好きなお菓子といえば何を思い浮かべるだろうか。小学生の時は駄菓子が好きな人多かった気がする。遠足の時とか1000円以内で駄菓子を大量購入とかしたよね。スタンプみたいなお菓子とか流行ったね。ベロが違う色になるやつ。青とか緑とか。酸っぱいやつも流行った。風船ガムなんて定番。
女子だったらマカロンだのケーキだの。高学年あたりからオシャンティーなやつを好きになる。バレンタインでチョコレートを自作とかする子がいたね。女子力高いや。姉ちゃんも作れるらしいけど。この前はゲームのキャラを型どったチョコレート作ってた。パティシエにでもなればいい。
年齢が上がるにつれて好みも大人っぽくなる。ならない人はならない。俺は甘党だ。甘いの大好き。だけども虫歯にはならない。徹底的に対策を取っている。……嘘です。ちっちゃい頃は姉ちゃんと母さんに体を拘束されて強制歯磨きさせられてました。今思えばあれは天国だ。今やられたらいろいろとマズイけどね。主に母さんからの侮蔑の視線がやばい。だけど姉ちゃんを止めてくれない。むしろバックアップしてる。
それはともかくとして、俺が今でも愛してやまないお菓子がある。スイーツなんて無駄に横文字使って表す洒落たものじゃない。小学生の時から大好きな駄菓子。
──
あの独特の柔らかさ。数種類に分かれるあの味。噛む前から風味があり、噛んだら風味が口の中で広がる最高のひと品。それがハイチュウである。イチゴ味とグレープ味が好きだね。
「そのハイチュウを食べたのは誰だ!!」
「うるさいわね〜。私は食べてないわよ。子供用駄菓子なんて」
「貴様はそれでも人間か!? ハイチュウに謝れ! ハイチュウ様に謝り倒せ!!」
「意味分かんないわよ……。少なくとも食べたのは私じゃないから、あんたは
「ぎゃあぁ!!」
おのれ母上! 息子をタックルでリビングから追い出すとは! これは父さんに言いつけてやろう。楽しそうで何よりとしか言わない父さんに。……あれ? 言っても意味なくね!? 父さんって母さんの尻に敷かれてたな!
ナンテコッタイ。家庭内ヒエラルキーの頂点は母さんだったというのかい。第二位が姉ちゃん? でも姉ちゃんってわりと母さんに強気だよな……。
「姉ちゃんなら母さんに勝てる?」
「蓮くんどうしたの?」
「あ、姉ちゃん。ちょうどよかった。今母さんとハイチュウ事件の最中なんだけど、話にならないから姉ちゃんの方から……何食ってんの?」
「ん? 蓮くんのハイチュウだよ?」
「……What!? Why!?」
「疑問詞を二つ縦並べに使われても……」
バカで悪かったな!! 英語なんてさっぱりなんだよ! それと混乱してるってことを理解してほしいね! 俺は日本人なんだからさ! 落ち着いてたら日本語で喋ってるよ!
それより姉ちゃん。さっきからハイチュウの食べ方がすんごいエロいんだけど。ハイチュウってそんな艶かしく食べるお菓子じゃなかったと思うんだよね。ほんとにどうかしてるとしか言いようがないよ。
「蓮くんのハイチュウ……んっ、美味しい、ね?」
「普通のハイチュウだよね!? ハイチュウを隠語みたいに使うのやめてくれないかな!! 俺が一番好きな駄菓子だと知っててやるのは流石に姉ちゃん相手でもたちが悪いって言わざるを得ないよ!」
「蓮くんも欲しいの? 仕方ないね」
「も・と・も・と・俺のだから!!」
なんで勝手に食べるんだよ! 俺はちゃんとハイチュウに名前を書いておいたんだぞ? それを勝手に食べるっていったいどういう了見なんだよ……。そんなことするなら、俺だって姉ちゃんが隠しているであろう何かを見つけ出すぞ!
「お姉ちゃんが隠してるの気になる? 机の引き出しの中にある仕掛けを解いたら、その中に電「馬鹿じゃないの!?」マッサージ器があるよ?」
「俺が割って入った意味!!」
「あこちゃんとネットサーフィンして、一緒に買おって話になったの。今度使い方教えることになってるよ」
「あんたホンットに親友をどうする気だよ!!」
もうやだ……この姉どうにかしたい……。紗夜さんマジで助けて……。それか友希那さん助けて。接点ないけど、どうにかしてくれそうなのあの二人ぐらいだし……。リサさんは分かんない。ダークホースかもしれない。
だから姉ちゃん。ハイチュウをそんなエロティックな食べ方しないで。「口の中真っ白だよ」じゃねぇんだよ! どこのAVだ!
「俺のハイチュウを返せ!!」
「乱暴は……だめぇ……」
「ハイチュウを取り返したいだけなんだけどな! わざとエロく言わないで!」
わざと艶かしくされたらホントによろしくない。ある程度慣れてる俺でもそうなのだから、そのへんの野郎はイチコロだよ。恐ろしいよ姉ちゃん。そしていきなり三日月みたいに口を歪めて、ニコニコし始めた姉ちゃんは本当に怖い。お化け屋敷以上に怖い。テレビでやる怖い話とかホラー映画よりも怖い!
「ハイチュウが好きな蓮くんに」
「ひっ! どこからそんな力出てるの!? 姉ちゃん離して!」
俺が抵抗すると、姉ちゃんは俺の両手首をそれぞれ強く握りしめた。あまりの痛さに顔を歪め、体を動かせなくなる。その間に俺は姉ちゃんに口づけされて、口移しでハイチュウを強引に食べさせられる。
『はぁ〜い。君の好きなお姉ちゃんのおかげでオトナになったハイチュウだよ♡ 私を味わってね!』
──吐き気しかしねぇ!!
なんだよ今のは! ハイチュウの擬人化だとでも言うのか! だったら出直してきてほしいね! 魅力なんて欠片もなかった。あれが成長したハイチュウだと言うのなら、俺は成長していないハイチュウの方が好みだ。
『ロ・リ・コ・ン!』
──うるせぇな! ハイチュウ相手にロリコンもクソもあるか!!
「蓮くん、美味しかった?」
「味なんてわかんねぇわ!」
「それってつまり味が分からなくなるほどお姉ちゃんの口移しが良かったってことだよね?」
「脳内ハッピーが過ぎませんかねぇ!! 頼むから病院行ってきてください! 受診料払いますから!!」
「蓮くん以外の人に体を調べられるのはちょっと……」
「診察の話しかしてないよな!? 違う意味が込められてるようにしか思えないんだけど!?」
決めたよ。俺、次のRoseliaの練習が休みの日。姉ちゃんを病院に連れて行くんだ……。紗夜さんにサポートしてもらお。連絡先交換できてるし。助けてくれるって言ってたし……。
「産婦人科にはまだ早いよ?」
「まだも何もねぇよ! 可能性なんてゼロだわ! 行くのは精神科と脳内科!」
美咲にも助けてもらおうかな……。あんまり姉ちゃんと絡ませたくないけど……。