドォォォォォォンッ!!

 

 

 

 

 

 

「「うわぁあっ!?」」

 

突如、2人の立っていた足元に1発の砲弾が飛んで来た。爆発の衝撃で吹き飛ばされたシザースが施設の壁に叩きつけられ、龍騎が地面を転がされる。起き上がった龍騎の前に現れたのは……

 

「よぉ、また会ったなぁ餓鬼」

 

「よっと」

 

「ふん……」

 

「ヒュ~♪」

 

「……」

 

ある目的の為に同盟を組んだ、ベルデ率いるライダーチームだった。先程の砲弾はゾルダが構えた大砲―――“ギガランチャー”から放たれたようで、ギガランチャーを放り捨てたゾルダがベルデの横に並び立ち、その後ろからはアビス、ガイ、ナイトの3人も姿を現す。

 

「ッ……何だよ、邪魔しようってのか!?」

 

「はん、それはこっちの台詞だろうが……!!」

 

「そ、邪魔しないでよ。世界一楽しいゲームなんだからさぁ」

 

「そういう事だ。お前に恨みはないが、ここで沈んで貰おうか……!」

 

彼等の目的……それは龍騎を潰す事だった。ミラーワールドを閉じようとしている彼の行動は、どうしても叶えたい願いの為に戦っているゾルダやナイト、力その物を欲しているベルデ、願いではなく生き残る事を目的としているアビスやガイ、その全員にとって迷惑な行為でしかない。5人共、龍騎の存在が邪魔であるという利害が一致していた。

 

「ち、ちょっと待てって……どわ!?」

 

「はぁ!!」

 

「フッ!!」

 

「ぜぁっ!!」

 

龍騎の返事を待たず、彼等は一斉に龍騎に襲い掛かって来た。ガイの振るうメタルホーンをかわし、ゾルダのパンチを受け止める龍騎だったが、そこにアビスの蹴りを受けてしまい、続けてナイトによるダークバイザーの柄部分での殴打、ベルデが繰り出すパンチまで喰らってしまう。

 

「や、やめろ!! 俺は、お前達と戦うつもりはないんだ……ッ!?」

 

その時。ベルデのパンチを喰らった龍騎が後ろを振り向いた直後、龍騎の首元を掴み取るライダーがいた。そのライダーの姿を見て、龍騎は仮面の下で信じられないといった表情を浮かべた。

 

「な、何だよ……何でお前が……!?」

 

「……悪く思わないで下さい」

 

それは先程まで、龍騎に味方していたはずのシザースだった。シザースは左腕のシザースバイザーで龍騎の顔面を殴りつけた後、彼の腹部を容赦なく蹴りつける。

 

「あなたの仲間になるつもりは……初めからなかったんですよ!!」

 

「ぐ……うぉあ!?」

 

龍騎を殴りつけ、再び蹴り飛ばすシザース。地面に倒れた龍騎は起き上がろうとするも、その前に距離を詰めたシザースが龍騎の背後に回り込み、後ろから彼を首絞め始めた。

 

「ッ……お前ぇ……!!」

 

「あなたはライダーの戦いを知らない。癖になるんですよ……そして頂点を極めたいと思うようになる……!!」

 

この須藤という男、その精神は既に歪んでしまっていた。元々は浅倉を逮捕する為にライダーになり、その目的を見事達成した彼だったが、それ以降は自分が持つライダーの力に魅入られていき、いつからかライダー同士の戦いで頂点を極めるという目的にすり替わってしまっていた。結局のところ、彼も他のライダーと同じ碌でもないライダーに過ぎなかったのだ。

 

「やれ!!」

 

「OK♪」

 

「フン……!」

 

「く、離せ……!?」

 

シザースに捕まり、身動きが取れない龍騎。そこにガイとアビスが迫ろうとした……その直後。

 

 

 

 

 

 

ズガアァンッ!!

 

 

 

 

 

 

「「ぐあぁっ!?」」

 

「「「「「……!?」」」」」

 

そこへ突如、空気を読まずに乱入して来る存在がいた。

 

「ハッハァ……!!」

 

王蛇だ。突然真横から現れた王蛇はベノサーベルを振るい、捕まっている龍騎ごと(・・・・・・・・・・)シザースを攻撃して来たのだ。いきなり現れた王蛇を見て、シザースは動揺を隠せない。

 

「あ、浅倉……!?」

 

「何をやっている……?」

 

「ぐはぁ!?」

 

「俺も仲間に入れろぉ……!!」

 

襲い掛かって来た王蛇の狙いはシザースに定まり、慌てふためく彼をベノサーベルで容赦なく薙ぎ倒す。そのまま王蛇がシザースに攻撃を仕掛ける一方、拘束から脱け出せた龍騎は何とか呼吸を整えようとする。

 

「た、助かった……!」

 

「余所見とは余裕だな」

 

「!? おぁっ!?」

 

しかし、気を抜いていられる状況ではない。迫って来たガイのキックを龍騎が素早く回避するも、掴みかかって来たアビスに裏拳で殴られ、続けてナイト、ベルデの順に一方的に殴られていく。更にはゾルダに腹部を殴られただけでなく、殴られた腹部を押さえていたところで背中を殴られ、地面に叩き伏せられてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはぁっ!?」

 

その一方で、シザースも窮地に追い込まれていた。ベノサーベルで一突きにされたシザースが地面に倒れている間に、王蛇はベノサーベルを適当に放り捨て、カードデッキからファイナルベントのカードを引き抜いた。

 

「ミラーワールドに、刑事はいらない……!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

「ハッ!!」

 

『シャアァァァァァァァッ!!』

 

ベノバイザーにカードが装填され、死刑宣告が鳴り響く。王蛇はその場から跳躍し、現れたベノスネーカーがいる後方へと宙返りしていく。

 

「くっ……私は、まだ……こんな所でぇ……!!」

 

≪GUARD VENT≫

 

こんな所で死ぬ訳にはいかない。何が何でも勝ち残りたいという執念から、立ち上がったシザースは固い甲羅の形状をした盾―――“シェルディフェンス”を召喚し、シザースバイザーに装備した状態で王蛇に立ち向かい……

 

「オラァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ッ……ぐ、ぅう……!!」

 

毒の激流に乗って突っ込んで来た王蛇のベノクラッシュを、真正面からシェルディフェンスで防ごうとした。最初の数発は何とか防いでみせるシザースだったが……やはり、王蛇相手には無謀な行為だった。

 

「ハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「ぐ……お、ぁが!? が、ごふ……があぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

笑いながら繰り出される連続蹴りは、途中でシェルディフェンスを弾き返し、そのままシザースのボディを何度も蹴りつけていく。そしてシザースの装甲にも遂に限界が来てしまい、シザースの方が断末魔と共に呆気なく爆死させられる事となってしまった。

 

「ハァァァァ……」

 

自分を逮捕に追い込んだシザースを葬る事ができ、満足した様子の王蛇。続けて他に戦っているライダー達の方にも向かおうと、彼が後ろに振り返った瞬間……

 

ズドドォン!!

 

「うぉ!?」

 

王蛇の胸部装甲に、数発の銃弾が命中する。ゾルダが構えている拳銃型の召喚機―――“機召銃(きしょうじゅう)マグナバイザー”で狙撃したのだ。

 

「ッ……次は、お前かぁ?」

 

「あぁ。俺がお前に相応しい場所に送ってやるよ……監獄で駄目なら、地獄にな!!」

 

「フッ……クハハハハハハハ!!」

 

ゾルダが銃撃し、王蛇が近くの柱を盾にして回避。王蛇が歓喜した笑い声でゾルダに向かって行く中……そこから少し離れた場所では、龍騎も窮地に追い込まれようとしていた。

 

「はぁっ!!」

 

「フン!!」

 

「がっ……ごはぁ!?」

 

ガイのメタルホーンで薙ぎ払われた龍騎を、アビスが右手で受け止めてから右足で蹴り倒す。何度もボコボコにされてしまった龍騎は傷を負い、なかなか立ち上がる事ができない。

 

「面倒だ。そろそろ終わらせようか」

 

「じゃ、さようなら♪」

 

「くっ……!!」

 

倒れて動けない龍騎に、アビスとガイがトドメを刺そうとゆっくり迫り来る。万事休すかと思われた……その時。

 

 

 

 

「待て」

 

 

 

 

「「!」」

 

アビスとガイを、何故かベルデが制止させる。ガイは小さく舌打ちしてから振り返る。

 

「チッ……何?」

 

何故自分達を止めたのか。最初はベルデの意図が理解できないアビスとガイだったが……その理由はすぐに判明した。

 

「お前がやれ」

 

「……!」

 

ベルデが指名したのは、後ろで離れて見ていたナイトだった。ここで指名されるとは思っていなかったのか、ナイトは少しだけ驚いた様子で首を上げる。

 

「お前の手でトドメを刺すんだ。お前もライダーなら、これくらいの事はできるだろう?」

 

「……当然だ」

 

「ふぅん、なるほど。そいつを試そうって訳ね」

 

「面倒な……さっさと沈めろよ」

 

ベルデにそう言われてしまっては、断る理由もない。ベルデの意図を理解したガイとアビスが左右に退き、その間をウイングランサーを構えたナイトが通り、龍騎に迫って行く。

 

「なっ……おい、マジかよ……嘘だろ……!?」

 

「悪く思うな……」

 

まさか、本当に自分を殺す気なのか。地面を転がってでも必死に逃げようとする龍騎だったが、その前にナイトが追いついてしまい、ウイングランサーの先端を龍騎の首元に向ける。そのまま龍騎の首を貫こうと、ウイングランサーが突き立てられ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――る事はなかった。

 

「―――え?」

 

「ッ……く、ぅ……」

 

ウイングランサーの先端は、龍騎の首元ギリギリでピタリと止まっていた。それ以上、ナイトはウイングランサーを動かす事ができない。

 

「……ッ!!」

 

ナイトの脳裏に再び浮かび上がる、死に行くライアの姿。それが思い浮かぶたびに、ナイトは改めて理解させられる事となったのだ。

 

殺せば、人が死ぬという事に。

 

その人殺しを、自分がやろうとしていたという事に。

 

「お前……」

 

殺されると思っていた龍騎も、動かない彼を見て驚いた。そしてそれは、傍で見ていたベルデ達も同じだった。

 

「どうした、何故できない?」

 

アビスが呼びかけるも、ナイトはそれ以上動かない。これにはアビスやガイ、そしてベルデも呆れ果てる事しかできなかった。

 

「あれ、できないの? あららぁ……お宅ひょっとして、見かけ倒しって奴?」

 

「フン、やっぱりな……お前も落ちこぼれだ!!」

 

「ッ……うおぁ!?」

 

「お、おい!!」

 

痺れを切らしたベルデが、未だ動かないでいるナイトを蹴り倒した。龍騎のすぐ横にナイトが倒れ、その2人をベルデが冷徹な態度で見下ろす。

 

「ライダーがライダーの前で弱点を曝け出したらどうなるか、わかってるよなぁ? お前は美味しい獲物って事だ」

 

人を殺せないという弱み。それを知られてしまったライダーは脅威として見なされず、やがて他のライダーに付け込まれる事となる。そんな弱肉強食のルールに従い、ベルデは先にナイトを潰そうと襲い掛かろうとしたが、即座に龍騎がナイトを庇い、ベルデに抱き着くように掴みかかった。

 

「ッ……よせ、やめろ!!」

 

「でやぁっ!!」

 

「うあぁ!?」

 

ベルデの肘が龍騎の背中に打ち込まれ、龍騎が再び地面に倒れ伏す。そこに追撃を仕掛けようと左手を振り上げるベルデだったが……ここで彼は気付いた。

 

「! 時間切れか……」

 

ベルデの右手が、粒子化を始めている。それを見てアビスとガイもまた、自分達の体が粒子化を始めている事に気付いた。

 

「高見沢さん、ここは一旦引きましょう」

 

「……仕方ないな」

 

「ちぇ……つまんねぇの」

 

「「ッ……」」

 

流石に消滅寸前まで戦い続けるほど、彼等も死のリスクを抱えるつもりはない。ベルデ、アビス、ガイの3人は諦めてその場を立ち去って行き、龍騎とナイトは九死に一生を得る事となったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、この戦いに参加しなかった湯村はと言うと……

 

 

 

 

 

「おぉ、やっと着いたぜ……」

 

彼は今、とあるスポーツジムにやって来ていた。今回の戦いに参加できなかった彼は不機嫌そうな表情を浮かべながらジムの中に入って行き、たくさんのトレーニング用の器具が並んでいるトレーニングルームへと到着する。

 

(クッソ、二宮の野郎……俺にこんなつまんねぇ仕事押しつけやがって)

 

何故湯村がここに来ているのかと言うと、二宮からある仕事を頼まれたからだ。最初は仕事を押しつけられる事を嫌がっていた湯村だが、断った場合は後が怖いと二宮に半分脅され、渋々ながらも引き受ける事になったのだ。

 

「んで、ここで間違いないんだっけか? えぇっと……お、アイツか?」

 

1枚の紙切れを頼りに、湯村はトレーニングルームを見て回っていく。その中で、彼は部屋の奥でトレーニングをしている1人の青年を発見し、早速その近くまで近付いて行く。

 

「ふっ……はっ……!!」

 

その青年はシートに座った状態で、チェストプレスマシンを必死に動かしていた。額や首元にはかなりの汗が流れ落ちており、既に長い時間ここでトレーニングをしている事がわかる。この青年こそ、湯村が探していた人物で間違いなかった。

 

「よぉ、そこのお前」

 

「……!」

 

そこに湯村が声をかけた事で、青年は動きを止めて湯村のいる方へと振り向く。青年は首にかけていたタオルで顔の汗を拭き取ってから近くに置いていた眼鏡をかけ、ようやく口を開いた。

 

「……誰だい、君は」

 

「おいおい。まさか、俺の声を忘れたのかよ」

 

「! その声……」

 

「覚えてるはずだぜ。何せこれまで、俺達はテメェと何度か戦った事があるんだからなぁ……そうだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダータイガ……椎名修治(しいなしゅうじ)さんよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




龍騎にトドメを刺せなかったせいで落ちこぼれと見なされ、ベルデ達に命を狙われる事となってしまった。今回は何とか助かった2人ですが、これ以降2人は他のライダー達から狙われ続ける羽目に……冷静に考えるとなかなかの地獄ですよねこの状況。

一方、今回で本格的に登場……したかと思いきや速攻で退場してしまった蟹刑事こと仮面ライダーシザース。最期はやっぱり王蛇に逆襲され、呆気なく葬られてしまいました。
ちなみに彼が王蛇に襲われている間、他のライダーが誰も助けてくれなかったというのが何ともまぁ哀愁の漂う事漂う事……では皆さん、蟹刑事に合掌(チ~ン

そしてラストシーン……湯村インペラーの前例から既に予想はしていたと思いますが、この青年―――椎名修治こそが、この時間軸における仮面ライダータイガです。
彼は一体何者なのか?
今作ではその謎にちょっとだけ触れた後、残りの謎は『リリカル龍騎StrikerS 運命を変えた戦士』の第2部ストーリーで明かしていこうと思っております。

え、TVSP版のタイガも東條と同じ声をしてるって?
声が似ている別人という事でそこは何とか←

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