麻雀サークル合同説明会。
小林大学春の恒例行事である。
各サークルが個別にブースを作り新入生に説明を行う。
新入生を迎えるために鋭意工夫を凝らし、一種の新入生に向けたプレゼン大会とも言える。
ここでの成功がサークルの未来を作ると言っても過言ではなく、年々競争は激化している。
そして今年、喉から手が出るほど欲しい人材が入学した。
宮永咲と大星淡
この二人を手にいれるべく全てのサークルが策を用意し今か今かと開場の時を待っていた。
*****
そんなことなど全く知らない三人は他の新入生同様に会場の近くでのんびりと開場を待っていた。
「回るサークルは昨日決めた所で良いっすよね?」
「うん。あとは時間が余ったら適当に気になる所を見る感じかな」
「あー早く始まんないかなー」
「まるで遠足前の小学生っすね」
「むっそんなこと無いよ!昨日はしっかり八時間以上寝たもん」
「むしろ小学生っぽいよそれ」
他愛もない会話で時間を潰す三人だが桃子には心配事があった。それも十中八九現実に起きるであろう問題が。
「それより二人は変装とかしなくていいんすか?オリエンテーションの時みたいに囲まれるっすよ」
「いいのいいの。むしろ私達のこと優先してくれそうじゃん」
「私は少しでも隠そうって言ったんだけど……嫌な予感がするよ」
咲の予感はもっともで、今現在混みあっている会場前なのだが三人の周りには妙にスペースが空いている。三人は近くの新入生から視線も感じていた。
「今からこの状態っすからね、二人といると注目されるのに慣れられそうっす」
「有名人の辛いところだね!」
「しばらくはこの状態が続きそうだよね、新しい友達できるのかな」
麻雀好きからすればテレビで見ていた選手が目の前にいるのである。おなじ新入生とはいえ気後れして話しかけられない者も多くいた。
「その心配こそ小学生みたいっすよ」
「そのうち黙ってても向こうから寄ってくるって」
淡の言う通り時間が解決してくれる問題だ。咲も同意しているようで深くは考えていなかった。
ただ淡がいつも通り余計な一言を挟む。
「あっ、でも本気のサキと対局した人は逆に逃げ出すかもね」
「3年で威圧感も増したっすよね。もうプロも顔負けっすね」
「……」
友人たちにからかわれる事にも慣れていたが、大学に入り環境が変わり咲は改めて気にしていた。
"私って恐いの?"が最近の咲の悩みだった。
「やっぱり私ってこ
「一ヶ月後にはサキだけぼっちになってたりして」
そう言ってからからと笑う淡。咲はうつむきその表情は窺えない。
桃子は何かを察したのか密かにステルスを発動する。
「サキ恐いもんねー」
「……ねえ淡ちゃん。私ってそんなに恐いのかな?」
咲の顔には笑顔が張り付いていた。その背後にオーラをたたえながら、気にしていた事を聞いてみる。
「それだよサキ!そのオーラ背負った怖い笑顔でゴッてすれば囲まれても大丈夫!」
「……」
「私も手伝うし二人でやればみんな逃げ出すでしょ!」
「淡ちゃんは私を……私の笑顔をそんなふうに思ってたんだ。……ふーん」
咲の顔にはまだ笑顔が張り付いている。ふふふと不気味な笑い声が聞こえてきそうなステキな笑顔だ。
やっと淡は何かいけないものを見たように焦りだし、桃子に耳打ちする。
「ヤバイ。これマジなやつだ」
「淡が煽るからっすよ」
「モモコだって」
「ねえ」
「「はい!!」」
「二人だけで何の話をしているの?」
優しく問いかける咲。顔も言葉も優しいはずなのに二人には寒気すら感じられていた。
「淡、何か答えるっすよ」
「この状態のサキはヤバイんだって」
「何がどうヤバイんすか?具体性ゼロで全然分かんないっすよ」
淡と桃子がひそひそと相談している最中も咲はぶつぶつと何事か呟いている。
「私って恐い?ねえ?淡ちゃんだって同じでしょ?」
「時間になりましたので麻雀サークル合同説明会を始めます。扉から離れてください」
二人が諦めを決めようとしたとき大きな声が響く。二人にとって救い主とも言える声は大学職員のものだった。
これをチャンスと受け取った二人は一斉に咲を宥めにかかる。
「ほ、ほらサキ。もう始まるって。どんなサークルがあるか楽しみだよね?」
「そうっすね。咲ちゃんも落ち着いてっす。三人で一緒に楽しみましょう」
「……そうだね」
咲は完全に納得してはいない様子だがそれでも落ち着いていく。揺らめいていたオーラもいつの間にか消えさり、表情もいつも通りの咲に戻る。淡と桃子はほっと胸を撫で下ろし名前も知らない大学職員に一生懸命感謝した。
(今の咲ちゃん、自分の恐さをわかってたっすよね)
(いやいやいや!無意識だから恐いんじゃん!……多分)
*****
一悶着あったがもう開場の時間である。
三人はちょうど会場に続く扉の前に陣取っていた。先ほどの職員の言葉で咲たちより前にいた人たちが扉の前から離れ、先頭で扉が開くのを見ていた。
しかし徐々に開いていく扉の間からは誰も見えなかった。
(あれ?オリエンテーションの時みたいに一気に来ると思ってたんだけど……)
上級生が待っているはずの会場に誰もいない。そんな疑問が三人に浮かぶが、扉が開くにつれ驚愕の光景とともにその理由を察していく。
それと同時に淡の顔色が悪くなっていく。
「さあどうぞ淡様」
進み出た代表と思われる女性が淡を招く。
まるでメイドいや執事といった装いだ。
さらにその奥では整列した上級生が一斉に頭を下げる。
みな一様に白いワンピースを来ている。
見るものにとっては懐かしき光景。
その光景は『白糸台ロード』そのものだった。
「「……」」
「ええぇえええぇえー!?」
最新話の菫さんが良かった。
照菫は書きかけで断念してるけどいつか完成させたい