念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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本日2話目。


第16話

「えっ!? お前春菜!!」

「そうだよ!」

「全員靴を構えろ!」

「「何故に!?」」

 

 俺は靴を脱いで構える。

 ローナと春菜らしき生物がツッコミする。

 

 いや何って転生者ですよ? クッソ女神の手先の可能性があるじゃん。

 能力発動し嘘かどうか確かめるか。

 

「違う違う! クソ女神経由で転生なんかしてない!」

「誰経由だ?」

「誰も経由してない。死んだらいつの間にか転生してたのよ!」

 

 確かコイツも盾の勇者の成り上がりを読んでたんだ。

 能力も嘘だと言っていない。

 

「それでも信用出来ないんだったら奴隷紋でもつけてよ。どっち道お兄ちゃんと一緒の所へ行きたいし」

 

 そこまで言うなら本物のようだ。

 転生者だったらクズを選ぶが春菜は心優しく大人しい人間だ。

 

「それでお兄ちゃん。聞きたいんだけど」

「なんだ?」

「普通ドア壊すの?」

「そうですよハジメ様! どうかと思いま……あれ?」

「直ってる?」

 

 今さっきぶっ壊したドアが元通りに。

 

「お兄ちゃん……大人っぽくなってるけど何があったの?」

「ここ10年色々あった」

「そ、そうなの……」

 

 体を鍛えて、修羅場とかくぐった。

 数回死にかけた事もある。

 

「で、身請けって言ってたけどお兄ちゃん何者? 権力無いと王族を身請け出来ないよ」

「斧の勇者の山川ハジメでーす」

「勇者召喚されてたの!?」

「ゼルトブルに召喚されてさ。原作キャラにもうあってる」

「良いなぁ~」

「治安悪いがな。カツアゲ多いし」

 

 返り討ちにして金とか装具とか奪ってますけどね。

 俺は悪くない。治安が悪いんだ。

 

「こっちも質問だ。変な奴に目をつけられてる……そんな感じか?」

「その通りだよ!! あのカスが!!」

「タクトか?」

「その通りよ! 」

 

 話を聞くとこうだ。

 

 不幸にもタクトと学校が同じだったそうだ。

 案の定タクトは美少女に目がない"ピッー"野郎だ。

 猛アタックし凄いしつこかったらしい。

 いく先々でエンカウントし、自宅前にて待機していたり、マッチポンプみたいなのもやっていたとか。

 

 ウザいなオイ。犯罪者じゃん。

 原作で本性知ってるから苦痛だろう。

 

 それで引きこもったらしい。

 しかし、ある日部屋の壁がいきなり壊された。

 見てみるとタクトがドラゴンに乗り、手を差しのべてこんな事を行ったらしい。

 

『こんな部屋にいても何も始まらない。君は俺が守る。さあ一緒に行こう!』と。

 

 こうしてタクトは接近禁止令となった。

 だがタクトは女達を使い、謝りに来いと伝えに来た。接近禁止だけどそっちから来るのは問題ないそうだ。

 

 タクトは何様のつもりだろうか? 

 迷惑かけたのに被害者ぶるのかこのカスは? 

 

 だけど原作を知っているし、何をするかわからないので行かない。

 ちなみに悪い噂とか言いふらされたりしたそうだ。

 数人のメイドからも酷い扱いらしい。

 

 で、しばらく人間不信になってしまい、俺の事を考えていたら俺がドアをノックしたと。

 

 タクトは本当に気持ち悪いな。

 

「取り敢えず身請けの件はOK。準備とか必要だから時間も掛かるし観光でもしよっか」

 

 今日1日観光する事になった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「いやー平和ですな」

「そうだね父様。金平糖欲しいな」

「はい」

 

 とある仕事が一段落した後の甘いものは格別だわ。

 

 フォーブレイは人間と亜人の差別が無い国の一つである。

 種族関係なく子供が遊んでいる。

 

「わーい」

「キラークイーンちゃん待ってよー!」

「──ちゃん、わーい」

 

 キラークイーンと子供が遊んでいる。

 動物と子供が遊んでいる所を見るとほっこりする。

 

「ふっかふっかだ~。干し肉たべる?」

「ありがとー」

 

 干し肉をプレゼントしてくれた。

 相当フィロリアル好きなのか? 

 

「平和だな」

「平和だね」

 

 つーか女3人はまだかな? 

 買い物してるんだけど長いな。

 

「あら? そこにいるのは人形姫じゃないの?」

「あ」

「誰ーこの子?」

 

 小さな金髪のツインテールのガキンチョが現れた。

 …………なんだろう何か引っ掛かる。

 

「知らなくて良いのよ。えっと……あの人は雲の上な様に偉い人……だそうだから。ごめんあそばせ、私、この子とのお相手に忙しいのですが。何の用でしょう?」

「生意気ねアンタ。何ヘラヘラ笑ってんのよ」

「笑うことが何か問題でしょうか?」

 

 嫌なクソガキだな。

 

「そんな鳥畜生を相手にしているとは、公衆の事を考えずに愚かな子なのね」

「…………」

 

 沈黙するのが正解だな。権力有りそうだし反論はしない方がいいかも。

 つーか鳥好きで何が悪いのん?

 仲間に男だけど人形が好きな奴いるし。

 

「Lv39…………雑魚ね」

 

 うっわコイツ解析の魔法を使いやがった! 

 あり得ねえ。

 キラークイーンは結構強いんだけど。

 

「人のLvを勝手に見るのが偉い方のする事ですか? まるで覗きを働くいやしい者の様です」

「なんですって!?」

「違いますか? 他者の承諾も無くLvを覗き見る行為は褒められたものではありません。家柄に恥じない行為をしなければ、高貴な者などと自慢出来なくなりますよ?」

 

 どこかのバカ貴族だろう。

 育ちが悪すぎる。

 

「この子相手にしない方がいいよー」

「何よデブ鳥!」

「ハジメ言ってたよ。バカは相手にするなって。疲れるし相手しない方が得だって」

「ふざけんじゃないわよ! ツヴァイト・ファイア!」

「危ないドライファ・エアウォール!」

「じゃまするな!」

 

 魔法を繰り出した上にナイフを取り出しやがったこのガキ。

 テメェ……覚悟は出来てんだろうなぁ? 

 

「何よいきなり、あり得ないわ!」

「私を少しでも傷つける事が出来たら負けを認めてこれまでの事を謝罪してあげるわ」

 

 クソガキはナイフで少女を刺そうとする。

 キラークイーンは防御に入る。だが、

 

「ハイクイック!」

「ドラゴンクロウ!」

 

 グリフィンとドラゴン!? クソッ防御を邪魔された! 

 

「何するの!?」

「このフィロリアルが!」

 

 まずい! 間に合え! 

 

 ガキン! 

 

 よし! 間に合った! 

 つばぜり合い、クソガキが後ろに飛ぶ。

 

「やめろクソガキ。俺の配下に何をするんだ?」

「誰よアンタ!」

「こいつの飼い主だ。今見てたぞ。いきなり攻撃してきた。お前こんな往来で殺し合うとか程度低いぞ」

「は? アンタ何様よ」

 

 殴りたい。

 なんか解析のの魔法を唱えてる。

 

「Lvは70ね。あんたそんな強さで私に楯突くとかいい度胸してるわね」

「Lvで人の実力を決めるのは良くない。誰だそんな事を教えているバカは?」

 

 バカは? と言ったところから俺に襲いかかってきた。

 

「ガハッ!?」

 

 鳩尾にカウンターでキックする。

 うわっ弱い。

 モタリケ君と同じくらいの強さかな? 

 

「傷がついたな。お前の敗けだ」

「ぐっ…………」

 

 速く皆来ないかな? 

 トンズラしたい。

 

 ん? 右方向から殺意? 

 

「ドラゴンウィップ!」

 

 ガシッ

 

 どこからか飛んできた鞭を掴む。

 …………もしかして。

 

「これはこれは、俺の妹が何かやりましたか?」

「……妹の教育はしておいた方がいい」

「「タクト!!」」

「お兄ちゃん!」

 

 関わっちゃ行けないバカ筆頭のタクト君ではないですか。

 キラークイーンにバカとは関わるなって言ったばかりなのに。

 

「ナナ、一体何があったのかな?」

「あの子がコイツとフィロリアルを使って私に襲い掛かって来たの!」

「嘘よ! いきなり攻撃してきたのはそっちだわ!」

 

 本当に腹立つなこのクソガキ。

 しかし今はそれ所じゃない。

 

「「…………うぷ」」

「え?」

「「おえええええええええええええ!?」」

「え……!?」

 

 キラークイーンも思わず吐いてしまった。

 タクトのオーラ気持ち悪ッ!! 近づきたくないし触りたくもないよコイツ!! 

 なんなのこいつのオーラは!? 色んな人間を見てきたがこんなに汚いオーラは見たことない。

 もう汚ーラって呼ぼう。

 

「貴様! タクトに失礼だろ!」

「ハジメ、これ……おえええええええ」

「大丈夫か……おえええええええ」

「…………ええっと」

「お兄ちゃん、信じて。私は嘘なんて言ってないわ」

「どっちが正しいかはおいておいて、こんな場所で争うのはどうかと思うな。ナナ、お前は立派なレディになるんだろ?」

「でも……私は悪くないわ」

 

 立派なレディねー。バカにした上に返り討ちにされるとか立派なアホだな。

 

「少々頭に血が上っているようでして……俺の妹に限って自分から攻撃した、とは思い難いのは先に念を押しておきます」

「それが人に謝る態度かこのロリコンストーカー野郎」

「…………」ブチッ

 

 隣の少女が笑いを我慢する。

 青筋立ってるよコイツ。はっはっはっ。

 

「さっきから何なの! お兄ちゃんは七星勇者っていう偉い人なのにその態度は───え」

 

 俺は武器を変える。

 お兄さんと同じ七星勇者デスヨ?

 わかったかクソガキ? 頭を下げろや。

 

「……成る程今日到着した七星勇者の斧の勇者ですか。鞭の一撃を止めたのも納得です」

「斧の勇者のハジメ=ヤマカワだ。お前がタクトナントカカントカフォブレイかこの犯罪者が?」

「…………アルサホルンです」ブチッ ブチッ

 

 今のはやり過ぎ…………じゃないな。うん。

 原作で色んな悪事をしたことを忘れていない。

 

「ハジメ様! お待たせしました……へ」

「お舘様、お待たせし……い?」

「お兄ちゃんお待たせ。何も無いよ……って二人とも何を見て……ゲッ」

「「うっぷ……」」

 

 手を押さえた。

 二人とも我慢したようだ。やるね。

 

「おお……シフォン姫じゃないですか。お久しぶりです。ご機嫌いかがでしょうか」

「さっきまで良かったんだけどあなたの顔見たら最悪よ」

「……心配してあげたのにその態度はなんでしょうか?」

 

 シフォン……春菜の名前か。

 タクトの上から目線がウザイ。

 

「さあ? あなたの気持ち悪い行為が鬱陶しいからですが? そうだ。私は斧の勇者様に着いていく事になりましたのでオサラバですね。ああ、嬉しい」

「…………え」

 

 まあ嫌な奴と関わらなくて済むし、こっちに来た方が安全だしね。

 

「そ、そんな男の何処が良いんでしょうか?」

「全部よ。勇者様こっち向いて」

「えっ何んむ!?」

 

 いきなり唇にキスされた。

 マジかよお前。公衆の面前でそんな事する性格でしたっけ? 

 …………待て、ゲロ吐いた後だよ!? 

 

「…………そうですか。今夜、謝罪の為に祝いの席に招待を致しますよ。この国、この世界での注意事項もその時に非礼のお詫びをしますから是非いらしてください」

「誰が行くかバーカ」

「バンダナとか今時ダサいんですよ」

「…………」ブチッ ブチッ ブッチン

 

 俺達はその場を後にした。

 吐き気が止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は気づいていなかった。

 近くに隠れていたもう一人の勇者に。

 

 そいつと会うのはまだ先の事である。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「いやぁ吐き気が止まらなかった!」

「何ですかあのオーラは」

 

 春菜の部屋に皆で泊まってる。

 明日ゼルトブルに帰るつもりだ。

 

 なおこの場所はタクトの仲間は来ない。

 

「でも賑やかな場所だなフォーブレイって」

「うん、大国だからいろんな所があるんだ」

 

 ちなみに良いものを手に入れてしまった。

 まさかあれがフォーブレイにあるなんて。

 

 帰ったら使ってみよう。

 

「それで買い物とか言ってたけどケーキ食ってたか?」

「ドッキン!」

「あららバレましたか」

「すいませんハジメ様」

 

 キスの味でわかりましたけど。

 今度俺も連れていって下さいよ。

 


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