1話目のグダグダっぷりを期待された方には、期待はずれな内容かと。
うちの部活は弱小だ。1回戦に勝ったら優勝したかのごとく喜ぶほどの弱小さだ。その後は全員おかしくなる。顧問すら馬鹿になる。どうなるかと言うと、部費を使って焼肉に行くほどだ。ちなみにそんなことがあったのは俺達が入部する前らしい。というかまず連敗記録があるから、どれだけ前のことなのだろう。そんなことを気にするのは、暇でやることない時でいい。ひとまず今は次の大会こと総体に向けて練習するしかない。焼肉のために!!
「なんだ蓮やる気満々だなー!」
「焼肉のためにな!」
「…なんの話だよ」
「烈知らないのか?試合に勝てば焼肉らしいぞ?」
「おっしゃ勝つぞオラー!」
なんて単純なやつなんだ!俺も焼肉でやる気出してるから似たようなもんなんだが…、俺達だけが勝っても意味ないんだよなぁ。みんなやる気はあるんだが、足りないというか、もうあと一押しあれば全体の雰囲気がさらに良くなると言うか。
ちなみに、部活はテニス部で、焼肉に行けるようになるには団体戦で勝つ必要がある。個人戦なら俺も烈も勝てるんだけどなぁ!団体戦だと俺達がダブルスに出るから、他のとこで2回勝ってくれないと駄目なんだわぁ!
「そんなわけで他の部員のやる気だしてくんね?奥沢」
「やだ」
「なんで!?焼肉がかかってんだよ!?」
「それあたし関係ないし」
「奥沢も来ていいからぁ!」
「やだよ。男ばっかのとこに行くのなんて」
「ミッシェルなら恥ずかしくないだろ!」
「食べさせる気ないよね!」
「なぜバレた!」
だって奥沢は違う学校だしさ。俺達の部費で奥沢の焼肉代払うなんてやだよ。ただでさえ部費が少ないのに!
俺達の学校は共学なんだけど、うちの部活ことテニス部は余りにも雑魚過ぎてテニスコートを使える時間が少ない。…女子に取られてるんだよ。あいつら怖いんだよなぁ。実力はそこまでのくせに!3回戦でいつも負けるくせに!
とりあえず、場所が欲しいということで、一番近い花咲川女子高校に頼んで、1面だけ借りるようにしてる。さすがにお邪魔する立場だから週に2回しか来ないけど。週末なら自分たちのとこで半日使えるし、平日も水曜は使えるから。ちなみにここに来るのは月曜と金曜。
「そういや白金って、うちの高校の白金燐子先輩の弟?」
「ん?あぁそうだけど。なんで今さら?というか姉ちゃんと知り合いだったのか」
「なんとなく。燐子先輩とはバンド繋がりで」
「ふーん?……んん?バンド!?誰が!?」
「あたしが。燐子先輩もバンドやってるし、それぐらいは知ってるよね?」
「ま、まぁそこは知ってるが、え?奥沢がバンド?ハハハ、冗談は休み休みに言え」
「……」
なんだその目は!お前みたいな美少女に見つめられたって俺はときめかないんだからな!………ときめけないんだがな!いや、奥沢はかわいいよ?うちの学校来てミスコン出れば優勝するよ?だが残念!俺の中では姉ちゃんが最優秀賞なのだ!
そういえばこの学校女子力高くない?ここに練習場所の提供をお願いしに来たときに、髪のきれいな、でもいかにも堅物優等生ですよって雰囲気が出てる人にあったんだけど、あの人もレベル高いよね。姉ちゃんのバンドにそっくりな人もいたけど。よく覚えてないや。烈なんてその人と少し話したあとに、下僕になりたい。なんて言ってたんだけど。あの堅物の人ってそういう類の人で、烈もそっち系なんだなってわかって衝撃的だったわ。
現実逃避をしていても奥沢がジーッとこっちを見てくるのは変わらなかった。仕方ない。信じきれないが、半分は信じてやろう。
「オーケーオーケー。とりあえずは信じるとしよう。バンド名とやってる楽器を教えてくれ」
「バンド名は"ハロー、ハッピーワールド"で、あたしがやってるのはDJ」
「そうか。とうとう警察の手伝いというバイトまでできたのか」
「いきなりなんの話してんの?」
「DJってあれだろ?ワールドカップとかハロウィンの時とかに渋谷あたりで、拡声器使って注意喚起してるような人だろ?」
「それDJポリス!!バンドの話ししててなんでいきなりそっちにいくの!?」
「ハロハピのDJはミッシェルだろうが!」
「そのミッシェルがあたしなんだけど!?」
「嘘つけ!奥沢がやってるミッシェルは、商店街とかで風船配ってるミッシェルだろ!」
「それもやってるけど、ハロハピのもあたしなの!」
「なん…だと……!」
いやいやそんな馬鹿な話があるわけないじゃないか!だってこの奥沢だよ!?ステージとかそういう目立つものとは無縁でいたそうに過ごす奴だよ!?
「あのミッシェルの中が奥沢だなんて!俺の夢を壊さないでくれぇ!」
「着ぐるみの中に人がいるって知ってる時点で夢も何もないでしょ…」
「まじかぁ…えー……いやそんな……ねぇ?」
「現実を受け入れなよ」
「そこは審議が必要だから」
「わけわかんない」
「それよりさ」
「なに?」
「さっきからテニスコートを彷徨ってる人、誰?ラリーしてる中ウロウロしてるのって、見てるこっちが怖いんだけど」
「そんな人………花音さん何してんの!?」
知り合いかよ!!ってかあの人何者なの!?ラリーしてる中困った顔しながら歩いてるってどゆこと?しかもコートの外に出たらいいだけのはずなのに行ったり来たり…とりあえずコートの外に出てよ!!
「花音さん…方向音痴ってそこまで酷いことになるっけ?というか、なんであんたらのとこラリー続けてるの?花音さんを避けてラリーできてるのが意味分かんないんだけど、弱小チームだよね?」
「これぐらいできて当然だろ!負ける理由も"真面目にやったら飽きてくるから"だからな!」
「馬鹿だよ!正真正銘の馬鹿だよ!」
「今回は焼肉がかかってるから本気でやるんじゃね?」
「頭痛い…」
「頭痛薬いるか?」
「いらない」
なんだよ人の好意を無下にするなよ。まぁいいや。とりあえずあの花音さんとやらをコートの外に連れ出すとしよう。
ラケットを持って俺もコートの中に入り、涙目になってる花音さんの手を引っ張る。手を握った瞬間ラリーしてる人たちの殺意が俺に向けられた。ボールが飛んでくるから、先に当たる方をラケットで打って、後から来る方にぶつける。ビリヤードみたいなもんかなー。やったことないから違うかもだけど。
「あ、ありがとう。助けてくれて。えっと、燐子ちゃんの弟くんだよね?」
「え、あぁはいそうです。白金蓮です。えと、花音さんでしたっけ?」
「うん。そうだけど、どうかした?」
「いえ、可愛いなっでぇ!?」
「ふぇぇ!?」
花音さんが可愛いから正直にそう言った瞬間、後頭部にボールをぶつけられた。このコントロールと威力だと、犯人は奥沢だな!!……嫌な犯人の当て方だな。
そんなことより、俺は後頭部にボールをぶつけられるなんて思ってなかったから、前方に軽く倒れ込みそうになる。俺の前には花音さんがいて、お互いの足がもつれた結果、俺が押し倒した。みたいな構図になってしまった。だが、声を大にして言いたい。これも奥沢のせいだと!!……ところで、何か柔らかいものが…。
「ふ、ふぇぇ…」
「…なに花音さんの胸に顔埋めてんのこの変態」
「お前のせいだからな!!あ、花音さん大丈夫ですか?すぐにどきますので」
「うぅ、…あ、ありがと……、辱められた」
「最後にトンデモナイこと言うのやめてもらっていいですかね!?」
「あんたら男子からしたら役得でしょ。…通報ものだけど」
「花音さんの胸はとても柔らかかったです。だが姉ちゃんの方がデカイ」
「死ね」
「待てまてまてまて奥沢!ちょいちょいちょい!顔面踏もうとすんのやめてくれ!」
「腕どけてよ。踏めないじゃん」
「踏むなよ!」
なんなんだこの人たちは!花音さんを助けに行ったら奥沢にボールをぶつけられ、そのせいで花音さんを押し倒しちゃうし、ちょーっと役得なことは確かにあったけど!原因の奥沢が顔面踏もうとしてくんのマジで理不尽!花音さん!あなたもあなたで「辱められた」なんてこと言わないでもらえます!?女子たちの視線が絶対零度なことになってるんですけど!!あと「頑張って美咲ちゃん!」じゃないでしょ!
「潰れろー!」
「ふ・ざ・け・る・な!!それと奥沢!この状態は非常によくない!」
「態勢がキツイって?なら潰せるのも時間の問題だね」
「違う!わけでもないけどそれとは別!!お前が気にしないならいいけど!」
「は?」
「奥沢って案外見せびらかしたがり?この態勢だと太ももどころか内ももとかパンツ「死ね!」げはっ!」
踏むのをやめたと思ったときには顎を蹴り飛ばされていた、だと…?なんて身体能力をしているんだ…。あ、でもそれならハロハピのミッシェルもやってるっての納得だわ。いやー、奥沢を侮っていた。
ところで花音さん、奥沢に「やりすぎだよ!」って言ってるけど、さっきまで奥沢に声援送ってましたよね。膝枕してくれてるから言わないけど。…そしてやはり姉ちゃんのほうがデカ「えい」
「目がぁぁぁー!!」
「滅びの呪文は唱えてないんだけど…」
そんなことは今重要じゃないんだ!!あっても困るけど!!なんだよ!目潰しって危ないんだからな!?失明したらどうしてくれるんだよ!しかもやったのって花音さんだよね!?あんた意外と恐ろしいなぁ!!
「あ、燐子ちゃんが蓮くんとこの部長さん?に口説かれてる」
「タマ取られる覚悟できてんだろうなぁ部長ー!!」
「やっぱシスコンじゃん…」
シスコンじゃありません!それより姉ちゃんたちどこ!?まだ目が回復してないんだけど!!あ、でも姉ちゃんの声と匂いで場所わかるわ!「気持ち悪い」奥沢ー!なんてこといいやがる!人の心読んでくるやつの方が気持ち悪いぞ!
「燐子さん。初めてあなたを見たときから好きでした。付き合ってください!」
(クソが!阻止できなかった!姉ちゃんって言い寄られたら弱いんだよ!)
「あの…お気持ちは…嬉しいですけど……ごめんなさい!」
(姉ちゃんが断れた!?)
「ガハッ!……り、理由をお聞かせいただいても?」
「その……男の人だと……蓮くんが…一番カッコイイので」
『『あんたもブラコンかよ!!!』』
全然周りが見えないが、俺を含め二人のやり取りを聞いていた人たちが全員ズッコケたのはわかった。