親しくなってからぶっ壊れるまで   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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投稿頻度が遅い、お詫びの印に。

寛大で辛辣な意見、いつでもお待ちしております。




友愛編
北上で白飯三杯余裕です大井


 

 

 

 ガチャ。

 

 

 

 執務室のドアがノックもなしに開いた。

 

 書類を処理していた提督と秘書艦は、気にもとめずに手を走らせ続ける。入ってきた軽巡洋艦大井は腕を組んで、ソワソワと落ち着き無い動作で来客用のソファーにその身を沈めた。

 今日の秘書官は一瞬だけ入ってきた人物を確認したが、また直ぐに書類との格闘を再開する。提督は入って来た人物などはじめから存在しないかの様に無反応だが、秘書艦である彼女が気付いて提督が気付かない道理がないので、意図的に作業を継続させているのだろう。

 大井は二人の態度に特に文句も言わずに足を組み、秒針にいちいち反応する様に落ち着きのない反応を見せた。

暫くすると大井はいきなり立ち上がって執務室を出て行く。その時間は五分にも満たなかった。

 

 今日何度目かも分からない行動に提督はため息をつく。この日、恐らく彼女にとって最も大切な日になるであろう重要な日。北上がこの鎮守府に配属される日、着任証明書を持ってその当人は執務室を訪れる。そんな腹積もりの筈だが未だ姿は見えず。

 執務室を出た大井は、北上が来るのを今か今かと待ち望んでいる訳だ。今度入室したらさすがに注意しないと。こう何度も扉を開け閉めされたら気が散って書類が片付かないでは無いか、嬉しい気持ちは十二分に伝わっているから落ち着いてくれ。これじゃあ今日のノルマを達成できない。

 責任が増し、仕事の量が増し、こりゃ新しくスケジュールを組まないと対応出来なくなってしまう。本来なら、目の前の仕事に集中して取り組めば良いものを不安と心配が風船の様に膨れ上がり、提督の脳内を占有しつつあった。

 いかんいかん。額をペンで何度か小突き風船を萎ませると、余り健康そうでない顔付きで新たに書類の山を創造する。近い内に新たな大規模作戦が決行される。その前に休みを取らないと作戦行動時に支障をきたしかねない。書類の山を切り崩そうと手を伸ばしたその時。

 

 

 

 コンコンコン。

 

 

 

 背後のガラスが揺らされたので、次の書類を自分の手元に引き寄せながら振り返る。すると、どこか気の抜けた少女が居た。彼女の着るライトグリーンの制服には見覚えがある、というか今さっき会ったぼかりだ。ロングの黒髪を前髪でパッツン、背中で三つ編みにした物を右肩に垂らし、顔の横で両方の髪を縛っている。大井が愛して止まない彼女、北上は何とも人の良さそうな笑みを浮かべ再度窓を叩いた。窓を開けてという事か?

 不審に思いながらも鍵を外して窓をスライドさせれば、書類が窓枠を超えてやって来た。着任証明書と印字されたその紙は、サッシを隔ててやり取りする様なものでは無いだろう北上。

どうしたのって顔してもダメだから。

 

 

「正面から来てくれないか北上、略式にも程があるでしょ」

 

 

「いや〜。この書類にハンコ押してくれるだけで良いからさ、ね?」

 

 

「いや、認める訳ないよね」

 

 

 規則を遵守する軍隊で、このやり取りは容認できないし、変に広がっても困る。窓際のやり取りはロミオとジュリエットで十分だ、この鎮守府ではロマンチック過ぎて左遷される。紙の受け取りを拒否すると、折れないと分かったのか計画変更。紙を口に咥え、窓枠に手をかけたので止めようとする。

 はずなのだが、膝上四分の一のしか無いスカートで足を広げないでくれ、原始人か。

反発する磁石の様に顔を背け、止めに入る筈だった両手は行き場を失くしただ彷徨う、体温が上がるオマケ付きだ。

 

 

「よっと。はい提督〜」

 

 

 一瞬、受け取り方に躊躇してしまったがつつがなく? 受理。

 

 

「普通に渡してくれよ」

 

 

「次からは気をつけるよ〜」

 

 

 ひらひらと手を振って軽く受け流されてしまった。近い、距離感が近すぎる、旧知の仲かと誤解してしまいそうだ。

昨日今日知った仲ではないが、正式なやり取りは初めてなんだぞ。大井か、大井がボロクソに喋ってるな?

 予想的中。提督の愚痴を聞かされ続けた北上は、単純接触を繰り返すうちに提督を身近に感じる様になっていた。ハンコの向きを確かめてブレない様にゆっくりと下ろし、綺麗にインクが乗ったのを確認すると、本日より北上はこの鎮守府に着任となる。

 

 

「軽巡洋艦北上、本日よりこの鎮守府の戦列に加わって貰う。重雷装艦の力、存分に振るってくれ、よろしく頼む」

 

 

「まーよろしく」

 

 

 握手でもどうかと手を差し出すと。

 

 

「き゛た゛か゛み゛さ゛ん゛」

 

 

 猛犬が唸る、背後から。執務室の垣根を消し飛ばしかねない圧力を感じる。いつの間にか北上が侵入してきた窓に、大井がいた。ホラーだ、貞子だ、乗り越えようとするな。

 

 

「そこは入り口じゃないでしょうが.....。」

 

 

 何でこうも無防備なんだ、中は体操着か?

 

 

「北上さんから離れなさい!」

 

 

 勿論だとも、忠犬に噛まれるのはごめんだ。書類は受け取った、後の事は大井に任せても大丈夫だろう。

感動の再会は水入らずでどうぞご自由に。さて、お仕事お仕事。

 ガッチリと、腰に回された腕。いつの間にやら背後をとられていた。洒落にならないからね?北上さん?引っ付かないでいただけますかね? 拘束を解こうと、引き剥がそうと。語りかけたり揺すったりグルグルとその場を回る、尻尾を無限に追いかけ回す馬鹿犬みたいに。後ろを必死に伺うが、スカートがチラチラと揺れるだけ。

 必死にもなる。大井が笑ってやがるんだから、その”にんまり”怖すぎるのでやめませんか。

 

 引き渡そう、あくまで抵抗の意思がないことを示し、情状酌量の余地を残す。自分には非がないと訴えれば、大井を説得するのは不可能だ、始めから詰んでいた。大井の手が伸び本能が告げる、引き裂かれる。提督と北上の個々に、ではなく。裂けるチーズみたく縦に、だ。

 

 

「北上さん離れて下さい、辛さ狂いが移りますよ?」

 

 

 予想に反し穏やかな声が耳に届いた。幼子に語りかけるように優しく、引き剥がそうとする手は力強く。手心を加えているのを感じ、部下の成長に不覚にも涙を滲ませてしまったが、北上を傷つけないためと合点がいくと引っ込んだ。問題が起こる事なく、無事ケンタウロス形態から解放された。ふと大井がのっぺりと視線を寄越す、本の一瞬。だが、直ぐに二人だけの世界を作り上げて騒がしくなった。

 

 

「提督、次のお仕事はどうすれば」

 

 

「ごめんごめん。えっとねー」

 

 

 秘書艦に任せっぱなしになっている、早く取りかからなければ。そうだ北上にも秘書艦をやらせないと。新入りの性格や好き嫌いを把握しておくのに早いなんてことは無い。見知った中だが問題が起きた際、素早く対処出来ないと。

 

 大井の不審な行動なんてさっぱり忘れて、スケジュールの空きを頭で探すのだった。

 

 

 

 

 

 ......ところで、さっきからそこでイチャコラしてる二人は一体いつ出て行くのでしょうか。

 

 

 

 




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