とある案件が終わり、ローナと二人で歩いていた。
「いやぁーマリオンが裁縫出来て良かった」
「いい衣装が出来上がりましたね」
「これでライブも盛り上がる!」
「ハジメ様って……ん?」
あれ? 警備の奴らが集まってる?
何やってるんだ?
「縄を解け貴様らァ!」
「何故僕らが縛られなければならないんですか!?」
「なんだコイツら」
「何をやって……あ」
グラン達1番隊と3番隊のメンツが集まり、ギャーギャー騒いでるから気になって見に来たけど知り合いがいた。
「樹じゃん。何やってんの」
「ハジメさん!? 何故ここに?」
「ここの領主だし」
弓の勇者御一行である。
何故ここにいるんだ。
「縄を解いてください! 何で縛られなければいけないんですか?!」
「………何があった?」
「実は……」
■
「親父、結構持ってたな」
「ああ、ボスも大喜びだ!」
一番隊は盗賊狩りをしていたらしく、かなりの宝が眠っていたため運搬中だったそうだ。
「今日は宴だな」
「イヤッホホウ……ん?」バシッ
オリガは飛んできた矢を掴んだ。
「止まりなさい! あなた達がフェイリス盗賊団ですね?」
「「「は?」」」
弓の勇者、川澄樹君だ。
いきなり攻撃とか何考えてんの?
「イツキ様」
「ええ、あれがアレス家の短剣ですね」
「あの、何かご要件ですか」
テスタか優しく話しかける。
いきなり攻撃されて対話するとかマジ温和。
「その短剣をこっちに寄越して下さい」
「何言ってんだお前?」
「それは盗品です。依頼主からクエストで頼まれたしてね」
お節介やきの冒険者みたいに近づいたんだな。
副将軍様がよォ。
「それが本物だと言う証拠はあるのか?」
「ではその剣の裏を見てください。柄の部分に✕印の傷があるはずです」
「親父、本当だ」
オリガが裏返してみると、✕があった。
本物って事は間違いなさそう。
「それでなんだ? 俺達が苦労して取ってきたのに寄越せってのは酷いんじゃねえの?」
「返さないんですか……仕方ないですね」
樹は武器を変える。
「おっと、勇者様か」
「いかにも、どうします?」
「やるよ」
グランは短剣を樹に放り投げる。
(いいのか親父?)
(他にも高そうな奴があったし、少し無くなっても問題ねえよ)
グランの判断は間違っていない。
無益な戦いは避けるべき。戦ったら俺との関係に禍根が出てきそう。
「話が分かるので何よりです。ですが……」
まだ何かあんのか天パ?
「あなた達の悪逆は見過ごす事はできません。倒して役人に引き渡します。行きますよ皆さん!!」
『ハッ! イツキ様!!』
結局戦うんじゃねえかよぉぉぉ!!
マジでコイツら何様なの!? 脳みそに何詰まってんだよ。
「流星弓!」
「山割手刀!!」
樹がスキルを放るが、オリガは迎え撃つ。
スキルを放った樹が驚いてる。
「なっ!? ウインドアロー!!」
風を纏った一撃を放つも、
「は? 消え……うぐっ!?」
技が当たる前に消えて、樹の脳天に踵落としを決める。
脳天は急所だよ。
ドサリと音を立てて樹は倒れる。
なお、既に他の仲間もとっくに倒れてる。
戦い初めて終わるまで約10秒。
話にならないとテスタは語っていた。
■
「ふざけないでください! あなたの子飼いの盗賊ですか!!」
「そもそも俺は盗賊を飼っていない」
「それにフェイリス盗賊団は一昨日カクライ達が殲滅しましたし」
「あの短剣はジルク山賊団からかっぱらってきたんだが」
「は?」
短剣を渡したグランは全然悪くないな。
盗賊だと勘違いした上に、善意で返したのに攻撃してきた。問題だねほんとに。
「どう落とし前つける?」
「巫山戯るな貴様ァ!!」
「黙れカス」バキ
「マルド!」
はっは〜パーフェクト=ハイド=ジャスティス破れたりー。狩られる側になった気分はどうだ?
まあ、まだこの領地は財政難だからなぁ。寄付してもらおうか。
「それじゃ有り金全部とドロップ数割寄越せ。後そっちのゲーム知識でお得な情報も教えろ」
「なんですかそれ!? 理不尽じゃないですか!!」
「は?」チャキ
俺は燻製に斧を差し向ける。
理不尽なのはお前の頭だろうが。いきなり攻撃したり、武器を向けて来たのはお前らの方。殺されても文句言えないし。
「わ、分かりました」
「ただしドロップを寄越す割合はそっちが決めていい」
金の方が使い道多い。
ドロップは売ればいいか。
有り金とドロップを落としてくれた。
「それでお得な情報は?」
「穴場の鉱脈はどうです?」
樹は廃坑の採掘場なのに、まだ鉱石が眠っていると言う場所を教えてくれた。クエストでそんなのがあるらしい。
高く売れるらしい宝石もあれば、いい武器の素材になる鉱石もあるようだ。
落とし前はこんな所か。
あ、ついでに聞いてみよう。
「そういえばアルドミティアってどんな国か知ってる?」
「…………なんですかその国?」
知らない? ゲーム知識でも無いって事か?
…………他の勇者にも聞いてみよう。
まあ、そろそろ解いてやるか。
「貴様ら……こんな事してただで済むと思っているのか!!」
「許さんぞ貴様らァ」
「皆さんやめましょう!」
樹が窘める。
正直会話が出来ない奴らとか前の世界にいるし。
まあそんなヤツらを俺達は叩いていたのだが。
こうして弓の勇者とその仲間達は帰っていった。
「さあて今日は宴だぞ!!」
「イヤッホホウィ!!」
仕事したしな。お疲れさん。
後で混ざるか。
■
そして宴会時。
「本当に迷惑な奴らでしたね」
「本当だな、親の顔が見てみたい」
アイツらどんな教育を受けたんだ?
樹はゲームだと思って羽目外れてるし、その他は三勇教の信者だし。
やだなぁ環境ってのは。
「親の顔と言えばハジメ様の親と師匠ってどんな方なんですか?」
「母さんと師匠か…………」
「どんな大胆不敵な人かなと」
大胆不敵って……あ、心当たりがある。
三勇教会爆破やクズ強襲とか。
前の世界でもテロリストを襲ったり、窃盗団のボスの娘を人質にして攻略を有利にした覚えもある。
他にも破天荒な予定も立てている。
「母さんはシングルマザーで教師だったな」
「へぇ〜」
「外見が凄い若いんだ。中学生くらい」
「…………若作りの秘訣とかあるんですかね?」
あんまそういうの聞いた事はないのだが。
何であんなに若かったんだろうか。
よくアニメで主人公の母親が若いのがよくあるが、現実では少ないんだよな。俺の所はレアだ。
「師匠の方は?」
「科学者だな。文化系の職なのにめちゃくちゃ強いんだ」
「凄い人なんですね」
前の春菜に説明したが、ウイルスハンターの星1つ貰った人間である。さらに俺が星貰ったから星2つになったし。
「30代前半のくせに外見が10代女子なんだ」
「また若いんですね」
「ああ、能力使ってるみたいだ」
師匠は優しいし気配りも効く出来た人間だ。俺は幸せ者と言ってもいい。
少し変な性癖があるが、それはそれで気があったので問題は無い。
「何か話してたら会いたくなって来たわ」
「私も会って見たいです」
ミレナリオの奴も転生して他の世界で勇者してるし、勇者しててまた会える可能性もあるかもしれない。
…………いや、考えるのはよそう。母さんは死んでるからともかく、まだ生きてて欲しい人間はたくさんいるし。
それに俺の仲間には教育上会わせるのはダメだ。
俺の品性が疑われるし。
「そう言えばヒミコさんってどんな人ですか?」
「あー結構元気な奴」
一応忍者なのだが、漁師も兼業でやってるのだ。魚の種類にも詳しいし、釣りも結構上手い。
珍しい魚とかよく取って売っている。
…………まさか狩猟具とか銛の武器とかで召喚されてないよな。
あーでも俺は前の世界だと斧使わないしなー。それだとは限らない。
信念とかそんな条件があるのかもしれない。
「ローナの家族とかも教えて」
「えっ〜とまず次女の─────」