親しくなってからぶっ壊れるまで   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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昨日の分もうんちします。


二人の再会に・・・・

 

 

 

 身嗜みを整える。今日は待ちに待った歓迎会の日だ。

 

 姉妹艦を中心に、多くの者たちがこの鎮守府を去り、またその穴を埋めるように艦娘達が新しく配属される。

 

 中には愚図る者もちらほら見られたが、約束を反故にするわけにも行かずに脅しにも似た対応で急を凌いだ。中には去り際に愛の告白をする連中も出てきて、それが今まで散々馬鹿にしていた艦娘だったものだから、尚更怒りがこみ上げてくるのだ。

 

 不当に扱いつづける人物に、普通好意を抱くのか? ハッキリ言って、艦娘の思考回路はまったく持って理解できない。

 

 全く、手塩にかけて育てた割に、融通の効かん連中には困ったものだ。これを気に態度の悪い連中を出来るだけ追い出すことには成功したので、陸奥が配属になる時には立派な提督像を保てる。

 

 スピーチのキーワードだけをまとめた、ちっちゃいメモを片手で覆い隠しながら、歓迎会の会場準備がどれくらい進んでいるのかチェックする。今日はいつにも増して気合が入る。気分は恩師に自分の成長した姿を見せる感覚に近い。見ない間に成長し、立派な男になったとアピールしなければ。

 

 窓ガラスに自分の顔を写し、髪型なんかを整えて待ち望んだ空間に備えていた。

 

 

「ワァ!!」

 

 

「ふあぁ!! ……なんだ大井か。鍋を持ったまま遊ぶな、それぐらい理解しろ」

 

 

「何怒ってるんですか提督。そんなことゆうならキムチ鍋食べさせてあげませんよ? あと、気合入りすぎててキモいです。髪型なんて弄ったって提督は全然変わりませーん」

 

 

「……」

 

 

 自分に不利な状況を作り出す艦娘を優先的に排除してきたもの、この目の前で明らかに上司を舐め腐っている大井を切り捨てることはできなかった。

 

 戦績は確かに良い物の、やはり素行に問題があるのか、どの提督達も見るからに避けている様子だった。最終手段として、北上との分離も視野に入れて検討をしてみたが、大井からの報復を遅れてしまい断念。

 

 北上加入の苦労の割に、忠誠心の違いが見受けられないのに、明らかな地雷を囲い込んでしまったらしい。

 

 ……断られてゆく様を哀れに思ったのか、大井の古巣だった提督が今回の歓迎会費用を出そうと打診してくれた。いや……ありがたいんだけども、ありがたいけれども……はぁ。

 

 

「いつも通りで良いんですよ、変によく見せようとするから辛いんです。ありのままで十分なんですよ」

 

 

「……あぁ悪いな大井。そうだよな、いつも通り、いつも通り……」

 

 

「あ〜もう。変に意識しちゃうからそうなるんですよ、鍋でも食べて落ち着きます?」

 

 

「主役が来るより早く手をつけて良いのだろうか……。まあ、そうだな、辛いのなら好物だ。挨拶が終わった後にでも、美味しくいただくよ」

 

 

「ぷっふふふ、残念ウッソで〜す。小さい子達もいるのに、わざわざ主役じゃない提督に寄せて料理を作るハズないじゃないですか。それとも、私の作った料理がそんなに食べたいんですか〜?」

 

 

 悪戯が成功したような含み笑いを浮かべ、心底愉快そうに寄っては離れを繰り返す。ふわりと漂ってくる香水にもにた甘い香りに、心では鼻をひん曲げた。

 

 

「こんなところで油を売っていて良いのか?」

 

 

「冷たいんですね提督。重い荷物を持った女性がそばに立っているのに、細かい気遣いができないからモテないんですよ」

 

 

「……」

 

 

 いい加減モテないモテない聞き飽きた。

 

 別に大井の評価を基準にしているんじゃないが、怒りを押さえつけるために奥歯をガリっと歯軋りするだけに止めて、大井が両手に抱える謎鍋を抱え込む。全く、部下に好き放題やられて、飛んだ上官だよ全く。ぅわ、けっこう重い。

 

 具材をあらかじめセットしておいて、スープも用意されているのか結構な重量だ。本体重量が増したことで遅くなった足。何が楽しいのか、大井は提督の速度に合わせて、端を発すようにおしゃべりを続ける。途中で反応を返してあげないと、しつこいぐらいに返事を求めるので、内心へんな気遣いなんていらないからどっかに消えてくれと、作り笑いで部下の要望を満たすのだった。このままだとストレスでどうにかなってしまう。

 

 

 

 

 

 大広間に着く。前に陸奥の勧誘が成功したこの場所が、あの時と比べて緩く飾り付けられた内装に感慨深くなる。長机に置かれたコンロに鍋をセットすれば、押しつけられた仕事はようやく片付く。時計を見て、まだ余裕があると再びスピーチの切れ端を眺めていると。

 

 

「挨拶の覚書きですか? そんな、観艦式ガッチリしたわけでもないんですから……緊張してるんですか?」

 

 

 当たり前だ。横からメモを覗き込んで……これでは見えないではないか。必要以上にズイッと近付く大井をなんとかしようと、大広間を見渡して、対大井の代名詞を探す。

 

 

「おおい北上!! ちょっと助けてくれ!!」

 

 

 自分の名前を呼ばれたと思った大井は、一瞬バッと顔をあげたが勘違いかと北上の方を見る。"ホイホ〜イ"と呑気によってくる北上に、大井の相手をさせてこの場を抜け出そうとゆう寸法だ。

 

 

「ま〜た大井っち提督に張り付いてるの? ほーんとお熱いのもいい加減にしないと、愛想つかされちゃうよー」

 

 

「そ、そんなんじゃないですよ」

 

 

「はー。提督も暇人じゃないんだから、"ウザッたい"ぐらい強く言ってあげないと。大井っち提督のこと大好きだからずっとひっついてくるんだよ?」

 

 

「は、はぁ。面目ない」

 

 

 からかうようにニヤニヤと放たれた言葉に、大井は心底動揺して、提督から飛び退くように離れた。チラチラとこちらを伺い、なんだか顔が不自然に歪んでいる、北上に怯えているのだろう。悪戯を親に目撃された子供のような有様だな。愉快愉快。そんな風にお気楽に考えていたが、流れ弾がこちらにも命中して、謝りなさいとゆうように親に怒られた気分になった。喧嘩両成敗。俺はほとんど悪くないのに。

 

 

「き、北上さん。わ、私はたから見たらめ、めんどくさい女に見えるんですか?」

 

 

「う〜ん、もし大井っちが出撃の直前だとして、その時に提督がダル絡みしてきたらどう思う?」

 

 

「や、確かにあっち行けってなりますけど……」

 

 

「相手の立場になって考えてあげなきゃ。それと、男は追うと逃げちゃうから、提督に追わせないと」

 

 

「そ、そうですよね……わ、わかりました」

 

 

「てことでさ提督、大井っち新入りが入ってくるってんでテンション高くなってんだよね〜。ま、許してあげてよ。ほら大井っちも謝って」

 

 

「あの、その……ごめんなさい」

 

 

「いや分かれば良いんだよ分かれば」

 

 

「んまぁ提督もこの後の挨拶とか頑張ってね〜、適当に応援してるから〜」

 

 

「頑張って、下さいね?」

 

 

「あぁご期待に添えるように善処するよ」

 

 

「じゃね〜」

 

 

 北上の理解が早くて助かる。大井の扱いを熟知している北上のことだ、後続の憂いなく対処してくれるだろう。あの様子じゃ当分近づいてこなさそうだから、やることに集中できる。優秀な部下を持って上司としては誇らしい……? これ大井にも同じこと思ったような記憶が……。

 

 料理が続々と運ばれていく中、俺は人気の少ない裏路地まで移動して、そこでリハーサルを繰り返した。陸奥に自らの成長を見せるにふさわしい、完璧な出立で迎えるために。

 

 

 ──────

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「それじゃあ、乾杯」

 

 

「「「「「カンパーイ」」」」」

 

 

 静寂を保っていた大広間は、詰められた人数に相応しい喧騒を取り戻した。ふ、緊張した……。なるべく陸奥がいる方向は見ないようにしていたが、変に映っていなかっただろうか、その点が一番の心配だ。

 

 音頭や挨拶は問題なく終えることができ、観艦式の時並みに緊張した体を緩めて、どこか適当に開いている場所に割り込む。陸奥とは離れてしまったが、心の準備とやらが必要であろう。酒をちょっと入れて、緊張を紛らわせよう。

 

 緊張でカラカラの喉に、音頭の時に掲げたお酒を一気に半分ほどまで流し込むと、新入りの摩耶が話しかけてきた。

 

 

「よ! あんたがここの提督だろう? さっきの挨拶は見事なもんだったぜ。まあなんだ、お近づきの印に一杯ついでやるよ!」

 

 

 なんとも男まさりな性格で、その重巡はフランクに酒を注ごうと酒瓶を手に抱えている。だがしかし、まだ半分ほどお酒が残っているため、このままでは十分に気遣いを受け取ることができない。新人に恥をかかせるわけにもいかず、体に追い酒でグラスを空っぽにして差し出した。

 

 変なこだわりとゆうのか、こんなことで気を使っているから酔っぱらうのも早くなるのだろう。お酒で苦しい思いをしないためにも、目安として同量のお水を交互に飲むのが良いとかなんとか……。

 

 切り込み隊長的ポジションの摩耶が踏み出したからか、我も我もと友好的な関係を築こうと列を作っていく。流石の提督も学習したのか、注がれる度にちびちび飲んで、最低でも形式の体面は保とうと守りの姿勢に入る。

 

 列の後方を望んで、陸奥が来ていないことに肩を落とすが、落ち込んでいる暇もなく酒は注がれ続ける。そして、並んでいた全員を捌き切ると、安堵した様子で席に着席した。

 

 お酒を続けて取り込み続けたせいか、お腹がタポンタポンだ。それでもちょうど良い具合に酔いも回ってきたので、どれお酒の力を借りて陸奥に会いに行こうかと辺りを偵察する。

 

 周囲にある料理と適当につまみながら、陸奥の姿を探す。数が少ない戦艦の中でも、特に希少な超弩級戦艦だ、かくれんぼしてるわけでもないから嫌でも目立つだろう。そんな軽い気持ちでキョロキョロ探していたのだが、……おかしいな見つけられないぞ。いやいやそんな筈ないと目を皿のようにしてもう一度探していると。

 

 

「提督どうぞ、おつぎしますよ?」

 

 

 北上の拘束を振り切ったのか、大井が後方より飛来した。悪気なんて全くないと言わしめる澄んだ笑顔で、酒瓶を片手に提督に詰め寄る。

 

 大井は確か、俺が下戸なのを知っている筈だ。分かり易いほどに憎たらしい嫌がらせか、わかり切った嫌がらせでしかないだろう。いつもならまあ笑ってその場を収めることもできるが、俺はまだ陸奥に次いでもらっていない。新しく入ってきたわけでもないお前が喜ぶような茶番に付き合う義理はない筈だ。

 

 断ろうと片手を差し出すが、問答無用で酒を流し込んでくる。咄嗟に受け取ってしまったが、後の掃除を考えると、大井が酒瓶を手に持った時点でもうすでに敗北していたのだ。

 

 無邪気を装った笑みをこぼしながら、逐一こちらを馬鹿にしてくる大井へは、陸奥が見てる陸奥が見てる陸奥が見てると暗示を書ける事で感情を抑え込むことに成功した。

 

 適当に相手して、また捜索を再開すると、襖を開けて陸奥の姿を確かに見た。ドックーン、と心臓が跳ねたのは、何もお酒のせいじゃないだろう。お花でも摘みに行ってたんだろう、可愛らしいな。

 

 盛り上がってきて、自分への注目が下がったのを十分確認してから立ち上がり、陸奥に継いでもらおうとグラスを一気に煽って空にする。お? おぉうお? ふらつく足取り、調子に乗って一気飲みなんてしてしまったのが運の尽きか、視界がぼやけ始めた。

 

 

「大丈夫ですか提督、部屋までお連れしますよ?」

 

 

「いや……まだだ、まだいけるぅ……」

 

 

「はぁー提督もうお酒はダメですよ。お酒弱いのに何やってんですか、全くもう」

 

 

 緑色した誰かが駆け寄ってきて何か言ってくる。その内容の半分も理解できずに、もはやぼやけすぎて陸奥なのかなんなのか判別できない彩り豊かな何かに向かって宣言する。力強く前進したはずが、外部からの力によって簡単に組み伏せられ、視界がグルグル回った。

 

 

「あぁ……ダメじゃ……、北…………」

 

 

「……よ──────」

 

 

 いやまだ俺には使命が、使命があるんだ……陸奥にお酒を注いでもらうとゆう使命が……。そこで意識は途切れた。

 

 

 

 ──────

 ────────────

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「や、やめてくださいよ北上さん。私のベットに寝かせるなんて! 寝ゲロしたらどうするんですか!! 死んじゃいますよ!!」

 

 

「え〜。大井っちなら提督の吸い出せるでしょ」

 

 

「そ、それってキスしろって事ですか!! で、できるわけないじゃないですか!!」

 

 

 頭がガンガンする。気持ち悪い。唸り声を上げて体を起こそうとするのを、誰かに止められる。

 

 

「あ、提督。起きたんですね、お水飲みますか?」

 

 

「あ? ん? ぅ〜ん?」

 

 

 壁が迫ってくる。違うな、大広間から締め出されたのか。とするとここは医務室か何処かか? いや、まだ行ける。もう一度戻って、うぐぐ。

 

 

「じゃ後はお二人で楽しんでね〜」

 

 

「へ? 北上さんま、待ってくださいよ! いやでも提督を一人にするわけにはいかないし……」

 

 

 立ち上がろうとちゃぶ台に手をつけるが。あやべえ、さっき食ったおつまみ出ちゃいそう。動けなくなったところに、大井がお水をもってくる。

 

 

「提督? 気分でも悪いんですか? お水飲めますか?」

 

 

 クッソ、脳味噌が脈打ってやがる。酒を薄めないと……。少し落ち着いた所で口をつけたのを最後に再び事切れる。スースーと寝息を立て始めたのを確認して、大井は自分の膝掛けを提督にかぶせ、どうしようかと右往左往。

 

 

「全く……自分のお酒の量くらい把握しときなさいよね」

 

 

 呆れたように呟くが、二人っきりの個室で提督が眠るシチュエーションにドギマギ。それに今の提督はお酒の影響なのか、妙な色っぽさを醸し出している。北上も何かを気遣って退出しているし、これはチャンスなのではと独りごちる。

 

 

「提督ー、燃料なくなっちゃいましたよー、出撃どうするんですかー」

 

 

 頬をツンツンして反応を伺うが、悪夢にうなされたように苦しそうな顔を一瞬して、また寝息を立て始めた。

 

 

「提督ー? 提督ー? 起きてくださいよー」

 

 

 心にも思っていないことを喋りながら、警戒心が強いネコはゆっくりとすり寄ってくる。

 

 

「起きないと、何されても知りませんよー」

 

 

 スーッと背中から首筋、耳たぶに顔を移した大井は最後の忠告をする。

 

 これは……しばらく起きて来ないと見て間違いないだろう。

 

 スンスンと鼻を鳴らして、提督の匂いを楽しむ。耳たぶの裏の匂いを嗅ぎながら、いつかの日提督が抱え上げてくれたのを思い出して感情を昂らせる。

 

 息を吸うには吐かねばならぬ。だんだんと熱を帯びてゆく吐息、徐々にその速度は早まる。濃厚な匂いを求めてさらに体を近付けて、今度は首筋へ、産毛が鼻を擦り上げくすぐったくなるのを無視して息を吸い込む。

 

 それでも満足に足らなかったのか、もっと深い匂いを求めて今度は頭皮へと移る。髪の毛に顔を埋めて、油っぽい頭皮を吐息で湿らせて、貪るように堪能した。気が付けば大井は、提督をあすなろ抱きしていた。上半身に限定されたものだったが、体を密着させると興奮は鎮まり、安心が勝る。

 

 満足げな顔で顎を提督の肩に乗せて、とてつもない高揚感に包まれるのを感じた。深呼吸を繰り返し、眠った相手にするのは明らかな変態行為だが、そんな自分を客観視できないほどに二人だけの世界を作り上げている。

 

 どうしようもなく幸せな空間。ただ一つ残念なことは、提督の意識がないこと。それだけが大井には残念でならなかった。

 

 

 





お酒飲んだ事ないから、突っ込まれると玉砕する自信がある(エッヘン!!)
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