姉ちゃんで変な耐性ついちゃった   作:粗茶Returnees

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 最近思うことがありましてね。

 燐子に代弁してもらいますけど。




姉の思惑

 

 前回までのあらすじ!

 

 蓮さんと美咲さんがお忍び遊園地デートを決行! それをどうしてか知った燐子さんが私とツッコミ巨乳を連れて尾行! 変装し、装備を整えたところでミッションを進めているのですが、ジェットコースターで燐子さんと私がダウン! 作戦続行が危ぶまれたその時──!

 

「貴方たちは何をしているのですか……」

 

 現れた救世主とはいったい……!

 

「いやここまではやってなかったぞ!? あと誰がツッコミ巨乳だ!」

 

 

 

 燐子さんをベンチで休ませていると、ここにいないはずの人間がもう一人現れた。

 

「まったく……。練習を休んで何をしているのかと思えば……」

 

 紗夜先輩はタオルを取り出して、燐子先輩の汗を拭く。同年代相手でも、しれっとこういうことをするのは、紗夜さんの姉気質ってことなのか。

 

「なぜ紗夜さんまでこちらへ? Roseliaさんは練習があったはずでは?」

「駅に向かう白金さんが見えたので、湊さんに連絡を入れてからこちらに来ました」

 

 あー、だから友希那先輩はあっさり許したんだ。紗夜先輩から先に連絡があったから。燐子先輩、思わぬところで命拾いしてんなー。っていうか、リサさん程じゃなくても、紗夜先輩も甘い方だったりするのか。

 

「そのような格好して人様のデートを妨害するなど──」

 

 よかったー。まともな人があたし以外にも増えた〜。正直交流が少ない相手だと勝手が分からなくて困ってたんだよな。燐子先輩は年上だし。イヴちゃんはアイドルだし。

 

「邪魔をしないでいただけませんか、貧乳!」

「イヴちゃん!?」

「……若宮さん。もう一度言っていただけませんか? すみません、上手く聞き取れなかったもので」

「分かりました。発音が悪かった部分も否めませんので、改めて言わせてもらいます」

 

 言わなくていいよイヴちゃん! 紗夜さんが怒ってることに気づいてくれ!!

 

「邪魔をしないでいただけませんか、この断崖絶壁ペッタンコ貧にゅほがっ!?」

「すみません若宮さん。最後までしっかり言っていただけませんか? 銃口を嬉しそうにしゃぶってないで、一言一句しっかりと。ね?」

 

 言わんこっちゃない! 紗夜先輩を怒らせちゃいけないって燐子先輩が生徒会長就任の挨拶で言ってたじゃん! 校長先生も毎回言ってるじゃん! 集会の間ずっと座禅組んでるから聞き逃すんだよ!

 それよか、紗夜先輩はあの銃どっから取り出したの!? 見たことないから燐子先輩が用意したやつじゃないですよね!?

 

「何を驚いているのですか? 女性たるもの、身を守るための術を身に着けておくべきですよ?」

「まるであたしがおかしいみたいな言い方しないでください! モデルガンを常備してる女性なんて希少種ですよ!」

「希少種と言えば私は金派ですね。日菜は銀派のようです」

「狩りの話は聞いてねぇ!」

「これは何の騒ぎかしら?」

 

 また新しく人が来て、その人の声が聞こえた途端、あたし達全員の動きが止まった。一直線にこっちに来たその人は、パスパレのメンバーで影で女王様呼ばわりされてる先輩。

 

「白鷺さん。あなたがなぜここへ?」

「それはこちらのセリフよ紗夜ちゃん。私は撮影をすっぽかしたイヴちゃんを追いかけてきたのだけど」

「イヴちゃん何してんの!?」

「まさか嬉しそうに紗夜ちゃんの銃をしゃぶってるだなんて……。あなた、私のイヴちゃんに何してるのかしら?」

「躾がなっていなかったようなので、私が飼いならしてあげようかと」

 

 その喧嘩はよそでやってくれー! あたしまで巻き込まれてる! 周りの人の視線からして、あたしも仲間だって思われてる! 間違ってはないけど抜け出してぇー!

 

「あの、氷川さん……白鷺さん……」

「何かしら、白金さん」

「そろそろ……動けるようになりました」

「何の報告してるんですか!?」

「そうですか、では、茶番は終わりですね」

「茶番!?」

「イヴちゃん。あなたは後でお仕置きね?」

「千聖さんは誘い受けだと日菜さんから聞きました!」

「……あの子ったら……」

 

 あたしがおかしいのか!? この状況についていけないあたしがおかしいのか!? もうやだ帰りたい……。紗夜先輩と千聖先輩がいるなら、あたしいなくてもいいじゃん……。

 

「あの、紗夜先輩。帰っていいですか?」

「紗夜? あなた、誰と間違えているの?」

「え? いや、どう見ても紗夜先輩ですよね?」

「私は紗夜ではないわ。34(サーティーフォー)よ」

24(トゥエンティフォー)みたいに言うなよ! しかもあれ作品の名前!」

 

 グラサンかけただけじゃないかよ……。なんでそんなイキイキと別人を名乗れると思ってるんだよ……。紗夜さんが駄目でも、ブレーキ役は用意されてる。

 

「これから私のことは、38(スリーエイト)とお呼びください!」

「感化されないでくれ! ややこしくなるだけだから!」

 

 イヴちゃんには元から期待してない。頼れるのは千聖先輩だけ……!

 

「私のことは♾️(インフィニティ)と呼びなさい」

「無限になりやがった! 千超えて無限名乗ったよこの人!」

「白鷺さん、あなた盛り過ぎでは?」

「私は♾️よ。紗夜ちゃん」

「34です」

「どうでもいいわ!」

 

 もう先輩とか関係ねえ! そんな事気にしてたらツッコミが追いつかねぇ! ツッコミしたいわけじゃないけど。くそっ、自分の性格がここで足を引っ張るなんて……!

 

「皆さん、準備はできましたね。あの二人、どうやら次はコーヒーカップに乗るようなので、私たちも行きますよ」

「コーヒーカップはバレるだろ! 燐子先輩そろそろ頭のネジ締めてください!」

「A3さん、私のことはグランドプラチナ略してGPとお呼びください」

「変な呼び名つけないでくださいよ!」

「分かりました! グランドプラチナ略してGP! 私は♾️と先行しておきますね!」

「38! それたぶん呼び方間違ってるぞ!? ってくそ! あたしまで感化された!」

 

 38……じゃなくて! イヴちゃんと千聖先輩は茂みに隠れてスナイパーライフルを構えてる。迷彩服まで用意してるって馬鹿なんじゃないかな。スタジオにあるやつ取ってきたとか言ってたけど、後で絶対怒られるだろ。まず取ってきちゃ駄目じゃん。他の撮影で使うやつじゃん。

 

「では、私とGPはコーヒーカップに乗りましょうか」

「自殺行為……! はぁ、もういいっす。任せます」

「何を言っているのですか? A3も行きますよ?」

「え……」

 

 嫌な予感しかしない。二人にあたし達のことがバレるとか、そんな事以上に面倒なことになる予感しかしない。

 

「コーヒーカップというのは……! 楽しいものですね!」

「紗夜先輩回し過ぎ!」

「私は強い、私は強い、私は強い、私は強い」

「燐子先輩目を回しながら言っても説得力ないです!」

 

 

「「うっ……酔いました……」」

「でしょうね! っく……大声出したらあたしもしんどい……」

「お三方お疲れ様でした! 二人はお化け屋敷に行くみたいなので、私たち二人が先行して、待ち伏せして狙撃します!」

「うわ、すげぇ妥当な作戦」

「ご武運を」

「セルフィーで遊んじゃだめですよ?」

「それやってたの燐子先輩と紗夜先輩ですよね? あこちゃんが言ってましたよ」

 

 イヴちゃんと千聖先輩がお化け屋敷に走っていく。あの二人はさっきふざけてなかったし、暗闇の中の狙撃ならバレずにできるでしょ。……いかん、あたしまでそっち側の思考になってる。

 またもやベンチに座ってグロッキー状態な燐子先輩と、顔色悪いのに燐子先輩を介抱する紗夜先輩。二人が回復するまでの時間は、奥沢さんたちが出てくるまでの時間と丁度いいんじゃないかな。

 

「楽しかったです!」

「最近のお化けってリアルなのね!」

「目的忘れやがったな!?」

「……あ! ライフルを忘れて来ちゃいました!」

「あら、私もだわ」

「何してるんすか!!」

 

 二人のライフルを持ってきたのは、よりによって蓮くんと奥沢さんだった。さすがに奥沢さんもご立腹の状態で、蓮くんが何とか宥めてる感じ。あたし達は一気にお通夜モードになって、説教を受けることになった。

 

「なんであたしだけ?」

「市ケ谷さんはストッパーでしょ? 燐子先輩には蓮が説教するみたいだし、他の三人は自分で反省できるし。後は私の話し相手が欲しかっただけ」

 

 観覧車という密室状態に連れ込まれ、あたしの向かいに奥沢さんが座る。紗夜先輩たちは三人で観覧車乗ってるとか。あの三人、絶対楽しんでるでしょ。この観覧車カラオケついてるし。

 

「えっとー、説教は?」

「市ケ谷さんにする必要ないじゃん? 何も思わないわけじゃないけど、市ケ谷さんに当たっても仕方ないし。蓮がまた時間作ってくれるって言ったからまぁいいかなって」

「はぁぁ、助かった〜」

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 美咲がいる手前怒ってなかったけど、今回はさすがに姉ちゃん相手でも怒る。どうやって情報を仕入れたのかも気になるけど、練習をサボってまで追いかけてきたことの方が重大。

 

「姉ちゃん反省してる?」

「うん……」

「俺が何に怒ってるか分かってる?」

「奥沢さんとのデートを邪魔したこと」

「正解。……はぁ、分かってるならいいけど、姉ちゃん最近行動がエスカレートしてない?」

 

 からかい程度ならよかった。それはまだスキンシップの一環として流せた。だけど、ここ最近は度が過ぎてる。モラル云々もそうだし、何がしたいのか分からなくなってくる。

 

「……私ね……臆病でしょ?」

「……引っ込み思案だとは思うけど、臆病だとは思ってない」

「ふふっ……蓮くんは優しいね。……いつも蓮くんが引っ張ってくれてた。私がお姉ちゃんなのに……。それがずっと引っかかってて、だから、私らしくなくても、蓮くんが楽しめることをしてみようって思ったの」

「急に変わったから暴走かと疑ったよ」

「初めてのことだから、加減が分からなくて。……それでね、だんだんどうしたらいいか、もっと分からなくなっちゃって、そしたら下品な方向に行っちゃって」

「やばいレベルでね」

「でもね、やっと気づけたんだ。相手を楽しませようと思って、キャラを崩すのはお笑いでもあるけど、でも下ネタに走るのは違うなって。品性を無くせばいいってものじゃないなって」

「まったくだよ。今さらって気はするけど、気づいてくれて安心した」

 

 姉ちゃんの気づきに心底安心する。まるで肩の荷が下りたように気持ちが楽になって、視界も思考も一気にクリアになる。姉ちゃんもどこかスッキリしたみたいで、いつもの美人スマイルを自然に浮かべた。

 

 やっぱり姉ちゃんは世界一美人だわ

 

 

「仲直りのちゅーしよ?」

「しねぇよ!」

 

 

 相変わらず油断はできない

 





 いや〜、「お前が言う?」って我ながら思いましたね!
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