念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

39 / 81
第38話

「さて、やりますか」

「本当にやるんですね」

「勿論、修行の一貫だからな」

 

 今日来たのはゼルトブルのカジノだ。

 ローナの能力を使い儲けようとする算段である。

 

 最近あまり構ってなかったので丁度いいだろう。

 

「少し罪悪感ありますね」

「承太郎も言ってたろ…………あれ? なんて言ってたんだっけ?」

「考えて言いましょうよ」

 

 さて、チップ買って入場しますかな。

 

 おっ、スロットがある。

 懐かしいな。知り合いがスロットマシンを違法改造してたっけ。

 

 チップを買って、スロットにイン。

 いやー懐かしいな。仲間と一緒にやったことがあるのだ。

 

「う〜ん同じ速さなのに止まり方が違いますね」

 

 そりゃそうだろうな。鑑定した所、魔法でプログラムされているのでタイミングが合わない。

 現代のスロットマシンと同じだな。大体は胴元が勝つ様に出来てるんだ。

 

「で、ローナ? 調べられてるのか?」

「ルーレットとチンチロの方には。やっぱりハジメ様の言う通り下に入ってました」

「ビンゴ。後で攻めに行くぞ」

「え、ええ……」

 

 運の勝負じゃないんだ。ギャンブルの世界は。

 このカジノもイカサマしてるのでおあいこである。

 

「あああクッソ! 何でフィーバーしないんだ」

 

 隣の客が騒ぎ立てる。

 熱くなるなよ。たかがスロットだぞ。

 

「元康様、コイン買ってきますわ!」

 

 へ? 

 

「なあ、ちょっとコインくれな…………ハジメ」

「元康…………」

 

 お前…………何やってんだよ。

 確かにカジノとか行きそうな雰囲気だけど。

 

「そう言えば本拠地だったな」

「まあな」

「コインを━」

「貸さねえよ」

 

 お前バカだから引いた方がいい。

 どうせビッチにせがまれたんじゃないのか? 

 

「それでなんでこのカジノにいるんだ?」

「まあな、マインに行ってみたいって頼まれてな」

「確かに派手好きだろうしな王女だし」

 

 国庫から金を引き出して、アクセサリーとかエステとか行ってたんだっけ。

 

「ああ、それで最初は結構当たってたんだが、今全然ダメなんだ」

「なるほど」

 

 ゼルトブルの情報力を舐めちゃダメよー。

 

「多分だけどこのスロットは遠隔操作出来るな」

「は? なんだそりゃ!?」

「カジノ側の戦法としては、勝てる! ツイてる! って思わせといてそのまま引きずるって事だ」

「…………どう言う意味だ?」

「ギャンブル依存症って知ってる? 大勝ちして負ければ取り返そうとするだろ。射幸心ってのもあるから依存するんだ」

「…………」

 

 係員がチラチラ見てるのも気になった。

 

「それに槍の勇者とメルロマルクの第一王女だろ。ゼルトブルは情報力高いから顔なんてすぐ分かる」

「そうなのか!?」

「闇ギルドなんて金を渡せば色んな情報を集めてくれるぞ? 金持ってるって事もな」

 

 この前の決闘の事とかもあるし、頭が悪いって事も分かる。ビッチは浪費とかするしな。

 

「そろそろスロットは止めておいた方がいい」

「ああ」

「お客様」

「ん?」

 

 支配人見たいな男性が元康の所へ。

 

「お客様は槍の勇者と見受けられます。どうでしょうか、VIPエリアで負けた分を取り返しませんか?」

「元康様やりましたね。行きましょう!」

「よーし、行くぞ!」

「お前バカだろ!! 話聞いてた!?」

 

 いつの間にかビッチが合流していた。

 

 調べたけどレート高いぞ? 

 お前乗せられやすいからカモだろ。

 

「斧の勇者様もよかったらどうでしょうか?」

「まあ、行くけど」

 

 最初からそのつもりですけど? 

 まあローナにやらせるつもりでしたけどね。

 

 

 ■

 

 

「最初はルーレットから行くか」

「よーしルーレットやるか」

 

 あれ? 元康? お前もやるのか? 

 利益率高いからなこれ。

 

 さてとどうするかな? 

 それじゃ俺は横の数字に賭けるか2ndの12。

 ローナは縦の数字だ。1の列だ。

 俺ら二人共に当たると2倍。

 

 元康達も当たると2倍の所にベットすると、ルーレットが回る。

 グルグル回り、それがゆっくりとしてくる。

 

 それが止まり、7だ。

 

「外れたか」

「あ、当たりました」

「あー外れた」

 

 ローナは当たったようだ。

 元康は外れたが。

 

(行けるか?)

(このスピードだったら対応可能です)

(失敗を混ぜてな)

 

 やっぱりイカサマに向いた能力だ。

 

 次のゲーム。ローナは5つの数字に賭ける。6倍。

 俺は6つの数字に賭ける。5倍。

 

 ルーレットスタート。同時にローナの能力もスタート。

 

 ルーレットが速度を落としていき、2番に入る。

 

「当たりましたね」

「サンキューローナ」

 

 二人共に当たったようだ。助かるよ。

 俺の方は結構ベットしてたから増えた。

 

「よし、当たった!」

「さすがですわ!」

 

 元康達は当たったようだか二倍だった。

 良かったな。

 

 次のルーレット。俺は5つの数字に賭ける。

 ローナは3つの数字に賭けた。

 

 そしてルーレットスタートするが、

 

「あー外れましたね」

「俺も」

「よし、当たった!」

 

 元康達は6つの数字に5倍でかけてた。

 俺らはベット数が少なかったのであまり被害は無い。

 もうそろそろいいかな? ローナに合図を送る。

 

「じゃあ私は12と15を」

「…………それじゃ俺は15と18」

「…………12から18の6つを」

 

 6割がたのチップをベットする。

 元康達も何か気づいたのか俺らと被せる。

 

 ルーレットスタート。見ていた支配人は笑みを浮かべている。

 そして止まったのは、15。

 

 2つなので、17倍である。

 支配人の顔が笑顔から無表情に変わる。

 

 下に人が入ってるの知ってるし、地下から入れる。

 磁石でルーレットの目を変えてる。

 

「なんか疲れてきたし他の所行くか。最後にするよ」

「さ、左様ですか…………」

「うん、儲けた分だけ30番へ」

「あ、私も」

「俺も賭けるか…………」

 

 ルーレットスタート。回り出した時に、支配人の顔に焦りがあった。

 ん? 何机蹴ってんの? 

 

 ルーレットはゆっくりとしていき、周りが沈黙していく。

 

 コロン! 

 

 30番に入った。35倍だったけ? 

 

「サンキューハジメ!」

「良いってことよ」

 

 一応恩とか売っておこう。

 

 さ、次だ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 よぉし次はポーカーやるか。

 

 形から見るとテキサスホールデムポーカーかな? 

 召喚された勇者の中にもカジノ好きがいるらしい。ゲームと言えばカジノだからな。

 

 ルールは「2枚の手札と5枚の共通カードの合計7枚のカードから、5枚を使って、強い役を作るゲーム」だ。

 

 ただし、7枚のカードが全部一度に配られるわけでは無く、

 

 ① 2枚の手札

 ② 3枚の共通カード

 ③ 1枚の共通カード

 ④ 1枚の共通カード

 

 という順にカードが増えていき、カードが増える都度、チップを賭けることができる。

 

 日本でも密かに人気があり、テキサスホールデムはブームになってるとかなんとか。

 10億円程の賞金が掛けられるほどのポーカーだそうだ。

 

 前の世界でもカジノによっては100億円近くの賞金があったな。

 イカサマはバレなければ大丈夫らしく、能力者が賞金を獲得する事もよくあった。

 

 勿論俺もイカサマして稼いでました。

 しかし場所によってはカジノ側にも能力者がいる所もあり、サクラを使って勝たせるやり方をしていた所もあった。

 

 後で聞いた話だと、カジノ内のゲームの結果を操ると言う能力者だったとか。

 

 さて、座るか。ローナが。

 

「お、ポーカーかい? やってみようかね」

「あ」

「何かようかい?」

 

 パンダ? ラーサズサだったけ? 

 ゼルトブルとシルトヴェルトに生息する傭兵。

そう言えばここでコロシアムとかやってたんだっけ。

 

「それでは私も」

 

 ん? 知らない老人が座ってきた。

 

「あ、キートだ」

「知り合い?」

「各地を渡り歩く伝説のギャンブラーさ」

 

 えーそんなのがいるのか。

 

「さて、やりますか」

「よーし負けねえぞ」

「アタイを舐めるなよ」

「ふぅ」

 

 こうしてポーカーが始まった。1回目。

 まずローナの最初の役は、

 

 ♥7 ♣5

 

 それで最初の3枚は、

 

 ♥3 ♠5 ♠Q

 

 今の所はワンペアだな。

 ここら辺で降りるか残るかなんだよな。

 

「アタイは止めておくよ」

 

 お、ラーサズサさん落ちたか。

 で、次のカードは、

 

 ♠7

 

 お、ツーペアじゃないですか。

 これは勝ったか? 

 

「あ、私降ります」

 

 ゑ? ローナは降りるの? 

 って事はだ。ツーペアよりも強い役を持ってるって事? 

 

 最後の役は♦4だ。

 

 それではショーダウン。そして出た役は、

 

 元康 ♠4 ♦4 ♣3 ♥3 ♠7

 キート ♦Q ♣Q ♠Q ♠7 ♥3

 

 キートの勝利。スリーオブカインド! 

 

「クソッ!」

「ふぉふぉ」

 

 この人初手でクイーンを2枚持ってたのか。

 侮れねぇ。

 

 

 

 はい第二試合。

 ローナの役は、

 

 ♠5 ♠9

 

 それで最初の3枚は、

 

 ♠A ♠J ♦3

 

 今の所は♠が四枚ある。

 フラッシュの可能性は大いにあり。

 

 で、今の所誰も落ちない。

 次の役は、

 

 ♥4

 

 クッソ♠出ろよ。

 

「私は止めて置きましょうかな」

 

 キートは勝ち目がないと悟ったのか降りた。

 次、次だ! 出てきたのは、

 

 ♠K

 

 よし! ショーダウンだ!! 

 

 ローナ ♠A ♠J ♠5 ♠9 ♠K

 元康 ♠A ♦A ♣4 ♥4 ♠J

 ラーズササ ♠K♣K ♠4 ♥2 ♦3

 

 ローナの勝利。フラッシュ!! 

 

 ツイてたな。

 

 

 第三試合。

 ローナの役は、

 

 ♦6 ♥9

 

 そして三枚は、

 

 ♥9♣5♠6

 

 今の所ツーペアってとこか。

 他の奴らはどんな役だ? 

 

 ♥6

 

「うん、アタイは降りようかね」

「俺も」

 

 二人共に落ちたか。ローナはフルハウスだ。

 次の役は何だ? 

 

 ♥Q

 

「私は落ちます」

 

 ええ? 結構いい訳なのに? 

 キートのカードは?! 

 

「ほぉ、勘がいいですな」

 

 ショーダウン! 

 

 ♣6♥6♠6♥Q♠Q

 

 こいつ…………♣の6を持ってたのか。

 流石伝説のギャンブラー。

 

 この後数十試合した。キートは強かったがローナは僅差で勝利したのだった。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「いやー結構儲かりましたね」

「ああ、いい資金源になったな」

 

 ポーカーの後にも丁半とかやって爆勝ちした。

 元康は少し儲かったらしい。説得してビッチを遠ざけた甲斐があった。

 

 ちなみにこのカジノは転生者と組んでおり、資金源になってるとか。儲かったから多少経営が傾くだろうな。

 フォーブレイの転生者なので近いうちに狩るつもりだ。

 

「おねーちゃん花かってー」

「おやおや、1ついくらですか?」

「銅貨1まい」

「全部買いましょう。花瓶に入れる花が欲しかったんで」

「ありがとー」

 

 そう言えばローナって性格良いんでしたっけ。

 良い部下持ったな。

 

 こうして資金を調達するのだった。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「もしもし? こちらキート」

『アメバだ。どうだった?』

「ああ、鳥肌立っちまった」

『俺も見たかったぜ』

 

 伝説のギャンブラー、キート。

 誰も居ない所で通話していた。

 

「ああ、やはり今代のようだ」

『そうか……』

「一緒に居たのも因果なのかもしれん」

 

 沈黙が少し続く。

 

『それにしても……無事で良かった』

「エネス殿から助けて貰ってたもんな」

『ああ、あの時の恩を返せてないからな……取り敢えず国に帰投してくれ』

「何かあったのか?」

『バレル王子の一派が数減らしに動くかもしれん。力を貸してほしい』

「OK、帰投する」

 

 ハジメ達水面下で何か動いていた。

 関わるのは少し先の未来だ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。