困った事になった。あたしは大いに困っている。でも目の前の
軽い現実逃避をしながら今の状況を確認する。
・密閉された謎の部屋
・
・軽い飲食物が入ってる冷蔵庫
・天井近くに張り付けられたモニター
・キングサイズのベッド
・あたしの好きな笑顔をして吐息がかかるほど近くにいる蓮
ど・う・し・て・こ・う・な・っ・た!!
〜〜〜〜〜
あたしと蓮は頻度の少ないデートをしていた。蓮が熱血バカでテニスを優先する人間だし、あたしもそれを受け入れていた。あたしだってハロハピの活動と部活とあってなかなか予定を作れないからね。そこはお互い様ってことで気にしてない。
でも、付き合ってるわけだし、あたしは心から蓮が好きだからデートだってしたくなる。いろんな顔を見せてくれるし、その中でもあたしといる時にしか見せてくれない笑顔もある。
あたし
「美咲! 次はあっこ行こうぜ!」
「あっこって……は!? あんたバカじゃないの!? あれは男が行くところじゃないでしょ!」
「え!? 姉ちゃんとは行くぜ!?」
「あんたらのそれを基準にしないでよ! てか男のあんたが
「えぇ……美咲のを選ぼうかと思ったのに……」
「なっ……! 余計なお世話だから!」
──選んでもらったら蓮の好みが分かる
なんてことを一瞬でも考えてしまった自分を心の中で責めまくる。あたしはいつからこんなに脳内お花畑になってしまったんだろうか。まさか影響を受けてるってこと? 気づいた今すぐにでも軌道修正しなきゃ。
本気で残念がる蓮の腕を両腕で掴んで他の店に行こうと催促する。あたし達の共通点といえばやっぱりテニス。つい先日グリップの損耗がって話をしていたし、せっかくだから一緒に見に行くのもいいかもしれない。何かお揃いのも欲しいし。……グリップは手に馴染むものじゃないとやってられないけど。
「スポーツ用品店行こうよ。グリップがって言ってたでしょ?」
「そうだった! ありがとう美咲、忘れてたわ!」
「そこ忘れちゃ駄目でしょ!」
テニスバカのくせにそこを忘れちゃうってどうなのさ……。蓮はラケットを3本所持してるから、1本使えなくても問題ないだろうけども。たしか新しいグリップが必要になってたのは、一番愛用してたやつのはずじゃ……。
予想以上の馬鹿さ加減に呆れてると、腕がグイグイ引かれてることに気づいた。犯人は勿論目を輝かせてる蓮。一秒でも早く見に行きたいらしい。蓮なら腕を引っ張ってあたしを強制連行もできただろうに。
「ん? そんなことしたら美咲がしんどいだろ? 俺は美咲を傷つけたくないの!」
「ん"っ! ……あ、ありがと……」
「? どういたしまして?」
ズルい。本当にそのギャップがズルい。
顔を逸らして赤くなってるのを隠す。蓮はこういう時気にしない性格だから、あたしがこうしてても手を引いて前へと歩く。歩幅は合わせてくれてる。付き合い始めた時はバラバラだったけど、すぐに蓮の方が合わせてくれた。
「えーっと俺が使ってるやつは……どこだ!?」
「目の前にあるでしょ……はい」
「お、ありがと! それにしてもなんで美咲は俺が使ってるグリップ知ってるんだ? 話したことなかったと思うんだが」
「へ!? いや、それは……そ、そう! たまたま知ってるやつだったからさ! 先輩が使ってるのと一緒だったし、これだろうなーって。それだけだから!」
「先輩……あー、あの人か。たしかに一緒だったな。なるほどなるほど。美咲っていろんな人の細かいとこまで見てるんだな〜」
「ま、まぁね。そんなわけないじゃんバカ」
そんな大勢の細かいところまで見てるわけがない。そこを説明するのも気恥ずかしいからしないけど、この鈍感はなかなかのレベルだね。そもそも本当に蓮があたしを好きなのかは怪しいんだけど。
だって蓮の中で一番の女性は一切変わることなく燐子先輩のままなんだから。
あたしは気づくべきだった。
このお店に、
「あれ? なんか転がってき……何このガス!?」
「吸引性昏倒ガスだと!?」
「なんでわか……る……の……」
ツッコミを言い切る前にあたしの意識が途切れた。最後に見えたのは、よろけながらも倒れるあたしを支えようと手を伸ばす蓮の姿。
「んっ……う…………は?」
目が覚めて視界いっぱいに飛び込んできたのは、あたしの彼氏の寝顔。少し顔を近づけるだけで唇を奪えちゃうような距離。
同い年とは思えないようなあどけない寝顔。純粋さを微塵も捨ててないからなのかな。不覚にも可愛いと思ってしまう。1回だけ蓮が家に泊まりきたけど、その時は先に蓮が起きてたから、あたしは蓮の寝顔を見るのが初めて。
『美咲の寝顔可愛かったぞ。あと握りグセあるのな。今もほら、手を離してくれないし』
その時に言われたことをふと思い出す。たしか顔を真っ赤にして枕を叩きつけたんだっけ。思い出してる今でも羞恥心がある。
そしてそれを助長させたのは自分自身。視線を動かしたら、今も蓮の手をあたしの方が握ってるのが見えた。
急いで離そうとして離せなかった。目の前で寝てる蓮があまりにも気持ちよさそうに寝てるから。あたしももう一度寝ようかな、なんて思っちゃう。
「もう少しだけ……ってダメダメ!! ここあたしの部屋でもないし蓮の部屋でもないじゃん!! ここどこ!?」
蓮を叩き起こしたところで部屋に第三者の声が響いてきた。肉声じゃない。姿もどこにもない。スピーカー越しに聞こえてくる声。それに聞き覚えがあったし、突然ついた部屋のモニターに映ってる顔で確信した。
『おはよう! 美咲、蓮!』
「おはよう、じゃないでしょ! 何を考えてこんなことしたの!
「相変わらずぶっとんでる〜!」
「蓮は楽しまない!」
『ふふっ、美咲を笑顔にしたいだけよ? そのためにここを用意したの!』
「何言って……」
『脱出方法は一つだけ! 二人の愛が本物だと証明することよ!』
「……は?」
感想やらなんやらテキトウにもらえたら喜んだりします