親しくなってからぶっ壊れるまで   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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暗転編まえに、新たにうんち挿入しました。

うんち合体! やってくれたね!!


束の間の夢

 

 

 

 いまでも忘れはしない、現世へと目覚めたその日。

 

 私は複数の人間に取り囲まれていた。

 

 決戦装備、完全武装といえばいいのか。鉄板を仕込んだ盾を前面に押し出され、重苦しい装備を体に纏わりつかせて。見るからに拒絶するようなその態度に、私はなにも感じないでいた。

 

 けれどふと頭をよぎったのは、同型艦の存在。私と同じように意識を覚醒させて、この現世で同じような扱いを受けているのかもしれない。そんな考えを浮かばせれば、下の木曽に、一つ上の北上、多磨、球磨姉さんに逢いたい気持ちが強くなっていった。

 

 けれど、他の球磨型の行方を聞けるような空気ではない。仕方ないので、ゆっくり片腕を掲げ脅威ではないとアピールしつつ、所在を尋ねようと口を開いたら。

 

 

 バチン

 

 

 盾の隙間から筒状のものが出て来たと思えば、砲塔のついた手が後方へと運ばれる。

 

 銃弾じゃない、ジンジンと痛む、なんだろうこれ。連続音。後方へ運ばれる体。直後盾は迫って来て、拘束具をつけられていた。その時の待遇に、怒りがわかなかったのかともし質問されたのなら、私は迷わずに"NO"と言える。

 

 鬼畜米英と、敵兵憎しで教育され鍛え上げられきた。何に怯えているのかこの時はわからなかったが、少なからず日本人の面影を残す彼らには、一切の抵抗感が湧き出てこなかったのだ。

 

 

 

 その後、どこか既視感を覚える島に軟禁される形が取られた。

 

 その島では、私はまるで地球外生命体のような待遇を受ける。そんな日々が一ヶ月二ヶ月三ヶ月とたった後は、久々の海風を感じることができた。綺麗だった。間違いない。島の容姿は変わっても、ここは紛れもなくあの時の海、あの時の空。

 

 空は天辺から、青を落として段々と、水を含ませ最後を白で締めくくる。雲はただ悠然と、陽の光で濃淡を作りながら、立体感を強調する。海はただ粛々と、過去の声を細波に隠す。視点は今とは違うかもしれないが、ここには間違えなく見覚えがあった。

 

 

 

 

 

 撃って、触られて、食べて、寝て。撃って、触られて、食べて、寝て。撃って、触られて、食べて、寝て。

 

 一体何度繰り返すようになったのだろうか、その内に数えるのも面倒になった。

 

 小さく完結したこの世界で、私は自我を殺して職務を全うするのだ。すべてはかつてと同じく、国を守護するため。外部からの情報は一切入ってこない。"余計なことは考えなくていい"と言われてしまえば、外界の様子を知りたい気持ちにも蓋を閉じざる終えなかった。

 

 勝利を重ねているのかも、敗北に追い詰められているのかもわからない戦局に、けれど私の存在が大いに意味をなしているのだと信じて。嬉しさは少ないが、悲しさもそれだけ少なく。もう何度わたったかわからない島の概要に、後悔や悲しみ、感慨深さは薄まっていた。

 

 他の艦娘と呼ばれる存在とは一切交流を絶たれ、ゆっくりと朽ちていくように私の日々は過ぎ去っていく。そして、ようやく暖かくなって来たなと季節の感想を思い浮かべた朝。退屈な刺激のない日常は尊く終わりを告げる。新しい装備一式を受領し、気がつくと私は最前線に立っていた。そんな時だ、彼女に出会ったのは。

 

 

「へ〜いきなり最前線か〜、いや〜大変だね〜そりゃ。ま、同型どうし仲良くしようよ。あ、わたし北上。まよろしく」

 

 

 その人の感想は、よく喋る人だなと思ったのが始まり。最初のうちは気にしていたはずの姉妹艦も、目の前にするとどうすればいいのか困ってしまった。ろくに艦娘と関わり合いなんてなかったから、どんな態度で接していいのかわからない。

 

 でもこれだけは言える。北上さんは他の艦娘に愛されている、私なんかよりもちゃんと人間味があった。私なんかよりよく喋って、私なんかより感情豊かで、私なんかより優しかった。私にできることといえば、ただひたすらにデータを取りつづけてきた経験と戦闘力ぐらい。実戦での感覚を掴んでいく中で、北上さんは私の憧れになった。

 

 

「私、魚雷って嫌いなんだよね〜」

 

 

 唐突に始まる会話は、最初こそ戸惑いもしたが、慣れてくると日々の楽しみの一つとなっていた。

 

 黙っていても、基地にいる様々な艦娘が彼女に声をかける。私なんかよりも、もっと仲の良い友人もいるだろうに。私なんかと一緒にいて、楽しいのだろうか。そう思いさえすれど、口に出すことは決してなかった。

 

 ある時、作戦のミスで旗艦が轟沈。基地では新たな旗艦候補の選出を執り行う事となった。旗艦だけの喪失は珍しい話ではない。チームを率いるリーダ的存在で、いい意味でも悪い意味でも下についた艦娘の運命を握っている。

 

 そんな責任重大の役職で、一人でも欠けるものが出てしまうと、どうしても責任を感じずにはいられない。激しい戦闘の末、旗艦が一人で帰ってくるようなことがあれば、口には出さないものの、みな心のどこかではどんな気持ちを飼っているのかは、想像に難しくだろう。

 

 たとえ提督が旗艦の任を解かなかったとしても、自主的に旗艦の位を破棄する艦娘は後を絶たない。そんな中で手をあげる変わり者の運命は、最終的に心を折る・耳を塞ぐ・罪を背負いながら戦い抜くこのいずれか。そんな状況で立候補者など出るはずもなく……。

 

 

「は〜い、私やっちゃおっかな〜」

 

 

 終始ゆるい声色に目を見張った。ヒラヒラと手を掲げながら、なんとも学級委員の立候補の調子で北上さんは名乗りをあげた。まるで誰にも推薦させまいと自ら首をくくるように、私にはそう見えてしまった。

 

 無力。久しく味わう絶望。しかし、意地悪な質問をするなら、究極的には誰に殺されたいか。そこに北上さんの名を上げてしまう自分に、なおさら自己嫌悪を味わうだ。新しく艦隊は再編されて、北上さんは新たに旗艦に君臨する。もちろん新任の経験不足で失敗も多かったが、やはりというべきか、志願者は規定をたやすくあぶれさせた。

 

 

「いや〜モテモテで困っちゃうね〜。どお? 大井っちも私に惚れてみない?」

 

 

 強い人だ。こういう人が戦局を動かすんだ。私のような、人間味の薄い人間ではなくて、あなたのような眩しい光が海を明るく照らすのだ。自惚れていた。私の居場所は、もうこの世界のどこにもないではないか。生きながら死んでいる。北上さんには敬愛を超えて、後ろめたさを抱くようになっていた。あの日までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場に絶対はない。

 

 北上艦隊から戦死者がでた。

 

 

 

 そして……。

 

 

 

 

 

 北上さんは相変わらずだった。

 

 

 

 

 

 悲しむ様子のない北上さんを、基地の多くの艦娘は見限った。

 

 "多く"と表現したのは、少なからず私と、同じ艦隊メンバーはそんなことをしなかったから。強い人だ。悲しんだって死者は蘇らない。それは生者としてはあまりにも合理的で、しかし艦娘としての心が理解を拒む論理であった。

 

 引きずりおろすことはせず。なぜなら旗艦は貧乏くじ。誰かに押し付けなければ、押し付けなければ。そんな彼らを非難する資格なし。なぜなら、私は踏み出さなかったから、その一歩を。後ろめたさ、後ろめたさ、後ろめたさ。ついに私は耐えきれなくなり、北上さんを遠ざけた。私には北上さんを支えてあげる力も、資格もない。もっと暖かい、それこそ北上さんを考えてくれる人がそばにいてあげるべきだ。私はあっち側なんだから。そうやって、背を向けた。

 

 

「そっか……大井っちも私のこと嫌いになっちゃったかー。そっか〜……」

 

 

 そんなわけないだろう。

 

 でも、なんて声を掛けて励ませばいいかなんて、人間味のない私にはさっぱりわからなくて。けど嫌っているわけじゃないんだと言葉にしたくて。結局それは自分勝手の傲慢の極みで。

 

 振り返る権利なんてないはずなのに、体は元来た場所へひるがえり。ズンズン肩を切って歩く頭には、計画なんて全くなくて。けれど北上さんを前にしたら、小動物のように小さく震えながら、目をつぶってありとあらゆる行為に耐えようとしていた。

 

 それを見てしまったら、もう……。

 

 言葉なんてない。励ますことすらおこがましい。そんな北上さんと対極に位置する私でさえ、抱きしめずにはいられなかった。北上さんをしっかりと手中に収めると、腕の中でビクリと体を震わせて、やがて小さくなった。

 

 なにやってんだわたしは。なにしてるんだ。なんでわたしは抱きついてるんだ。罪の懺悔のつもりなのか。わたしはあなたの味方だよとでも言いたいのか。どの口が、誰に一体、誰にいった。

 

 弱い、無力、偽善にもなりきれない。なんなんだこれ。なんだこれ。ことの終始、なにかが発せられることはなく。ただひたすらに心は揺れ動く。いつの間にやら大井は強く抱きしめて、涙を流していることに気がつく。私が泣いてどうすんだと、顔を拭うために離れようと、力を緩めるその体を今度は北上が抱き寄せる。

 

 

「あはは、大井っちが泣いてどうするのさ。でも、乙女の涙を見ることは重罪だよ。だから……もうしばらくこのままで居させて?」

 

 

 スンスンと鼻を鳴らす大井は、コクコクと頷いて了解を告げる。ナニかを形にしてあげなければ気持ちが伝わるわけでもなく。ナニかを言葉にしなければ想いが届くわけでもない。ただ側にいるだけで、救われるナニかもあるもんだ。北上が静かに泣いていることに、大井は最後まで気づけなかった。

 

 

 ──────

 ────────────

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「ま、私と大井っちとのコンビなら怖いものなしでしょ。どこも地獄みたいなもんだけどさ〜」

 

 

 北上さんはそういってカラカラと笑う。その後しばらくして、私たちは揃って転属願いを提出した。

 

 未だ予断を許さない戦局。けれども予想に反して、この願いではあっさりと通過した。なんでも、水雷戦隊の設立にうまく引っ掛かったようだ。運命はどう転ぶか直前までわからないらしい。

 

 向かうは最前線、激戦区、南方資源地帯。これが私の生きる理由。自分のために生きれないなんてかわいそう、そんなことを思う人がいるなら間違っている。生きる理由さえ見出せたのなら、私は笑顔で死地に赴くのだから。

 

 

 





あと何話か確定していませんが、大体13話ぐらいかな?(ガバガバ計算)

今月中に終わらせよう。

そしてはじめてウンチを完結させよう。
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