親しくなってからぶっ壊れるまで 作:おおきなかぎは すぐわかりそう
毎月25日投稿に固定。
月一の更新となってしまいますが、エタらせないので勘弁してください本当お願いします何でもしますから。
北上さんが着任して数日後のある日。私達の艦隊は任務を終え、鎮守府への帰路を
今日は
エンジンのスロットルを引き上げ、MVPを見事取った北上さんと
鎮守府の姿を視界に入れれば、私達の任務は9割は終わったも同然だ。無事、雨に打たれずに帰ってこれたことを北上さんに感謝して、こちらに向かって手を
ローテーションで選ばれた者が、毎回の戦果をまとめて提出する決まりがあり、順番的に考えて今回はやらなくて良いはずだった。だが新入りである北上さんに業務を覚えて貰う意味を込めて、仕事が振られてしまうのは仕方のない事で。
「あれ〜、でも提出書類ってマニュアル化されてなかったっけ? 前の鎮守府で経験あるし、大井っちに教えてもらわなくても良くない?」
「この鎮守府独自のルールがあるんですよ。なんでもマニュアルだけではカバーしきれない所があるとか」
そのおかげで私達の時間が今まさに食い潰されてる訳で。仕事をわざわざ増やすんじゃねぇよ。と一度提督に言ったみたものの、結局無くなりませんでしたね。
随分と古臭く感じる過去を振り返って懐かしむ。この鎮守府に慣れてしまってすっかり違和感を無くしていたらしい。久し振りに文句の一つでも垂れてやろうかしら。
「なあなあ。さっきから無視はひどいんじゃないかな、無視わ」
会話に入りあぐねていた提督が、二人の会話が途切れたのを
だがそんな抜け殻である提督でも、北上さんと会話することだけは断じて許せない。
北上さんは天使であり女神であり魅力的でみんなの憧れだから、何かの拍子に提督が下らない妄想をしないとも限らない。溢れ出る才覚と
ああ恐ろしい、なんて恐ろしいの北上さん。私が全力で御守りしなければ。提督の
提督と北上さんの間に割って入り、シッシと手を振って追い返す。当の本人は苦笑を浮かべ、「執務室で待っとくから」。そう告げると背を向け歩き出した。離れて行く背後を睨み付けながら見送ると、後ろに控えていた北上さんから、唐突に笑いが漏れていた。
「フフ。合同演習の時から薄々感じてたけど、提督と大井っち仲良いよね。むしろ前会った時より仲良くなってない?」
......思っても見ない言葉に時が止まってしまった。だがここで長く動揺していたり、激しく否定するとかえって在らぬ誤解を生んでしまう。ここは冷静に端的に淡々と、自分の思いの丈を絶対零度の言葉で北上さんに伝えなければならない。
「しょ、それは違います」
か、噛んでしまった。妙な敗北感にその身を震わせていると、北上さんの追及が新たに飛んで来る。
「え〜、じゃあ提督のこと好き?「それは無いです」
目に光を灯さず、言い
「ふ〜ん。でも仲が良いって自覚はあるんだね〜、いや〜結構結構」
頭の後ろで手を組んで、私を追い越して行く北上さんを眺める。いや待って下さい何か誤解されている気が....。再起動した私は相部屋に着くまでの間、いかに提督と不仲であるかと言う一方的な会話が繰り広げられた。
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コンコン。
「どうぞー」
中から
私達は提督からの解放の言葉を待つ。
ペラ。
ペラ。
ペラ。
ペラ。
ペラ。
長い、いつまで待たせる気なんだ、いくらなんでも長すぎやしないか。私が不信がっているのを感じ取ったのか、北上さんの顔も曇り始める。おかしい、いつもならならこの辺りで一言二言声を掛けてくるはずだ、いい意味でも悪い意味でも。
それが無いってことはどちらでも無い?普通?教えた私が何か間違えていたか? いや、いつも通りに取り組んだ筈だ。どんどん不安に
「いつまで待たせる気なんですか! 例え提督でも私達の時間を奪う事は許されませんよ!!」
「いやごめんごめん、そんなつもりはなっかったんだ。資料はよく出来てるよ、お疲れ様」
そう言って提督は椅子を引くと、私達の前に踊り出る。
「今日のMVPは北上か。さあ、願いを叶えて
両手を広げて、少し偉そうに構える提督を見てまたかと常々思う。よくわからないが、この提督のMy.ルールらしいそれは、MVPを取った者に送られる私が解釈するに提督奴隷券だ。話に聞けば食堂メニューの追加、休日取得、仲直りに遊び相手、トイレ掃除にジュースのパシリ。文字通り幅広く願いを叶えてくれるらしい。
初期の頃からやっているらしく、最近では人員も増え忙がしくなったことを考慮してか、時間を長く取るお願いは少ないとかなんとか。私はここに着任してから一度もMVPを取ったことがないので余り詳しい事は知らない。知らないが北上さんが困ってるじゃないか。
いきなりそんなこと言われてもポンと出てくるようなものじゃ「じゃあさ」え?
「三人で間宮さんとこ行こうよ、ここのメニューちょっと変わってるらしいし。提督の奢りってことで。これじゃダメ?」
愛らしく上目遣いでお願いする北上さん。横から見ても破壊力抜群なのに、対面する提督のなんとうらやまけしからん事か、これで落ちない人類は居ないだろう。提督め......落ちたら殺す。いや、落ちなくても殺す。穏やかじゃない大井に対し、提督は大きく目を見開いて驚く。
「あ、ああ。別に問題ないぞ」
予想より早く回答が出たことに動揺しているのか、どうも歯切れが悪い。二人の視線が私に向く。
「私は問題ありませんよ?」
北上さんのことでそれを問うか。
"はい"か"Yes"それしか選択肢はない、全くの愚問だ。
「じゃあ決まりだね〜。提督の財布を空にするぞ〜、オ〜」
ゆるーく片腕を上げるその姿(かわいい)に、私も少し遅れて遠慮がちに腕を掲げる。
「お、お手柔らかにお願いします。今日はもうやること少ないから、今からでも大丈夫だぞ」
財布が吹き飛ぶ未来でも見えたのか、
「んじゃ~今から行こうか」
行こう大井っち。と言って手を引く北上さんの温もりをニヘラとだらしなく細胞レベルで感じながら執務室を出る。
「なあ大井」
まだ何かあるのか。何事かと振り返る。
「大井もなにかないか?」
なにかとは? 疑問符を浮かべ困った顔をする私に提督は続ける。
「あいや無いならいいんだよ、何でもない。早く行こう」
変におちょくられた気がする。素直にムカついたので、その辺は財布で償って貰おう。普段は食べない特製特盛パフェ、通称『
パタン。
誰も居なくなった薄暗い執務室。提督がOKサインを出した書類には、個々の戦績が事細かく載っていた。北上の戦果が凄まじいことはこの際深く語らないが、全体の戦績は記録更新レベルで素晴らしかった。
ただ一人、大井を除いて。
ストック制作中。。。。ストック制作中。。。。
文章の読みやすさ分かりやすさで迷走中です。
誰か助けてください。
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