姉ちゃんで変な耐性ついちゃった   作:粗茶Returnees

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前回の続きです


脱出ゲーム

 

 

 ちょっと待ってちょっと待って!

 なに!? こころはいったい何言ってるの!?

 

 『本当の愛を証明』って……、いや、でもさすがにそれはモニターで見られてるときには、てかなんでさっきから蓮はサンバリズム刻んでるの!

 

 

「ちょっ、あんたなんでそんなに盛り上がってるの!?」

 

「ん? だってこれって脱出ゲームだろ? ゲームは楽しまないとな!」

 

「今すぐ病院行ってきなさいよ!!」

 

「閉じ込められてるから無理!」

 

「そうだったぁぁ!!」

 

 

 ああくそっ! 頭が混乱してるせいで思考をまとめられない! 

 

 

『私はいくらでも待てるから、心の準備ができたら証明してちょうだい』

 

「あんたA(アダルト)V(ビデオ)感覚で眺める気でしょ!?」

 

『AVは心がぴょんぴょんするわよね!!』

 

 

 まさかこころがここまで頭ハッピーサンだったなんて……。いや、たしかにこころの思考を読めたことなんてないんだけどさ。いっつも振り回されてるけどね。蓮相手なら対応できるんだけど。

 その蓮が今度はバク宙しだしてるし。なんなのあいつ。なんであんなにテンション高いの!? もしかしなくても頭が今お猿さんになってるんじゃないの!

 

 

「美咲!」

 

「はい! ってなによ急に改まって。対処法でも思いついたの?」

 

「対処法も何も脱出方法は一つだけだろ? 俺はいつでもいいから美咲を待ってるだけなんだが……」

 

「は……はぁっ!? あんたホントに脳内おかしくなってんじゃないの!? こころがモニター越しに見てるんだよ!?」

 

「え、どこに問題が(・・・・・・)?」

 

「なっ……!」

 

 

 こ、こいつ……、まさかここまでバカだったなんて思ってなかったわ。でも、冷静になってみたら当然なことよね。こいつはいつだって頭の中で燐子先輩が一番なんだから。あたしは彼女でも一番じゃない。

 ベッドのスプリングを利用してトランポリンみたく飛び跳ねだした蓮の足を手で引っ掛ける。体勢を崩した蓮がベッドにキス。あたしはそれを冷めた目で眺めてる。

 

 

「どったの美咲? 心の準備はできた?」

 

「……できたよ。……好きにしたらいいじゃん」

 

「んー? なんの話?」

 

「だから! あんたがあたしを好きにしたらいいじゃんってこと! それで"証明"ってやつができるんなら、さっさと済ませて出よ!」

 

 

 恥も何もない。だってもうどうでもよくなってきたんだから。バカさ加減にもう冷めてきてる。辟易してる。ベッドに体を仰向けに投げ出す。モニター越しに見えるこころがストローを加えてるのが腹立つ。ポカーンとしてる蓮にはもう何も感情を抱かない。

 

 

「ほら、あんたが好きなようにするだけだよ」 

 

「んー? もしかして美咲。勘違い(・・・)してない?」

 

「勘違いって何よ勘違いって。こころが言ったことってつまりそう(・・)いう(・・)こと(・・)でしょ?」

 

「違う。それは間違っているぞ」

 

「は? なんで皇族風?」

 

「そこはノリ。んで、あのな美咲。あのこころ(・・・・・)だぞ? R-18展開を知ってるわけないじゃん」

 

 

 ………………たしかに!!

 

 え、なに。あたしだけ勘違いしてたってこと? こころは初めからそうさせるつもりはなくて、しかも蓮はそれにすぐに気づいてたってこと!? 

 あたし一人が勝手に勘違いして脳内で暴走してあたってたってこと!? うわ何これ超恥ずかしいやつじゃん……。

 

 顔を手で庇ってるあたしの首と背に蓮が手を回してきて、そっと起き上がらされる。手を退けさせられて、真っ赤になってるあたしの顔を見られる。顔を逸らしてもお構いなしにニコニコしてくる。

 

 

「さてさて問題です。こころが言ってる証明の仕方とはなんでしょう?」

 

「……わかんないよ」 

 

「ほんとに? わりと簡単なことなんだけど」

 

「わかんないよ。こころの考えてることなんていつもわかんないんだから」

 

「ふむ。仕方ないね。ヒントは呼び方(・・・)

 

 

 呼び方? 呼び方なんて、あたしはいつも蓮のことを……ぁ、そういうことか。あたしは心の中では蓮って呼んでるけど、口では蓮って呼んでないんだから。蓮はあたしのことを付き合い始めてからずっと蓮って呼んでくれてるのに。

 

 

「ね、美咲。俺は別に呼ばれ方を気にしてないけどさ。今回のこれはそうしないと出られないわけだし、これを機に名前で呼ぶようにしてくれないかな。

 ──名前を呼んで」

 

「あんたが言ったら台無しになるやつ」 

 

「ひっでぇ!」

 

「あはは、冗談だよ。半分はね。……でも、うん。そうだね。……そろそろそうしないとね」 

 

 

 恥ずかしくなって逸らしてた視線を戻す。目の前にはこの状況を楽しんでニヤニヤしてるバカの顔。

 視線を戻してみて気づいた。あたし達今距離が近すぎるじゃん。めっちゃくちゃ近いんだけど。お互いの吐息がかかるし。

 いざ呼ぼうと思うと胸がキュッて締め付けられる。心臓がドキドキしちゃって頭に響く。

 

 

れ、れん……

 

「うん」

 

『美咲ー! 何言ってるか聞こえないわー!』

 

「は、はぁ!? あ、あんたに聞こえてなくてもいいでしょ!」

 

『これだと判定出せないわ〜。こころちゃん辛いっすわ〜』

 

「あんたホントにこころ!? 中身おっさんじゃないわよね!?」

 

『そんな怪盗さんみたいなことできないわよ、Girl』

 

「うざい! ただただうざい!」 

 

 

 あたしがこころに噛み付いてると、目の前にいる蓮が目に涙を浮かべながら笑いまくってる。本当は蓮とこころがグルなんじゃないかって思うぐらい、今回の件に関して蓮は余裕だよね!

 

 

「美咲。愛してるよ。姉ちゃんよりも」

 

「ありがとう! あたしも蓮のこと誰よりも好きだよ! って、へぁ!?」

 

『ちゃんと名前で呼べたのね! さ! ここからはキスよ! Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss Kiss!!』

 

「ムードも何もないじゃない!!」

 

「美咲。俺だけを見ろ」

 

「っ!」

 

 

 頬に手を添えられて顔を逸らせなくなる。真っ直ぐとあたしの瞳を覗き込んでくる蓮に心が囚われる。あたしは自然と瞳を閉じて唇を近づけていく。

 

 あたしの唇に蓮の唇が重ねられる。

 

 蓮の気持ちがドンドンあたしの()に注ぎ込まれる──

 

 

 

 

 

「蓮くん! お姉ちゃんはこんな展開認めないからね!!」

 

 

 ──なんてことにはならなかった。

 あたしと蓮がキスする寸前に唯一の出入り口の扉が破壊されて。土煙の中からメリケンサックを装備した燐子先輩が飛び出してくる。

 

 

「姉ちゃん!?」

 

「さっきお姉ちゃんより美咲ちゃんの方が好きって聞こえたんだけど!!」

 

「なんで聞こえてるんだよ!」

 

「蓮くんのパンツに盗聴器仕掛けてるからね!!」

 

「どこに仕掛けてんだよ!! ってかそれか! それで俺の部屋の暗証番号が分かってるのか!」

 

「全部で31個仕掛けてるからね! 和暦に合わせたよ!」

 

「無駄に芸が細かいなぁおい!!」

 

 

 え、何この展開。何もついていけないんだけど。なんかすんごい変な会話が飛び交ってるような。あと警察を呼ぶような内容もあった気が……。

 

 

『燐子の厄介さ(強さ)は想定以上ね』

 

「強さって何!? あの人相手に使うワードじゃなくない!? たしかに蓮絡みだとおかしいけどさ!」

 

『あーあー、しっちゃかめっちゃかだよ〜』

 

「だからあんたホントにこころ!?」




 
 さらば平成
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