念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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第36話

「皆どうしたの?」

「この野郎…………」

「アンタのせいで大変だったのよ!」

「責任取りやがれ!」

「この唐変木」

 

 コイツら……何だろうか? 

 オルクの話を聞いてたらコイツらが被害者ぶるのは筋違いじゃないの? 

 

「皆久しぶり! マイク片腕無いけどどうしたの?」

「てめぇ…………」

 

 大体予想が着くな。身の丈にあったクエストじゃなかったんだろ。

 

 冒険者ギルドの職員から聞いた話だと、オルクの冒険者剥奪の件はギルドマスターと一部の職員が無断で起こしたそうだ。

 

 このクソ四匹がオルクへ悪事と濡れ衣を被せた事を酒の席で暴露しており、近くにオルクに助けられた人間が丁度いたらしく、もっと上の人間に直訴されたそうだ。

 

 結果ギルドマスターはクビ。その他の職員は左遷とかになったとか。

 

 ギルドマスター曰く、女二人によるハニートラップだそうだ。奥さんがいる為、いい弱みになったらしい。

 

 前々の世界でもあったな、政治家にハニートラップを仕掛けて自分達に都合のいいルールを作らせるとかそんなの。

 

「お前が抜けてからクエストは失敗続きだ!!」

「だから辞めたくないって言ったのに」

「こっちは大変だったんだ!! 失敗し過ぎてCランクまで落ちたんだぞ!!」

「だろうね」

 

 本当に災難だったね。

 故郷に帰れば? 

 

「だって皆は力=正義って考えてるし。時期とか場所によっている魔物とか把握してないでしょ」

「それがどうした!?」

「冒険者の知識ゼロって事。僕何度も冒険者ギルドから買った本を読めって言ったし、全然読んでなかったよね?」

「くっ……」

「それに交渉とかは威張ってるだろうし反感買うよ? 逆ギレとか依頼者に断れたこと無かった?」

「うっ…………」

「図星だよ。横柄な態度取るなって言ったのに」

 

 まあ力イコール正義って訳じゃないよな。

 前の世界でも医療や食関係で相当な権力持ってた奴もいるしね。

 

 交渉事か…………俺はあまりの得意じゃないな。

 

 このパーティーはオルクによって支えられてたって訳か。

 後方支援っては大事な要素だからな。

 

「自己責任なのになんで僕が責任を取らなければならないの?」

「てめぇのせいでマイクは…………」

「腕無いけど何あったの?」

「クエストでの失敗だよ!!」

 

 馬鹿だな。冒険者にとって大事なのは臆病さだ。

 

「オルク、お前の事は許してやるから戻ってこい」

「「「は?」」」

 

 俺やシルフィも声が出てしまった。

 散々オルクに酷い仕打ちしておいて悪人扱い? 何様のつもりだ。

 

 普通おかしいでしょ。土下座して懇願するのが普通ではなくて? 

 

「しっかたねぇな。ウザイけど」

「ホントよね〜薬代高いし」

「我慢する」

 

 ……………………………………。

 

(コイツら殴っていいでござるか?)

(気持ちはわかるがな、オルクの問題だ)

 

 シルフィが拳を鳴らす。

 俺も無意識に鳴らしていた。

 

「へーなんのメリットあるの?」

「メリット? 調子に乗るんじゃねぇぞ!!」

「ふざけてるの? 置いてもらってるだけで感謝すべきでしょう!!」

「サイテー」

 

 コイツらとは話にならない。

 話が通じない相手とは関わりたくない。

 

「断るよ。今この領地で大事な仕事してるんだ。邪魔しないでくれよ」

「聞いてるぜ〜斧の勇者の配下だって? お情けで入れてもらってんだろ」

「はっずかしい!」

「役に立たねえんだから辞めな」

「雑魚ね〜」

 

 お情け? 相当強いぞオルクは。

 その役立たずに支えられてのはどこのパーティーだ? 

 

「まあ、なんだったら俺らパーティーが配下になってやっても良いがな」

「いいわね。オルクが配下になれるんだったら私達でもなれるよね」

 

 もう話を中断させよう。

 耳が痛くなってきた。

 

「それで? お前らオルクに断られたよな。諦めて帰れば?」

「あ? 誰だテメェ」

「部外者は口出さないで!!」

 

 お〜斧の勇者様になんて口をきくのだ。

 てめえら出禁にしてやろうか。

 

「こうなったら実力行使だオルク!」

「無理矢理でも連れて行ってやる!」

 

 馬鹿四匹は得物を取って構える。

 そう言えばチンピラが暴れ出すとか予知出てたっけ? 

 

「オルク、一人でやれるな?」

「勿論です」

「は? 舐めてんのか…………」

 

 オルクを囲む。

 無駄だな。やっちまえ。

 

「うぉぉぉ!」

 

 一人が斬りかかる。

 だが、

 

「ふん」ドス! 

「がはっ!?」

「マイク!!?」

「嘘でしょ!?」

「えっ!?」

 

 マイクだったけ? 正拳突きで派手にぶっ飛ばされたね。

 隙が多すぎではありませんか? 

 

「隙があり過ぎ」ドン! 

「がはっ!?」

「シェリー!!?」

「左」バキ! 

「うぐっ!」

「ボブ!」

 

 囲まれてから数秒しか経ってないよ。

 よくSランク目前まで行けたね。

 

「それで?」

「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!!」

 

 あまりの強さにビビってるよ。

 修行の成果があったからね。

 

「剣を向けてきたよね? 脅しの道具じゃない、殺されても文句は言えない」

「ま、待って貴方と付き合ってあげるから許して!」

 

 巫山戯んなアバズレと付き合うなんて真っ平御免だね。

 

「ごめん。もう付き合ってる人いるんだ」

「は……?」

「カリンさんって言う人なんだけど…………」

 

 前、暗部からの情報で知ったのだが、カリンと付き合ってるらしい。もう皆に知れ渡ってる。

 もうデートとかしたり一線越えてるとか。

 

「もうそっちの事なんて忘れたよ。横たわってる人間持って帰ってくれる?」

 

 オルクは後ろを向く。

 しかし、女がナイフを持って突進してくる。

 

「やぁ!!」

「どこ刺してるの?」

「はあ!?」

 

 オルクを刺そうとした瞬間、真後ろに立っていた。

 おいおい、こんな奴に能力使うなって。

 

「えい!」ドカ! 

 

 後ろから首元を叩く。結構弱い相手だったな。

 

「お勤めご苦労様」

「ああ、ボス」

「さ、帰ろうぜ」

「ああ」

「御館様、一緒に夕食を食べに行きませんか?」

「いいぞ」

「僕はテスタと用事があるので…………」

 

 俺達はラーメンを食べて帰るのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「やっぱりラーメンにチャーハンだな」

「餃子付きも美味しいでござる」

 

 ふぅ、ラーメン美味かったな。

 味噌ラーメン頼んだけどこの世界に味噌があるんだな。

 トッピングで味玉とチャーシューも良い。

 

「屋台ってのは風情があるな」

「拙者も故郷を思い出すでござる」

「そう言えばシルフィの故郷ってどこ?」

 

 よく考えたらこいつの過去とか知らなかったな。奴隷になった経緯も。

 

「コアトルスピンって言う森や岩場に囲まれた国でござる。閉鎖的であまり有名ではない所です」

「聞いた事ないな」

「ええ、一応交易とかはあるみたいですけど」

「なんで奴隷になったんだ?」

「…………」

「スマンやっぱいい」

 

 俺は部下たちの過去は詮索しないようにしてる。

 過去を捨ててる人間とかも前の世界にもいたからな。

 

「どうする? 里帰りするか?」

「嫌でござる」

「…………わかった」

 

 帰りたくないのかな? 勢力争いとかあるのか? 。

 

「気を取り直して、もう1件行くか」

「お、良いでござるね」

「焼き鳥行くか」

 

 この前屋台であったのだ。

 小腹空いてるし、気になるから行くとしよう。

 

「ガハハハハハハハハ」

「あ、ミリー」

「あ! ボス!」

 

 コイツはミリー。三番隊の副隊長だ。

 夜にしか動けないので夕方になったら動き出すのだ。

 

 金髪、ロリ、ツインテの三拍子揃った女だ。

 

「御苦労」

「ガハハハハ」

「ん? 口に血が着いてますよ」

 

 能力使ったのか?

 不審者によく使うからな。

 

「そうだボス、転生者ってのがまた居たぞ!」

「またか」

 

 一応ダンジョンの番をさせているのだ。

 

「ああ、剣生成と瞬間記憶の能力を貰ってたらしいぞ!」

「暗殺とかテスト勉強に便利そうだな」

「使う暇もなく罠にハマったがな!」

 

 何故使う暇もないのに知ってたかって? 

 ミリーの能力、腐共和音《テラバイト》である。

 

 簡単に言えば吸血し、相手の個人情報を知ることが出来る解析系の能力者だ。

 

 解析できる上に身体能力も高い。しかし夜しか動く事が出来ない。日光を浴びるとダメージウケるし。

 

「ガハハハハハハハハ! パトロールしてるから失礼するぞボス!」

「ああ頑張ってな」

 

 元気があってよろしい。

 

「さ、焼き鳥食いに行くか」

「小腹が空いたでござる」

 

 俺は他の場所に行くのだった。




★腐協和音《テラバイト》
・質問を定め、噛みつき血を吸うことにより、答えの情報を知る能力。放出系。
・噛まれた相手の答えが間違った情報だとそのまま出てきて、知らない事だと出てこない。
・死人には使用不可。


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