瞬神の影   作:キアラン

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第三話

「はぁ…」

 

「なんじゃなんじゃ、辛気臭い顔をしおって」

 

お前のせいだよ。ったくなんで俺がこんなことに。俺の腕に巻いている副官証を見つめながらそう心の中で愚痴を吐く。

 

「しょうがないじゃろ。大前田の奴がお前に副隊長を譲りたいと言うんじゃから」

 

そう、前副隊長である大前田さんがいきなり引退を宣言したのだ。本人曰く俺や他の隊士の実力も上がってきたし、実家がどうのこうのと言っていた。まぁそういうわけで引退したわけなんだが…

 

「なんで俺が副隊長に…」

 

その時に後任として俺が選ばれたのである。確かに三席の喜助が十二番隊隊長になったからそれ以外から選ぶってのはわかるんだが、それにしたって俺ってどうなのよ。

 

「おぬしは本当に自己評価が低いのぉ。隊長に推挙されておるのじゃから副隊長くらいどうということはなかろう」

 

「推挙されるのと実際なるのはやっぱ違うだろうがよ。それに仕事増えるし…」

 

単純に副隊長になって仕事量が変わったのと、他諸々の昇進が決まった。第二第三分隊の部隊長になりました。これも二つの長がいなくなったための措置みたいなんだが、それにしたって俺の仕事増えすぎぃ!

 

「まぁある程度は部下に任せられるからいいけど。蛆虫の巣には定期的にいかねぇといけねぇし」

 

「それくらいの仕事はこなしてもらわんとな。これからはワシの右腕として頼むぞ」

 

いい笑顔で言っちゃってくれてよぉ。まぁ夜一の右腕ってのは悪くねぇかな。

 

「わかりましたよ隊長」

 

うむっ、と満足そうな夜一の後ろについて歩く。今日は一番隊隊舎に来ている。何でかといえば喜助の就任の日だからだ。夜一からすれば俺の紹介もあるんだろうけどな。

 

「今日は早いのじゃな」

 

「朽木隊長!」

 

そう言って声をかけてきたのは、六番隊隊長の朽木銀嶺(くちきぎんれい)さんだ。白い髭に長髪で中々のご高齢に見えるが、そんなものを感じさせないほどの霊圧と力を持ってる。総隊長と一緒で末恐ろしい爺さんだ。

 

「おぬしの所から昇進が多いのぉ、四楓院」

 

「まぁの、優秀な部下が多くて助かるのじゃよ」

 

笑いながら答える夜一。話によると隊首試験に同伴してたのが朽木隊長と、四番隊の卯ノ花隊長って話だから知ってて当然は当然か。

 

「今度の副隊長は良さそうだな。前のよりも箔がありそうだ」

 

「大前田には箔はなかったかのぉ」

 

まぁ他の人に比べたら箔のある感じじゃないけどそりゃねぇでしょ。てかそれ大前田さにバレると俺絞められるんですけど‥

 

「先日は白哉がすまんかったの、おぬしに八つ当たりしてしまって」

 

「いえいえ、隊長の尻拭いも部下の努め、しかも八割方こっちに非がありますんで」

 

ワシは悪くない! とでも言いたげな顔をしている夜一を無視して銀嶺さんと話しを続ける。

 

「また茶菓子持ってお邪魔しますんで、白哉にもよろしく言っててください」

 

「それはありがたい。白哉の鍛錬にも付き合ってもらえると助かる」

 

それくらいなら。と答えて歩みを進める。

 

「なんじゃなんじゃ、寄ってたかってワシを悪者にしおってからに。あれは白哉坊が」

 

「はいはい、だから二割はあいつが悪いって言ってんだろ。すぐ頭に血が上るのはあいつの悪い癖だけど、それを知ってて煽ってんのはお前だろうが。反省しやがれ」

 

全て夜一が悪いとは思っていない。あれはあれで夜一なりの応援とかってことはわかってる。それでも相手の怒るとこを見るのが楽しい(本人談)ってので、煽るようにするのはちげぇだろうよ。

 

「はっはっはっ、副隊長に頭が上がらんとはの」

 

むくれる夜一を見ながら笑う銀嶺さん。流石に人前でやるのはまずったかな、反省反省‥

 

「よいよい、これから時間を時間を共にすることが多くなるのじゃ。取り繕う必要はあるまい、自然にすればよい」

 

気落ちしている俺に、背中越しに言ってくれる銀嶺さん。気分が軽くなった気がする。

 

「そう言っておれば、人が多くなってきたの。なんじゃ、通せんぼか?」

 

に声をかける銀嶺さんを見て、失礼いたしました。と道を開ける前に立っていた副隊長三人。見知った顔もいるが、見ないのもいるか。気にせずに脇を歩いていけば卯ノ花隊長が夜一に声をかけている。

 

「おめでとうございます」

 

「祝いの言葉なら本人に言ってもらえぬか、卯ノ花隊長」

 

そう言って一礼する夜一。何時もこう真面目ならねぇ。

 

「今回は部下二人の昇進ということで」

 

「優秀な部下が多くてのぉ。その話は後での」

 

ありがたい。ここで話をと言われても困るからなぁ、特に隊長二人が。

 

「後で、ね」

 

こんな感じに去り際に言われるし。会釈と合意、両方の意味を込めて頷けば口を緩める京楽隊長。これだから副隊長やだった本当に。

 

そうして俺たちは隊首会の開かれる広間へと向うのであった。

 

 

 

*―――――――*

 

 

 

「まさか副隊長になるとはねぇ」

 

「俺も驚いてますよ」

 

隊首会の開かれる広間についた俺たち。まだ総隊長が来ていないので時間があるということで、俺は京楽隊長と浮竹隊長の所にいた。

 

「まさか三席の子が隊長になるとは、いつから知ってたんだい?」

 

「浮竹隊長が来る前ですよ。夜一から聞いてね」

 

曳舟前隊長が昇進するという情報が耳に入ってすぐ位に夜一に相談された。まぁ俺は好きにしろや、それがお前だろ、としか言ってないんだけどな。その後で浮竹隊長がきて断りを入れたってことだ。

 

「そういうことなんですみません」

 

「いやいやいいんだよ。事前にそういう話になっていたなら仕方ない」

 

俺の言葉に笑って答えてくれる浮竹隊長。でも流石になにもしないってのは気が引けるし、あれ言うか。

 

「お詫びといってはあれですけど、海燕のヤツの副隊長勧誘、手伝いますよ」

 

「本当かい!! 君の言葉なら海燕も耳を貸すはずだ!」

 

声を大きくして喜ぶ浮竹隊長。よかった、喜んでくれてるみたいだ。

 

「そういうわけなんで、副隊長としてこれからはよろしくお願いします」

 

そんな感じで時間をつぶすように他の人とも話をしていた。五番の平子隊長(本人からは真子でいいと言われたが)とは初顔合わせだったのたが、十二番隊の副隊長である猿柿ひよ里との漫才をみて、こんな感じでいいのかと思ったよ。

 

ただ、副隊長の藍染はよくわからなかった。見た目よりもなんでか暗い印象だったな。

 

「来たみたいだぜ新入り」

 

そういって入ってきたのは九番隊の六車隊長だった。総隊長が並んで待てとのこと。夜一の後ろに立って待機しておいた。

 

そしてその後すぐに表れたのは、

 

「えーと、ボク一番最後ですか?」

 

いつもの通りの緩い喜助だった。

 

 

 

*―――――――*

 

 

 

「随分嫌われてるみたいだな」

 

「キリツグさん」

 

その夜、俺は喜助の元を訪れていた。十二番隊隊舎で座っていた喜助は何だか楽しそうな顔をしていた風に見えた。

 

「さっき平子隊長がきて、ちょっと話を聞いてました」

 

「へぇ、平子隊長が。まぁひよ里との漫才見る限り、仲良さそうだもんな」

 

にしてもあの人が。めんどくさいのは苦手そうな雰囲気出してたのにな。

 

「好きなようにしていいって言われて、肩の荷が落ちた感じッス」

 

「それでいいだろ。うちの隊長思い出せよ」

 

目線を合わせて、同時に笑いだす俺たち。人の上に立ち慣れてないこいつにいいアドバイスしてくれたみたいだな、平子隊長。またお礼でもしに行こうかね。

 

「そっちはどうッスか、副隊長の仕事のほうは」

 

「数日は挨拶回りになりそうだよ。そのあとは蛆虫の巣に行くのと、今後の警邏隊の部隊編成、やること増えてやになるぜ」

 

「それはそれは」

 

元々の仕事量を知っている喜助は苦笑している。本当、せめて書類関係だけでも少なくできりゃいいんだけど。どっかの隊から人回せないかねぇ。

 

「あ、そうだ。明日辺り蛆虫の巣に出向くんでお願いします」

 

「いいけど、何しにだよ」

 

(くろつち)さんを出そうと思います」

 

「‥‥そうか」

 

涅というのは反乱分子として蛆虫の巣、その奥に閉じ込められている男だ。話したことはなどかあるが、正直苦手だ。底の知れない奴ってのは確かだけどな。

 

「出すのはいいけど、そのあとはお前が面倒見ろよ。問題起こしたら責任問題で四十六室送りにすっから」

 

「やめてくださいよ、冗談に聞こえないッス」

 

変わってないようで安心したわ。それにしても隊長羽織、結構様になってんじゃねぇかよ。

 

「頑張れよ、浦原隊長」

 

「‥ええ」

 

そういって頷く喜助の顔はいつも通りにも見えたけど、俺にはかっこよく見えた。

 

 

 

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