親しくなってからぶっ壊れるまで 作:おおきなかぎは すぐわかりそう
空と海の境界線が淡く霞んで見える。
雲一つない青空は、海と溶け合ってひとつの青となった。
一番高い所で照り付ける太陽は、
こんな天気の良い日には何もかもほっぽりだして優雅な一時を過ごしたいものだ。
ここは鎮守府近海に設けられた演習場。
ここでは常日頃から艦娘である彼女たちが自らの技術に磨きをかける。そんな場所に、突如として爆音と共に水柱が次々にうまれた。やがてそれは重力に引かれて規則正しく海面に降り注ぐ。
それを引き起こした張本人である大井は、なんとも不満げな顔で白々しくも破壊力を感じる水中爆発を見ていた。
自らが放った魚雷の結末に対してではない。いきなり休みを投げてきた、自分の上官。提督に抱いた不満からであろう。その鬱憤を晴らすが如く、大井は再び魚雷を放つ。
だがその行為も的がなければ虚しいもの。何とはなしに視線を泳がせれば、今まさに頭を悩ませる本人の姿を見てしまった。
反射的に殴りたくなる真っ白い服装は変わらず。両手を深くポケットに突っ込むと、岸壁の係船柱に足を乗っけてふんぞり返ってこちらを見ていた。
気が付けば大井は利き手に魚雷を握り締め、槍投げの要領で提督に向かって放り投げたそれは、見事な放物線を描き飛んで行く。
提督は一瞬
先端を光り輝かせる魚雷は船着き場手前へ。だが、海面に着水する直前に突如爆発。海面を
ザッバーン。
コンクリートに打ち付ける猛烈な音と、局地的な大波が去った後には、全身濡れ鼠の提督が姿を現した。
余程激しかったのだろうか、提督は頭部にあったはずのものがなくなっていることに気付き慌てていた。その面影を両手で何度か探ると、大井の視界から消え失る。
すぐ後に何かが海に飛び込んだ音を聞き、岸壁の裏側に飛び込んだことを理解した。
提督のマヌケな行動に、カツラが無くなって慌てふためく哀れな人を重ねてしまい、大井は柄にも無く笑ってしまった。
今日の訓練はコレで切り上げよう。アホを晒す提督の無事を確認しなくとも別にいいが、丁度良い暇潰しを見つけた大井は、岸壁の裏側へと海面を滑るように向かっていった。
左手で帽子を裏返し水を切り、右手は大井から伸びる曳航用ロープを握っていた。海面近くから、見上げる形で大井に語り掛ける。
「なー大井」
反応は無い。
提督は制帽を頭部にねじ込みながら続ける。
「中身がみえそうなんだけどちょまてまてまブボボブボブブ」
エンジンが唸り声を上げ、急加速する大井。提督は暫く海面を跳ねていた。
結局、制帽は海の藻屑となって消えた。
提督は肩を落とし、頭を下げて気も落とす。
ちょっとばかしやり過ぎたか。と大井が声をかけようと提督に近寄る。すると何かを思い出したのか、顔を上げ大井の両肩を掴んで詰め寄ってきた。
「大井ー!!」
「な、ななななんですか!」
手を胸の前でわちゃわちゃしながらされるがままの大井。
「配属されるぞ!北上が!この鎮守府に!!」
「ハイゾクサレル?キタカミサンガ?コノチンジュフニ?」
勢いに飲まれて、提督の言葉を何度か頭でし、ようやく理解に及んだ大井。だが大井が喜びの感情を爆発させるよりも前に、はしゃぐ提督に苦笑いを浮かべるが、しだいにその顔は柔らかい物へとなった。
「と言う訳でだ大井、短い間だったが御苦労だった。これより軽巡洋艦大井は本日をもって秘書艦業務の任を解くものとする。」
大井は別段、驚く様子はなかった、そう言う約束だったから。
寂しいとか悲しいとかは毛ほども感じていない、ただ少し退屈になりそうとは感じていた。
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