親しくなってからぶっ壊れるまで   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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しばらく頭冷やします。


愛の証

 

 

 

最近の悩み、どうも提督が私に構ってくれなくなった気がする。

 

もちろん、次の大規模作戦でピリピリしてるのはわかるが、やっぱり冷たく突き放されると胸が苦しくなる。やはり他者からの意見が欲しい、意見を聞くとなるとやっぱり北上さんか。

 

私は何も、相談できる相手がいなくくて仕方なく北上さんを選んでいるわけではない。私にあって北上さんにないもの、私のはなくて北上さんさんにはあるもの。着眼点とゆうのか、北上さんは対局的に見るのが得意で、私は細かく見るのが得意。私はどちらかと言えば、元々ある計画を煮詰めて完成に近付けることを得意とし、北上さんは大雑把な作戦立案で力を発揮する。

 

それがあったから、あの地獄のような本土決戦を生き抜くことができたのだ。それで今回の非常事態。手元にある作戦書は役に立たない。そうなると、新しい戦略を立てねばならないので、北上さんに縋り付くのだ。

 

 

「ふっふふ〜。よきにはからえ〜」

 

 

「ははぁー」

 

 

甘味処の間宮アイススペシャルを二人で食べながら、ことの経緯を話すと北上さんは頼もしくも引き受けてくれた。

 

 

「ふむふむ、提督が最近冷たいと」

 

 

「はい・・・・」

 

 

「ぱっと見はラブラブなんだけどなぁ・・・・デートも大井っちが手動なんでしょ?」

 

 

「あ、いえそんなことは。前のデートは提督が案内してくれて・・・・」

 

 

「でもそれって大井っちがMVP取って頼んだものでしょ? きっかけは全部大井っちじゃん」

 

 

「まぁ確かにそうですけども・・・・」

 

 

「なぁーんか最近提督おかしいんだよね。なんていえばいんだろう、こう、水を得た魚・・・・見たいな?」

 

 

「大規模作戦のことですか? あの人本当に戦うのが好きですよね」

 

 

「まぁ確かに戦績表見てよくニヤニヤしてるもんねぁ〜」

 

 

「でもそうなると、今回の人員異動が変になりません?」

 

 

「ん? どうなんだろう。まあ主力の人達たくさん抜けちゃったけど、こっから俺が鍛え直すモリモリマッチョ体育会系って考えれば、別におかしいことでもないんじゃない?」

 

 

「そうなんですかねぇ・・・・」

 

 

「あそうそう、随分前にこの鎮守府と元私がいたところの鎮守府で、合同演習あったじゃない? その時の空き時間に提督に聞かれたんだよねぇ〜"このスコアは大井と一緒に出したものか?"てさぁー」

 

 

「私達が二人で戦果を上げてることに気付いてたんですね」

 

 

「あぁ見えて地味に優秀なんだよね提督って、人の使い方うまいってゆうのか、人誑しってゆうのか。現に一名様は相当に惚れ込んでおられまぁーす」

 

 

「ちょ、やめてくださいよ北上さん! 提督の耳に入りでもしたらどうするんですか!」

 

 

「ま〜た提督とマウント取り合ってんの? ああゆうタイプは本気で口にしないと理解しないからね。一緒にいるから愛し合ってるなんて、そんなの幻想だよ。定期的に好き好きオーラ全開でいかないと・・・・大井っち大好きだよ」

 

 

「グゥハアァッ(絶命)」

 

 

定期的とゆうか常時好意を伝えてくる大井の好きは、言い換えるならジャブ。対して、北上が気まぐれに放つ好きはアッパー。それも、ガードを容易くすり抜けての攻撃なので、相手は死ぬ。

 

 

「わかった? 大井っち。くだらない意地張ってないで懐に飛び込まなきゃ、私が横取りしちゃうぞ〜」

 

 

「き、北上さんも提督のこと好きなんですか!?」

 

 

「わわわ、そんなわけないじゃん。親友の恋人横取りなんてしないよぉ。それに、提督ビビビィ〜ってこなかったし」

 

 

「一目惚れってやつですか?」

 

 

「う〜んそうだねぇ。大井っちだけかな? 今の所は」

 

 

「ぇ、それって・・・・」

 

 

「ふふふ・・・・提督から親友を横取りするのさぁ〜」

 

 

「キャー!!」

 

 

黄色い声援に周囲は反応を示す。それは好意的だったり、否定的だったり。親しい誰かを思い浮かべたり、まだ見ぬ誰かを思い浮かべたり。実に様々な反応を周囲に振り撒くのだった。

 

 

──────

────────────

──────────────────────

 

 

懐に飛び込む。

 

提督に打ち明ける。

 

今まで出来てこなかった私に取って、それがいかに困難なことか想像もつかなかった。

 

慣れとゆうものは怖いもので、いきなり対応を変えてしまうと相手に嫌われるんじゃないかとか、自分じゃないみたいなんて悪い方向ばかり考えてしまう。定まってもいない結果を決めつけるなんて、神か仏にでもなったつもりなのかと自分を卑下する。

 

結局私は成長しない未熟児。提督の優しさに甘えて、ズルズルとイヤなことは先送りして、ただ今の現状がゆるりとつづく様しか想像できない臆病者だ。

 

それと、提督を観察していれば嫌でも目に入る影。あの日、私が手帳で見た人、陸奥さんがどうしようもなく怖いのだ。

 

彼が陸奥さんに声をかけている時の表情といったら、部下に対しての事務的な会話とは違う。明らかに関係を大きく外れた、ゆうなれば熱っぽさを帯びたような。提督の見たこともない表情が彼女に向けられて、私はただ現実逃避するように指輪を撫でることしかできなかった。

 

戦友といった括りで囲えるだろうか、憧れの人といった括りで囲えるだろうか、好きな人といった括りが苦しいが一番納得できてしまう。北上さんのいった言葉が蘇る。

 

 

『なぁーんか最近提督おかしいんだよね。なんていえばいんだろう、こう、水を得た魚・・・・見たいな?』

 

 

もしかして提督は、陸奥さんを招き入れるためにずっと動いていたんじゃないのかなんて変な妄想が入ってしまう。二人が食堂を出ていく。どうやらかなりの時間が経っていたようだ。中途半端に残された、冷めてしまったご飯を返却口に突っ込んで、後を追いかけた。

 

二人が道の隅っこにいるのを見つけた。けれど、逃げ出してしまいたい。こんなに近くで見てきたはずなのに、私にはあんな楽しそうな表情を引き出すことはできなかった。

 

今まで送ってきた彼との思い出は全て見せかけのニセモノだったのだろうか? 私が壊してしまったためにお揃いになってしまったマグカップ、二人でいった遊園地、北上さんと引き合わせてくれた笑顔、語り尽くせなかった物足りなさも、看病に対しての感謝の言葉や、あなたの愛の告白も・・・・。

 

嫌だ・・・・なかったことになんてしたくない。提督に好きと、伝えるだけ。ただそれだけのはずなのに、私はすごく難しく考えていたんだ。

 

彼のもとへ駆け寄る。タッタッタと軽快な足取りにはもう迷いはなかった。大好きな彼の顔がこっちを向いて、その顔を驚愕で埋める。もう迷わない、今なら言える気がする。慣性に乗った少女は、彼の左腕にしがみ付き、顔を目一杯爪先立ちで近付けて主張する。

 

 

「提督、大好きです」

 

 

言い切ったが直後、言い逃れできない恐怖が体を蝕み始める。

 

もしも否定されたら一体どうすればいいの? もしも嫌いって言われたら? もしも、もしも、もしも。もしもが積み重なって、精一杯背伸びする少女を押し潰しにかかる。怖い、嫌だ、苦しい。顔は困惑に、次いで目は閉じられ、不安に耐えようと体に力が入ってしまう。そこに救いの手が差し伸べられた。

 

 

「お、おぉどうした大井! 大丈夫か?」

 

 

頭を撫でられて暗い気持ちから解放された。

 

受け入れてくれた。私を、受け入れてくれたのだ。私は受け入れられたんだ。達成感か喜びか、そのどちらも併せ持ったか、安心で堪えていたものが溢れてくる。涙は提督の腕をスリスリすることで拭って、なおも力を入れた。提督が今度は乱暴に撫でてくるようになって、それが私には堪らなく嬉しくて、陸奥さんの笑い声を聞いて恥ずかしくなってようやく離れた。

 

 

「うふふ・・・・慕われているのね、提督」

 

 

「え、いや・・・・まあ、あはは」

 

 

提督からハンカチが差し出され、それで涙を隠す。ハンカチからは提督の匂いがより一層強くした。

 

 

「平気か?」

 

 

「ズズビ。はい・・・・ハンカチ洗ってお返しします」

 

 

「・・・・そうか、返すときはいつでもいいぞ」

 

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

 

第三者もいることだから、時が立つにつれて気まずくなってくる。"あの、お話中失礼しました"と発し敬礼をした後、その場を逃げるように立ち去る。なんだか重要な一歩を踏み出せたような気がする。離れてゆく背中には、提督の優しい顔が向けられている気がした。

 

 

 

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