念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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本日2話目。


第19話

 数日後。

 

「ここあのカスの領地じゃねえか!?」

「ガルタイル領って所ですよ。知らなかったんですか?」

 

 そうこの前来たレイの領地である。

 全然気づかなかった。

 

「よくよく見たら値上げとか多いわ」

「家とかもボロボロでごさる」

「皆笑顔じゃないね」

「あの野郎…………」

 

 あのカス重税してたって言ってたな。

 それで領民から絞り取ってたって訳か。

 

「それで領主の娘がまだ生きているらしいから会いに行くぞ」

「生きてたんですね」

 

 話を聞くと、前領主が裏から逃げさせたらしい。

 それで他の領民の家に隠れたそうで無事だとか。

 最近知った。

 

 今後の経営について後で話し合うけど。

 それよりも、

 

「国葬だってさ。立派な人物だったんだって」

「花も買ってきましたし」

 

 今は弔うとしよう。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「斧の勇者様ですね。ワタクシ前領主の娘、アンナ=ガルタイルと申しますわ」

 

 前領主の娘さんである。

 領主の補佐をしてくれるそうだ。

 

 コイツが領主になればいいのにと思ったが、勇者がやれば知名度とか上がるのでこれでOKだそうだ。

 

「我が父の葬儀に参加してくれて頂きありがとうございます」

「取り敢えず父親の領地を復興しよう。それが弔いになる」

 

 俺と春菜、アンナが同じ方向に向く。

 向き先は、

 

「何この机……」

「汚ねえ」

「書類の下の方に帳簿のようなものがありますわ」

 

 机、いや、部屋全体が汚れている。

 食べかすとか絨毯にあるしさ。

 

 あのカスは内政を何だと思っているのだろうか? 

 グッチャグッチャなので何がなんだかわからない。

 

「片付けようか」

「ああ」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ふぅ……」

「これで綺麗になったね」

「何ですかこれ…………」

 

 アンナ? 何震えてるのさ。

 帳簿を見ているけど…………。

 

「税収が何か可笑しいですわ」

「?」

「確かに何かやってる可能性あるね。調べてみようか」

 

 数十分後。

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」

「クソがああああああ!!」

 

 おいおい、いきなり叫びだしたぞオイ。

 

「何があったんだ?」

「税金の使い道が九公一民なのよ!!」

「しかも誤魔化して着服してますわ!!」

「…………」

 

 取り敢えず豚王にカイザーナックルでも贈ろうか? 

 

「民を……民を何だと思って……」

「腐ってるよ」

 

 二人ともすっごい落胆しとる。

 あのカスは政治の才能は無いな。

 

「なぁ休憩して何か飲まないか?」

「うん」

 

 小休止した方がいいな。うん。

 アップルティーを淹れよう。師匠にうまいと評判なんだ。

 

「ハジメ様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ローナ?」

「何かあったの?」

 

 ローナがいつもよりも騒がしい声で執務室に入ってきた。

 兵士と訓練してるんじゃなかったっけ? 

 

「飲むかアップルティー?」

「そんな場合じゃありませんよ!」

 

 ? そんな急な事か? 

 マトモなローナが言ってるんだし緊急か? 

 

「レイの奴が色んな商人に借金を作ってやがったんです!」

「はぁ!?」

「それで門の前に沢山商人が居るんです! 滞納していた金を返せと。担保に領主の代行権っていう取引もあるそうです」

「あの野郎…………」

 

 アイツ……宝払いか。

 なんであのカスは迷惑をかけるんだ! 

 

 止めようと思ったけど豚王に入れ墨の機械でも贈るとしよう。

 女に『国王専用』とでも彫っておけばいい。

 

「話してみたら困窮している商人もいるみたいです。人質を取られたり脅迫されたりして無理矢理に金を出させたとの証言がありました」

「クソッタレ……」

 

 しょうがない会いに行くか。

 嘘発見能力があるから良かった。

 

 アンナも着いていくと、見覚えがある商人が多くいたみたいだ。

 一列に並ばせて質問したりしていく。

 

 結果数人は詐欺だったが、殆どの商人が正直者だった。

 中に買い取りに詳しい商人がいたので宝物庫の物を鑑定し、金の工面をしていく。

 全員納得して帰っていったのだが宝物庫は空っぽだ。

 

「取り敢えず税金を取るのはしばらく止めよう」

「それがいいよ……」

 

 一応ポケットマネーがあるし多分賄える。

 金が無ければ回収すればいい話だし。

 転生者とか盗賊とか。

 

 でも領主って改めて就任すると大変なんだなぁ。

 

「さてと明日から金を集めますか」

「可哀想に」

 

 春菜以外の転生者にはとてもではないが同情ができない。

 好き勝手やってるので敵を掃除できるし金品を手に入れられるから一石二鳥だ。

 

 ドッガッァァァァァァァァァン!! 

 

「うおっ!?」

「きゃあ!!?」

「きゃっ!!?」

 

 なんだ!? すっごい音したぞ! 

 振動もしたのでどっかの地層の岩盤でも砕いたか? 

 

「な、何今の地震?」

「爆発音見たいのもしましたわ」

 

 夜刀ちゃんめ……何故こんな場所を選んだんだ。

 就任早々資金が尽きるとかどんな内政ゲーム? 

 

 するとドアが開き、シルフィが入ってくる。

 

「お館様! 平気でごさるか!」

「まさかシルフィがやったのか?」

「違いますしその事では無いでござる」

 

 強化系だからありえると思ったのだが。

 クレーター作れる人間がいるし。

 

「また何かあったのか?」

「ダンジョンがあったでごさる!」

「「「「ダンジョン?」」」」

 

 ダンジョンってあれだよね。ゲームとかに出てくるアレ。やり直しでもあったけど…………。

 

「近くの遺跡を見廻りしていたら隠し扉があったんです」

「マジで? モンスターは?」

「一応いましたが弱い上に経験値が高かったでござる」

 

 ? カルミラ島の様な経験値のダンジョンなのか? 

 気になるな行ってみよう。

 

 皆で行くことになり、館の門を出ると、

 

「ハジメー! 大変!」

「キラークイーン? 何があった?」

「お湯が出たよー!」

 

 うゆ? 

 

「一応詳しく」

「うん、念能力を使って地面を攻撃したら土の中の岩が割れた」

「それで?」

「そしたら大きな音がして、お湯が出てきたの」

 

 お前かーい。

 でも温泉か……ダンジョン見終わってからいくか。

 

「父様大変!!」

「夜刀か次はなんだ?」

「ドラゴンが来た!」


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