念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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第41話

 数十分前。

 小人は見ていた。

 

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は鉄の処女の抱擁による全身を貫かれる一撃也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!』

「アイアンメイデン!」

 

 三勇者の情報違いで時間がかかり、全員違う方法でソウルイーターを出現させてた。

 尚文の機転により影を攻撃し、ソウルイーター出現。

 

 三勇者が一斉攻撃しても駄目なので尚文頑張る。

 今ココ。

 

「これで波が━━━━━」

 

 ここにいる全員が寒気を覚える。

 ボスを倒しても空の亀裂が元に戻らない。

 

「この程度の雑魚に何を苦戦しているのか。どうやら勇者は一人しかいないと見える」

 

 誰かがマストの上から降りてくる。

 

「な、なんです? あなたは…………」

 

 するともう1匹のソウルイーターが出現。襲う。

 

「ふん」

 

 扇を1回降ると、

 

 シュパン!! 

 

「は!?」

「網目に……」

 

 ソウルイーターの顔に網目がつき、ところてんのような感じになる。

 サイコロステーキ先輩って言えばいいのか? 

 

「邪魔しないでもらいたいですね。これは崇高な戦い……」

 

 全員が身構える。

 

「……そう。本当の波の戦いはこれからです」

 

 武人だね。立派だよ。

 

「私の名はグラス、いうなればあなたたち勇者一行とは敵対関係にある者です」

「尚文だ」

「━━では初めましょうか。真の波の戦いを!!」

 

 戦いが始まった。

 それぞれ三勇者は総攻撃するも、グラスには当たらない。

 

「輪舞零ノ型・逆式雪月花!」

『ぐあああああああああああああ!』

 

 三勇者は吹き飛ばされる。

 丁度尚文達は守っているので無事。

 

「ぐぅっ!!」

「ほう、さすがですね。私の攻撃を受け止めるとは」

「はいくいっく!」

 

 フィーロたんの攻撃を軽く受け止める。

 

「効きませんね」

「はあっ!」

 

 ラフタリアさんが姿を消して後ろから斬りかかる。

 

 カキーン!! 

 

「おや? なにか?」

 

 ガードすらしない。

 全然効いてもいない。

 

「尚文、あの盾は使わないのですか?」

「お望み通り……使ってやるよ」

 

 尚文は憤怒の盾に変える。

 ダークカースバーニング。グラスを炎の中に━━━

 

「おや? この程度ですか?」

「なっ!?」

 

 尚文はスキルを使った。

 グラスは余裕そうに待つ。

 

「シールドプリズン! チェンジシールド(攻)!」

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は鉄の処女の抱擁による全身を貫かれる一撃也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!』

「アイアンメイデン!」

 

 ドガ バキ ガギン

 

「この程度ですか?」

「くっ…………」

「こちらの世界は使える人間はいない。私たちの勝利ですね……」

「……?」

「輪舞零ノ型・逆式雪月花 十!」

『ぐああああああああ!!?』

 

 

 

 ■

 

 

 

「そっちも使えるって事は仲間にもいるってことかな?」

「さぁ? 教えるとでも?」

 

 おいおい、なんでグラスが念能力を使えるんだよ。

 バックに念能力者がいるのが確定ですぞ。

 

「あなた、名前は?」

「もょもとだ」

「…………」

「もょもとですか……いい名前ですね」

「ええっ…………」

 

 からかったのにまともに受け答えされてもね。

 騙されやすいって言われない? 

 

「それじゃこっちも質問。波での戦いでどんな能力者と戦った?」

「…………」

「?」

 

 どうせ仲間の個人情報は教えてくれないだろうし、こんくらいだったら教えてくれるだろう。

 

 …………あり? 何か言いたくなさそう様子だな。

 もしかして敗戦したとか。

 

「私が知ってるのは三人です。まず1人目は人間のような念獣を使う棒使い。小柄で言葉が小さいのが特徴でしたね」

「…………」

「二人目は鋏を持った爆弾使い。金髪で鼻に傷が一文字でついていましたね」

「…………」

「三人目は車輪でしょうか…………特徴としては下半身はなにも履い……どうでもいいですね。下品な戦い方ですが私は死にかけました…………」

 

 そいつら俺の知り合いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 

 ちなみに全員星持ちの人間だよ!? 

 よく生き残れたなグラス。

 

「次の質問、そっちの世界には変態がいるのか?」

「…………」

 

 あっ申し訳無さそうに目を逸らした。

 グラスも苦労してるのだろうか? 

 

「まあ、もう雑談はいいでしょう」

「…………」

「始めましょう、もょもと。真の波の戦ぐはっ!?」

 

 

 

 数分後。

 

 

 

「くっ…………」

「もう止めようぜ……」

 

 そう言ってもグラスは涙を流しながら立ち上がろうとする。

 

「………………」ガクガク ウルウル

 

 なんかラモットと対峙している時のキルアみたいだ。

 

(どうしよう。何度も帰れって言ってんのに引いてくれない)

(確か狩猟具の勇者が行方不明だっけ)

 

 引きたくても引けないって事か。

 そう言えばゴンと同じ声優だっけ? 今どうでもいいか。

 

「あ、カウント出てきた」

 

 急に画面にカウントダウンが現れた。

 

「ほら、帰れよ」

「…………」

 

 グラスは宙に浮き、薄くなって…………消えた。

 …………波は終了した。

 

 俺は一息着いた。

 

「………」

 

 嘘だろ…………ミレナリオの他にもいんのかよ。

 もしかしたら戦うかもしれない。

 

「ハジメ様、コイツら運んで手当てしないと」

「あ、そうだそうだ。アイツと…………これで貰っておくか。手伝ってローナ」

 

 ついでだし、貰っておくものは貰っておこう。

 運ぶ代金だ。

 

「ん?」

「あれ?」

「どうした?」

 

 ローナとシルフィが能力を具現化したら反応した。

 

「これ…………どこかで見たような?」

「…………拙者もでござる」

「?」

 

 あれ? この能力は2人には始めて見せるんだけど? 

 この反応は気になる。

 

「昔どっかで見たような…………」

「取り敢えず運ぶか」

 

 …………おかしい話だ。

 見せてもないのに見たことあるような覚えってのは矛盾してるような話だ。

 二人とも発言してるってのが気になるが。

 

「これをこうやって」

「こうするんですね」

「そうそう」

「この能力って面白いね」

 

 だよね。この能力は俺も助けられている。

 

「馬車欲しいね」

「ローナ、待機している奴らに連絡して」

「あと少しかかるそうです」

「おっけー」

「怪我人を船から運び出そっか」

 

 

 

 ■

 

 

 

 さて、怪我人を運んだし、復興の手伝いしようか。

 まずは波の魔物の死骸を武器に入れるとしよう。

 全部は入れないがな。

 

 結構畑とか荒らされてるな。牧場も同じく荒れている。

 波が長引いたし、避難重視でやったから仕方ないか。

 

 ってな訳で。

 

「あ、この実美味いな」

「埋めてから五分で育つとは…………」

 

 一応念の為バイオプラントを持ってきたのだ。

 糖分が入っている木の実なので栄養価があり、味はバラバラだが皆美味しい。

 

 村人も俺の私設兵も一緒になって食べている。

 お前らのはウチの領地に戻れば沢山あるから。

 

「よーし皆さん! 出来ましたよー!」

「俺も食うか」

 

 ローナが炊き出ししてくれた。

 その辺の魔物と山菜と無事だった調味料で美味しそうなのが出来た。

 おー美味そう。腹減ってるから頂こう。

 

「美味い…………」

 

 豚かな? キノコと味噌らしき汁。

 美味しいな。うん。

 

 ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ

 

 あ、騎士団だ。今まで何やってたのだろうか? 一夜明けたけど? 

 

「貴様! 勝手に我が騎士団の兵をもって行きおって!」

「勇者様の所為ではありません! 僕達が勇者様の力になりたいと進言し、勇者様のお力を借りただけです」

「なに? それでも貴様等は栄誉あるメルロマルクの兵士か! 盾なんぞに惑わされおって!」

「お前さー……この惨状を見て、問題行動だって、部下を処分するわけ?」

 

 あ、尚文復活してる。いつの間に。

 

「こいつらが居なかったら被害はもっと出ていたと思うぞ?」

 

 その通りだな。他の村人も頷く。

 お前らよりも国民の命を大事にしてるんだよ。

 

「あと、お前達が頼りにしてる勇者達とその仲間達は全員、波で現れた強敵にやられてそこの建物に収容されているぞ」

 

 さっさと連れて行くのですな! 

 

「急いで勇者様とその仲間を運び出せ! 早急に治療院へ送るのだ!」

「おい……アイツ等は比較的軽症だぞ。他の重症を負ってる村人も居るんだからそっちを優先して……」

「勇者とその一行を最優先するのは、我が国、そして世界の為だ!」

 

 勇者達は軽傷だし放っておいても問題ない。

 村人達の方を優先して欲しいわ。怪我人多いし。

 

 …………って言うか勇者とその一行を最優先?

 民間人はどうでもいいのか? 波での避難を軽視してたろお前ら。

 責任は国の方にあると思うぞ。

 

 俺は何もしてないのに威張ってるような奴が大嫌いだ。

 

「はいはい。サッサと連れてけ、俺は忙しいんだ」

「待て、盾」

「今度は何だよ……」

「城へ報告に付いてきて貰おう」

「やだよ面倒くさい」

「良いから来るんだ!」

 

 ちなみに俺は隠れている。

 厄介事には関わりたくない。

 

 それで尚文は志願兵からお願いされ、王城へ呼び出される事になった。

 

「ハジメ様行かなくていいんですか?」

「そこまでは女王と約束してないからな」

「カルミラ島への準備があるからね」

 

 もう活性化が始まってる情報もゼルドブルに入っている。

 女王との取引で、俺ら御一行は高級リゾートの様な場所に泊まることになった。全面的に支援してくれるらしい。

 

 夜刀ちゃんのライブも行う予定なのでドキドキが止まらない。

 

 さあ、カルミラ島へゴーだ! 

 いやっほぉぉおおおう。

人員交換はやる?

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