念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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今年最後の投稿。


第30話

「で、カマゲロスは言ったんだ『全員可愛がってやる』って」

「うん、分かんないー」

「分かんない方がいいね、あ」

 

 知ってる背中を発見する。

 

「おーいオルク! パリスもいるじゃん」

「あれ? ボスとキラークイーンじゃないですか」

「お疲れ様です」

 

 夕方、キラークイーンと一緒に風呂入ろうとしたらとある二人に見つけた。

 二人とも警備の仕事をしている。

 

 1人目はオルク。

 志願してきた1人で、元々冒険者のパーティーに所属していたが、とある事があり追放されてこの領地に辿り着いた。

 初対面では雨が降っており、目が死んでいた。

 しかし、地獄の特訓を潜り抜けてはもの凄い元気になった。尚文と同等の酷い事されたらしいのにだ。

 今では所属している場所はないが、もし4番隊を作る際にはコイツを隊長に置こうと思っている。

 意外と戦闘能力がある。

 

 2人目はパリス。

 レイに改造された人間で形は一つ目小僧である。コイツは3番隊の副隊長も勤める。

 可愛い外見だが声は渋く、よく女子にモテるらしい。

 元々猟師だったらしく、警備の時は猟銃を持っており、いい獲物がいたらよく狩ってくれる。

 

「二人ともどこ行くんだ? オルクは非番だろ?」

「新しいバイオプラントが出来たって聞いたので2人で見に行こうかなと」

「あれかー確かに耳に入ってた」

「キラークイーンも見たいー」

「俺らも着いてこうかな」

 

 そう、バイオプラントである。

 実はフォーブレイの観光で見つけたのだ。

 

 発見したのは春菜の知り合いの科学者がいる研究所だ。

 バイオ関係の研究をする所らしく、廃棄物の所に捨ててあったので許可を貰い武器に入れたのだ。

 他にも植物系や、ゼルトブルでは出現しない動物の素材があったのでそれも武器に入れた。

 

 面白半分で植えたら斜め上の結果になったが。

 

「これウツボカズラみたいになってるな」

「ここからジュースが出てくる見たいですね」

 

 ウツボカズラの様なバイオプラントだ。

 この中に実はジュースが溜まっている。

 

 植物改造と知能上昇をし組み合わせたらこうなった。他にもジュースの木はあるが、それぞれ味が違うのだ。

 さて、これ味見してないんだよな。

 

「ん、シュワッてして甘いですね」

「どれどれ俺も…………」

 

 ごくごく、炭酸だな。ぶどうの様な味似ていて、スッキリ後味だ。

 …………? 飲んだことあるぞ。

 

「シュワッてして美味しいねー」

「これコーラだ…………」

 

 嘘でしょ!? 異世界来てコーラ飲むなんて最高じゃないですか! 

 春菜にも後で教えておこう。

 

「他にも木があるみたいですぜ」

「よーし飲んでみよう」

 

 ごくごく、イチゴ? これは!? 

 

「いちごミルクじゃん。上手い」

「美味しいー!」

 

 美味しいや。小さい頃からいちごミルク大好きなんだ。

 子供とかに人気が出そう。

 

 次行きますかな? 

 

 ごくごく、甘い。乳酸飲料の様な味からスッキリとしたのどごしが良い。

 

「カルピスウォーターだ」

「これ美味しいですね」

「うまいー」

 

 カルピスってのもいいね。

 そろそろ甘いのから他のに行きたいね。風呂上がりに飲みたい。

 

 はい次、ごくごく。!!? 

 

「ブフッ!?」

「ボス? どんな味です?」

「湿布だ」

「はい?」

「ルートピアだ…………」

 

 沖縄とかで売られている飲料だ。

 家族旅行で飲んだが1割しか飲めなかった。何故こんな飲み物があるんだよ。

 

「スースーしてて美味しいよー?」ゴクゴク

「は? マジ?」

「確かに」ゴクゴク

「あ、ホントだ」ゴクゴク

「えっ……」

 

 異世界人とは舌の作りとか違うのか? 

 ありうるな。

 

 最後に1つのバイオプラントがある。

 これなんだろう? 

 

 ごくごく、甘

 

「ぶうへぇぇぇっ!?」

 

 思わず吐いてしまった。これ飲み物やない。

 

「ゴホッゴホッ!」

「ハジメ? 何の味……ブフフゥゥゥゥゥゥッ!!?」

 

 思わず咳き込んでしまった。

 キラークイーンも飲んだが思いっきり吹いた。

 

「ボス?」

「飲むなゴホッゴホッ!」

 

 この黒い液体は!? 

 これには本当にお世話になりました。

 

「焼肉のタレだ……」

「ええっ……」

 

 口が焼肉を食べた後の様な感じだ。

 まさかの調味料だとはビックリだ。卵かけご飯と会うんだよね。

 

 後で料理の方へ知らせに行こう。

 

 でもジュースの出る木ってのもいいよね。

 調味料とかでるとか料理のレパートリー増えそう。

 

 繁殖力無くして飢饉の村とかにでも配布しようかな? 後で見返りでも貰うがな。

 

「ボス、口直しにあの実どうですか?」

「あれ少し渋いからあの実の方がいい、リンゴ風味だから口が爽やかになる」

 

 木によって味が違う。

 知性を伸ばしたらみんな違う個性になったし。

 

 人によって性格が違うように、植物も違うんだな。

 植物同士コミュニケーションを取ってる種類のもいるって聞いた事ある。

 

 さて、後で温泉入った後にまた寄りますか。

 

 その後の話になるが、春菜はルートピアを飲んでも何ともなかった。平気でごくごくしてた。

 他の奴らもごくごくしてたが、夜刀ちゃんは飲んだ途端吹いた。個人差とかあるらしい。

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 ? side

 

「はい、授業はここまで」

「気を付け、礼」

『ありがとうございました』

 

 授業が終わり、昼休みに入る。

 僕に取っては最悪の時間だ。

 

「よぉ、一緒に飯食いに行こうぜ」

 

 クラスの人間が誘いに来たが、飯食いに誘っていない。

 僕には拒否権なんてないんだ。

 そして、体育館裏に連れてこられる。

 

「で、金持ってきたのか?」

「持ってこれる訳ないじゃないか……家が貧乏なんだ……」

「おっと〜罰だ。そんな事も出来ないのか」

 

 後ろからキックを食らう。その後地面に倒れるので、周りの人間が群がり、一斉に踏んでくる。

 

 うちは母子家庭な上に借金があり貧乏で、僕も生活費を稼ぐ為にバイトしている。

 学費が安いこの学校に来たのが間違いだった。

 

「ヂッ、三千円しか持ってない」

「役にたたねえ」

「行こうぜ」

 

 コイツらは俺が貧乏で金の無いからカツアゲして楽しんでいるんだ。

 くっそ、何でこんな理不尽受けなきゃならない。

 

「草野君大丈夫!?」

「あ、うん」

「保健室行く!? 何されたの!!」

 

 同じクラスの保健委員の橋平さんだ。

 

「何でも無いし」

「嘘つかないでよ! 見捨てられるわけないじゃないの!」

 

 適当に無視して校舎に戻る。

 そして、教室に戻り弁当を取って体育館倉庫に籠る。

 

「今日は卵焼きか」

 

 母さんの手づくり弁当だ。

 貧乏だから炊事である。

 

 美味い、心が洗われるようだ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 5時間目が終わり、6時間目に入る頃。

 

「それじゃ授業を初め……そうだ草野」

「はい?」

「お前の母さんが通勤中に事故だそうだ。行ってやったらどうだ?」

「は?」

 

 言った途端、クラスの人間がドって笑う。

 はぁ!? 通勤中って言ったら8時くらいか? 

 今2時だぞ!? 

 

「それ何時くらいに連絡入りました?」

「は? 9時位だ」

 

 携帯は一応持っているが、いつも家に置いてる。

 学校も授業中は携帯禁止なのだがみんなこっそりやってる。

 母さんとの約束で学校行く際には携帯を持ってかない事にしてる。個人情報の塊だし、この学校は信頼できない。

 

「何故すぐ教えてくれないんですか!?」

「すまん忘れてた」

「はあ?」

 

 命が関わってるのに他人事かよクズ教師。

 まあ、こんな理不尽な人間に関わってる暇はない。

 

 僕は急いで聞いた病院に向かう。

 

 だが、

 

「母……さん?」

「…………3時間前に息を引き取りました」

 

 間に……会わなかった。

 話によると、母さんは信号無視で死んだらしい。被害者側は生きてるとか。

 …………おかしい。今日は特に慌てた様子は無かった。更には結構運転が上手いし真面目な性格だ。

 

「畜生…………」

 

 何でこんな理不尽に会わなければならない。

 いつの間にか涙が多量に出てきた。

 

「母さん……なんでだよ……」

「最後まで貴方の名前を呼んでいました」

 

 クソクソクソ、何でだ。

 俺が何をしたんだ。前向きに善く生きてたのに。

 何故こんな目に会わなければならない! 

 

 




最後ら辺はこれからやる話の伏線です。

皆さん良いお年を!

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