親しくなってからぶっ壊れるまで   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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上手く話が練れない。

ウンチに上手いもクソもあるのか?


裏での密談ほど、当事者に疎外感を与えるものはないんだなこれが

 

 

「あ、提督。おしゃべりですか?」

 

 

 今日は流れ的に軽巡の日。道端で出会った提督と、会話を重ねることができるまたとない機会に、大井もなんだか嬉しそうだ。

 

 

「あ、あぁそのことなんだが……実は時間を取るから、今後は控えようと思うんだ。今度の作戦は激戦になることが予想されるから、陸奥と戦略を煮詰めて置きたいんだ。だから、その……すまない」

 

 

「なんで謝ってるんですか。私達を思っての行動じゃないんですか? だったらもっと胸を張って、堂々としていてください。その方が見ているこっちとしては清々しいですよ」

 

 

「いや……すまん大井。本当に、すまん」

 

 

「なにかお手伝いできることがあればいってくださいね? 出来うる限り協力しますから」

 

 

「本当にすまん。すまん……」

 

 

 横に控える刺さるような視線には目をつぶって。それじゃあと自責の念にかられながらの足取りは重い。あんなにキツかった性格は鳴りを潜め、もはや別人と言われても納得してしまう。

 

 思えば人の思いを踏みにじる毎日であった。たくさんの人に支えられてきたが、その多くを喜ばせるほどに自分は器用ではなく、人の思いを裏切り続けてきた。

 

 それも仕方のないこと、しょうがないこと、だって自分はそこまで強くないから。誰もに恩返しができるほどにできた人間ではなくて、でも誰かに自分を支えて欲しくて。

 

 何か心に決めた、常人では片手間ですませてしまうような目標を両手で抱え込まないと、なに一つ成し遂げられなくて。なにか自分を劇的に変えてくれそうな、一発逆転のハイリスクハイリターンの博打しか打つ脳がなくて、情けなくなる。

 

 それでもないもしないよりはマシだと自分に言い聞かせて、自転車をこぎつづけないとなにかがおかしくなってしまうんじゃないかと、そんな気持ちに押し潰されそうになったりして。

 

 誰でもいいから助けてくれ。

 

 

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 出撃する艦隊を見送った後、執務室へ戻ろうと歩み始めた提督を、北上が待っていた。ピタリと足を止めた提督に、北上がついてくるようにいう。黙って後につづいていけば、北上は人目のつかない倉庫の中に姿を消していった。あれだけ話しかけくるなと念を押していたはずなのに、一体なんの了見だと提督はその内容を予測出来ずにいる。

 

 誰か目撃者はいないかと、扉から首だけ出して伺う北上は、その後に扉をピタリと閉めた。

 

 

「あのさぁ〜ちょっと時間いいかな?」

 

 

「……どうした北上、私用か?」

 

 

「私用もなにもちょっと見てらんなくてねぇ〜。まどろっこしいの嫌いだから単刀直入にいうね? 私達二人を転属させてよ、場所は問わないから。これは最後通牒だよ」

 

 

「いや、残念だがそれは出来ない」

 

 

「は? まさか死ぬまでこの場所に縛り付ける気?」

 

 

「そうはいってない!! 太平洋での決戦が終われば、どこへでも好きにいけばいいさ。だが逆に、それまではどんな権力を行使しても難しい。今はどこもピリピリしているからな」

 

 

「ふ〜んあっそ」

 

 

 始めから期待などしてなかったかのように、髪の毛を触って興味のなさそうに答えると、"じゃあ"と口を開いて次の案を提出する。

 

 

「取引しようよ。提督の恋路を手伝ってやるから、大井っちに近づかないで」

 

 

「俺だって自分から大井に近づくことなんて全くないんだ! 向こうから近づいてくるのにどうやって……」

 

 

「あ〜もううるさいなー。拒絶してよ、それが一番手っ取り早いから。提督のまどろっこしさは見ててイライラするんだよね。得意でしょ? 嫌われるの。存分にやっちゃってよ」

 

 

「北上からは、大井にいって聞かせられないのか?」

 

 

「それが出来たらお前なんかと面と向かって話すわけないでしょ? なに? 人の神経を逆撫でする天才なの? ほんとムカつくなぁー」

 

 

 笑みを浮かべながらの罵倒の言葉は、なんだか真に迫る物がある。本当に嫌われているんだな、俺。そんな今更な感想を抱かずにはいられなかった。しかし、本当に陸奥とくっ付けてもらうなど可能なのだろうか。もし自分なら嫌いな相手のために全力を尽くすとは考えづらい。交渉にしてはあまりに対等さを失っている気がする。 

 

 

「……しかし本当に陸奥との関係性を手伝ってくれるのか? こういってはなんだが、俺たちの間に信頼のしの字もないだろう?」

 

 

「大井っちが提督に拒絶された程度で諦めてくれればいいんだけど、まあ保険だよ。大井っちの幸せのためなら私は全力を尽くすよ、たとえ大っ嫌いな相手との取引だとしてもね。……私だってリスクのない話じゃないんだから察してよ」

 

 

 なるほど、大井への影響を担保に持ってきたか。少なくとも、ただ協力してやると言われるよりは何十倍も説得力がある。なにより協力者の存在もいないよりはマシか。常に最善を心がけなければ、目標達成など夢のまた夢。最悪、大井に密告すれば関係性を破壊できるネタができる。

 

 

「わかった、その提案を飲もう。……それで、具体的にはなにしてくれるんだ?」

 

 

「ま、少なくともあの感じを見る限り、提督のことを生理的に無理って判断しているわけじゃないっぽいから。会話かさねて、外連れ回して、告白……って感じじゃないの? とりあえず、二人の間の知りうる情報、全部よこして」

 

 

「本当に大丈夫なんだよなそれ。そんな適当なプランで、素直に頷くと思ってるのか?」

 

 

「少なくとも、進展の見られない提督の判断よりは当てにできるんじゃないの? どうせこの戦争終わったら、はい解散で二度と会えないかもしれないんだよ? 進展するか後転するか、二つに一つ。どう? ワラでも掴んでみたくない?」

 

 

「……わかった。それじゃあ……よろしく頼む」

 

 

 伸ばされる手をじっとみて、合わせて手を伸ばす北上は変わりに紙を握らせる。協力の握手に北上が応じるはずもない。もう用済みだと提督を置き去りにする足取りは、力強い。

 

 

 

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