姉ちゃんで変な耐性ついちゃった   作:粗茶Returnees

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 富士急ハイランドの「ええじゃないか」に乗ってみたかった。




遊園地は楽しむところ

 

 いくらテニスバカの俺と言えど、彼女のことは大切にしている。部活を優先してしまう事を理解してもらってはいるが、不満がないわけではないらしい。その発散方法としては、やはりカップルらしくデートということになる。デートらしいデートを、丸一日妨害されることなく遂行できたことがない俺達は、今回こそはと意気込んで遠出することにした。週末を利用しての一泊二日のプチ旅行。それが今回のデートだ。珍しく週末の土日両方が部活の休みで、美咲にも予定を空けてもらった。

 

「集合時間にはまだ早いけど、早めに着くにこしたことはないな!」

 

 駅前で待ち合わせ。カバンの中には着替えと財布。スマホはポケットに、充電器もカバンの中。服装は期待しないでくれると助かる。テニスウェアにしなかったことを褒めてほしいくらいだ。

 ありがとう姉ちゃん。あなたが服を作ってくれるおかげで弟はデート時に相手に恥ずかしい思いをさせないで済みます。

 

「……なんか久々に姉ちゃんに感謝した気がする」

「えっ? なんでこんな早い時間にいんの? バカなの?」

「たしかに俺はバカだが、それはこの時間に来てるお前にも言えることだぞみさ、きぃ!?」

「何その奇声。彼女の名前くらいちゃんと言ってくれない? それとも何? 私の服装がおかしいの?」

 

 冷めた視線がグサグサと刺さってくる。そのくせして小声で「おかしいところないよね?」とか言って落ち着かない様子。なんでこんな可愛い子が彼女なのだろう。約得だからとりあえず聞こえてないフリをしていよう。

 美咲の服装を食い入るように見る。ダラッとした態度とは裏腹に、服装はちゃんと考えられているようだ。気温がだんだん下がってきたとはいえ、未だ最高気温は30度弱。涼し気な服装となっている。種類はわからん。テニスウェアじゃないとしか言えない。美咲のテニスウェア姿は、それはそれで好きなのだが。

 

「よくわからんが似合ってる!」

「褒められた気にならないんだけど?」

「美咲は何着ても可愛いからな。あと俺にファッションの評価を求められてもって話」

「あっそ……。予定より早いけど、切符買って出発するよ」

「イエスマム!」

「誰がマムだか」

 

 テンション低めにしてるけど、口元がニヤけてるのはバレバレだからな? 

 俺たちは切符を買って、ちゃっちゃと移動を始めるのだった。今回の旅行を姉ちゃんに話してない。朝からバンド練習に行ってて、姉ちゃんが家を出てから俺も急いで支度した。バレずに行ける。

 

「そんなわけで来ました! 遊・園・地!!」

「大声出さないでよ恥ずかしいから!」

「美咲! 何乗る!?」

「先にホテルに荷物を預けるよ。入退場自由らしいし、近くにあるホテルが泊まるとこだし」

「しっかり者め〜!」

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

「市ヶ谷さん。準備はいいですか?」

「えっとー、これ、何に使うんですか?」

「私たちには……負けられない戦いがあるんです」

「戦ですね! サムライ魂が震えます!」

「いやいや若宮さんこれ戦とかじゃないからな!?」

 

 サングラスをかける燐子と若宮さん。手に持ってるのはモデルガン。テーマパークにこんな物持ち込んどいてなんで追い出されないんだ。っていうか今日はRoseliaの練習があるってリサさんが言ってたはずなんだけど!

 

「Roseliaの練習は休みになりました。自主的に!」

「サボりじゃないっすか! ほら燐子先輩の携帯に友希那先輩からの電話来てますよ!」

「適当に相手しておいてください。今度ネコカフェの割引券渡しますとか言っておけば黙らせられるので」

「そんなんで許してくれる人じゃないですよね!?」

「あ、もしもし湊さんですか? 今燐子さんの代わりに若宮イヴが出ています。『今度ネコカフェの割引券を譲るから今回は見逃せ貧乳』だそうです!」

「若宮さんそれ余計なもの付け足してる!」

 

 絶対友希那先輩怒るよ! いくら代わりに言ってるとはいえ、これは若宮さんも怒られるやつだよ! 伝言以上のこと言ってるし、怒られてもいいと思うけども。近くで紗夜先輩が聞いてたらあの人がキレそう。リサさん頑張って抑えてください……!

 

『ネコカフェ……? そんなもので私が手を打つとでも?』

「ほらやっぱり駄目じゃないっすか!」

『10枚綴りで渡しなさい』

「枚数の問題!?」

 

 なんでそれで許しちゃうんスカ!? 貧乳って言われたこともそれで流せちゃうんですか!? 

 

「若宮さん、市ヶ谷さん、銃の手入れが終わりました。行きますよ」

「押忍!」

「なんで巻き込まれてんだろ……」

 

 たしか、蔵にいきなり現れて……どうしても協力してほしいことがあるって頼まれて……それがコレだもんな〜。燐子先輩の弟さんと奥沢さんのデートだっけ。それくらい二人きりにしてあげたらいいのに。奥沢さん、抑えきれなかったらごめん……。

 

「燐子さん! お二人はジェットコースターから乗るらしいですよ!」

「あの二人……優先券まで買ってる……」

「これはさすがに追いかけられないっすね。下でゆっくり待ちましょう」

「なるほど! 待ち伏せて狙撃ですね!」

「そういう意味じゃねぇ!」

 

 ウキウキしてる若宮さんにツッコミを入れる。つい香澄を相手にしてるように怒鳴っちゃうけど、本人は全然堪えてないし気にしなくていいよな。っていうか抑えめにできる気がしねぇ。

 

「ってあれ? 燐子先輩は?」

「優先者の入場の方にいますね」

「割り込みは駄目だろ!」

 

 若宮さんを連れて急いで燐子先輩を回収に向かう。あのままなら係の人とモメることになるだろうし、そうなると追い出されかねない。ここは我慢してもらうしか──

 

「お兄さん……お願いします……」

「で、ですがお客様……特別扱いするわけには……」

「私は……お兄さんにだけ、特別なことをしているのに……ですか?」

 

 色仕掛け!? 燐子先輩そういう事しちゃう人だっけ!?

 

「……黙って私達を通してください。……痛い目、見ちゃいますよ?」

「ひっ!」

「脅しかい!」

 

 他のお客さんに見えないようにしてモデルガンを従業員に突きつけるって、燐子先輩何考えてんの!? 生徒会長としての自覚を持ってくださいよ! っていうか生徒会長以前に人として駄目っすよ!

 

「あ、市ヶ谷さん、若宮さん。通してもらえるみたいです」

「燐子先輩……あなた絶対今後出禁になりますよ……」

「? 障害は超えるものですよ?」

「そうですけど使うタイミングが違う!」

 

 従業員にペコペコ謝罪して、先先行く燐子先輩を急いで追いかける。目を離したら何をするか分かったものじゃない。それに、若宮さんも全然ストッパーになってくれない。燐子先輩に買収でもされたんじゃないかってくらい制御できない。

 

「美咲さんを撃てば千聖さんと……蓮さんを撃てば彩さんと……両方達成でお二人と……うふ、うふふふ!」

 

 駄目だこいつ買収されてたわ。内容までは知りたくねぇ。たぶん日本人の感覚とはかけ離れた何かなんだろ。触らぬ神に祟りなしってな。

 ところで、蓮くんも奥沢さんもなんでこっちに気づかないんだろうな。あの二人、今日は障害がないって思って浮かれてるのか。後ろから見てるだけでも、幸せオーラが出てるし。香澄がライブではしゃいでるのと同じ雰囲気が出てる。弦巻さんが知ったら大喜びだろうな。あの人奥沢さんのこといっつも気にかけてるし。……黒服さんがカメラ回してるのは見なかったことにしよう。

 

「燐子先輩、若宮さん、ちゃんと安全装置つけてくださいよ」

「それはもちろんです。死にたくはないので」

「私は背水の陣にします!」

「いいから安全装置つけろ!」

 

 若宮さんの安全装置を私が代わりにつけてあげる。なんか騒がれるけど知らない。何かあってからじゃ遅いんだし、パスパレの人気は高いんだから、傷一つつかないように気をつけてほしい。

 

「お客様、姿勢を正して座ってください」

「有咲さん、安全装置は大切ですよ? 侍の鎧みたいなものですよ?」

「今さっきまで付けようとしなかったのはどちらさんでしたっけ!?」

 

 安全バーが胸の前まで下りて、最後にスタッフさんが確認して回る。右隣に座る若宮さんは、ジェットコースターに目を輝かせてて、これなら座りながら目の前にいる二人を狙い撃ちとか考えないだろう。左隣にいる燐子先輩は……安全バーに胸を抑えつけられるとか聞いたことねぇや。見なかったことにしよう。

 ゆっくりと出発するジェットコースター。しばらく進んだら斜めに上昇していく。頂点に行くまでが長そう。30秒くらい登り続けるんじゃね? え、怖いんですけど。

 

「若宮さんはジェットコースターとか大丈夫なのか? 結構高いとこまで行くみたいだけ、ど……」

「スナイパーは高所から獲物を狙うもの」

「さっきの興奮はそれ!? ってかどっからスナイパーライフル持ち出した! さっきまで持ってなかったろ! はっ、もしや燐子先輩も……!」

「ジェットコースターって、こんなに高いところまで行くんですね……」

「今さら!? 顔真っ青ですよ!?」

 

 ジェットコースターをなんだと思ってたんだこの人。しかもこれってこの遊園地で一番高いとこまで行くジェットコースターだぞ!?

 

「うぅ、気分が悪くなってきました……」

「吐かないでくださいよ!?」

「ふっ……はかない……」

「ふざける余裕はあるんすね……」

「お二人とも! 頂点に来ましたよ! ここはRoseliaさんのアレをやるしかありませんね!」

 

 Roseliaのアレ? 頂点……頂点……? あ、そういう……。え、でもこれRoseliaじゃない人でやっちゃっていいの? また友希那先輩に謝罪しないといけなくなるやつじゃないの?

 

「いいですね! やりましょう!」

 

 燐子先輩に責任を押し付けよう。それがいいや。

 

「頂点に?」

「「狂い咲け(狂い酒)!」」

 

 ……燐子先輩、あなた今ニュアンスがおかしくなかったですか?

 それを確認する余裕はなかった。さすがこの遊園地イチオシの最凶ジェットコースター。安全バーにしがみついてないと怖い。ガチで怖い。そして前の席に座るバカップル二人がうざい!

 

「くっ! 狙いが定まりませんね!」

「この状況で狙い撃とうとする方がおかしい!」

 

 宙返りしてる時に狙うってなんだよ!

 

「もういいです! もういいです! もういいです! もういいです!」

「耐えてください燐子先輩!」

 

 くそっ、喉が保たねぇ!

 

 違った疲れがドッと来たジェットコースターが終わったら、なんだかんだでジェットコースターが怖かったらしい若宮さんが膝から崩れ落ちて、顔が真っ青になった燐子先輩を介抱しないといけなくなった。噂は聞いてたけど、弟さんが絡んだ途端考えなしになるのはやめてください。

 

「燐子さん! あの二人メリーゴーランドの乗るみたいです!」

「本当ですか!? これはシューティングチャンスで……うっ!」

「休んでください!!」

 

 

 

 





 有咲の1人称って何でしたっけね?
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