親しくなってからぶっ壊れるまで   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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セリフを入れると字数が稼げるよ?


揺れる揺れる波音に、眠る眠る水底に

 

 

 

 日米の連合艦隊が瓦解するのを目の前にして、長門は今、余りに切望していた晴れ舞台に歓喜していた。妹である陸奥の、必死の呼びかけにも応答しない。昂る体とは対照的に考えを巡らす頭は、深海の如く酷く冴え渡っている。

 

 

「長門!! 何をしているの!? 撤退命令は出ているのよ!!」

 

 

「止めないでくれ陸奥、私の晴れ舞台だ」

 

 

「あなたそれって……無謀な特攻をしようとでも言うつもりなの!? いいから早く!!」

 

 

 妹から見たら私は、死に急いでいるように見えるのだろか。必死の形相で転身を促すその態度に、どうも悲しさが募る。

 

 激変してゆく戦場で、申し子の艦隊決戦は見送られ続け、その最後ですら国に尽くすことは叶わなかった。今この気を逃せば万全な状態での真っ当な戦闘など、一体いつ、いつ来ると言うのだ。

 

 のこのこと本土へと帰ったところで、資材の大食らいであり、戦略的にも価値が薄い超弩級戦艦の優先順位などたかが知れてる。砲塔稼働状態での海岸砲がせきの山ではないか。

 

 あり得ない、あり得ない。象徴たる連合艦隊旗艦の来世が、今度は満身創痍の陸上で果てろと言うのか? せめて、せめてまともな海戦で!! この、友軍が転身する重大な局面で!! 新進気鋭の若人達に、日の本の希望を託しながら、暁を望む水平線の上で朽ち果てたい。

 

 時代遅れなのは痛いほど理解している。されど、この戦いが後に続く天王山であることも同時に理解している。感謝すべきは、戦場へ向かう足があり、武器弾薬砲塔を有し、人格を獲得せしめ、意思が宿っていることだ。この瞬間、今こそが命の捨て時。国民に広く愛されていた彼女の闘志が、そこには確かにあったのだ。

 

 

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 慌ただしさで混乱する港で、被弾した体を引きずって茫然と私は立っていた。落ち着きのない、すれ違ういく人にも無視されて、私は私の存在理由を見つけられずにいた。

 

 本土の安全圏へと誘導された私を待っていたのは、あまりにも残酷な仕打ち。また力を振るえずに、背後でどうしようもなく腐り果てる。それが私の、私達の運命だとでも言うのだろうか。

 

 国家存亡の危機を眼前で流されて、奮い立って前線に臨むはずの足は組み伏して。こんなの、生き地獄ではないか。志を失ったお飾りは、その巨体を沈める場所も知らずに、稲穂のように首を垂れた。

 

 唖然と激しく動く人の群れ。その中から一人抜け、真っ直ぐとこちらに向かってくる者が。

 

 

「長門型戦艦二番艦、陸奥殿でよろしいか? 貴殿に任務を言い渡す。この書類を、この辞令の示す者の配下となって受け渡して頂きたい。これは命令である、即刻この場で受理せよ」

 

 

「拝命致します」

 

 

 呼ばれた声に即座に反応して、すぐに軍人の顔を貼り付けて、渡される封筒の宛名に覚えはなかった。ありがたかった。このまま一人で悶々と考えていたら、それこそ精神を病んでしまいそうだったから。いずれにしろ、私に封を切る権限はない。敬礼され敬礼を返した後、印字されたその人物を訪ねるのだった。

 

 

 

 

 

 目当ての人物を見つける。士官用の宿舎であったことから、また提督が変わるのかとうんざりしていたのだが、見たところ、背中からも若さがよく伝わる。言っては悪い気がするが、これは明らかなお払い箱のように思える。混乱と疲れのためか、心ここにあらずの状態である彼に気付いてもらうために、少々大袈裟に敬礼をした後に用件を伝えるのだった。

 

 

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 彼は……一言で表すならば、歪であった。

 

国家のためと招集された、士官候補生主席の身でありながら、その中身は半人前の理論家。他の人間より座学で優れた、しかし実戦はからっきしのズブの素人。一を言えば一しか出来ず、凝り固まった理想論を、刻一刻と移りゆく戦場に無理やり適用させる。精神面でも脆弱で、心の柱となる者を何かを欠いている危うい存在。それはまさに、私の前任者を数グレード落としたような有様であった。

 

 私は彼を再教育した。聞こえが悪いかも知れないが、これでも元連合艦隊の旗艦を務めた艦船。一人の人間に全てを授けられると自惚れてはいないが、実力は十分であると自負している。

 

 まず基礎基本、ついで意思疎通の重要性、仮想戦場である机上演習。私の知り得る全てを、それこそ厳しく、彼に叩き込んだ。今思えば、何かに意識を集中していないと精神が不安定になるのが怖くて、当たり散らしていたのではないかと過去を振り返る。

 

彼に必要以上に厳しくしたのも、私と同じようなシンパシーのようなものを感じ取り、同族嫌悪が加速した結果だとも今なら認められる。

 

 けれども彼は優秀であった。めげずに失敗を繰り返し、辛酸を舐め、敗北を知ってもなお逃げ出すことはしなかった。少しだけ盲信的なところは否めないが、それでも彼は私の理想を体現せしめた。してしまったのだ。

 

 提督の好意を一身に受け取るたびに、言い様のない懺悔の気持ちが浮かび上がる。前時代のロマンの塊が高説を垂れてなかったとしても、彼は立派な提督へと成長していたであろう。それが早いか遅いかの議論はまた後にして、彼の可能性を私は無理やり矯正してしまったのだ。

 

 彼を戦いへと向き合わさせるために、約束をした。今でもそれは、おそらく呪いのように作用していることだろう。私は、大切な者を失った代償を他者に求め、それ以外のことに逃げ出さないように運命を縛りつけたのだ。

 

 私は……私は、私が嫌いだ。

 

 

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 来た。遂に来たか!! 手渡しで渡された、茶封筒を受け取って、提督は大規模作戦の前兆を感じ取っていた。力なく非力に垂れる糸を掴んで、慣れた手つきで開封し、間髪入れずに中身を取り出した。

 

 

『大規模再編計画』

 

 

 この時をどれほど待ち望んだことか。冷遇されているはずの超弩級戦艦、陸奥の着任をどれほど、どれほど切望していたことか!! 

 

 長門なき今、実質一人で連合艦隊旗艦として指揮を振るう、象徴的艦娘。おいそれと渡せないのは百も承知。実績を積み上げ、部下を育成して、されど今に至るまで転属の許可は一向に降りなかった。

 

しかし、そんなことで悩むのももう終わりだ。北方方面軍なき今、宙ぶらりんの陸奥を取り込むまたとないチャンス。たとえ手塩にかけた一線級の戦力を多数手放すことになったとしても、是が非でも引き込んでやる。

 

 昇進がなんだ、名声がなんだ、んなもん他の奴らにくれてやる。約束を、約束を果たすんだ。そのためだったら左遷されたって構やしない。……いや、今のは言い過ぎた。戦艦を運用するだけの基盤さえあれば、どんな待遇を受けたとしても耐えよう。

 

積もり積もった話もある、彼女に出会える日を密かに夢想する。決戦の日は近い。

 

 

 




セリフがないから、字数が稼げないよ?

じかいしんしょうとつにゅう。
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