念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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第33話

「ふぅ、まさかのまさかの大物ですね」

「でも計画が上手く行くね。うひひ」

「ああ、Xデーが楽しみだ」

 

 大物2人と面会して数日後。

 春菜とローナでランチタイムだ。

 

 これで作戦が速やかになりそうだ。

 アンナの能力も炸裂はしてないみたいだし、こりゃ信用出来るのかね。

 

「やっぱ異世界とかで蕎麦食うっても良いな」ズルズル

「ワサビとか麺つゆに付けて食べるのが通だよね」ズルズル

「ニホン食でしたっけ? 結構人気があるみたいですよ」

「へー」

 

 ジャポンでよく寿司とか食ったなぁ。

 ヒミコが魚とか取ってきて刺身にしてくれた。めちゃくちゃ美味しかった。

 知り合いのマフィアとも寿司食いに行ったけ?

 

「でもスシとかサシミでしたっけ、あんまり人気無いんですよね」

「あー生魚食う習慣は無いもんね」

「そうなんだ…………」

 

 海外にも魚の生食の文化はあるけどね。カルパッチョとか。

 日本は保存や衛生管理が出来てるからこその芸当だ。

 

「カレーってのが人気です」

「カレー粉よく作れたな」

「今度食べに行こうよ」

 

 本当にみんなカレー好きだよね。

 結構隠し味とかあったような気がする。

 

「何か懐かしくなってきたな」

「そう言えば前の世界でどんなの食べてたの?」

 

 美食だよな。前々の世界よりも美味い物が沢山あったし。

 

「白銀ミルクってのとムルムル貝ってのが美味しかった。他にも豚マグロってのも美味かった」

「名前からして凄そう」

「トリコとか食戟のソーマレベルだったぜ」

「話が着いてけないです…………」

 

 仲間とかにもおすそ分けした。

 コイツらにも食べさせて上げたい。

 

「バイオプラントの特産品の他にも何か欲しいな」

「こっちも探してみるよ」

 

 賑やかにした方が金を落としやすくなるし、その方が発展できるだろう。

 まあ、問題が起こりやすくなるだろうがそこは念で始末を付けよう。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 ? side

 

 母さんが事故で死んで2ヶ月の月日が経った。

 今日も仏壇に供え物を置く。

 

「母さん、僕負けないから」

 

 学校に行こう。めげない。

 遺産は大学へ行くくらいの予算がある。

 

 

 

「この教室に入りたきゃ金払え」

「は?」

「払えよ金持ち!」

 

 何なん? 何コイツら…………。

 遺産が入ったから金はある。何故通行税を取られなきゃならない。今まで無かったのに。

 

「母親が死んだから金持ってんだろ! 出せよ!」

 

 人の家族が死んだ。

 だから金持ちって訳じゃない。

 

 俺は無視して入る。

 

「無視してんじゃねえよ!!」バキッ! 

 

 顔を殴られる。

 それから数人で寄ってたかって殴る蹴るの暴行を加えられる。

 そして教師が入ってくる。

 

「ん、何があったんだ?」

「先生、アイツが他人の食べ物を盗もうとしたんです」

「はぁ!? 違ぐぅ!?」

「草野!! 母親に申し訳ないと思わないのか!! 後で生徒指導室に来い!!」

 

 教師ですら僕を蔑ろにする。

 味方がいない。

 

 

 

 そして昼になった。

 早く体育倉庫に行こう。

 

「待てよ、通行税払ってないぜ」

「知らないよ」

「脱税野郎が」

「この非国民〜」

「お前も山川創と同じ犯罪者だな〜」

 

 山川創〈ヤマカワハジメ〉、この前飲酒運転で人を轢き殺し、入水自殺をしたという話をニュースでやってた。

 

 まあ、この事件は冤罪だろうね。

 証拠も沢山ある。

 

 その1、評判が良い事。

 色々な人に親切にしてるらしく町内会の掃除とかにも参加したり、倒れた人が居たからAED使ったり救急車呼んだりして市から表彰されたとか。

 そんな人間が無責任な事するのか? 

 

 その2、飲んだ量が多いと言う事。

 実は山川創はあまり酒を好まないらしく、飲み会とか行っても少ししか飲まないそうだ。

 誰かに飲まされた可能性が出てくる。

 

 その3、盗まれた車の持ち主が評判が悪い事。

 ネットに載っていたのだが、その人物が山川創を殴る蹴るの暴行をしてたそうだ。余罪も結構あるとか。

 山川創は親にバーベキューに行くと伝えたそうなのだが、その人物はバーベキューなんてやっておらず、家に勝手に入られ車のキーを盗まれたと証言したとか。

 評判が悪い人間の証言なんてアテになるのか? 

 

 その4、目撃証言がある事。

 またネットだが、運良くご老人が犯人の人相を見ていたらしいが、すぐに医師に認知症判断されたらしい。

 その老人は現役のデイトレーダーで年に二千万程稼いどるとか。

 

 他にもアリバイあったり、その人物の家の傘下の会社はブラック企業が沢山とか。

 

「「「かーえれ! かーえれ!」」」

 

 山川創は無実だ。

 本当に嫌な社会だ。本人も可哀想過ぎる。

 

「やめろ!!」

「お前ら弱い者イジメか? 相手になるぜ」

「恥ずかしくないのか貴様ら」

「皆止めてよ! 草野君が何したの!」

「…………」

 

 出たよリア充5人組。

 剣城翔陽、鋼田太一、凰隆寺雪菜、橋平乃々華、イリス=J=シルバーランス。

 

「お前ら何でそんな事するんだ!!」

 剣城翔陽、スポーツ万能、学力良し、イケメンの主人公の様だ。大声で煩い。

 

「ったく、口だけかよ」

 鋼田太一、筋肉質で高身長、勿論スポーツ万能で格闘技のジムに通ってるとか。

 

「はぁ……情けない」

 鳳隆寺雪菜、剣術道場の娘、黒髪のポニーテールで男女共に人気ある。

 

「酷いよ皆…………」

 橋平乃々華、保健委員、黒髪ロング。

 

「…………」

 イリス=J=シルバーランス。ヨーロッパの国のどっかから留学して来たとか。無口だが剣城には心を開いている。

 

 何だろうな、どっかの異世界に召喚されそうな奴らだ。

 

 おっと、休み時間が刻刻と削られているな。

 今日は体育倉庫に行くか。

 

 逃げ出そうとすると、

 

「待てって言ってんだろ!」

「だから止めろ!!」

 

 周りにいるヤツに引っ張られる。だが握りが浅い為振り切った。

 

 まったく嫌な奴らだ。

 トンズラさせてもらうぜ。

 

 馬鹿には関わるべきではないな。

 さ、急ごう。

 

 ガシャ! ガシャ!

 

 ………………え? 教室の戸が閉まった。反対側も。

 何だろうイタズラか? あれ? 戸が開かない…………? 

 

「おい! 何だアレ!!」

 

 教室の床を見てみると…………魔法陣?

 何コレ? ありふれ?

 

 魔法陣は光っていたのだがその輝きが強くなっていく。

 光が目視出来なくなり、僕は目を瞑るのだった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

「何処だここは…………」

「恐い……」

 

 剣城とイリスの言葉で気がついた。

 真っ白な世界。そこに僕のクラスの人間達が多数居た。

 

 これって何なの? ネット小説で出てくるクラス転移ってモノだろうか? 

 嫌な予感しかしないんだけど。帰りたい。

 大体、僕が追放されそうなんだけどな…………。

 

「皆様ようこそお越しくださいました」

 

 声の方を振り向くと女神、物凄く美人が居た。

 でも、嫌な感じがするなぁ。心がトゲトゲしてそう。

 

「あの……貴女は?」

 

 剣城君が話しかける。

 まあ、女神っぽい人に話しかけるのも勇気がいるよな。

 

「お初にお目に掛かります。私の名はメディア・ピデス・マーキナーと申します」

 

 あ、あれ? この名前どっかで聞いたような。

 

「お願いします。どうか私の世界を波から救ってください…………」

 

 盾の勇者の成り上がりのラスボスだこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!? 

 

 何で!? 僕そこまで性格悪くないんだけど?! 

 

「…………話を聞かせてください」

「はい…………」

 

 説明を聞いていると出るわ出るわクソの様な発言が。

 波は自分の欲望で起こしてるのに助けろって…………。

 

「任せてください!! 絶対に救って見せます!!」

「ありがとうございます………………」ニヤリ

 

 嫌な笑顔だ。

 

「ですが、私達に戦う力なんてありませんが…………」

「それには安心を。ステータスと念じて開いてください。貴方達には才能を付与しました」

 

 ス、ステータス! 異世界のお約束だな。

 よし、ステータス! 

 

(´・ω・`)シーン.

 

 あれ? ステータス! 

 

(´・ω・`)シーン.

 

 おかしいな……壊れてるとか? 

 

「やった! 俺は『剣士』だ!」

「『斥候』? いいね」

「私『弓士』?」

「『闇魔術師』! きたっ〜」

 

 皆出てるよね。

 

「太一! 俺は『勇者』と『火魔術師』と『剣豪』ってのが出た!!」

「3つ! 俺『勇者』と『モンク』だ!」

「私は『勇者』と『侍』だな」

「私『勇者』と『回復魔術師』…………」

「……『勇者』と『賢者』」

 

 勇者って…………大丈夫かコイツら。

 正義面してバカやりそう。

 

「簡単に言うと、その才能による補正がかかります。剣士ならば剣技や見切りが上手くなったり、水魔術師の才能ならば水魔法の適正や耐性が上昇します」

 

 へぇー皆調子に乗りそうだな。

 

「勇者の才能は伝説の勇者武器を扱える才能です。ステータスを上昇させる効果もあります」

 

 勇者武器を扱える才能? 

 武器を奪うの間違いじゃないのか? 

 

「その才能は悪しき勇者から武器を取り返すことも出来ます。どうか極悪非道の勇者から武器達を救ってください…………」

 

 吐き気を催す邪悪とはコイツだな。

 世界を融合させて他人に迷惑を掛けているお前が1番極悪非道だろ。

 

 つーか原作分かってる奴はどんくらいいるんだろう? 

 僕達って捨て駒と言われても文句言えないよ? 

 

「任せてください女神様!」

「ああ! やってやるぜ!!」

「全く仕方ない奴らだ」

「イェェェェェェェェイ!!」

 

 周りを見てみると例外無く調子に乗ってる目だ。

 ダメだ。盾の勇者見てない。

 

 まあいい、それよりも大事な事だ。

 

「それでは皆さん時間です。私の世界に転移します」

 

 えっ、もう時間なの!? 

 僕の体がピカピカとなって薄くなっていく。

 メガヴィッチに質問しないと。

 

「あのーすいません……」

「…………誰でしょうか?」

「え」

 

 は? どう言う事? 

 

「貴方は呼んだ覚えが無いのですが…………なので才能はお渡ししておりません」

「じゃあなんでここに来てるの!?」

 

 まさかの巻きこまれクラス転移かよ!! 

 

「長い時間かけて集団転移の召喚を行うのですが………直前に入ると巻き込まれてしまうのです」

 

 あ、僕は3か月前から転入して来たんだ。

 もしかして来て浅いから、数に入って無かったのかよ。

 

「元の場所に戻してくれ!」

「無理です。諦めて下さい」

 

 はぁ!? 呼んでないのに無理矢理呼んでんだ何だこの女神!! 

 

「そうですね。波から世界を救えたら戻しましょう」

 

 はい嘘乙! 

 お前の本性知ってるから!! 

 

 クラスメイトが俺を見てニヤニヤしている。

 僕の目は真っ白になった。




ビッチ女神が選んだ集団=?

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