「やはり御館様の能力は凄いでござるな」
「まあな…………」
「どうしたでござる?」
あまり自分の能力に胸を張れないんだよな。
相当便利だけど罪悪感って物がさ。
師匠からは人として素晴らしい能力って言われたけど。
俺は能力便りは止めて、筋力や体術を鍛えた。勿論オーラ量を増やしたり、オーラを滑らかにしてきた。
だから可能な限り能力は使わない。
「どうですかな御館様。元気出たでましたか?」ギュ
シルフィが腕に抱きついてくる。
ありがとう。元気が出るよ。
「あ、ボス」
後ろに振り帰るとオルクが。
気づかなかった。
「オルク、いつの間に?」
「まあな……の所ら辺からです」
俺は深く考え事してると気づかない事あるからな。
この様な事がある為に仲間が重宝される。
「あ、邪魔しちゃ不味かったですか」
「いや別に」
「…………」
あ、シルフィが拗ねた。
仕事ないから後で高台にでも登ろうか。
「そう言えばオルクは警備か?」
「ええ、カリンさんの予知でここら辺で乱闘が起きるらしくて……僕一人で十分と予知が」
「成長したな」
確かにオルクは強くなったから十分だよな。
最初は実際に弱かったし、修行していくとグングン強くなったし。
初対面が嘘のようだ。
今流行りのパーティー追放だし、絶望しか頭に無かったろうし。
「ええ、仕事しますよ」
■
十年程前に遡る。
オルク9歳。
「おーいオルク!」
「マイクとボブ、どうしたの?」
「見ろよ、この本買ってもらったんだ」
幼馴染マイクとボブが持ってきたのは斧の勇者の絵本。
冒険者の斧の勇者が旅をしていく物語だ。
「俺いつか斧の勇者様の家来になりたいんだ」
「凄いなボブは」
「もし為ったらお前も取り立ててやるよ」
「わぁー嬉しいな」
金色の斧でドラゴンを倒し、悪い人間を懲らしめる。
英雄譚が多い勇者の為、冒険者等に人気がある勇者だ。
「お兄ちゃーん」
「オルクー! お使いに行こう!」
「リンダ! キャシー!」
幼馴染のリンダ、義妹のキャシー。
「もーオルクったら目を離したらすぐ遊ぶ」
「お兄ちゃん行こうよ!」
「ごめんごめん、行こうか」
子供は純粋で悪意がない。
この時は皆悪人では無かった。
そして数年後。
「イリュシン草を混ぜて」グリグリ
「オルクー、ボブ君とマイク君よー」
「何だろう?」グリグリ
アポの約束はしていない。
「なあ、オルク。お前三男だから跡継ぎじゃないよな……」
「ん? そうだけど?」
「一緒に冒険者やらないか?」
「僕が?」
「ああ、どうだ?」
オルクは三男だから好き勝手出来る。
長男も次男も薬師としての腕はピカイチ。
「うん、やるよ!」
ボブとマイク、長い間付き合いのある幼馴染達だ。
心配もあるけど力になりたかった。
「じゃあ私も行く!」
「お兄ちゃんを守る!」
パーティー結成を聞いた幼馴染と妹が聞きつけ、急遽入る事になった。
「よーし! パーティー名は『金色の斧』だ!!」
そして数年後。
「ボブ! フレアボアがそっちに!」
「分かってる!」
「たあっ!」
ボブとリンダの連携攻撃が決まる。
フレアボアは倒れた。
「お疲れ様、ボブ」
「…………ああ」
オルクは回復薬をボブとリンダに渡す。
「はい、キャシー」
「寄越しなさい」バシ
キャシーに魔力水をぶん取られる。
「あれ、キャシー? 機嫌悪いの?」
「そりゃそうだ。お前は大抵連携に加わらないからな」
「止めてやれよ。大して攻撃力も無いし、魔法適正が援護と回復だからな」
「仕事は依頼探しや荷物持ちや道具の管理だしさ」
「そして危険な仕事は私達」
「…………皆苦労掛けるね」
「…………」
皆冷たい目で見ている。
オルクは頭が良いがステータスが弱く、非戦闘員だった。
フレアボアの討伐部位を持ち帰りし、Bランク冒険者パーティーに昇格するのだった。
また数年後。
「いやぁ〜そろそろAランクからおさらばだな」
「ああ、名残惜しいわ」
金色の斧はAランクからSランクへ昇格1歩手前まで来ていた。
「おい、次これにしようぜ」
ボブがあるクエストを持ってきた。
しかし、
「ダメだボブ。この時期のパープルスネークの討伐は止めておいた方がいい」
「あ!? オルク!! 何ビビってるんだよ!」
「チキン南蛮野郎が!」
「そうじゃなくて生息している森は今確か……」
「この前パープルスネークを討伐したじゃねえかよ」
「アンタ何様?」
「じゃあ来なくていいわよ」
妹にアンタ呼ばわりされるオルク。
皆オルクへの態度が変わってしまった。
「待って待って! 話聞いて」
「オルク、皆の士気を下げようとするならクビだぞ」
「はひ?」
「当たり前よ! 弱腰でどうすんのよ!」
「兄とは思えない…………」
「だとよ」
「ううっ…………」
「それに俺ら強いだろ、何かあってもなんとかなるって」
「…………」
オルクの忠告は無視された。
この話し合いがこのパーティーの衰退の始まりである。
「おい! なんだこの数は!!?」
「なぜヘイルマンティスが大量に!」
パープルスネーク討伐なのだが別のモンスターに襲われる。
ヘイルマンティス。
通常は一体Aランクの冒険者一人程で足りるモンスター。
何度もこのパーティーは倒している。
しかし、
「何でこんなにいるんだ!?」
「この時期になると繁殖期になるからヘイルマンティスが卵を産む条件が整ったこの森に集まるんだ!!」
「嘘でしょ!」
「ギルドのミスクエストだってギルド職員が言ってた!!」
「巫山戯んな! 何故オルクは止めなかった!」
「クビをほのめかしてたのは誰だ!!」
オルクは大量発生の事を知っていたので忠告はした。
荷物持ちの他にも情報収集も行っていた。
非は特に無い。
「きゃああああぁぁぁ!」
「キャシー! 危ない!!」
キャシーを咄嗟に庇う。
だが、
「うっ!!」
肘関節近くの左前腕を斬られてしまった。
しかし、まだ動ける。
煙玉を持っていたので地面に叩きつける。
「今だ全速で逃げろ」
「クソっ!」
「いやぁ〜危なかった。この煙玉ホントに効くね、店主が怪しいヤツだから心配だったんだ」
『………………』
「ははは…………左腕の腱斬られて後遺症残るって。まあ皆が無事ならいいけどさ」
『………………』
全員オルクに敵意を向ける。
「オルクお前はクビだ」
「…………え? 今回ミスしてないし、仕事は全力でやってるけど」
「アンタのせいで死にかけたんじゃない」
「止めたけど? 強いから何とかなるって?」
「そこはクビ覚悟で言うべきだろ!」
責任の押し付けが始まった。
「僕だって辞めたくないし、ギルドとの交渉とか薬作りとかどうするの? 結構難しいよ」
「交渉なんて強気で行けば何とかなるだろうが! 薬なんざお前をクビにして浮いた金で買えばいい!!」
「ええ…………」
「第一お前なんざ戦いで活躍しないだろ。戦ってる時に何もしない様なやつを置いておけるか」
「力も無い人間が発言する権利があると思ってるの?」
「サイテー」
「いやそうじゃなくてさ、色々勘違いしている」
「勘違いしてんのはお前だ雑魚が」バキ!
ボブがオルクの顔面を剣の入った柄で殴る。
続いてマイクが倒れたオルクを踏みつける。
「…………お前本当に調子のるなよ!」
「何を偉そうにしてんの?」
「痛った……」
オルクは蹲る。
「ハッキリ言ってやる! お前は使えないんだ! 役に立たねえ人間なんて置いても何も得になんねえんだよ!!」
「それに何もしてないのに分け前貰うなんて図々しいわ」
「そんな…………」
オルクは自分なりに後方支援を行っていた。
他の冒険者にも負けないくらいの知識も持っている。
「もう教えた方がいいんじゃない?」
「ああ、そうだな」
ボブとマイクがリンダとキャシーを抱き締めた。
「俺ら付き合ってんだ」
「ええ」
「ああ、オルクには秘密にしてたけどな」
「フフッ」
「…………は?」
ちなみにリンダは親が約束した許嫁だ。
ずっとオルクはリンダの事が好きだった。
「な、なんで…………」
「隠れてやった方が面白いに決まってるだろ」
「アッハハハハハハハ!」
「気づかねえのかよw」
呆然としていた。
空いた口が塞がらない。
「ツヴァイト・アクアバインド」
「な、キャシー!?」
キャシーに拘束される。
「よーし! それじゃあ俺達の仲の良さを見せつけてやるか!!」
「きゃ〜」
「おっいいなぁ!」
「…………」コクリ
「脱ぎなリンダ、キャシー」
「「はーい」」
オルクの前で好きな幼馴染と義妹の性交が行われた。
絶望、それしか頭に無かった。
それから情事の後、気絶させられたオルクは山奥に捨てられた。
偶然魔物避けのアクセサリーを隠し持って居たため、魔物には襲われなかったが、山から抜け出すのに二週間かかった。
しかし、
「え? 僕が除名!?」
「…………ええ、パーティーメンバーへの暴行です。心当たりありませんか?」
「無いよ!」
「しかし、証人が沢山おりまして…………」
ギルドの規約。犯罪行為を行うと除名される事がある。
「でっち上げだ!」
「おい、兄ちゃん」
「来いよ」
いきなり冒険者達にに引きずられる。ギルドの外に出され、路地裏に連れてこられる。
「実は『金色の斧』のリーダーから頼まれてな〜」
「は?」
「冒険者ギルドに来たら痛い目に合わせろってな!!」
ドカ! ボス! バキ! ドカ! ゴキ! …………
「もう冒険者辞めた方がいいぞ」
「ハーハッハッハ!」
「おうち帰んな〜」
ボロボロになったオルク。
もう、家に帰ろう。そう思って家に帰ってきたが、
「この親不孝者!」
「お前がそんな事するなんて…………」
「リンダとキャシーに乱暴してよくもおめおめと!」
「お前なんざこの家の息子じゃない! 勘当だ出てけ!!」
「だから誤解だって言ってんだろ! そんな事してない!!」
「あのリンダとキャシーが嘘つく筈ないだろ!!」
既に根回しされており、家族からも糾弾され、近所の村人からも非難される。
信じるもなにもそろそろ『金色の斧』はSランクに昇格する。
この村でSランク冒険者グループが出るのは鼻が高い。
ゴマすって味方するのは当然だ。
「出ていけ! もう村に戻ってくるなクズ野郎!!」
1ヶ月後、オルクは物乞いになってスラム街に暮らしていた。
「おい、聞いたか?」
「ああ、斧の勇者様があのレイ・アースログを豚王の生贄にしたって」
「聞いた聞いた。それで領地貰ったんだって? すげぇよな」
(斧の勇者?)
子供の頃に読んだ話を思い出した。
数々の冒険譚をして、人々を助けてきたのが心に残っている。
(僕も人の役に立って死にたい)
オルクは歩き出した。
ハジメの領地に。
こんなカスみたいな命を、世の為人の為に使っていこうと。
途中から土砂降りになったがオルクは気にしない。
数十時間かかったがガルタイル領へ辿り着く。
そして、領地の入り口の大きな木の下で、
「か〜め〜は〜め〜波ぁぁぁぁぁ! …………春菜、上手く出来てるか?」
「気持ち少し上欲しいかな?」
(何やってんだろこの人? あ……意識が薄…………)バタリ!
オルクは倒れた。
何も食べてないし疲労で限界だ。
ドサッ!
「うわっ、ビックリした!」
「何だろうこの人? 取り敢えず治療院に連れてこう」
こうしてオルクは斧の勇者の配下となるのだった。
■
「それにしてもオルク雇って良かったよ。頭良いし、冒険者の知識とか役立ってるし」
「ありがとうございます」
話を聞いてて、嘘発見能力があるので真実と言う事が分かった。
嘘吐きでは無いので奴隷紋の条件で配下になり、能力者となった。
ビフォーアフターが激しかったね。
修行の前は目が死んでたからね。
追放モノの小説って大体パーティーが酷い目に遭うよね。そう願うよ。
「オルク! 見つけたぞ!!」
振り返ると4人の男女がいた。
「あ、ボブ、マイク、リンダ、キャリー?」
外人とかでありそうな名前だな。
キャリーじゃなくてキャシーな。どうでもいいけど。
皆さん、体調にはお気をつけを。