「さて、やりますか」
「本当にやるんですね」
「勿論、修行の一貫だからな」
今日来たのはゼルトブルのカジノだ。
ローナの能力を使い儲けようとする算段である。
最近あまり構ってなかったので丁度いいだろう。
「少し罪悪感ありますね」
「承太郎も言ってたろ…………あれ? なんて言ってたんだっけ?」
「考えて言いましょうよ」
さて、チップ買って入場しますかな。
おっ、スロットがある。
懐かしいな。知り合いがスロットマシンを違法改造してたっけ。
チップを買って、スロットにイン。
いやー懐かしいな。仲間と一緒にやったことがあるのだ。
「う〜ん同じ速さなのに止まり方が違いますね」
そりゃそうだろうな。鑑定した所、魔法でプログラムされているのでタイミングが合わない。
現代のスロットマシンと同じだな。大体は胴元が勝つ様に出来てるんだ。
「で、ローナ? 調べられてるのか?」
「ルーレットとチンチロの方には。やっぱりハジメ様の言う通り下に入ってました」
「ビンゴ。後で攻めに行くぞ」
「え、ええ……」
運の勝負じゃないんだ。ギャンブルの世界は。
このカジノもイカサマしてるのでおあいこである。
「あああクッソ! 何でフィーバーしないんだ」
隣の客が騒ぎ立てる。
熱くなるなよ。たかがスロットだぞ。
「元康様、コイン買ってきますわ!」
へ?
「なあ、ちょっとコインくれな…………ハジメ」
「元康…………」
お前…………何やってんだよ。
確かにカジノとか行きそうな雰囲気だけど。
「そう言えば本拠地だったな」
「まあな」
「コインを━」
「貸さねえよ」
お前バカだから引いた方がいい。
どうせビッチにせがまれたんじゃないのか?
「それでなんでこのカジノにいるんだ?」
「まあな、マインに行ってみたいって頼まれてな」
「確かに派手好きだろうしな王女だし」
国庫から金を引き出して、アクセサリーとかエステとか行ってたんだっけ。
「ああ、それで最初は結構当たってたんだが、今全然ダメなんだ」
「なるほど」
ゼルトブルの情報力を舐めちゃダメよー。
「多分だけどこのスロットは遠隔操作出来るな」
「は? なんだそりゃ!?」
「カジノ側の戦法としては、勝てる! ツイてる! って思わせといてそのまま引きずるって事だ」
「…………どう言う意味だ?」
「ギャンブル依存症って知ってる? 大勝ちして負ければ取り返そうとするだろ。射幸心ってのもあるから依存するんだ」
「…………」
係員がチラチラ見てるのも気になった。
「それに槍の勇者とメルロマルクの第一王女だろ。ゼルトブルは情報力高いから顔なんてすぐ分かる」
「そうなのか!?」
「闇ギルドなんて金を渡せば色んな情報を集めてくれるぞ? 金持ってるって事もな」
この前の決闘の事とかもあるし、頭が悪いって事も分かる。ビッチは浪費とかするしな。
「そろそろスロットは止めておいた方がいい」
「ああ」
「お客様」
「ん?」
支配人見たいな男性が元康の所へ。
「お客様は槍の勇者と見受けられます。どうでしょうか、VIPエリアで負けた分を取り返しませんか?」
「元康様やりましたね。行きましょう!」
「よーし、行くぞ!」
「お前バカだろ!! 話聞いてた!?」
いつの間にかビッチが合流していた。
調べたけどレート高いぞ?
お前乗せられやすいからカモだろ。
「斧の勇者様もよかったらどうでしょうか?」
「まあ、行くけど」
最初からそのつもりですけど?
まあローナにやらせるつもりでしたけどね。
■
「最初はルーレットから行くか」
「よーしルーレットやるか」
あれ? 元康? お前もやるのか?
利益率高いからなこれ。
さてとどうするかな?
それじゃ俺は横の数字に賭けるか2ndの12。
ローナは縦の数字だ。1の列だ。
俺ら二人共に当たると2倍。
元康達も当たると2倍の所にベットすると、ルーレットが回る。
グルグル回り、それがゆっくりとしてくる。
それが止まり、7だ。
「外れたか」
「あ、当たりました」
「あー外れた」
ローナは当たったようだ。
元康は外れたが。
(行けるか?)
(このスピードだったら対応可能です)
(失敗を混ぜてな)
やっぱりイカサマに向いた能力だ。
次のゲーム。ローナは5つの数字に賭ける。6倍。
俺は6つの数字に賭ける。5倍。
ルーレットスタート。同時にローナの能力もスタート。
ルーレットが速度を落としていき、2番に入る。
「当たりましたね」
「サンキューローナ」
二人共に当たったようだ。助かるよ。
俺の方は結構ベットしてたから増えた。
「よし、当たった!」
「さすがですわ!」
元康達は当たったようだか二倍だった。
良かったな。
次のルーレット。俺は5つの数字に賭ける。
ローナは3つの数字に賭けた。
そしてルーレットスタートするが、
「あー外れましたね」
「俺も」
「よし、当たった!」
元康達は6つの数字に5倍でかけてた。
俺らはベット数が少なかったのであまり被害は無い。
もうそろそろいいかな? ローナに合図を送る。
「じゃあ私は12と15を」
「…………それじゃ俺は15と18」
「…………12から18の6つを」
6割がたのチップをベットする。
元康達も何か気づいたのか俺らと被せる。
ルーレットスタート。見ていた支配人は笑みを浮かべている。
そして止まったのは、15。
2つなので、17倍である。
支配人の顔が笑顔から無表情に変わる。
下に人が入ってるの知ってるし、地下から入れる。
磁石でルーレットの目を変えてる。
「なんか疲れてきたし他の所行くか。最後にするよ」
「さ、左様ですか…………」
「うん、儲けた分だけ30番へ」
「あ、私も」
「俺も賭けるか…………」
ルーレットスタート。回り出した時に、支配人の顔に焦りがあった。
ん? 何机蹴ってんの?
ルーレットはゆっくりとしていき、周りが沈黙していく。
コロン!
30番に入った。35倍だったけ?
「サンキューハジメ!」
「良いってことよ」
一応恩とか売っておこう。
さ、次だ。
■
よぉし次はポーカーやるか。
形から見るとテキサスホールデムポーカーかな?
召喚された勇者の中にもカジノ好きがいるらしい。ゲームと言えばカジノだからな。
ルールは「2枚の手札と5枚の共通カードの合計7枚のカードから、5枚を使って、強い役を作るゲーム」だ。
ただし、7枚のカードが全部一度に配られるわけでは無く、
① 2枚の手札
② 3枚の共通カード
③ 1枚の共通カード
④ 1枚の共通カード
という順にカードが増えていき、カードが増える都度、チップを賭けることができる。
日本でも密かに人気があり、テキサスホールデムはブームになってるとかなんとか。
10億円程の賞金が掛けられるほどのポーカーだそうだ。
前の世界でもカジノによっては100億円近くの賞金があったな。
イカサマはバレなければ大丈夫らしく、能力者が賞金を獲得する事もよくあった。
勿論俺もイカサマして稼いでました。
しかし場所によってはカジノ側にも能力者がいる所もあり、サクラを使って勝たせるやり方をしていた所もあった。
後で聞いた話だと、カジノ内のゲームの結果を操ると言う能力者だったとか。
さて、座るか。ローナが。
「お、ポーカーかい? やってみようかね」
「あ」
「何かようかい?」
パンダ? ラーサズサだったけ?
ゼルトブルとシルトヴェルトに生息する傭兵。
そう言えばここでコロシアムとかやってたんだっけ。
「それでは私も」
ん? 知らない老人が座ってきた。
「あ、キートだ」
「知り合い?」
「各地を渡り歩く伝説のギャンブラーさ」
えーそんなのがいるのか。
「さて、やりますか」
「よーし負けねえぞ」
「アタイを舐めるなよ」
「ふぅ」
こうしてポーカーが始まった。1回目。
まずローナの最初の役は、
♥7 ♣5
それで最初の3枚は、
♥3 ♠5 ♠Q
今の所はワンペアだな。
ここら辺で降りるか残るかなんだよな。
「アタイは止めておくよ」
お、ラーサズサさん落ちたか。
で、次のカードは、
♠7
お、ツーペアじゃないですか。
これは勝ったか?
「あ、私降ります」
ゑ? ローナは降りるの?
って事はだ。ツーペアよりも強い役を持ってるって事?
最後の役は♦4だ。
それではショーダウン。そして出た役は、
元康 ♠4 ♦4 ♣3 ♥3 ♠7
キート ♦Q ♣Q ♠Q ♠7 ♥3
キートの勝利。スリーオブカインド!
「クソッ!」
「ふぉふぉ」
この人初手でクイーンを2枚持ってたのか。
侮れねぇ。
はい第二試合。
ローナの役は、
♠5 ♠9
それで最初の3枚は、
♠A ♠J ♦3
今の所は♠が四枚ある。
フラッシュの可能性は大いにあり。
で、今の所誰も落ちない。
次の役は、
♥4
クッソ♠出ろよ。
「私は止めて置きましょうかな」
キートは勝ち目がないと悟ったのか降りた。
次、次だ! 出てきたのは、
♠K
よし! ショーダウンだ!!
ローナ ♠A ♠J ♠5 ♠9 ♠K
元康 ♠A ♦A ♣4 ♥4 ♠J
ラーズササ ♠K♣K ♠4 ♥2 ♦3
ローナの勝利。フラッシュ!!
ツイてたな。
第三試合。
ローナの役は、
♦6 ♥9
そして三枚は、
♥9♣5♠6
今の所ツーペアってとこか。
他の奴らはどんな役だ?
♥6
「うん、アタイは降りようかね」
「俺も」
二人共に落ちたか。ローナはフルハウスだ。
次の役は何だ?
♥Q
「私は落ちます」
ええ? 結構いい訳なのに?
キートのカードは?!
「ほぉ、勘がいいですな」
ショーダウン!
♣6♥6♠6♥Q♠Q
こいつ…………♣の6を持ってたのか。
流石伝説のギャンブラー。
この後数十試合した。キートは強かったがローナは僅差で勝利したのだった。
■
「いやー結構儲かりましたね」
「ああ、いい資金源になったな」
ポーカーの後にも丁半とかやって爆勝ちした。
元康は少し儲かったらしい。説得してビッチを遠ざけた甲斐があった。
ちなみにこのカジノは転生者と組んでおり、資金源になってるとか。儲かったから多少経営が傾くだろうな。
フォーブレイの転生者なので近いうちに狩るつもりだ。
「おねーちゃん花かってー」
「おやおや、1ついくらですか?」
「銅貨1まい」
「全部買いましょう。花瓶に入れる花が欲しかったんで」
「ありがとー」
そう言えばローナって性格良いんでしたっけ。
良い部下持ったな。
こうして資金を調達するのだった。
■
「もしもし? こちらキート」
『アメバだ。どうだった?』
「ああ、鳥肌立っちまった」
『俺も見たかったぜ』
伝説のギャンブラー、キート。
誰も居ない所で通話していた。
「ああ、やはり今代のようだ」
『そうか……』
「一緒に居たのも因果なのかもしれん」
沈黙が少し続く。
『それにしても……無事で良かった』
「エネス殿から助けて貰ってたもんな」
『ああ、あの時の恩を返せてないからな……取り敢えず国に帰投してくれ』
「何かあったのか?」
『バレル王子の一派が数減らしに動くかもしれん。力を貸してほしい』
「OK、帰投する」
ハジメ達水面下で何か動いていた。
関わるのは少し先の未来だ。