親しくなってからぶっ壊れるまで   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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出会い編
大井は北上大好き過ぎ


 

 

 深海棲艦、そして艦娘の出現から(しばら)く経ち、世界は平穏を取り戻しつつあった。

 

 その中でも当時世界有数の海軍を保有していた日本も例に漏れず、初戦の絶望的と(ささや)かれた戦闘を乗り越え、次の戦いに向けての新たな準備が着々と進められていた。

 何処の鎮守府もようやく迎えた平穏に(かま)けることなく、(せわ)しなく働き詰めるその中の一つ。そこに大井は配属された。新天地でこれから起こる新たな戦いに顔を引き締める者が多い中、大井はそんなもの眼中に無いとでも言いたげに白目を()き、生気を感じさせない足取りで歩いていた。

 

 実際、勝利の代償は決して安くは無かった。戦友、姉妹、家族。このどれかを、あるいは全てを失った者。聞いている、見ている。

 その多くが後方に下がり、予備役扱いとなっているのだが。全ての戦線から、そう言った者たちが退いた訳ではない。まだ戦況は思わしく無く、(むし)ろ広大な海に未だ謎多き未知の敵。不安要素を考えれば少しでも戦力が欲しいのが現状。心的外傷のダメージが軽いものから前線に駆り出されるのも不思議ではないはずだ。

 

 大井を視界に入れた彼女達は思った。

 同情はしない。自分もいつああなるか分からない以上、他人の心配をしている余裕は無い。だがしかし、大切な者を失くしてもなお、戦う事から逃げ出さないその姿に、一人の艦娘は敬意を示す。戦場でもし(あい)まみえたなら共に戦おう、これ以上悲しみを生まないために、貴方のような不幸な兵器(艦娘)を増やさないために、共に戦おう。

 

 そうして彼女は海軍式敬礼を大井に向けする。無論それは大井にも、まして回りに見える事は無い。心中で行われた、心に傷を負った者に送る、彼女なりのせめてもの敬意であった。

 

 

 

 

 

 ちょっとした歓迎会を終えたのち、大井は夕陽の見える波止場から海を見ていた。

 

 激戦を乗り越えた恋人、北上さんが心配で心配で、ここの提督の言ったことなど微塵(みじん)も覚えていない。

 離ればなれになると知った時の大井は世界を敵に回すのも(いと)わない程に暴れ回った。最終的に北上が止めに入らなければ、記念すべき人類への反逆者第一号となるところだった。「逆らうのなら二度と北上と会えなくなるぞ」。と脅され、憲兵に挟まれた北上が大した緊張感もなく「わ~、助けて大井っち~」。と懇願(こんがん)するので、血涙(けつるい)を流し、断腸(だんちょう)の思いで泣く泣く転属を受け入れ今に至る。

 さっきの感動を返せと言いたい所だが、大井はさっきから北上のいる鎮守府に今から向かって何時間で着くかを考えているので、たとえ背後を深海棲艦がぬるりと通り過ぎても決して気が付く事は無いだろう。

 

 沈みゆく太陽を背負い自室に戻った大井は、北上へ駆け落ちしようとする節の手紙を書き始める。が、後日検閲官(けんえつかん)に見つかった手紙がどの様に処理されたかは、各々の想像に任せるとしよう。

 




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